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技術力と未知なる存在
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建物の中でアジトの様子を伺おうとしている明庵。それを、息を呑みながら見つめる朱影ら三人。彼が一体どこまでこちらを見えているのか。見つけて何をしようというのか分からぬまま、身動きが取れずにいた。
明庵は遺留品のチェックを終えると、今度は自らのドローンを使って周囲の景色をスキャニングし始めた。天井から床まで、高速で点滅する光がゆっくりと降りてくる。
二人の少年がアイコンタクトを取り、何やら企んでいる。少し遠くに身を潜めている朱影に見えるように、僅かに手を振り注意を向けさせる。
それに気付いた朱影に、二人の少年の片割れで、大人しくしっかりしている方の瑜那ゆだが、手でジェスチャーをし何かを朱影へ伝えようとしている。
懐から取り出した投擲用のナイフをクルクルと回し、床に突き立てるようにゆっくり降ろす。そして彼が手を離すと、ナイフはまるで床に立つようにして、瑜那の手の支えもなく刃先を突き立てたままその場に固定される。
しかし、そのままでは明庵のドローンのスキャニングに映り込んでしまう。瑜那は試そうとしていたのだ。明庵がこちらの物体を認識し、追うことができるのかどうかを。
相手の目的も知らぬまま、わざわざ手掛かりを残すのは危険であり、彼らにとっても賭けであった。だがこのまま動けずにいるよりかは、いくらか目安になるのではないだろうか。
彼の操るドローンがどこまでの性能なのか。建物内に重なるように設置されているアジトをスキャンしても、既にこちらの存在が分かっているのか表情に一切出さない明庵。
それとも単純に見えていないだけなのだろうか。アサシンギルドのアジトは、白獅らの技術により現実の世界を生きる彼らに、その存在を見られぬようハッキング対策やアクセス制限がかけられている。
故に、これまでアサシンギルドの存在は街行く人々の目に触れることなく、ハッカー集団らによってその存在を知られることもなかった。
実際、彼らもそれがどのような技術によるものなのか、詳しく分かっている訳ではなかった。彼らが身につけたその防衛手段は、知性を持たないモンスターらを調べることで身につけた技術の一つだったのだ。
WoFの世界からやってきたモンスターらは、白獅らのように知性を持つこともなく現実世界の日常に潜んでいる。
シンを襲ったスケルトンも、衣服を纏い意図的に視覚化されるような行動を取るものもいた。
つまり、WoFからやってきたモンスターらは意識することなく、現実世界の者達に見えたり見えなかったりと切り替えることが可能なのだ。その技術が何の為にモンスター達に必要だったのかは分からない。
だが、奴らはそれを上手く利用し、シンやミアのように“見える者“を探していたのだ。彼らの存在を認知し、脅かす者を削除するように。
その技術を応用することで、白獅らも視覚化を切り替えることができるようになっていた。
異世界からシン達の暮らす現実世界へ転移してきた者達は、初めは謂わば透明人間のようにその世界の住人達に認知されることもなく、未知の世界へ放り出されていた。
声も姿も伝わらない。何も分からぬまま助けを求めようとしても、反応すら返してもらえない。突然転移してきたことで、パニックになる彼らを唯一認識できる存在。
それが、同じく異世界からやって来た者達という訳だ。モンスターらに襲われるか、ノイズのように何の目的があるのかさえ分からぬ輩に殺されるか、或いは白獅らのように同じ境遇の仲間を集める者達によって保護されるか。
シン達の知らぬところで、彼ら異世界からの来訪者達が辿る運命はそう多くはなかったのだ。
そして今まさに、モンスターらが持っていた技術を利用し手に入れた不可視化をスキャニング出来るかどうか。瑜那はそれを試そうとしていた。
朱影もそれを承諾し、床に立たせたナイフをそのまま明庵のドローンがスキャンする範囲に残し、再び物陰に身を潜めた。
ドローンが発する点滅する光が降り、床の方まで下がる。そして遂に、瑜那の残したナイフをその点滅が通り過ぎた。
すると、明庵は何かを見つけたように顔を動かした。一点にナイフの方を見つめたままゆっくりと歩み寄る。彼のドローンは、朱影らを認識出来ているのだろうか。
その結果を息を呑んで見守っていると、明庵はナイフのところで立ち止まり、ゆっくりと膝を折る。そして、瑜那の残したナイフに手を伸ばす。
唾液を飲み込む音が、周りに聞こえるかのような緊張感の中、明庵の手はナイフを透過した。だが彼は、そこで仕切りに何かを探るように手を動かしている。
触れることや見ることは出来ずとも、そこに何かあるのかも知れないというのが彼には分かっているのだろう。
明庵の用いる奇妙な機械は、謂わば現実世界の最先端をいくハッカー達の技術を用いたとしても、異世界からの来訪者を完璧に視認することは出来ないことが、これで証明された。
明庵は遺留品のチェックを終えると、今度は自らのドローンを使って周囲の景色をスキャニングし始めた。天井から床まで、高速で点滅する光がゆっくりと降りてくる。
二人の少年がアイコンタクトを取り、何やら企んでいる。少し遠くに身を潜めている朱影に見えるように、僅かに手を振り注意を向けさせる。
それに気付いた朱影に、二人の少年の片割れで、大人しくしっかりしている方の瑜那ゆだが、手でジェスチャーをし何かを朱影へ伝えようとしている。
懐から取り出した投擲用のナイフをクルクルと回し、床に突き立てるようにゆっくり降ろす。そして彼が手を離すと、ナイフはまるで床に立つようにして、瑜那の手の支えもなく刃先を突き立てたままその場に固定される。
しかし、そのままでは明庵のドローンのスキャニングに映り込んでしまう。瑜那は試そうとしていたのだ。明庵がこちらの物体を認識し、追うことができるのかどうかを。
相手の目的も知らぬまま、わざわざ手掛かりを残すのは危険であり、彼らにとっても賭けであった。だがこのまま動けずにいるよりかは、いくらか目安になるのではないだろうか。
彼の操るドローンがどこまでの性能なのか。建物内に重なるように設置されているアジトをスキャンしても、既にこちらの存在が分かっているのか表情に一切出さない明庵。
それとも単純に見えていないだけなのだろうか。アサシンギルドのアジトは、白獅らの技術により現実の世界を生きる彼らに、その存在を見られぬようハッキング対策やアクセス制限がかけられている。
故に、これまでアサシンギルドの存在は街行く人々の目に触れることなく、ハッカー集団らによってその存在を知られることもなかった。
実際、彼らもそれがどのような技術によるものなのか、詳しく分かっている訳ではなかった。彼らが身につけたその防衛手段は、知性を持たないモンスターらを調べることで身につけた技術の一つだったのだ。
WoFの世界からやってきたモンスターらは、白獅らのように知性を持つこともなく現実世界の日常に潜んでいる。
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つまり、WoFからやってきたモンスターらは意識することなく、現実世界の者達に見えたり見えなかったりと切り替えることが可能なのだ。その技術が何の為にモンスター達に必要だったのかは分からない。
だが、奴らはそれを上手く利用し、シンやミアのように“見える者“を探していたのだ。彼らの存在を認知し、脅かす者を削除するように。
その技術を応用することで、白獅らも視覚化を切り替えることができるようになっていた。
異世界からシン達の暮らす現実世界へ転移してきた者達は、初めは謂わば透明人間のようにその世界の住人達に認知されることもなく、未知の世界へ放り出されていた。
声も姿も伝わらない。何も分からぬまま助けを求めようとしても、反応すら返してもらえない。突然転移してきたことで、パニックになる彼らを唯一認識できる存在。
それが、同じく異世界からやって来た者達という訳だ。モンスターらに襲われるか、ノイズのように何の目的があるのかさえ分からぬ輩に殺されるか、或いは白獅らのように同じ境遇の仲間を集める者達によって保護されるか。
シン達の知らぬところで、彼ら異世界からの来訪者達が辿る運命はそう多くはなかったのだ。
そして今まさに、モンスターらが持っていた技術を利用し手に入れた不可視化をスキャニング出来るかどうか。瑜那はそれを試そうとしていた。
朱影もそれを承諾し、床に立たせたナイフをそのまま明庵のドローンがスキャンする範囲に残し、再び物陰に身を潜めた。
ドローンが発する点滅する光が降り、床の方まで下がる。そして遂に、瑜那の残したナイフをその点滅が通り過ぎた。
すると、明庵は何かを見つけたように顔を動かした。一点にナイフの方を見つめたままゆっくりと歩み寄る。彼のドローンは、朱影らを認識出来ているのだろうか。
その結果を息を呑んで見守っていると、明庵はナイフのところで立ち止まり、ゆっくりと膝を折る。そして、瑜那の残したナイフに手を伸ばす。
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触れることや見ることは出来ずとも、そこに何かあるのかも知れないというのが彼には分かっているのだろう。
明庵の用いる奇妙な機械は、謂わば現実世界の最先端をいくハッカー達の技術を用いたとしても、異世界からの来訪者を完璧に視認することは出来ないことが、これで証明された。
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