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勝利への算段
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血海を諸共せず進むボードは、シンを乗せて先方を走るキングの影を追う。しかし、如何やら彼の跡を追うものは一人ではなかったようだ。
遠くに見えるキングとの間に、もう一台の見慣れたボードと人物が割り込んで来る。その人物もまた、キングの跡を追うようにシンと同じボードに乗り、一直線に駆け抜けていく。
「あれは・・・ハオランか!そういえば奴もこのボードを持っていたな」
レースに勝つために彼らを追い抜かなければならない。だが、如何に操縦経験が最も長いであろうシンであっても、この二人を相手に競り合うのは些か部が悪い。
しかし泣き言など言っていられないと、シンはハンドルを力強く握る。
すると隣の方から、更に別の者が血海を掻き分けシンの方へ近づくように二人の跡を追っていた。
「おい、兄ちゃん!」
声をかけてきたのは意外な人物だった。リヴァイアサンとの戦闘前に、彼よりも先に頭部へと登っていた人物で、何があったのか上空から落ちてきた彼をシン達は救ったのだ。
彼の所属する海賊団に直接送り届けたのだ。シンもよく覚えていた。名をマクシムと言い、エイヴリー海賊団の中でも優秀な幹部の内の一人だ。
彼が復活していることにも驚きだったが、それ以上に彼の乗っている物にシンは驚きを隠せなかった。
キングが持っているツバキのボードは、シン達が保有する二台の内の一つ。そしてハオランは、レース開始前にツバキと取引をして貰い受けている。
そしてシンが今正に乗っているボードと合わせ、シン達の知る限りツバキの作り出したボードは三台しかない。
しかし、今まじかに迫っているその男もツバキの作り出したボードに乗っていたのだ。一体どこでそんなものを手に入れたのか。それよりも、ツバキはあのボードを他にも作っていたのだろうか。
「アンタは確か・・・エイヴリー海賊団とこの・・・」
「その節はどうも。・・・じゃなくて。兄ちゃんもあの二人を追ってるんだろ?」
「あぁ、そうだ。追うというよりッ・・・」
「追い越したい・・・だよな?」
マクシムも当然、レースに勝つために彼らを追っている。しかし、競争相手で在るシンに近づいてきたのには、何か理由があるのだろうか。マクシムはシンの側にボードを寄せ、並走するように二人を追う。
「だが、あの二人と競り合うには部が悪い・・・違うか?」
「・・・・・・」
核心を突かれたかのように押し黙るシン。彼の言うようにキングもハオランも、一人で立ち向かうにはあまりにも力の差があり過ぎる。
どちらも組織や海賊団を率いるだけの実力を持つ人物であり、あの巨大なリヴァイアサン相手にも物怖じせず単独で戦いを挑めるほどの戦力がある。もしあの力を人に向けていたのなら、大抵の相手をねじ伏せることが可能だろう。
力量で言えば、聖都で戦ったシュトラールと同等の実力であろうことは、シンにも感じ取れていた。例え二人を追い抜けたとしても、何らかの妨害があるのは必至。
それをやり過ごせるだけの実力も策も、影のスキルを思うように発動できな今のシンにはなかった。だが、マクシムの口ぶりから彼には何か二人を出し抜けるだけの妙案があるのだろう。
「俺もそこそこ実力がある自信は持っている。だがあの二人に対抗できるとは思えねぇ・・・。そこでだ。兄ちゃんの力を借りたい。一人では無理でも、奴らの足止めをすることくらいはできると思うんだ。そうなりゃぁ俺らにも勝機はある」
何もキングやハオランを倒す必要はない。要は彼らよりも先に、ゴールである大陸に辿り着けさえすればそれでいい。それならば決してシン達にも不可能ではない。
しかし、足止めするにしても、そんな隙を見せるほどあの二人は甘くはない。恐らくは、既にシンとマクシムが跡を追ってきていることにも気づいているのではないだろうか。
そんな警戒しているであろう彼らを、如何やって足止めするのか。それが可能であれ不可能であれ、その方法と手段に興味があったシンは、一先ず彼の考えを聞き出そうと煽る。
「それで?あの二人を如何やって出し抜くつもりだ?二人とも知っているが、そんな隙を見せるようなタイプには見えなかったぞ・・・?」
「何、そんな難しいことじゃねぇさ。俺らが先ずするべきことは、あの二人の跡を追う、それだけだ」
彼の口からでた言葉に、シンは鳩が豆鉄砲を喰らったかのように唖然としてしまった。その内容は今も尚、現在進行形で行っている行為であり、それでは如何にもならないからこそ、今彼の話を聞いているのに、これでは何の解決にもならない。
「追うって・・・。それじゃぁ如何にもならないから、こうして話してるんじゃないか」
「まぁまぁ、慌てなさんなって!“先ずは“って言ったろ?それに距離を空けて追うのが重要なんだ。近づき過ぎちゃいけねぇ・・・特にキングの方にはな」
距離を保ったまま、近付かずして跡を追うことが彼らを追い抜く策とは一体どういうことなのか。彼の言葉に、俄然興味を惹かれたシンは、まるでマクシムの口車に乗せられるかのよう質問を投げかける。
「どういう事だ?近付かないようにって・・・」
「ハオランはキングに追いつく為に、必ず何か仕掛ける。そうなればキングも、何か手を打つ他なくなるだろ?」
「二人に争わせるのか?」
「そういう事!だが、さっきも言った通りキングには近づかねぇ。一定以上の距離を保つことが重要なんだ。それは奴の能力の範囲に関係してる」
マクシムの言うキングの能力。それはキングと何度か遭遇しているシンも想像がついていた。酒場であった時に、相手の海賊を突然自分の元へ引き寄せたり、リヴァイアサンから落ちた際には、シンの身体を軽くしたりと、“重力“や“引力“に関係する能力であることは間違いない。
彼の言う一定の距離とは、その能力に巻き込まれない距離ということと見て間違いないだろう。如何やらマクシムはその距離を把握しているような口ぶりだった。
遠くに見えるキングとの間に、もう一台の見慣れたボードと人物が割り込んで来る。その人物もまた、キングの跡を追うようにシンと同じボードに乗り、一直線に駆け抜けていく。
「あれは・・・ハオランか!そういえば奴もこのボードを持っていたな」
レースに勝つために彼らを追い抜かなければならない。だが、如何に操縦経験が最も長いであろうシンであっても、この二人を相手に競り合うのは些か部が悪い。
しかし泣き言など言っていられないと、シンはハンドルを力強く握る。
すると隣の方から、更に別の者が血海を掻き分けシンの方へ近づくように二人の跡を追っていた。
「おい、兄ちゃん!」
声をかけてきたのは意外な人物だった。リヴァイアサンとの戦闘前に、彼よりも先に頭部へと登っていた人物で、何があったのか上空から落ちてきた彼をシン達は救ったのだ。
彼の所属する海賊団に直接送り届けたのだ。シンもよく覚えていた。名をマクシムと言い、エイヴリー海賊団の中でも優秀な幹部の内の一人だ。
彼が復活していることにも驚きだったが、それ以上に彼の乗っている物にシンは驚きを隠せなかった。
キングが持っているツバキのボードは、シン達が保有する二台の内の一つ。そしてハオランは、レース開始前にツバキと取引をして貰い受けている。
そしてシンが今正に乗っているボードと合わせ、シン達の知る限りツバキの作り出したボードは三台しかない。
しかし、今まじかに迫っているその男もツバキの作り出したボードに乗っていたのだ。一体どこでそんなものを手に入れたのか。それよりも、ツバキはあのボードを他にも作っていたのだろうか。
「アンタは確か・・・エイヴリー海賊団とこの・・・」
「その節はどうも。・・・じゃなくて。兄ちゃんもあの二人を追ってるんだろ?」
「あぁ、そうだ。追うというよりッ・・・」
「追い越したい・・・だよな?」
マクシムも当然、レースに勝つために彼らを追っている。しかし、競争相手で在るシンに近づいてきたのには、何か理由があるのだろうか。マクシムはシンの側にボードを寄せ、並走するように二人を追う。
「だが、あの二人と競り合うには部が悪い・・・違うか?」
「・・・・・・」
核心を突かれたかのように押し黙るシン。彼の言うようにキングもハオランも、一人で立ち向かうにはあまりにも力の差があり過ぎる。
どちらも組織や海賊団を率いるだけの実力を持つ人物であり、あの巨大なリヴァイアサン相手にも物怖じせず単独で戦いを挑めるほどの戦力がある。もしあの力を人に向けていたのなら、大抵の相手をねじ伏せることが可能だろう。
力量で言えば、聖都で戦ったシュトラールと同等の実力であろうことは、シンにも感じ取れていた。例え二人を追い抜けたとしても、何らかの妨害があるのは必至。
それをやり過ごせるだけの実力も策も、影のスキルを思うように発動できな今のシンにはなかった。だが、マクシムの口ぶりから彼には何か二人を出し抜けるだけの妙案があるのだろう。
「俺もそこそこ実力がある自信は持っている。だがあの二人に対抗できるとは思えねぇ・・・。そこでだ。兄ちゃんの力を借りたい。一人では無理でも、奴らの足止めをすることくらいはできると思うんだ。そうなりゃぁ俺らにも勝機はある」
何もキングやハオランを倒す必要はない。要は彼らよりも先に、ゴールである大陸に辿り着けさえすればそれでいい。それならば決してシン達にも不可能ではない。
しかし、足止めするにしても、そんな隙を見せるほどあの二人は甘くはない。恐らくは、既にシンとマクシムが跡を追ってきていることにも気づいているのではないだろうか。
そんな警戒しているであろう彼らを、如何やって足止めするのか。それが可能であれ不可能であれ、その方法と手段に興味があったシンは、一先ず彼の考えを聞き出そうと煽る。
「それで?あの二人を如何やって出し抜くつもりだ?二人とも知っているが、そんな隙を見せるようなタイプには見えなかったぞ・・・?」
「何、そんな難しいことじゃねぇさ。俺らが先ずするべきことは、あの二人の跡を追う、それだけだ」
彼の口からでた言葉に、シンは鳩が豆鉄砲を喰らったかのように唖然としてしまった。その内容は今も尚、現在進行形で行っている行為であり、それでは如何にもならないからこそ、今彼の話を聞いているのに、これでは何の解決にもならない。
「追うって・・・。それじゃぁ如何にもならないから、こうして話してるんじゃないか」
「まぁまぁ、慌てなさんなって!“先ずは“って言ったろ?それに距離を空けて追うのが重要なんだ。近づき過ぎちゃいけねぇ・・・特にキングの方にはな」
距離を保ったまま、近付かずして跡を追うことが彼らを追い抜く策とは一体どういうことなのか。彼の言葉に、俄然興味を惹かれたシンは、まるでマクシムの口車に乗せられるかのよう質問を投げかける。
「どういう事だ?近付かないようにって・・・」
「ハオランはキングに追いつく為に、必ず何か仕掛ける。そうなればキングも、何か手を打つ他なくなるだろ?」
「二人に争わせるのか?」
「そういう事!だが、さっきも言った通りキングには近づかねぇ。一定以上の距離を保つことが重要なんだ。それは奴の能力の範囲に関係してる」
マクシムの言うキングの能力。それはキングと何度か遭遇しているシンも想像がついていた。酒場であった時に、相手の海賊を突然自分の元へ引き寄せたり、リヴァイアサンから落ちた際には、シンの身体を軽くしたりと、“重力“や“引力“に関係する能力であることは間違いない。
彼の言う一定の距離とは、その能力に巻き込まれない距離ということと見て間違いないだろう。如何やらマクシムはその距離を把握しているような口ぶりだった。
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