649 / 1,646
襲撃者ノイズ
しおりを挟む
しかし、何故少年達は丁度いいタイミングでアジトに踏み込んだのだろう。周囲の警戒をさせつつ、待機するようベルシャーが指示を出していた筈。
アジトの内部から何かが外へ出ていったとでもいうのだろうか。中からは見えない何かを察知し、突入へ踏み込んだのか。その真意を少年達に尋ねる。
「お前ら・・・何でアジトに入ってきた?待機の指示を出してた筈だが・・・」
三人はアジトの内部を巡り、痕跡や誰かいないかを探る。少年達に投げかけた問いからは、ベルシャーの想像していなかった意外な返答が返ってくる。
「サスキの姉さんから連絡がありまして・・・」
「おい、オメェら・・・まぁいいか。何だってお嬢から連絡が?俺にはなかったぞ」
彼らの会話の中で出てきた“サスキ“と呼ばれる人物は、シンを初めてアジトへ連れてきたパワードスーツを身に纏った女性のことだった。他にもベルシャーがアジトで白獅と会話を終えた後、部屋の入り口で彼に声をかけた人物でもある。
「最初にアジト付近で気配を探知できたのが、僕らだったようですよ?」
「それにベルシャーさん、戦闘中だったし・・・。気づかなかったんじゃないスか?」
「はぁ~ん・・・なるほど。で?内容は。さっきの奴のことか?」
「ええ、まぁ・・・。内容はそんなところです」
「アジトが襲撃されたってんで、何人かのメンバーさん達が迎え撃ったらしいんスが、これがえらい強敵だったみたいで・・・」
直接手合わせをしたベルシャーには、それがよく分かった。決して手を抜いていた訳ではない。意表を突かれたとはいえ、できる限りの全力で迎撃に当たったつもりだった。
しかしあの不気味な男は、息一つ乱すことなく尋常ならざる動きでベルシャーを翻弄し、窮地に追いやった。二人の少年達が入ってこなければ、もっと危険な状況になっていたかもしれない。
その点に関しては、ベルシャーは少年達に感謝していた。だが、それを言葉にすることはなかった。
「だろうな・・・。実際、とんでもねぇ奴だったし」
「それで、人員の命を最優先にして別のアジトへ避難したらしいっスよ?」
「アジトの転送装置にアクセスすれば、あっという間ですからね!それにアクセスキーの認証は僕ら以外にはできませんし」
彼らの会話から、アサシンギルドのアジトは幾つか存在するようだった。それも、移動手段に転移装置なるものがあるようなので、逃げるには事欠かないだろう。
セキュリティーも万全なようで、その装置にアクセスするには、彼らしか知り得ないコードが必要となる。故に、部外者に装置を使われたとしても彼らがどこへ転移していったのかを追うことは出来ない。
「襲撃されてんのに、よくそんな判断ができたもんだな。白獅の指示か?」
「ですね、サスキさんもそのように言ってましたから」
「んで、避難してる間みんなでアイツを相手にしてたらしいんスけど、倒すには至らず・・・」
「あぁ・・・。あの野郎、だいぶイカれてやがったからな」
「あっ、それとサスキさんが妙なことを言ってました」
「ん?」
口調の穏やかな少年が、ベルシャーに気になることを言う。それはベルシャー自身も密かに感じていたことであり、何故アジトの場所がバレ、不意を打たれたのかに繋がることでもあった。
「襲撃を仕掛けて来たあの人物なんですが・・・。存在が不確かだとか・・・」
「不確か?なんだそりゃぁ・・・?」
「分かりません・・・。ただ、複数人で迎え撃つ中、その者は確実に当たるであろう攻撃が当たらなかったそうなんです。その時身体がノイズ走っていたんだとか・・・」
「ノイズ・・・」
ベルシャーとの戦いでは見せることはなかったが、アジトへ襲撃を仕掛けた男は、アサシンギルドのメンバー達との混戦の中で、細かなブロックノイズが走っていたのだという。
「それで、仮にではありますがその襲撃者のことを“ノイズ“と呼ぶことにしたそうです」
その者の特徴から、白獅が“ノイズ“と命名し、今後の動向を追うということになった。
今回は単独であったようだが、必ずしも一人だとは限らない。何処かの組織に属し、アサシンギルドのことを探っていたとも考えられる。ただ、彼らを襲おうとしている者の存在と、その外見を知ることができたのは、大きな収穫と言えるだろう。
アジトの内部から何かが外へ出ていったとでもいうのだろうか。中からは見えない何かを察知し、突入へ踏み込んだのか。その真意を少年達に尋ねる。
「お前ら・・・何でアジトに入ってきた?待機の指示を出してた筈だが・・・」
三人はアジトの内部を巡り、痕跡や誰かいないかを探る。少年達に投げかけた問いからは、ベルシャーの想像していなかった意外な返答が返ってくる。
「サスキの姉さんから連絡がありまして・・・」
「おい、オメェら・・・まぁいいか。何だってお嬢から連絡が?俺にはなかったぞ」
彼らの会話の中で出てきた“サスキ“と呼ばれる人物は、シンを初めてアジトへ連れてきたパワードスーツを身に纏った女性のことだった。他にもベルシャーがアジトで白獅と会話を終えた後、部屋の入り口で彼に声をかけた人物でもある。
「最初にアジト付近で気配を探知できたのが、僕らだったようですよ?」
「それにベルシャーさん、戦闘中だったし・・・。気づかなかったんじゃないスか?」
「はぁ~ん・・・なるほど。で?内容は。さっきの奴のことか?」
「ええ、まぁ・・・。内容はそんなところです」
「アジトが襲撃されたってんで、何人かのメンバーさん達が迎え撃ったらしいんスが、これがえらい強敵だったみたいで・・・」
直接手合わせをしたベルシャーには、それがよく分かった。決して手を抜いていた訳ではない。意表を突かれたとはいえ、できる限りの全力で迎撃に当たったつもりだった。
しかしあの不気味な男は、息一つ乱すことなく尋常ならざる動きでベルシャーを翻弄し、窮地に追いやった。二人の少年達が入ってこなければ、もっと危険な状況になっていたかもしれない。
その点に関しては、ベルシャーは少年達に感謝していた。だが、それを言葉にすることはなかった。
「だろうな・・・。実際、とんでもねぇ奴だったし」
「それで、人員の命を最優先にして別のアジトへ避難したらしいっスよ?」
「アジトの転送装置にアクセスすれば、あっという間ですからね!それにアクセスキーの認証は僕ら以外にはできませんし」
彼らの会話から、アサシンギルドのアジトは幾つか存在するようだった。それも、移動手段に転移装置なるものがあるようなので、逃げるには事欠かないだろう。
セキュリティーも万全なようで、その装置にアクセスするには、彼らしか知り得ないコードが必要となる。故に、部外者に装置を使われたとしても彼らがどこへ転移していったのかを追うことは出来ない。
「襲撃されてんのに、よくそんな判断ができたもんだな。白獅の指示か?」
「ですね、サスキさんもそのように言ってましたから」
「んで、避難してる間みんなでアイツを相手にしてたらしいんスけど、倒すには至らず・・・」
「あぁ・・・。あの野郎、だいぶイカれてやがったからな」
「あっ、それとサスキさんが妙なことを言ってました」
「ん?」
口調の穏やかな少年が、ベルシャーに気になることを言う。それはベルシャー自身も密かに感じていたことであり、何故アジトの場所がバレ、不意を打たれたのかに繋がることでもあった。
「襲撃を仕掛けて来たあの人物なんですが・・・。存在が不確かだとか・・・」
「不確か?なんだそりゃぁ・・・?」
「分かりません・・・。ただ、複数人で迎え撃つ中、その者は確実に当たるであろう攻撃が当たらなかったそうなんです。その時身体がノイズ走っていたんだとか・・・」
「ノイズ・・・」
ベルシャーとの戦いでは見せることはなかったが、アジトへ襲撃を仕掛けた男は、アサシンギルドのメンバー達との混戦の中で、細かなブロックノイズが走っていたのだという。
「それで、仮にではありますがその襲撃者のことを“ノイズ“と呼ぶことにしたそうです」
その者の特徴から、白獅が“ノイズ“と命名し、今後の動向を追うということになった。
今回は単独であったようだが、必ずしも一人だとは限らない。何処かの組織に属し、アサシンギルドのことを探っていたとも考えられる。ただ、彼らを襲おうとしている者の存在と、その外見を知ることができたのは、大きな収穫と言えるだろう。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる
朝山みどり
ファンタジー
冤罪で辺境に追放された元聖女。のんびりまったり平和に暮らしていたが、過去が彼女の生活を壊そうとしてきた。
彼女を慕う青年はこっそり彼女を守り続ける。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる