World of Fantasia

神代 コウ

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テクノロジーとファンタジー

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 東京都セントラルシティ。そこは日本という国の中でも有数のインターフェースを誇り、独自のプラットフォームを展開している。

 しかしそれは、東京という地域に限られたことではなくなっていた。埼玉や千葉、神奈川など関東のみならず、大阪や京都奈良といった日本全国で都心化が劇的に進んでいるのが、慎達の暮らす日本という国だ。

 その中でも多くの人々を魅了していたのが、想像や神話、歴史的に価値あるものをバーチャライゼーション、つまり仮想化する技術の進化だった。

 空気中にある微粒子、その中の光子に最新鋭の技術で構築されたアルゴリズムを当てはめることで、仮想の物体や建物、或いは生き物をその場に映し出す技術が生まれた。

 これにより、定められたプラットフォーム内において、ゲームやアニメの世界だけのものだったファンタジーな景色や生き物が、あたかもその場に存在するように映し出すことができ、より没入感の強い宣伝効果を人々に与えることが出来る様になった。

 端的に言うと、現実世界に居ながらゲームの世界を体験できるということだ。しかし、実際に触れることは出来ず、あくまで視覚や聴覚、或いは嗅覚で体験することが、今の技術での精一杯だった。

 これにより爆発的に浸透していったのがWoFというゲームだ。

 街中の至る所に仮想化のプラットフォームが設けられており、WoFのゲーム内に存在するNPCやモンスターが都心の風景に現れたかのような、視覚的高揚感が若いものを中心に魅了していった。

 そんな東京セントラルシティの某日未明。都心部を支える電力の供給が一斉に落ち、煌びやかな街並みは星空のように点々とした光のみとなっていた。公共施設や一部の高層ビルなどには予備電源が備えられており、必要最低限の電気は辛うじて保たれてはいたようだが、それでも生活に支障が出ることは間違いない。

 こういった事例は過去にも何回かあった。都心部を襲う停電は、ハッカーや一部の過激派集団によって引き起こされることはあったものの、対策本部による防衛システムのアップデートによりその数を大きく減らしていった。

 仮に電力の供給がストップしてしまっても、警察や専門の業者による復旧技術も高まり、早期解決が見込まれていた。時間が掛かったとしても、夜明け前には東京に電気が戻ることだろう。

 だが問題はそこにはあらず、その隙に生じる事件や事故にあった。

 「説明などは求めるな。お前達はただ従ってればそれでいい。そうすりゃぁ命までは取らない」

 シンはイヅツとその上官と思われる人物と共に、普段とは違う都心の風景を駆けていた。彼らについていくにあたり、通常の移動に関してはWoFのキャラクター投影による身体能力が馴染んできたシン。

 その姿はさながら、ビル群の合間を巧みに飛び回るパルクールのようだった。電気の消えた街並みは、普段より暗さこそあれど、真っ暗というほど暗くはない。

 月明かりに照らされ、まるで銀河の中にいるかのような点々とした光が、彼らの道を照らす。

 そしてその光景の中に、もう一つ普段では見ることの出来ないものが広がっていた。

 それは、街を闊歩するWoFのモンスター達だった。

 「凄い・・・。こんなにも街にいたなんて・・・」

 「そうだよな、俺も初めて知った時は驚いたぜ。まさか平穏につまらねぇ日々を過ごしてた街に、こんなにも異世界ファンターが潜んでいたなんてよぉ」

 自分の身体ではないかのように軽い足取りと、見た目以上に力強く飛び跳ねることのできる跳躍力。建物の屋上から屋上へ飛び移り、警備ドローンを掴んで滞空しながら道路の上空を渡る。

 「よし、いたな・・・。おいお前ら、早速仕事だ。あそこにいるモンスターを殺さずに捕獲しろ。周りの取り巻きは殺しても構わねぇが、あいつだけは生捕だ。いいな?」

 「了解」

 「・・・・・?」

 突然止まった上官らしき人物が、地上の一角を指さす。その周辺には人の形を模した、自動で動き回りプレイヤーを襲うオートマタが数体、当てもなく彷徨っていた。

 その中の一体が、人間の服装を真似てかボロボロの衣服を着飾っている。どうやら彼らはあの一体にだけ用があるらしい。モンスターにどんな用があるのかなど、今のシンには全く想像もつかなかったが、今は大人しく言うことを聞き、敵勢力の懐に潜り込むため、与えられた指示を実行する。
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