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第二陣の到着
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騎乗する彼女にエイヴリーの放った砲弾が近づくと、僅かにシャーロットの視線が冷たく黒光りした球体に向けられる。しかし、如何に魔法に愛されているシャーロットであろうと、その正確な狙いから逃れる術はなかったのだ。
跳躍をしたのはあくまで跨っている馬による力。彼女の意思でそれを捻じ曲げることなど出来ない。
シャーロットはまるで、自分の前に聳え立つ壁に阻まれてしまう運命を受け入れるように、どこか落ち着いた表情をしている。危機せまる状況下において、何故そんな余裕があるのかは定かではなないが、何か考えがあるのだろうか。
だが、砲弾はそのままシャーロットに命中し、彼女とその愛馬を打ち砕いてしまう。彼女の作り出した氷像と同様に、粉々になった身体は周囲へ飛散し、結晶となってしまう。
「当たった・・・!」
「いや、あれは・・・」
エイヴリーの砲撃は見事に命中したが、それは人に命中した反応にしてはあまりにも異質なもの。血が一滴も見られなければ、そもそも粉々に砕けること自体がおかしいのだ。
狐に化かされたかのような景色に、エイヴリーは本物のシャーロットに繋がる手掛かりはないかと目を凝らす。
すると、彼女の身体が飛散した場所よりも手前に、景色にヒビの入ったような僅かな変化がみられた。よく観察すると、砲弾が氷を突き破ったような跡も見られる。
「あの女狐・・・。氷で薄い鏡を作ってやがった。それも一枚や二枚じゃぁねぇ・・・。いろんな方向から自分が見られるように細工してやがったんだ」
馬に乗り跳躍したシャーロットの周りには、彼らの気付かぬ内に紙のように薄い氷の膜が、様々な角度で設置されていたのだ。本体の彼女はそこにはおらず、エイヴリーが撃ち抜いたのは反射により映し出された彼女の虚像に過ぎなかったのだ。
それでは一体、虚像を作り出していた本体のシャーロットはどこにいたのか。周囲の視線を上空に集めている間、シャーロットは倒れた大木の上を駆け抜けていた。
シャーロットは既に海岸に到着しており、後はゴールテープを切るのみという状態だった。エイヴリーの戦艦の方へと振り向いた彼女は、口角を上げて勝利を確信した表情で笑う。
「もう少し、女というものを学んだ方がいいのではないか?エイヴリー。彩のない世界では、知り得ぬ景色もあろう」
「一杯食わされたか・・・。まさかここまで接戦になるとは、思いもしなかったぞ、シャーロット。だが、次はこうはいかん」
四着目にゴールへ辿り着いたのは、アイスベリーこと氷の女王、シャーロット・デ・ベリーで確定した。
彼女は単騎でのレース参戦だったので、ここで総合得点が計算される。道中の島で入手した財宝やアイテム。倒してきたモンスターと海賊の数。そして、レイド戦における貢献度と、到着順位がポイントとして換算される。
彼らが参加するこのレース、フォリーキャナルレース史上、単騎での優勝は片手で数えられるくらいの記録しか残っていない。それも、レースのルールは周期的に変更されており、その記録の全てが単純な到着順位によるものだった。
つまり、今回のような団体での参加がメインとなる総合点で順位を決めるルールでは、優勝した者はいないのだ。シャーロット自身、優勝が不可能であることは分かっていた。
それでも参加したのは、恐らくどうしても欲しかった何かがあったのだろう。そしてゴールした彼女の満足そうな表情から、それは手に入ったとみていいだろう。
シャーロットのゴールに続こうと、速度を上げたジャウカーンが、どさくさに紛れるようにして直進する。彼が離れることで、砲台に伝わる熱は徐々に冷めていったが、それでも素手で触るのはまだ不可能だった。
「小僧も、調子に乗りよってからに・・・!」
「いいじゃないですかぁ~、エイヴリーの“旦那“!俺が一人ゴールしたところで、順位は大きく変わらんでしょ」
エイヴリーはシャーロットを狙ったその手で、旧時代の砲台を動かし角度をつけると、問答無用で一発の砲弾を彼に向けて撃ち放った。
「お前に先を越されたってことが、癇に障るってんだよッ・・・!」
砲弾はジャウカーンの船に命中し、大きな穴を開ける。小型船はバランスを崩しながら、黒々とした煙をあげる。
「あらら・・・。俺の時はえらく冷静じゃないの・・・」
その一撃が致命打になったのか、アラートがなる中でジャウカーンは何とかして海岸へと船を走らせる。如何にも危険な煙をあげる彼の船を見て、海岸に集まっていた観客は遠くへと非難を開始する。
「どいてどいて~!爆発しちゃうよぉ~!」
既にブレーキ機能が停止してしまっているのだろうか。速度を落とすことなく海岸へ突っ込んでいくジャウカーンの小型船。海面に残るシャーロットの氷を溶かし、滑り込むようにゴールテープを切って海岸へ打ち上がる。
跳躍をしたのはあくまで跨っている馬による力。彼女の意思でそれを捻じ曲げることなど出来ない。
シャーロットはまるで、自分の前に聳え立つ壁に阻まれてしまう運命を受け入れるように、どこか落ち着いた表情をしている。危機せまる状況下において、何故そんな余裕があるのかは定かではなないが、何か考えがあるのだろうか。
だが、砲弾はそのままシャーロットに命中し、彼女とその愛馬を打ち砕いてしまう。彼女の作り出した氷像と同様に、粉々になった身体は周囲へ飛散し、結晶となってしまう。
「当たった・・・!」
「いや、あれは・・・」
エイヴリーの砲撃は見事に命中したが、それは人に命中した反応にしてはあまりにも異質なもの。血が一滴も見られなければ、そもそも粉々に砕けること自体がおかしいのだ。
狐に化かされたかのような景色に、エイヴリーは本物のシャーロットに繋がる手掛かりはないかと目を凝らす。
すると、彼女の身体が飛散した場所よりも手前に、景色にヒビの入ったような僅かな変化がみられた。よく観察すると、砲弾が氷を突き破ったような跡も見られる。
「あの女狐・・・。氷で薄い鏡を作ってやがった。それも一枚や二枚じゃぁねぇ・・・。いろんな方向から自分が見られるように細工してやがったんだ」
馬に乗り跳躍したシャーロットの周りには、彼らの気付かぬ内に紙のように薄い氷の膜が、様々な角度で設置されていたのだ。本体の彼女はそこにはおらず、エイヴリーが撃ち抜いたのは反射により映し出された彼女の虚像に過ぎなかったのだ。
それでは一体、虚像を作り出していた本体のシャーロットはどこにいたのか。周囲の視線を上空に集めている間、シャーロットは倒れた大木の上を駆け抜けていた。
シャーロットは既に海岸に到着しており、後はゴールテープを切るのみという状態だった。エイヴリーの戦艦の方へと振り向いた彼女は、口角を上げて勝利を確信した表情で笑う。
「もう少し、女というものを学んだ方がいいのではないか?エイヴリー。彩のない世界では、知り得ぬ景色もあろう」
「一杯食わされたか・・・。まさかここまで接戦になるとは、思いもしなかったぞ、シャーロット。だが、次はこうはいかん」
四着目にゴールへ辿り着いたのは、アイスベリーこと氷の女王、シャーロット・デ・ベリーで確定した。
彼女は単騎でのレース参戦だったので、ここで総合得点が計算される。道中の島で入手した財宝やアイテム。倒してきたモンスターと海賊の数。そして、レイド戦における貢献度と、到着順位がポイントとして換算される。
彼らが参加するこのレース、フォリーキャナルレース史上、単騎での優勝は片手で数えられるくらいの記録しか残っていない。それも、レースのルールは周期的に変更されており、その記録の全てが単純な到着順位によるものだった。
つまり、今回のような団体での参加がメインとなる総合点で順位を決めるルールでは、優勝した者はいないのだ。シャーロット自身、優勝が不可能であることは分かっていた。
それでも参加したのは、恐らくどうしても欲しかった何かがあったのだろう。そしてゴールした彼女の満足そうな表情から、それは手に入ったとみていいだろう。
シャーロットのゴールに続こうと、速度を上げたジャウカーンが、どさくさに紛れるようにして直進する。彼が離れることで、砲台に伝わる熱は徐々に冷めていったが、それでも素手で触るのはまだ不可能だった。
「小僧も、調子に乗りよってからに・・・!」
「いいじゃないですかぁ~、エイヴリーの“旦那“!俺が一人ゴールしたところで、順位は大きく変わらんでしょ」
エイヴリーはシャーロットを狙ったその手で、旧時代の砲台を動かし角度をつけると、問答無用で一発の砲弾を彼に向けて撃ち放った。
「お前に先を越されたってことが、癇に障るってんだよッ・・・!」
砲弾はジャウカーンの船に命中し、大きな穴を開ける。小型船はバランスを崩しながら、黒々とした煙をあげる。
「あらら・・・。俺の時はえらく冷静じゃないの・・・」
その一撃が致命打になったのか、アラートがなる中でジャウカーンは何とかして海岸へと船を走らせる。如何にも危険な煙をあげる彼の船を見て、海岸に集まっていた観客は遠くへと非難を開始する。
「どいてどいて~!爆発しちゃうよぉ~!」
既にブレーキ機能が停止してしまっているのだろうか。速度を落とすことなく海岸へ突っ込んでいくジャウカーンの小型船。海面に残るシャーロットの氷を溶かし、滑り込むようにゴールテープを切って海岸へ打ち上がる。
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