World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
上 下
654 / 1,646

冥府の使い

しおりを挟む
 転移する者達のようにはっきりと見える訳ではない。だが、確かにそこにこの世の物とは別の何かがあるような違和感を感じるのだ。

 彼の意識は、WoFというVR MMOからその違和感へと移り、何とかしてその正体を突き止めようと使える伝手をふんだんに使い、明庵の感じる気配を探知するシステムが内蔵された、対象をホログラフィーで表示可能なドローンを独自に入手。

 しかし、それはあくまで明庵が一人で決断したことであり、誰にも相談することなく、あまつさえ捕まえるべき対象のハッカーとまで繋がりを持ってしまう。

 捕らえたハッカーや、出所し既にその筋から足を洗った技術者らから知識と技術を持ち寄り、警察や同僚のエージェント達、そして親代わりとなって育ててくれた父の後輩にもそのことを明かさぬまま、捜査という定で違和感の正体を探っていく。

 だがそれが、異世界から来た者達を刺激してしまう結果になる。明庵らを襲ったのがアサシンギルドのメンバーであるかは分からないが、自分達を調べようとする未知の存在を危惧し、攻撃を仕掛けたのだ。

 彼らの攻撃は直接的なものではなく、事故を装ったものとして明庵とその周囲の者達を巻き込んだ。当然、他の者達からすればただの事故か、或いはこれまで通りハッカー集団による犯行かのように思えたが、明庵の勘とドローンは未知の違和感を感じ取った。

 明らかに明庵を標的とする事件が増える中で、彼を引き取り育ててくれた父の後輩が、その父と同じように殉職するという形で明庵の元を旅立っていってしまった。

 明庵は同じ組織内からも、妙な行動や言動からサイバー事件で心を壊されてしまった者として浮いた存在になり、不気味がって誰も彼を助ける者はいなくなってしまったのだ。

 孤立は彼をより狂気じみた調査へと駆り立てる。こうして出雲明庵は、警察組織からもエージェント達からも、事件や災いを運んでくる“冥府の使徒“と呼ばれるようになる。

 そしてその冥府の使いは今、シンやミア達のようなWoFの異変に巻き込まれた現象と、自身が災いを呼ぶ存在の罵られるようになった原因となる異変の正体を探り、アサシンギルドの存在を感じ取っていた。

 「ここにも気配がある・・・。やはりこれも、ただのハッキングによる事件じゃない・・・」

 明庵は異変を感じる辺りの壁や床を調べる。今までに手掛かりが無かったからといって、ここにも無いとは限らない。調査に手を抜かない彼は、まず物的証拠や痕跡を探す。

 その間、彼の専用機であるドローンを建物内を調査・巡回するアンドロイドに繋ぎ、これまでの調査記録と現場で見つかった細かな物品の一つ一つまで、データをコピーする。

 事件現場となった建物内部を巡回する災害用アンドロイドの情報は、他の巡回するアンドロイドやドローンと共有している為、全てのマシーンにアクセスする必要はない。

 「・・・遺留品の中にそれらしい物はないか。まぁ、期待はしちゃいないが・・・」

 明庵はドローンにコードを打ち込み、ホログラムで表示される遺留品データを、指で次々にスライドしていく。期待はしてなかったが、これも調査の一環。事件性があれば、警察の手を借りられる。

 彼にとっては手を借りるというよりも、面倒ごとを押し付ける口実を得られる。一刻も早く遺留品から何か手がかりとなるものを探し、仕事を押し付けたい。そして明庵は異変に集中したかったのだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...