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一見すれば凄まじい威力の投擲だと驚くところだが、それ以上にシンは槍が突き刺さったままであることに言葉を失った。
それは彼だけでなく、槍を投げた張本人である朱影も同じだった。全力で放ったはずの一撃が、鋼鉄の塊ならまだしも、肉の塊を貫通させることが出来なかったという事実が、カウンターのように彼のプライドを傷つけた。
「野郎・・・。何つぅ身体してやがんだよッ・・・!」
仕掛ける前に話し合っていた一気に攻め立てるという作戦が頭から抜けてしまったのか、動きの鈍る朱影を尻目にシンは発破をかけながら、自分に出来ることを遂行しようとする。
「手を止めている暇はないぞッ・・・!」
水路に翳る影をアサシンの力で遺憾なく利用し、水面から打ち上がった巨体を縛り上げる。隙だらけとなった身体目がけて、シンの標準装備である短剣を投げる。
アサルトスナイプ。朱影ほど破壊力のある投擲は出来ない。あの投擲で貫けない程の分厚い肉の壁を切り裂ける武器もない。だが、シンにはそれを補うトリッキーな技がある。
彼の放った短剣は、まるで貫通してしまうのかというほど、すんなりと肉の壁の中へと入っていく。仕組みは簡単だった。何も本当にその身体を貫通している訳ではなく、体表に張った影の中へと送り込み、体内に短剣を送り込んだのだった。
シンは大型のモンスターが、最初に二人へ攻撃を仕掛けてきた時、丸呑みにしようと大口を開けていたのを見逃していなかった。その僅かな一瞬で、出来るだけ口の中の奥底を見つめていたシン。
相手の観察は怠らない。それはシンがアサシンのクラスに就いた時に学んだ、戦闘の教訓だった。元よりアサシンというクラスは、正面を切ってぶつかり合う戦闘は向いていない。
そうなってしまった場合は、余程の事態でない限りは逃げるのが先決と言われている。それだけ他のクラスと比べ、近接戦闘に必要なステータスが劣っているということ。
投擲があるとはいえ、遠距離が得意という訳でもない。ゲームでいうところの弱点や有効部位、背後からのバックアタックやクリティカルを狙っていくのがアサシンの戦闘スタイル。
そして、身体の内側はどんな生物であれ鍛えることの出来ない部位であり、確実に致命打に繋がる強烈な一撃になる。筈だった。
しかし、目の前のモンスターは苦しみで悶えるものの、それ以上の目に見えたダメージは伺えなかった。そもそもモンスターの体力やダメージ量などは、目に見えるものではないが。
すかさず朱影も次から次へと槍を手に取り、投擲していくが最初に放った強烈な一撃ほど深くは突き刺さらず、大型のモンスターが暴れ回ることで抜け落ちるものや、逆に食い込んでいくものがある。
シンはそれを更に利用する。朱影の放つ槍に合わせ、モンスターの体表に忍ばせた影を移動させ、体内に引き摺り込んでいく。水中へ落ちていく槍は、別の影を利用し水中に送り込んだ影で回収する。
投げる物さえあれば、シンにも攻撃のチャンスが生まれる。朱影の生み出す槍は無尽蔵なのだろうかという疑問もあったが、それ以上にシンは目の前の敵をどう落とすかで必死だった。
「何だ、お前武器がねぇのか?」
「分からない。あっちで持っていた筈の物がほとんど使えないんだ・・・」
自身の付近に運んできた朱影の槍を手に取り、手を動かしながら会話を続ける。シンの攻撃チャンスは限られている。自分の武器を使えない以上、他の物で代用するしかなのだ。
だが、そんな状況も長くは続かなかった。すごい勢いで暴れ回るモンスターは、シンの影による拘束を振り解き、再び水中へと逃げ帰っていく。
と、その去り際にシンが杞憂していた通りの展開が起こる。大型のモンスターは潜る前に二人へ向けて、再度小型のモンスターを吐いてよこしたのだ。
「なッ・・・!?」
「クソッ!陸地に打ち上げられたら面倒だ。出来るだけここで撃ち落とすぞ!」
二人は攻撃の手を、大型のモンスターからまだ動き出す前の小型モンスターへ集中させる。その隙に大型のモンスターは、追撃を受けることなく水中へ身を潜めていった。
それは彼だけでなく、槍を投げた張本人である朱影も同じだった。全力で放ったはずの一撃が、鋼鉄の塊ならまだしも、肉の塊を貫通させることが出来なかったという事実が、カウンターのように彼のプライドを傷つけた。
「野郎・・・。何つぅ身体してやがんだよッ・・・!」
仕掛ける前に話し合っていた一気に攻め立てるという作戦が頭から抜けてしまったのか、動きの鈍る朱影を尻目にシンは発破をかけながら、自分に出来ることを遂行しようとする。
「手を止めている暇はないぞッ・・・!」
水路に翳る影をアサシンの力で遺憾なく利用し、水面から打ち上がった巨体を縛り上げる。隙だらけとなった身体目がけて、シンの標準装備である短剣を投げる。
アサルトスナイプ。朱影ほど破壊力のある投擲は出来ない。あの投擲で貫けない程の分厚い肉の壁を切り裂ける武器もない。だが、シンにはそれを補うトリッキーな技がある。
彼の放った短剣は、まるで貫通してしまうのかというほど、すんなりと肉の壁の中へと入っていく。仕組みは簡単だった。何も本当にその身体を貫通している訳ではなく、体表に張った影の中へと送り込み、体内に短剣を送り込んだのだった。
シンは大型のモンスターが、最初に二人へ攻撃を仕掛けてきた時、丸呑みにしようと大口を開けていたのを見逃していなかった。その僅かな一瞬で、出来るだけ口の中の奥底を見つめていたシン。
相手の観察は怠らない。それはシンがアサシンのクラスに就いた時に学んだ、戦闘の教訓だった。元よりアサシンというクラスは、正面を切ってぶつかり合う戦闘は向いていない。
そうなってしまった場合は、余程の事態でない限りは逃げるのが先決と言われている。それだけ他のクラスと比べ、近接戦闘に必要なステータスが劣っているということ。
投擲があるとはいえ、遠距離が得意という訳でもない。ゲームでいうところの弱点や有効部位、背後からのバックアタックやクリティカルを狙っていくのがアサシンの戦闘スタイル。
そして、身体の内側はどんな生物であれ鍛えることの出来ない部位であり、確実に致命打に繋がる強烈な一撃になる。筈だった。
しかし、目の前のモンスターは苦しみで悶えるものの、それ以上の目に見えたダメージは伺えなかった。そもそもモンスターの体力やダメージ量などは、目に見えるものではないが。
すかさず朱影も次から次へと槍を手に取り、投擲していくが最初に放った強烈な一撃ほど深くは突き刺さらず、大型のモンスターが暴れ回ることで抜け落ちるものや、逆に食い込んでいくものがある。
シンはそれを更に利用する。朱影の放つ槍に合わせ、モンスターの体表に忍ばせた影を移動させ、体内に引き摺り込んでいく。水中へ落ちていく槍は、別の影を利用し水中に送り込んだ影で回収する。
投げる物さえあれば、シンにも攻撃のチャンスが生まれる。朱影の生み出す槍は無尽蔵なのだろうかという疑問もあったが、それ以上にシンは目の前の敵をどう落とすかで必死だった。
「何だ、お前武器がねぇのか?」
「分からない。あっちで持っていた筈の物がほとんど使えないんだ・・・」
自身の付近に運んできた朱影の槍を手に取り、手を動かしながら会話を続ける。シンの攻撃チャンスは限られている。自分の武器を使えない以上、他の物で代用するしかなのだ。
だが、そんな状況も長くは続かなかった。すごい勢いで暴れ回るモンスターは、シンの影による拘束を振り解き、再び水中へと逃げ帰っていく。
と、その去り際にシンが杞憂していた通りの展開が起こる。大型のモンスターは潜る前に二人へ向けて、再度小型のモンスターを吐いてよこしたのだ。
「なッ・・・!?」
「クソッ!陸地に打ち上げられたら面倒だ。出来るだけここで撃ち落とすぞ!」
二人は攻撃の手を、大型のモンスターからまだ動き出す前の小型モンスターへ集中させる。その隙に大型のモンスターは、追撃を受けることなく水中へ身を潜めていった。
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