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探し物を探して
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芋虫のような肉の塊の身体に、人の腕が昆虫の足のように生えていた奇形のモンスターだったが、別のモンスターを吐き出した事により身体は少しばかり小さくなり、何本かの腕が太く強靭になる。
今までが大きな身体に任せた、重量級の突進だけだったのに対し、今度の身体は以前よりも動きやすくなったように見える。
それに加え、四足獣の足のように強靭になった複数の腕が身体を支え、力強さと素早い動きを可能にさせていることが予想できるようだった。
「もっと・・・集める・・・もっと・・・食べる・・・」
新たな装いになった足を器用に使って、周囲の様子を伺うように身体を捻っている奇形のモンスター。様々な声色であるのは変わりないが、口調は更に鮮明になり、その見た目からは想像も出来ないほど、言葉の発音が上手くなっていた。
「何を探しているんだ・・・?食べると言ったか?あのモンスターの言葉には意味があるのか・・・」
発しているだけで、言葉の意味を理解していないという可能性もある。モンスターが人の言語を理解し利用するということは、並の知性で行える事ではない。
幾つかの動物の中には、まるで人の言葉や気持ちを理解しているのかと思えるほど、意思の疎通が可能な生き物がいる。特に有名なところでは、チンパンジーやゾウ、そしてイルカなどは人間には劣るものの、とても賢い生き物と言えるだろう。
それ以外にも、身近なところで言えば犬や猫も、人の行動や言葉をよく観察し聞いているように、呼べば近づいて来たり、扉や引き出しの開け方などを独自で学び、実行する事もできる。
魔力を帯びているモンスターは、身体能力的には普通の動物よりも強力で、種族によっては魔法を扱えるモンスターも、呪文や言葉を扱う者もいるほどだ。
そして、今シンの目の前にいるモンスターも、初めは意味の分からない単語を単に発していたように思っていたが、変化があってからは何か意味を持って使っているのではないかと感じさせる行動を取り始める。
奇形のモンスターはシンを探すことを止め、地上へ上がる道へ向かって走りだしたのだ。
「何ッ・・・!逃げる気か!?」
強靭になった人の腕で、アスファルトを砕くほどの握力を見せ、地面を強く蹴り上げ凄まじい跳躍で移動を始めた。
やはり今までの短調で直進的な行動とは明らかに違う。モンスターを吐き出した事によって、本体に何らかの変化が起きたことは間違い無いだろう。
任務の標的である以上、逃すわけにもいかず、シンは走りだした奇形のモンスターの後を追う。
だがそれを阻むように、吐き出されたモンスターがシンの前に立ち塞がる。
魔力を帯びた青白い炎を纏い、四足の獣の姿をしたそのモンスターは、鋭い眼光と鋭利な牙を剥き出しにし、シンへと迫る。道を塞がれ足を止めるが、視界の端で奇形のモンスターが、地上へ上がる道を見つけ向かっていくのが見えた。
「クソッ・・・!相手をしてやる時間なんて無いってのに・・・!」
牙を向けたモンスターは大きな咆哮を上げ、飛びかかる。タイミングを見計らい、シンは横へ飛び込むようにしてそれを避けると、すかさず周囲の物陰から影を放ち、鎖のようにモンスターの影へと繋げていく。
影に縛られ徐々に動きが鈍くなるモンスターだったが、力任せにシンへと近づき振り解こうとする。何本かの影を引き千切り静止を振り切ろうとするが、屋内であることがシンのスキル効果を高め、彼の味方をした。
それに加え、車という大きな物が多く濃い影が多い。シンは周辺を照らす照明を投擲用のナイフで破壊し、明度を更に下げると圧倒的な数の暴力によって、モンスターを影の呪縛で縛り上げた。
「お前はここで大人しくしてろ・・・。もしかしたらこっちが“サンプル“かもしれないからな」
拘束されているモンスターが“サンプル“である事しか分からぬシンは、モンスターを仕留める事なくその場を制した。
その後直ぐに、地下駐車場を出て行った奇形のモンスターを追いかけ、地上へ上がる。一階の強化ガラスで覆われた入り口が盛大に破壊されており、床には血液らしきものが僅かに残されていた。
建物から飛び出したシンは僅かな手掛かりを頼りに、モンスターが逃げた方向を確認する。
「おいおい・・・。初任務で早速失敗とか・・・」
簡単なお使いをするだけの任務になる筈だった。しかし、不運にもトラブルに遭い組織の信用を得るどころか、かえってマイナスの印象を与えかねない。そう思うと、彼の心境は酷く焦燥感に襲われた。
今までが大きな身体に任せた、重量級の突進だけだったのに対し、今度の身体は以前よりも動きやすくなったように見える。
それに加え、四足獣の足のように強靭になった複数の腕が身体を支え、力強さと素早い動きを可能にさせていることが予想できるようだった。
「もっと・・・集める・・・もっと・・・食べる・・・」
新たな装いになった足を器用に使って、周囲の様子を伺うように身体を捻っている奇形のモンスター。様々な声色であるのは変わりないが、口調は更に鮮明になり、その見た目からは想像も出来ないほど、言葉の発音が上手くなっていた。
「何を探しているんだ・・・?食べると言ったか?あのモンスターの言葉には意味があるのか・・・」
発しているだけで、言葉の意味を理解していないという可能性もある。モンスターが人の言語を理解し利用するということは、並の知性で行える事ではない。
幾つかの動物の中には、まるで人の言葉や気持ちを理解しているのかと思えるほど、意思の疎通が可能な生き物がいる。特に有名なところでは、チンパンジーやゾウ、そしてイルカなどは人間には劣るものの、とても賢い生き物と言えるだろう。
それ以外にも、身近なところで言えば犬や猫も、人の行動や言葉をよく観察し聞いているように、呼べば近づいて来たり、扉や引き出しの開け方などを独自で学び、実行する事もできる。
魔力を帯びているモンスターは、身体能力的には普通の動物よりも強力で、種族によっては魔法を扱えるモンスターも、呪文や言葉を扱う者もいるほどだ。
そして、今シンの目の前にいるモンスターも、初めは意味の分からない単語を単に発していたように思っていたが、変化があってからは何か意味を持って使っているのではないかと感じさせる行動を取り始める。
奇形のモンスターはシンを探すことを止め、地上へ上がる道へ向かって走りだしたのだ。
「何ッ・・・!逃げる気か!?」
強靭になった人の腕で、アスファルトを砕くほどの握力を見せ、地面を強く蹴り上げ凄まじい跳躍で移動を始めた。
やはり今までの短調で直進的な行動とは明らかに違う。モンスターを吐き出した事によって、本体に何らかの変化が起きたことは間違い無いだろう。
任務の標的である以上、逃すわけにもいかず、シンは走りだした奇形のモンスターの後を追う。
だがそれを阻むように、吐き出されたモンスターがシンの前に立ち塞がる。
魔力を帯びた青白い炎を纏い、四足の獣の姿をしたそのモンスターは、鋭い眼光と鋭利な牙を剥き出しにし、シンへと迫る。道を塞がれ足を止めるが、視界の端で奇形のモンスターが、地上へ上がる道を見つけ向かっていくのが見えた。
「クソッ・・・!相手をしてやる時間なんて無いってのに・・・!」
牙を向けたモンスターは大きな咆哮を上げ、飛びかかる。タイミングを見計らい、シンは横へ飛び込むようにしてそれを避けると、すかさず周囲の物陰から影を放ち、鎖のようにモンスターの影へと繋げていく。
影に縛られ徐々に動きが鈍くなるモンスターだったが、力任せにシンへと近づき振り解こうとする。何本かの影を引き千切り静止を振り切ろうとするが、屋内であることがシンのスキル効果を高め、彼の味方をした。
それに加え、車という大きな物が多く濃い影が多い。シンは周辺を照らす照明を投擲用のナイフで破壊し、明度を更に下げると圧倒的な数の暴力によって、モンスターを影の呪縛で縛り上げた。
「お前はここで大人しくしてろ・・・。もしかしたらこっちが“サンプル“かもしれないからな」
拘束されているモンスターが“サンプル“である事しか分からぬシンは、モンスターを仕留める事なくその場を制した。
その後直ぐに、地下駐車場を出て行った奇形のモンスターを追いかけ、地上へ上がる。一階の強化ガラスで覆われた入り口が盛大に破壊されており、床には血液らしきものが僅かに残されていた。
建物から飛び出したシンは僅かな手掛かりを頼りに、モンスターが逃げた方向を確認する。
「おいおい・・・。初任務で早速失敗とか・・・」
簡単なお使いをするだけの任務になる筈だった。しかし、不運にもトラブルに遭い組織の信用を得るどころか、かえってマイナスの印象を与えかねない。そう思うと、彼の心境は酷く焦燥感に襲われた。
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