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潜入指令
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彼との会話を終え、制御室を後にしたところで白獅の元に一通のメッセージが届く。作業に戻ったドウの邪魔にならぬよう、隣の部屋へ向かいながらメッセージを開く。
送信元は、東京の電力復旧へ向かった筈のシンからだった。
「シンから・・・?朱影や瑜那ではなく・・・?」
ボソッと呟いた白獅の言葉に、僅かに反応を示したドウ。まだ制御室を出る前の白獅を呼び止め、そのメッセージの内容について問う。
「東京のセントラルへ向かったという人達からですか?よかったら私にも教えて頂ければ、何か力になれるかもしれません」
白獅は少しだけ考える素振りを見せた。ドウを信じていない訳ではない。彼の言葉や表情、視線からは嘘や偽りを隠しているといったものは伺えなかったし、何なら東京のアジトにいたアサシンギルドのメンバーを助けてくれた恩人でもある。
「・・・そうだな、問題は山積みだ。手に負えることは分担し、少しずつ解決に向かうべきだろう」
歩みを戻した白獅は、先にシンからのメッセージを開き、ドウに共有してもいい内容かどうかを確認する。
しかし、そこには思った以上の困難に遭遇する彼らの現状が連ねられていた。
瑜那は負傷し意識不明。宵命は瑜那と共に車にて待機。電力の復旧へ向かったシンと朱影は、潜入するための通路である下水道を進行中に、モンスターの強襲に遭い分断。
その後、敵勢力の者と思われる人物に遭遇。叛逆の為の戦力として、兵力に加わってくれと話を持ちかけられたことが記してある。
「なるほど・・・。敵軍の内部に謀反の気配があると言うことか」
「しかし、何故その方はシンという方だけを?朱影さんも一緒に誘えば、戦力の増強になる筈ですが?」
「どうやらWoFのユーザーを集めているらしい。異世界へ行き来可能な者は、彼らだけだからな。俺達にもそんな能力があればな・・・」
何故WoFのユーザーにのみ、別々の世界を行き来することが出来るのかは不明だが、白獅やドウらがこの世界のこの時代に転移させられたのには、何か原因と理由がある筈。
その手掛かりはWoFのユーザーの中にあるのかもしれない。アサシンギルドも敵の組織も、同じ結論に至っていたらしく、相手はその組織力で瞬く間に成長している。
だが、そのやり方が良くなかったのだ。不満や不平を抱く者が組織内に現れれば、それは徐々に身体を蝕む病原菌のように、組織を内側から崩壊させていく要因になり得る。
二人の意見としては、これを利用しない手はない。というもので一致しており、シンにはそのまま敵地に潜入し内情を探ってもらいたいと考えていた。
内部で謀反の気配がある以上、相手の兵を捕らえ吐かせることも可能かもしれないが、それ以前に上の者達がそれを危惧していない筈もない。
口止めか、或いは何かしらの策を忍ばせている筈。できれば気づかれることなく、穏便に情報を集める為にも、こんなに上手い話はない。
「これは好都合だ。彼にはこのまま敵地に潜入してもらおうと考えている。ドウさん、貴方はどうだ?」
「私もそれで宜しいかと。ただ、そのシンという方にどんな危険が訪れる分かりません。万が一、彼を手放す結果になっても宜しいので?」
白獅らにとっても、WoFのユーザーは貴重なサンプルであることは変わりない。だが、それはシンだけではない。特別彼が、何か特出すべき能力や情報を持っている訳でもなければ、必要不可欠という訳でもない。
やや冷たい印象を受けるかもしれないが、白獅にとってはサンプルの一体に過ぎないのだ。
「そうなったらそれまでだろう。幸い、相手側にも彼と同じ境遇の者がいるようだ。最悪、その者らに手を貸し救出することで我々の手伝いをして貰えばいい。違うか?」
白獅の言葉に違和感を覚えるドウだったが、逆の立場であればそう考えるのも分からなくはないか。とにかく今は、ここで関係性を悪化させることに何のメリットもないので、話を合わせることにしたようだ。
「そうですね。一人の命に重きを置いている場合ではないでしょう。シンさんという方が掴んだチャンスを、今は活かすとしましょう」
白獅はシンに、その者と共に敵地に潜り込むよう伝える。どの道その者の話では、彼らのいる東京は既に包囲されている。単純に逃げるだけでも命懸けだというのなら、生存確率の高い潜入を進めるのが指揮官のような立場にある者として下せる、最善の決断であるだろう。
送信元は、東京の電力復旧へ向かった筈のシンからだった。
「シンから・・・?朱影や瑜那ではなく・・・?」
ボソッと呟いた白獅の言葉に、僅かに反応を示したドウ。まだ制御室を出る前の白獅を呼び止め、そのメッセージの内容について問う。
「東京のセントラルへ向かったという人達からですか?よかったら私にも教えて頂ければ、何か力になれるかもしれません」
白獅は少しだけ考える素振りを見せた。ドウを信じていない訳ではない。彼の言葉や表情、視線からは嘘や偽りを隠しているといったものは伺えなかったし、何なら東京のアジトにいたアサシンギルドのメンバーを助けてくれた恩人でもある。
「・・・そうだな、問題は山積みだ。手に負えることは分担し、少しずつ解決に向かうべきだろう」
歩みを戻した白獅は、先にシンからのメッセージを開き、ドウに共有してもいい内容かどうかを確認する。
しかし、そこには思った以上の困難に遭遇する彼らの現状が連ねられていた。
瑜那は負傷し意識不明。宵命は瑜那と共に車にて待機。電力の復旧へ向かったシンと朱影は、潜入するための通路である下水道を進行中に、モンスターの強襲に遭い分断。
その後、敵勢力の者と思われる人物に遭遇。叛逆の為の戦力として、兵力に加わってくれと話を持ちかけられたことが記してある。
「なるほど・・・。敵軍の内部に謀反の気配があると言うことか」
「しかし、何故その方はシンという方だけを?朱影さんも一緒に誘えば、戦力の増強になる筈ですが?」
「どうやらWoFのユーザーを集めているらしい。異世界へ行き来可能な者は、彼らだけだからな。俺達にもそんな能力があればな・・・」
何故WoFのユーザーにのみ、別々の世界を行き来することが出来るのかは不明だが、白獅やドウらがこの世界のこの時代に転移させられたのには、何か原因と理由がある筈。
その手掛かりはWoFのユーザーの中にあるのかもしれない。アサシンギルドも敵の組織も、同じ結論に至っていたらしく、相手はその組織力で瞬く間に成長している。
だが、そのやり方が良くなかったのだ。不満や不平を抱く者が組織内に現れれば、それは徐々に身体を蝕む病原菌のように、組織を内側から崩壊させていく要因になり得る。
二人の意見としては、これを利用しない手はない。というもので一致しており、シンにはそのまま敵地に潜入し内情を探ってもらいたいと考えていた。
内部で謀反の気配がある以上、相手の兵を捕らえ吐かせることも可能かもしれないが、それ以前に上の者達がそれを危惧していない筈もない。
口止めか、或いは何かしらの策を忍ばせている筈。できれば気づかれることなく、穏便に情報を集める為にも、こんなに上手い話はない。
「これは好都合だ。彼にはこのまま敵地に潜入してもらおうと考えている。ドウさん、貴方はどうだ?」
「私もそれで宜しいかと。ただ、そのシンという方にどんな危険が訪れる分かりません。万が一、彼を手放す結果になっても宜しいので?」
白獅らにとっても、WoFのユーザーは貴重なサンプルであることは変わりない。だが、それはシンだけではない。特別彼が、何か特出すべき能力や情報を持っている訳でもなければ、必要不可欠という訳でもない。
やや冷たい印象を受けるかもしれないが、白獅にとってはサンプルの一体に過ぎないのだ。
「そうなったらそれまでだろう。幸い、相手側にも彼と同じ境遇の者がいるようだ。最悪、その者らに手を貸し救出することで我々の手伝いをして貰えばいい。違うか?」
白獅の言葉に違和感を覚えるドウだったが、逆の立場であればそう考えるのも分からなくはないか。とにかく今は、ここで関係性を悪化させることに何のメリットもないので、話を合わせることにしたようだ。
「そうですね。一人の命に重きを置いている場合ではないでしょう。シンさんという方が掴んだチャンスを、今は活かすとしましょう」
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