World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
上 下
617 / 1,646

到着順位

しおりを挟む
 シンよりも周りの者達の方が、余程当人らしい反応を見せる。それはキングやマクシムも例外ではない。しかし、悔しがるマクシムとは違い、キングは全く逆の反応を示していた。

 彼は目を見開き、驚きの眼差しでシンの方を見ると、その後彼は大きく笑った。暫くした後、彼は疲れたように大人しくなる。自分の感は間違っていなかったのだと言わんばかりの表情を浮かべ、再度シンという男を眺める。

 「やっぱりこいつぁ本物だなぁ。まぐれで勝てるようなレースじゃぁないんよ。聖都の騒ぎに関与してんのは間違いなさそうやねぇ~・・・」

 歓声の中で、誰にも聞かれぬような小さな声でそっと呟く。キングのギャングとしての生業の妨げになっていたシュトラール。まともに彼らがぶつかり合えば、決してどちらの勢力も無事では済まないような力関係だった。

 それが彼の知らぬところで、呆気なく終わりを告げた。当然、彼は何が起きたのか早急に部下達に調べさせた。彼らが手に入れた情報には、対立していたルーフェン・ヴォルグのメンバーと、その首領であるアーテムの師、朝孝の関与が分かった。

 しかし、彼らだけでシュトラールの圧政から聖都を解放できるのなら、とうの昔に実行させていてもおかしくはない。街からは毒が検出された。それにシュトラールが他国とのやり取りの中で、変わった報酬を要求していたことも分かった。

 様々な要因と理由で、聖都の騒動は仕組まれていたのだろう。キングが独自のルートで仕入れた情報の中に、興味深いものがあった。そこには、聖都の者ではない部外者が関わっていたという情報がある。

 余所者の管理は、聖都のデータベースに潜ればすぐに分かることだった。だが、いくら調べようと、その者達の情報は出てこなかった。あれ程堅牢なセキュリティーに守られた都市が、そんな得体の知れぬ者の通過を許可するとも思えない。

 そんな相手ならキングも手を焼くことなどなかったのだから。

 キングは引き続き、部下にその者達に関する情報の収集を命じる。彼はその件とは別に、迫る勝負への準備を進める。フォリーキャナルレース。それはシー・ギャングと呼ばれる彼の組織にとって重要なイベントの一つだった。

 そして訪れたグラン・ヴァーグの港町で、知らず知らずの内にその当人達と出会うことになる。彼らが聖都でシュトラールを討った一味に関与しているかなど、当然キングには知るよしもなかったが、その会話の中で少し鎌をかけることにした。

 決め打ちをしていた訳ではない。グラン・ヴァーグに詳しくなく、街中で盛り上がるレースにも参加をする様子もない彼らになら、別段知られても困ルコとはないと、聖都の一件に何者かが関与していたという噂があるという嘘を話した。

 彼らの反応は、キングの期待以上のものだった。明らかに様子の変わる彼らの表情と、話題をはぶらかそうとするその態度から、キングの知らぬ何かを知っているであろう可能性、或いは直接関わり合いのある人物であるのは明白だった。

 それ以前にキングは、単純に彼らに興味が湧いた。何かにと問われれば、それを詳細に説明することは出来ない。しかし、どうも気になる人物というように、シンとミアという存在に興味を惹かれたのだ。

 後ほど彼らがレースに参加することになり、キングは恒例となったレースに新たな風が吹くのではないかと、期待に胸を躍らせた。

 そしてキングの期待と予想を現実のものとするように、レースの終盤に波乱の展開が巻き起こる。過去に類を見ないほど強力なレイドモンスター。想像を絶するその力に、レースどころではなくなっていた。

 嘗てこれほど他の海賊達と協力することもなかった。彼らにとってもこれ以上ない経験を経て、まるで選別されたかのように四人の勇士を終幕の地へと向かわせた。

 まるで自分の感が本物になっていくかのような感覚が、キングの中で芽生える。元々、感の鋭い方だった彼でもこのおような体験はしたことがない。そして僅かに過った、自分の敗北するかもしれないという予感。

 それまでもが現実のものとなってしまったのだ。しかも、彼が興味を惹かれていた未知の人物によってそれが成された。これは運命や何かの因果としか思えない。

 預言者にでもなったかのような経験をし、思わず彼の中から笑いが込み上げてきた、という訳だった。

 そして最後の表彰台に上がる人物として、支配人の男が次なる人物の名を読み上げる。

 「そしてトップスリーとなる最後の座を手にしたのは・・・。その若さで多くの構成員をまとめ上げる手腕とセンスを持った最年少の海賊、“キング“選手ッ!!これにより、マクシム選手の順位も確定いたしました。到着順位によるポイントは、この後の総合順位に加算されます。引き続きレースをお楽しみください」

 これにより到着順位によるポイントが確定した。

 一位 リーウ・ハオラン

 二位 シン・アサクラ

 三位 ジョン・キング

 四位 マクシム・ラ・フォルジュ

 あくまでこれは、ゴールへ到着した順位であり、総合的な順位は仲間達が到着してからとなる。そこで獲得した財宝や貴重なアイテム、そしてレイド戦での貢献度などが加算され、最終的な総合順位が発表される。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...