World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
上 下
586 / 1,646

別世界の存在

しおりを挟む
 マクシムの身柄を引き渡したシン達。エイヴリーは近くにいる限り、小型モンスターの攻撃から守ってくれることを約束してくれた。だが、レースで手を抜くことはしないと公言された。

 流石にシン達もそこまでは望んでいなかった。ただ、無事にこのレースを完走すること。そして、開会式の時に現れた黒いコートの男が、何処かに隠したという異世界への転移ポータルのアイテムを探すのが目的だった。

 先陣を切って進んでいたであろうエイヴリーに、それらしき物を見たかどうか尋ねるが、彼らもその様な物は見てないのだという。何より、そのような物の存在を本当に信じているのかと嘲笑された。

 どうやらこの世界の者達も、異世界などという存在を信じてはいないようだ。当然と言えば当然と言える。シン達もこのような現象に見舞われなければ、WoFの世界で現実のように生きているなど、想像もしなかっただろう。

 しかし、彼らの話ではレイド戦はレースの終盤に待ち受ける最後の関門だと言う。そしてここまでの道中は、エイヴリー海賊団やキングのシー・ギャングによる、圧倒的な船団の数で調べ尽くされていることだろう。

 それでも見つからないと言うことは、やはり黒いコートの男達も、別世界から来た者達を探っていると言うことなのだろうか。その為にわざわざこの様な嘘をついたのか。

 それとも、キングが既に手に入れており、何かの取引材料にする為、隠しているのだろうか。予想はあくまで予想の範囲を出ないが、異世界の存在を嘲笑うエイヴリー達とは違い、キングならやりかねない。

 ある程度聞きたいことを聞いたシン達。最後にエイヴリーは、リヴァイアサンを仕留める算段として、手数で再生を妨害し、もう一度レールガンによる一撃で頭部を吹き飛ばすのだと語る。

 何処かに核となるモノがあるとしても、どんな生き物でも大抵は頭を失って生きているものはいない。幸い、リヴァイアサンにはアンデットの特徴はなく、不死身というわけでもなさそうだ。

 やる事は単純で、リヴァイアサンの攻撃からレールガンを守りつつ、小型モンスターを排除しながら次の装填が完了するのを待ち、もう一度リヴァイアサンの頭部に撃ち込むのみ。

 不安要素があるとすれば、初めて頭部に一発撃ち込んだ時のように、シャーロットやリーズの手助けが借りられないということだ。今度は自力で、動き回る頭部を狙わなければならない。

 当然、外せば再装填する為に同じことを繰り返すことになる。だが、時間が掛かればかかる程、人間側の持久力が削がれ、全滅する事は避けられない。

 エイヴリーが作戦を話したのは、可能であればシン達にその手伝いをして貰おうという思惑があったからだ。そして彼らも、当然それを拒む事はない。生きて帰りたければ、協力するかレース自体を放棄し、逃亡するしかないのだから。

 「ここに留まっても構わねぇ。だが、手伝ってくれりゃぁそれだけ勝率が上がる。お前達も、海の藻屑にはなりたくねぇだろ?」

 「勿論だ。協力は惜しまないつもりだ」

 エイヴリー海賊団とも協定を結ぶことに成功したシン達。これにより、フォリーキャナルレースの優勝候補である三大海賊団との友好関係を築くことに成功した。

 キングとはこれと言って恩を着せた訳ではないが、シンやミアのことを気に入っている様子でもあった為、殺すにしても直ぐには手を出すことはないだろう。何より、聖都の一件を知る彼は、シン達のことを僅かながら警戒している様でもあった。

 自分達の船に戻るシン達。入れ違いになる様にして、船内へ運ばれていたマクシムが目を覚まし、甲板でクラフトによる増築を再開するエイヴリーの前に姿を現す。

 「だっ旦那・・・。すいやせん、へまこいちまって・・・」

 「よくやったな、マクシム。おめぇのおかげで上手くいった。・・・ありがとよ・・・」

 マクシムの声に振り向くことなく、珍しく神妙な声色で応えるエイヴリーに、彼は黙って一度だけ頭を下げると、リヴァイアサンから落下した際に、彼を救ったシンとツクヨが乗っていたボードの話をし始める。

 「やっぱり旦那の見込んだ通り、ウィル爺さんとこの弟子は大したもんでしたぜ・・・。例のボード、旦那の能力で作れやしやせんかね・・・?」

 目を覚ましたマクシムは、シン達の乗っていたボードの絵を描いていた。そしてその紙をエイヴリーに差し出すと、彼は口角をあげ嬉しそうに応えた。

 「夢を抑制されてきたやつの執念は、時にとてつもない才能を開花されるもんだ。あのガキ・・・いい仕事するじゃねぇかよ」

 レース開始前、海賊船の補強や改造の為に、造船技師であるウィリアムの元へ新しい素材を持ち込んでいたエイヴリー達。それがツバキの手に渡るのも、全て彼らの目論見通りだったのだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...