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蘇る紅蓮の矛
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キングの放った力に巻き込まれないよう、マクシムは進行方向から大きく膨らむように迂回し、直撃を逃れた。だが、シンは臆することなく進むと、波を利用し飛び上がり、海中へと潜る。
キングの攻撃はまさに突風のように周囲の物を一瞬にして、自身を中心に弾き飛ばす。その当たり判定は長く残るものではない。それをシンは見極め、直撃する少し前に海中へと潜り、事前に用意していた自分のボードでできた影の中へ入り込むと、僅かに前へ出口を作り出し、攻撃が通り過ぎた直後に再び海面へと躍り出た。
マクシムと同じく、スキルを発動したことで速度を落としたキングを、またしてもシンが悠々と追い抜いていった。
「野郎・・・一体どっから移動してきてんのよ・・・」
まだシンの能力はキングにバレていない。暗殺計画の実行の際も、実際に彼と対峙したのはデイヴィスであり、シンは能力を披露していない。また、リヴァイアサンから落下した際も、その一切を見せてはいないのだ。
他の者達の能力や技と違い、その特徴が見えづらいアサシンというクラス。そもそも派手に動き回るようなスキルは少なく、影を利用し騙すことの多いクラスである。
先程、キングを襲ってみせたスキルは、マクシムの糸と物量に任せた数の暴力でもあったため派手に見えただけだった。本来であれば地面に写る影の異変に気づく者もいるだろうが、海というフィールドがシンに味方した。
謎の手段を用いて追い上げるシンに、困惑するマクシムと能力を使わざるを得ない事態に顔を歪めるキング。
しかし、トップ争いをするのは何も彼ら三人だけではない。ここに来て、トップ争いから脱落したかと思われていたハオランが、怒涛の勢いで追い上げて来たのだ。
後方から激しい水飛沫を上げながら、遅れた分を取り戻す人物がいた。その者はキングの能力を受け、暫くトップ争いから下されていたが、彼らの中で誰よりも魔力を残していたおかげで、引き離された分の差を埋めるだけの加速を得ていた。
だが、彼の魔力を持ってしても、追い上げることに使うので精一杯の量にまで消費させられていた。これだけ引き離されたのに追い付けたのは、この後に待っているであろうトップ争いでの戦いに使う魔力を、移動に費やしたおかげだったのだ。
そしてその分の魔力も底を尽きようとしていた。キングによる強襲は、確実に彼を苦しめていた。しかし、魔力が尽きたとしても体術で他を圧倒できるハオラン。
それを恐れてキングは力を温存していたのだが、それをシンによって使わされ、ハオラン撃退の手立てを失っていたところだった。実際はキングもハオランも、殆ど力を残していない。
トップ争いをする彼らは、互いの魔力残量を知らない。ここからは腹の探り合いとなる。少ない労力で、如何に相手の力を引き出し見定めるか。それが重要となってくる。
下手に先頭へ出れば、複数の者から一斉に攻撃を仕掛けられかねない。現状トップを走っているのはシンになる。そのすぐ後ろにキングがいて、少し離れた傍の進路にマクシム。そして、みるみる差を縮めるハオランが、シンやキングの辿っている道を巻き返している。
この状況で真っ先に戦闘が起こるとするならば、シンとキングの二人。全体を見渡せ、いつでもちょっかいを出せる有利な位置にいるマクシムだが、その有利さを活かすにはどうしても後手に回ってしまう。
追い上げるのに精一杯のハオランは、気にすることなく先頭へ返り咲く為に、一心不乱に走り抜ける。
「やっと見えて来ましたね・・・。しかし、ここからどうしましょうか。残量を気にしてる余裕など・・・。まさかこんなに追い詰められることになろうとは、思ってもいませんでした・・・」
ハオランは最早、戦闘の為の魔力を残しておく気はなかった。加速の為に全てを費やし、後は己の身とボードの操縦技術でカバーするしかないと考えていた。
実際、彼の得意分野は体術であり、他のクラスに比べれば魔力を消費するスキルなど限られている。追いついて仕舞えば、彼に最もアドバンテージがある状況になるのだ。
「余計な事をしてくれちゃったね・・・全く。どうすんのよ、これじゃぁあの男前は止めらんねぇよぉ~?」
するとキングは、急激に追い上げて来たハオランに何と道を譲り出したのだ。脇に逸れるキングを尻目に、ハオランは遂に彼を抜き去り、先頭を走るシンのすぐ後ろにまで迫って来ていた。
このような展開になることは予想できたはず。ましてやシンとマクシムにとって、キングとハオラン両方の標的にされるのは何としても避けたかったことだ。
だが、このような状況の中でも、シンは僅かに振り返るだけで焦る様子や動揺する姿を見せなかった。単純に覚悟を決めたようにも見えなくはないが、どこか裏がありそうな雰囲気を醸し出していた。
「相手が貴方であろうと、私の道を阻むのなら退いてもらいます」
「勿論、覚悟はしてるよ。でも・・・ただ一方的にやられる覚悟じゃない。アンタと戦う覚悟だ」
ハオランはどこかで期待していた。ロロネーとの戦いの時は共闘だったが、共に戦う中でハオランは彼とも戦いたいと思っていた。海上であることや、限られた条件下ではあるが、こうして向き合えることにハオランは喜びを感じていた。
しかし、シンの側に寄ったところで、彼の側の海中に何やら大きな黒い影が通り過ぎたのだ。大きめのモンスターのようなその影は、ハオランの視界に少しだけ写るとすぐに身を隠そうとしたのか深海の方へと潜っていった。
キングの攻撃はまさに突風のように周囲の物を一瞬にして、自身を中心に弾き飛ばす。その当たり判定は長く残るものではない。それをシンは見極め、直撃する少し前に海中へと潜り、事前に用意していた自分のボードでできた影の中へ入り込むと、僅かに前へ出口を作り出し、攻撃が通り過ぎた直後に再び海面へと躍り出た。
マクシムと同じく、スキルを発動したことで速度を落としたキングを、またしてもシンが悠々と追い抜いていった。
「野郎・・・一体どっから移動してきてんのよ・・・」
まだシンの能力はキングにバレていない。暗殺計画の実行の際も、実際に彼と対峙したのはデイヴィスであり、シンは能力を披露していない。また、リヴァイアサンから落下した際も、その一切を見せてはいないのだ。
他の者達の能力や技と違い、その特徴が見えづらいアサシンというクラス。そもそも派手に動き回るようなスキルは少なく、影を利用し騙すことの多いクラスである。
先程、キングを襲ってみせたスキルは、マクシムの糸と物量に任せた数の暴力でもあったため派手に見えただけだった。本来であれば地面に写る影の異変に気づく者もいるだろうが、海というフィールドがシンに味方した。
謎の手段を用いて追い上げるシンに、困惑するマクシムと能力を使わざるを得ない事態に顔を歪めるキング。
しかし、トップ争いをするのは何も彼ら三人だけではない。ここに来て、トップ争いから脱落したかと思われていたハオランが、怒涛の勢いで追い上げて来たのだ。
後方から激しい水飛沫を上げながら、遅れた分を取り戻す人物がいた。その者はキングの能力を受け、暫くトップ争いから下されていたが、彼らの中で誰よりも魔力を残していたおかげで、引き離された分の差を埋めるだけの加速を得ていた。
だが、彼の魔力を持ってしても、追い上げることに使うので精一杯の量にまで消費させられていた。これだけ引き離されたのに追い付けたのは、この後に待っているであろうトップ争いでの戦いに使う魔力を、移動に費やしたおかげだったのだ。
そしてその分の魔力も底を尽きようとしていた。キングによる強襲は、確実に彼を苦しめていた。しかし、魔力が尽きたとしても体術で他を圧倒できるハオラン。
それを恐れてキングは力を温存していたのだが、それをシンによって使わされ、ハオラン撃退の手立てを失っていたところだった。実際はキングもハオランも、殆ど力を残していない。
トップ争いをする彼らは、互いの魔力残量を知らない。ここからは腹の探り合いとなる。少ない労力で、如何に相手の力を引き出し見定めるか。それが重要となってくる。
下手に先頭へ出れば、複数の者から一斉に攻撃を仕掛けられかねない。現状トップを走っているのはシンになる。そのすぐ後ろにキングがいて、少し離れた傍の進路にマクシム。そして、みるみる差を縮めるハオランが、シンやキングの辿っている道を巻き返している。
この状況で真っ先に戦闘が起こるとするならば、シンとキングの二人。全体を見渡せ、いつでもちょっかいを出せる有利な位置にいるマクシムだが、その有利さを活かすにはどうしても後手に回ってしまう。
追い上げるのに精一杯のハオランは、気にすることなく先頭へ返り咲く為に、一心不乱に走り抜ける。
「やっと見えて来ましたね・・・。しかし、ここからどうしましょうか。残量を気にしてる余裕など・・・。まさかこんなに追い詰められることになろうとは、思ってもいませんでした・・・」
ハオランは最早、戦闘の為の魔力を残しておく気はなかった。加速の為に全てを費やし、後は己の身とボードの操縦技術でカバーするしかないと考えていた。
実際、彼の得意分野は体術であり、他のクラスに比べれば魔力を消費するスキルなど限られている。追いついて仕舞えば、彼に最もアドバンテージがある状況になるのだ。
「余計な事をしてくれちゃったね・・・全く。どうすんのよ、これじゃぁあの男前は止めらんねぇよぉ~?」
するとキングは、急激に追い上げて来たハオランに何と道を譲り出したのだ。脇に逸れるキングを尻目に、ハオランは遂に彼を抜き去り、先頭を走るシンのすぐ後ろにまで迫って来ていた。
このような展開になることは予想できたはず。ましてやシンとマクシムにとって、キングとハオラン両方の標的にされるのは何としても避けたかったことだ。
だが、このような状況の中でも、シンは僅かに振り返るだけで焦る様子や動揺する姿を見せなかった。単純に覚悟を決めたようにも見えなくはないが、どこか裏がありそうな雰囲気を醸し出していた。
「相手が貴方であろうと、私の道を阻むのなら退いてもらいます」
「勿論、覚悟はしてるよ。でも・・・ただ一方的にやられる覚悟じゃない。アンタと戦う覚悟だ」
ハオランはどこかで期待していた。ロロネーとの戦いの時は共闘だったが、共に戦う中でハオランは彼とも戦いたいと思っていた。海上であることや、限られた条件下ではあるが、こうして向き合えることにハオランは喜びを感じていた。
しかし、シンの側に寄ったところで、彼の側の海中に何やら大きな黒い影が通り過ぎたのだ。大きめのモンスターのようなその影は、ハオランの視界に少しだけ写るとすぐに身を隠そうとしたのか深海の方へと潜っていった。
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