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魔物を撃ち落とす岩石
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シンを危機的状況から救うように飛んで来る岩石は、彼の周りに群がる魔物を悉く撃ち落としていく。岩石によって押し出された魔物達は、水の道から外れ遥か下降にある海面へと、呻き声を上げながら落下していった。
「何だ!?何処からの砲撃だッ!」
「あそこよ!随分と変わった船があるわね。味方かしら・・・?」
ウンディーネの指し示す方角を見ると、そこにはそれが船であるということを疑ってしまうような造形をした物が、海面に浮いていた。そして、ある程度の間隔を置きながら、絶えず岩石による砲撃が次々に行われている。
幾つもの砲台のようなものを携え、砲撃の音と共に放たれた砲弾が形を変え大きな岩石へと変化している。ダラーヒムの船は、彼の錬金術を用いた特殊な改造が施されており、砲弾が砲身を通り抜けると同時に別の物質への錬成が始まり、飛び立つと共に彼の作り出す別の物へと変貌する。
岩石にすることで火薬を失い爆発することはなくなるが、その速度のおかげで岩石よりも硬い物にぶつかると、まるで拡散する弾丸のように飛び散る。意図的にそれを発生させれば、砲弾よりも恐ろしい兵器の出来上がりだ。
本来ならば岩石を砕き、拡散させた岩石で一掃してしまうのが手っ取り早いのだが、水の道には魔物だけではなくシンとハオランがいるため、無闇に散らすことは出来ない。
これはキングからの指示でもあった。状況を把握していないダラーヒムには、リヴァイアサンの周りに現れた水の道は、巨獣の魔法か何かだと思っていたようだ。彼の警告がなければ、シンもモンスター達のように撃ち抜かれていたことだろう。
「誰かは知らないが助かるッ・・・!これで圧倒的に手が足りなかったのを補える」
シンは岩石の飛んでくる射線上から外れ、もう少し先へとボードを進める。そして岩石の砲撃を潜り抜けてきた少数のモンスターを確実に仕留めていくことに集中した。
これにより、先ほどまでよりも明らかにハオランを追ってすり抜けていくモンスターの数が減った。これによりハオランへの邪魔も減り、後始末と託された仕事をこなすのが少しは楽になったはず。
一方、シンと別れた後のハオランは、一人水の道を駆け上がりリヴァイアサンの頭上を目指す。暫く進むと、シンと共に聞いた水の中を進む何者かの音が、再び聞こえ始めた。
「やはりあの数を一人で食い止めるなど至難の技・・・。だが、これしきの数であれば、進みながら相手をしても問題なさそうです。シンさんの頑張りのおかげですね!」
そう言って彼は、追いついて来たモンスター達の攻撃を、慣れたハンドル操作で軽々と避ける。このまま上空へ連れていく訳にもいかず、シンの努力の成果もあり数の少なくなったモンスターを一体ずつ確実に仕留めて行く。
軽快な身のこなしで飛び上がり、ハンドルを握ったままそこで逆立ちをすると、刃のように鋭い足技で魔物を捌き、ボードの急旋回で水ごと外へ放り出す。
順調に進んでいると、彼の視界にも海面から撃ち放たれる岩石が映り込んだ。それは途中まで共に進んできたシンのいる辺りの場所へ向けて放たれていた。
一瞬、彼を標的にした砲撃かと思ったが、それにより撃ち落とされて行くのが魔物達であるのを見ると、友軍による攻撃であることを悟る。下方で依然としてモンスターの群れを相手にしているシンの無事を確認すると、安心して上空を目指す。
しかし高度を上げるにつれてリヴァイアサンの攻撃は苛烈さを増す。上空には幾つもの水球があり、海上の海賊達目掛けて水圧の強い水鉄砲を放っている。
それがハオランの気配を察知すると、彼に向けて攻撃を始めたのだ。直線的ではあるが、何処を向いているのか分からず発射まで軌道が読めない。足場の悪い中でそれを反射神経だけ躱すのは困難を極めた。
如何に常人離れしたハオランであっても、全てを無傷でやり過ごすのは不可能だった。海上とは違い道が限られているので、ハオランは定められた場所でしか移動が出来ない。
攻撃が当たると分かっていても、その茨の道へ飛び込んでいくしかなかった。深傷こそ負うことはなく、傷を負いながらも水の道を駆け上がった先で、ハオランはリヴァイアサンの背に空いた燃える風穴まで到達する。
「この燃え尽きぬ炎・・・。我が軍も、お力添えして下さっている。早く私の役目を果たさなければ・・・」
チン・シー海賊団も、リヴァイアサンの再生阻止と戦力を削る役割を担う重要なファクターとなっている。だが彼らの戦力や物資も無限ではない。戦闘が長引けば何れ終わりが来る。それだけは何としても避けなければ・・・。
「何だ!?何処からの砲撃だッ!」
「あそこよ!随分と変わった船があるわね。味方かしら・・・?」
ウンディーネの指し示す方角を見ると、そこにはそれが船であるということを疑ってしまうような造形をした物が、海面に浮いていた。そして、ある程度の間隔を置きながら、絶えず岩石による砲撃が次々に行われている。
幾つもの砲台のようなものを携え、砲撃の音と共に放たれた砲弾が形を変え大きな岩石へと変化している。ダラーヒムの船は、彼の錬金術を用いた特殊な改造が施されており、砲弾が砲身を通り抜けると同時に別の物質への錬成が始まり、飛び立つと共に彼の作り出す別の物へと変貌する。
岩石にすることで火薬を失い爆発することはなくなるが、その速度のおかげで岩石よりも硬い物にぶつかると、まるで拡散する弾丸のように飛び散る。意図的にそれを発生させれば、砲弾よりも恐ろしい兵器の出来上がりだ。
本来ならば岩石を砕き、拡散させた岩石で一掃してしまうのが手っ取り早いのだが、水の道には魔物だけではなくシンとハオランがいるため、無闇に散らすことは出来ない。
これはキングからの指示でもあった。状況を把握していないダラーヒムには、リヴァイアサンの周りに現れた水の道は、巨獣の魔法か何かだと思っていたようだ。彼の警告がなければ、シンもモンスター達のように撃ち抜かれていたことだろう。
「誰かは知らないが助かるッ・・・!これで圧倒的に手が足りなかったのを補える」
シンは岩石の飛んでくる射線上から外れ、もう少し先へとボードを進める。そして岩石の砲撃を潜り抜けてきた少数のモンスターを確実に仕留めていくことに集中した。
これにより、先ほどまでよりも明らかにハオランを追ってすり抜けていくモンスターの数が減った。これによりハオランへの邪魔も減り、後始末と託された仕事をこなすのが少しは楽になったはず。
一方、シンと別れた後のハオランは、一人水の道を駆け上がりリヴァイアサンの頭上を目指す。暫く進むと、シンと共に聞いた水の中を進む何者かの音が、再び聞こえ始めた。
「やはりあの数を一人で食い止めるなど至難の技・・・。だが、これしきの数であれば、進みながら相手をしても問題なさそうです。シンさんの頑張りのおかげですね!」
そう言って彼は、追いついて来たモンスター達の攻撃を、慣れたハンドル操作で軽々と避ける。このまま上空へ連れていく訳にもいかず、シンの努力の成果もあり数の少なくなったモンスターを一体ずつ確実に仕留めて行く。
軽快な身のこなしで飛び上がり、ハンドルを握ったままそこで逆立ちをすると、刃のように鋭い足技で魔物を捌き、ボードの急旋回で水ごと外へ放り出す。
順調に進んでいると、彼の視界にも海面から撃ち放たれる岩石が映り込んだ。それは途中まで共に進んできたシンのいる辺りの場所へ向けて放たれていた。
一瞬、彼を標的にした砲撃かと思ったが、それにより撃ち落とされて行くのが魔物達であるのを見ると、友軍による攻撃であることを悟る。下方で依然としてモンスターの群れを相手にしているシンの無事を確認すると、安心して上空を目指す。
しかし高度を上げるにつれてリヴァイアサンの攻撃は苛烈さを増す。上空には幾つもの水球があり、海上の海賊達目掛けて水圧の強い水鉄砲を放っている。
それがハオランの気配を察知すると、彼に向けて攻撃を始めたのだ。直線的ではあるが、何処を向いているのか分からず発射まで軌道が読めない。足場の悪い中でそれを反射神経だけ躱すのは困難を極めた。
如何に常人離れしたハオランであっても、全てを無傷でやり過ごすのは不可能だった。海上とは違い道が限られているので、ハオランは定められた場所でしか移動が出来ない。
攻撃が当たると分かっていても、その茨の道へ飛び込んでいくしかなかった。深傷こそ負うことはなく、傷を負いながらも水の道を駆け上がった先で、ハオランはリヴァイアサンの背に空いた燃える風穴まで到達する。
「この燃え尽きぬ炎・・・。我が軍も、お力添えして下さっている。早く私の役目を果たさなければ・・・」
チン・シー海賊団も、リヴァイアサンの再生阻止と戦力を削る役割を担う重要なファクターとなっている。だが彼らの戦力や物資も無限ではない。戦闘が長引けば何れ終わりが来る。それだけは何としても避けなければ・・・。
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