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ふりしぼる四人の勇士
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大きな影が唸りを上げながら、ハオランの真下付近から水面に向かって浮上する。シンはその鉛の尻尾を振り上げるようにボードを回転させ、波を利用し飛び上がると、引きずり出されるように尻尾の姿が現れる。
「このようなものを用意していたとは・・・。上手く周りを利用しましたね」
水面がシンの集めた武具の塊の浮上する勢いに押されて盛り上がる。今度はハオランがそれを利用し体勢を屈めると、飛び上がるように跳躍し、華麗に空中で回転しながら足技を放つ。
それにより生じた衝撃波が、一つ二つと向かって来る鉛の塊に衝突する。如何にハオランのような武術を極めた者の起こした衝撃波であろうと、一二発で食い止められるほどチープなものではなかった。
しかし、衝突した衝撃で武具の集合体から僅かばかりの鉛が、まるで瓦礫が崩れるように剥がれ落ちたのだ。一つの塊ではなく、集合体というところに活路を見出したハオランは着水すると、鉛の動きを見ながら順次、姿を現した時に同じような攻撃を繰り返していく。
彼が攻略法を見つけ実行に移す中、シンはそれでも攻撃の手を緩めることはなかった。例えこれが無意味だとしても、今の彼にはこれしか手段がなかったのだ。
一つ一つが武具の集合体であるため、それぞれの物体が影を生み出し、影を作り出す。中には重なり合うことで、より濃い影が生み出され、シンのスキルを増幅させている。
もうこのようなフィールドで、これだけの影を海面に持って来ることは困難だ。ましてや、彼らが乗っているのは、一人二人を乗せるのがやっとの小さなボード。
戦艦や海賊船のような大きな影を生み出すものは、周囲にはない。必要とあらば、再び海底の方へと潜ることで影を繋ぐことは可能だが、ゴールが近づいている今、そんなことをしている時間はない。
こぼれ落ちる武具は、近場のものであれば集合体から影を伸ばし、回収できるものだけ回収し延命を図る。
シンの振るう鉛の尻尾が動き回ることと、ハオランの放った衝撃波が的を外れ海面に衝突することで巻き上がる水飛沫や波で、周囲の海域は大いに荒れた。
後方にいるキングやマクシムもその余波を受け、速度を落とすと共にボードから振り落とされない繊細な技術が求められた。キングはその卓越した学習能力の高さとセンスで、難なく先を進む。
だが、四人の中で最もボードの操縦に慣れていないマクシムは、やや苦戦を強いられているようだった。このままではいち早くトップ争いから脱落してみせたしまうと危惧した彼は、丁度よく前にいるキングに鋼糸を繋ぎ引っ張ってもらおうと試みる。
当然、キングはその目論見を見据えており、波や水飛沫だけでなく後方からやって来る鋼糸にも気を使いながら、巧みな操縦技術を披露する。
二組がそれぞれ争うことで、各々の速度が落ちる。僅かに追い上げているキングとマクシムの方が早く、追いつかれるのも時間の問題ではあったが、誰かが抜きん出るような事態は避けられている。
集めた武具の集合体が破壊されていく毎に、身体に負荷がかかっていくような感覚に見舞われる。踏ん張りが効かず、ハンドルを握る手に力が入らない。
まるで、身体に纏っていた装甲が剥がれ落ちるように、シンの魔力が失われていく。息が上がり、長距離の走行を試みたかのような疲労感が彼を襲った。
それでも抗おうとするのは、仲間達との勝利のためか、己の負けたくないという意地からか。辛く諦めたい時にこそ、人を支えるのは心や意志の強さなのだろう。
流石のハオランにも疲労の色が見え始める。動きが鈍り、技に鋭さがなくなっていくのが素人目にもわかる程に。しかし、彼もシンと同じく諦めることなどなかった。
キングは依然として毅然な様子を見せてはいるが、この中の誰よりも身体が小さく、彼が思っている以上の負荷がその身体にのしかかっていることだろう。
時折巻きつくマクシムの糸を、僅かばかりの能力で弾く。もうそれだけ彼にも猶予がないということだ。執拗に攻撃を仕掛けるマクシムも、キングの様子が変わってきたことには、薄々気がついていた。
こうも鬱陶しい真似をされ続けるのは、常に気を張っていなければならない疲労を生む。一刻も早く解放されたいと思うのが普通だろう。そして本来のキングであれば、マクシムの攻撃を彼毎撃退することだって可能なはずなのだ。
それをしないということは、出来ない状態であるということ。それでも余裕を見せつけているのだから大したものだ。
それぞれの者達が限界を迎えようとする頃、遂にシンの作り出した鉛の尻尾が、ハオランの手によって打ち砕かれる。
「これでッ・・・最後ッ!」
渾身の力を込めた足技が、一閃のように空を切る。
「このようなものを用意していたとは・・・。上手く周りを利用しましたね」
水面がシンの集めた武具の塊の浮上する勢いに押されて盛り上がる。今度はハオランがそれを利用し体勢を屈めると、飛び上がるように跳躍し、華麗に空中で回転しながら足技を放つ。
それにより生じた衝撃波が、一つ二つと向かって来る鉛の塊に衝突する。如何にハオランのような武術を極めた者の起こした衝撃波であろうと、一二発で食い止められるほどチープなものではなかった。
しかし、衝突した衝撃で武具の集合体から僅かばかりの鉛が、まるで瓦礫が崩れるように剥がれ落ちたのだ。一つの塊ではなく、集合体というところに活路を見出したハオランは着水すると、鉛の動きを見ながら順次、姿を現した時に同じような攻撃を繰り返していく。
彼が攻略法を見つけ実行に移す中、シンはそれでも攻撃の手を緩めることはなかった。例えこれが無意味だとしても、今の彼にはこれしか手段がなかったのだ。
一つ一つが武具の集合体であるため、それぞれの物体が影を生み出し、影を作り出す。中には重なり合うことで、より濃い影が生み出され、シンのスキルを増幅させている。
もうこのようなフィールドで、これだけの影を海面に持って来ることは困難だ。ましてや、彼らが乗っているのは、一人二人を乗せるのがやっとの小さなボード。
戦艦や海賊船のような大きな影を生み出すものは、周囲にはない。必要とあらば、再び海底の方へと潜ることで影を繋ぐことは可能だが、ゴールが近づいている今、そんなことをしている時間はない。
こぼれ落ちる武具は、近場のものであれば集合体から影を伸ばし、回収できるものだけ回収し延命を図る。
シンの振るう鉛の尻尾が動き回ることと、ハオランの放った衝撃波が的を外れ海面に衝突することで巻き上がる水飛沫や波で、周囲の海域は大いに荒れた。
後方にいるキングやマクシムもその余波を受け、速度を落とすと共にボードから振り落とされない繊細な技術が求められた。キングはその卓越した学習能力の高さとセンスで、難なく先を進む。
だが、四人の中で最もボードの操縦に慣れていないマクシムは、やや苦戦を強いられているようだった。このままではいち早くトップ争いから脱落してみせたしまうと危惧した彼は、丁度よく前にいるキングに鋼糸を繋ぎ引っ張ってもらおうと試みる。
当然、キングはその目論見を見据えており、波や水飛沫だけでなく後方からやって来る鋼糸にも気を使いながら、巧みな操縦技術を披露する。
二組がそれぞれ争うことで、各々の速度が落ちる。僅かに追い上げているキングとマクシムの方が早く、追いつかれるのも時間の問題ではあったが、誰かが抜きん出るような事態は避けられている。
集めた武具の集合体が破壊されていく毎に、身体に負荷がかかっていくような感覚に見舞われる。踏ん張りが効かず、ハンドルを握る手に力が入らない。
まるで、身体に纏っていた装甲が剥がれ落ちるように、シンの魔力が失われていく。息が上がり、長距離の走行を試みたかのような疲労感が彼を襲った。
それでも抗おうとするのは、仲間達との勝利のためか、己の負けたくないという意地からか。辛く諦めたい時にこそ、人を支えるのは心や意志の強さなのだろう。
流石のハオランにも疲労の色が見え始める。動きが鈍り、技に鋭さがなくなっていくのが素人目にもわかる程に。しかし、彼もシンと同じく諦めることなどなかった。
キングは依然として毅然な様子を見せてはいるが、この中の誰よりも身体が小さく、彼が思っている以上の負荷がその身体にのしかかっていることだろう。
時折巻きつくマクシムの糸を、僅かばかりの能力で弾く。もうそれだけ彼にも猶予がないということだ。執拗に攻撃を仕掛けるマクシムも、キングの様子が変わってきたことには、薄々気がついていた。
こうも鬱陶しい真似をされ続けるのは、常に気を張っていなければならない疲労を生む。一刻も早く解放されたいと思うのが普通だろう。そして本来のキングであれば、マクシムの攻撃を彼毎撃退することだって可能なはずなのだ。
それをしないということは、出来ない状態であるということ。それでも余裕を見せつけているのだから大したものだ。
それぞれの者達が限界を迎えようとする頃、遂にシンの作り出した鉛の尻尾が、ハオランの手によって打ち砕かれる。
「これでッ・・・最後ッ!」
渾身の力を込めた足技が、一閃のように空を切る。
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