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報告と再会
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シー・ギャングの元を離れたシンは、ダラーヒムに見送られながら宴の場を後にした。街は未だに賑やかで、まるで繁華街のような煌びやかな雰囲気と光に包まれている。
他国からも多くの人が押し寄せるイベント事。この時期になると店は時間帯を変え、漁師達は仕事を休みにする。街は眠らなくなるのだという。
シンが街へと消えていくのを静かに見送っているダラーヒム。だが、彼はシンとは交流がない筈。何故街にその姿を消して行くまで、その場に立ち止まり見送っているのか。
「・・・えぇ、何事もなく全員辿り着きました。・・・分かりません。ですが、何者かによって神獣リヴァイアサンの弱体化が謀られたのではないかと・・・。いえ、そのような者がいたようには・・・。それに、彼らがやってのけたようには思えません。・・・はい、分かりました」
ダラーヒムは虚な目をしながら、何者かと話しているようだった。しかし、彼の周りに怪しげな人影など見当たらない。まるで彼にしか見えていないような、空想上の人物に話しかけるかのように、感情もなく淡々と言葉を連ねている。
聞かれては都合の悪いことなのだろうか。小声で周りにいる者達に聞こえぬよう、独り言のようにぶつぶつと報告をしているようだった。
相手側の声は周りには一切聞こえておらず、側から見ても何も不自然には見えていない。何かを思い出しているのだろうくらいにしか見えない。
あまり長くはない報告を終えると、彼の目には再び光が戻り、いつも通りのダラーヒムへとまるで人格が変わったかのように戻る。意識を失っていたのか周囲を見渡し、自分が何をしていたのかを思い出そうとする。
だが、彼の中にあるのはシンを見送ったところまでの記憶だけで、それ以降の独り言を言っていた時の記憶はないようだ。
我に帰ったダラーヒムは、特に気にする素振りもなくキングの元へと戻って行った。
シンが街を歩いていると、意外な人物から声をかけられた。彼とは関わり合いもあったものの、そこまで友好的な関係ではない。だが、シンの方よりも相手側の方が特に彼に対し、恩を感じていた。
「お?アンタは確か、シンじゃないか!」
店の中から出てきた男が、シンを呼び止めるように後ろから声をかける。聞き覚えのある声に振り返ると、そこには共にレースの終盤で戦闘争いを繰り広げたライバルの一人、マクシムが立っていた。
「エイヴリー海賊団のところの。確か名前は・・・」
「マクシムだ。レースん時は随分と世話になったな」
男の言葉に対し、頭を傾げるシン。彼にはそこまで、マクシムを世話した覚えはなかった。それよりも印象深いのは、レース終盤でキングを止めるために共闘しようと声をかけられたことくらいだった。
「助かったぜ。あん時アンタに拾われなかったら、今頃俺はここにはいなかったからな・・・」
「・・・・・?」
「おいおい、忘れちまったのか?レイド戦の時に、俺がどでかい魔物から振り落とされたのを助けてくれたじゃねぇか!」
そこで漸く彼の言っていることを理解したシン。ミアの提案により、リヴァイアサンから落ちてくるマクシムを救出し、恩を着せようというとてもじゃないが本人には言えない事情があったことを隠しながら、シンは話を合わせた。
「あ・・・あぁ、そういえばそんな事も」
「船長からも、よろしく伝えておいてくれって言われてるんだ。そんなに大したことは出来ねぇかも知れないけどよ、何か力になれることがあったら言ってくれよ」
ミアの計画通り、エイヴリー海賊団のマクシムに恩を着せることには成功していたようだ。しかし、シン達もこの街に長居するつもりはない。また別の場所で起きているであろう“異変“について探さなければならない。
かといって、それを彼らに相談する事もできない。そもそも彼らに、異変を認知することが出来るかさえ分からない。
あくまで異変に感じているのは、WoFのゲームをプレイしていたシン達の目線でしかない。本来起こりうるイベントが、全く別のものに変わっていたり、推奨レベルでは到底攻略不可能なモンスターが現れたりと、明らかにクリアさせる気のない難易度になっている。
外の世界からやって来た者達にすれば異常な出来事かも知れないが、ここで生きている者達にすれば、運の悪い巡りあわせ程度にしかならないのかも知れない。
他国からも多くの人が押し寄せるイベント事。この時期になると店は時間帯を変え、漁師達は仕事を休みにする。街は眠らなくなるのだという。
シンが街へと消えていくのを静かに見送っているダラーヒム。だが、彼はシンとは交流がない筈。何故街にその姿を消して行くまで、その場に立ち止まり見送っているのか。
「・・・えぇ、何事もなく全員辿り着きました。・・・分かりません。ですが、何者かによって神獣リヴァイアサンの弱体化が謀られたのではないかと・・・。いえ、そのような者がいたようには・・・。それに、彼らがやってのけたようには思えません。・・・はい、分かりました」
ダラーヒムは虚な目をしながら、何者かと話しているようだった。しかし、彼の周りに怪しげな人影など見当たらない。まるで彼にしか見えていないような、空想上の人物に話しかけるかのように、感情もなく淡々と言葉を連ねている。
聞かれては都合の悪いことなのだろうか。小声で周りにいる者達に聞こえぬよう、独り言のようにぶつぶつと報告をしているようだった。
相手側の声は周りには一切聞こえておらず、側から見ても何も不自然には見えていない。何かを思い出しているのだろうくらいにしか見えない。
あまり長くはない報告を終えると、彼の目には再び光が戻り、いつも通りのダラーヒムへとまるで人格が変わったかのように戻る。意識を失っていたのか周囲を見渡し、自分が何をしていたのかを思い出そうとする。
だが、彼の中にあるのはシンを見送ったところまでの記憶だけで、それ以降の独り言を言っていた時の記憶はないようだ。
我に帰ったダラーヒムは、特に気にする素振りもなくキングの元へと戻って行った。
シンが街を歩いていると、意外な人物から声をかけられた。彼とは関わり合いもあったものの、そこまで友好的な関係ではない。だが、シンの方よりも相手側の方が特に彼に対し、恩を感じていた。
「お?アンタは確か、シンじゃないか!」
店の中から出てきた男が、シンを呼び止めるように後ろから声をかける。聞き覚えのある声に振り返ると、そこには共にレースの終盤で戦闘争いを繰り広げたライバルの一人、マクシムが立っていた。
「エイヴリー海賊団のところの。確か名前は・・・」
「マクシムだ。レースん時は随分と世話になったな」
男の言葉に対し、頭を傾げるシン。彼にはそこまで、マクシムを世話した覚えはなかった。それよりも印象深いのは、レース終盤でキングを止めるために共闘しようと声をかけられたことくらいだった。
「助かったぜ。あん時アンタに拾われなかったら、今頃俺はここにはいなかったからな・・・」
「・・・・・?」
「おいおい、忘れちまったのか?レイド戦の時に、俺がどでかい魔物から振り落とされたのを助けてくれたじゃねぇか!」
そこで漸く彼の言っていることを理解したシン。ミアの提案により、リヴァイアサンから落ちてくるマクシムを救出し、恩を着せようというとてもじゃないが本人には言えない事情があったことを隠しながら、シンは話を合わせた。
「あ・・・あぁ、そういえばそんな事も」
「船長からも、よろしく伝えておいてくれって言われてるんだ。そんなに大したことは出来ねぇかも知れないけどよ、何か力になれることがあったら言ってくれよ」
ミアの計画通り、エイヴリー海賊団のマクシムに恩を着せることには成功していたようだ。しかし、シン達もこの街に長居するつもりはない。また別の場所で起きているであろう“異変“について探さなければならない。
かといって、それを彼らに相談する事もできない。そもそも彼らに、異変を認知することが出来るかさえ分からない。
あくまで異変に感じているのは、WoFのゲームをプレイしていたシン達の目線でしかない。本来起こりうるイベントが、全く別のものに変わっていたり、推奨レベルでは到底攻略不可能なモンスターが現れたりと、明らかにクリアさせる気のない難易度になっている。
外の世界からやって来た者達にすれば異常な出来事かも知れないが、ここで生きている者達にすれば、運の悪い巡りあわせ程度にしかならないのかも知れない。
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