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自然の教授
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単独でやって来た船から、自軍の幹部の名が飛び出したことで、船員達の顔色が変わる。一瞬、思考が止まる。それもその筈。彼らは目の前の敵や砲撃の準備に追われ、マクシムの動きを把握していなかった。
突然上の者の名を出され、身柄を預かっている言われれば気も動転するというもの。だが、それもすぐに終わりを告げる。彼らが対峙している場に、大海賊エイヴリーがクラフトで補強するついでに訪れたのだ。
「マクシム・・・。そうか、無事だったか」
「あ・・・アンタは、エイヴリー・・・?」
シン達が彼と対面したのは、これで二度目。グラン・ヴァーグのレース会場で、ヘラルトがエイヴリー海賊団に加入したことを知った場に彼も居合わせていた。大柄の大男で、如何にも威厳のありそうな人物。
その見た目に似合わず、巨大な物から精密な物まで作り出せる器用さを持つ人物。彼の建造や増設のおかげで、命を救われた者達多い。故に彼らのエイヴリーに対する忠誠心は厚い。
チン・シーやキングとは違った組織の形を作り上げていたエイヴリー海賊団の船長エイヴリーは、マクシムの命を救ったシン達を船へと案内する。そして船を寄せて船内からツクヨがマクシムを抱えて、彼らの船に連れ込む。
現状がこんな状況であるが故、ゆっくり話をしている暇などなく、船内に入ることなくマクシムの身柄を受け渡すと、事の経緯を説明する。その中でシンは、エイヴリーにも例の文字のことを話した。
彼も多くの大海原を渡り、世界を旅する者。その旅の途中で何かしら関係のあるものを知っていても非市議ではない。寧ろ、レールガンなどという近代兵器を作り出せる彼であれば、他の誰よりも有益な情報を持っていそうなものだろう。
シンはミアに頼み、もう一度ウンディーネを呼び出してもらうと、リヴァイアサンの背中で見た謎の文字を、水を使って作り出した。だが、それを見るエイヴリーの表情からは、シン達の期待するような答えは返って来そうになかった。
「悪りぃが、見たこともねぇ文字だ。だが、ヘラルトの奴が持ち込んだ書物になら、何か関係するものがあるかも知れねぇな・・・」
エイヴリーの口からでたその名を聞き、シンはもう一つ彼に伝えなければならないことがある事を思い出す。そのヘラルトは、シンを漆黒の穴から逃すために飲み込まれてしまった。
自らの好奇心のせいで犠牲にしてしまった命に、口が言葉を発することを拒む。しかし、真実を伝えることが残された者の役目。それに、彼が死んだとは限らない。穴に飲み込まれただけで、何処かへ転移した可能性だってゼロではないのだから。
「エイヴリー・・・。もう一つ、話しておかなければならない事があるんだ・・・」
「・・・ヘラルトの事か?」
シンは驚きのあまり、言葉を詰まらせ呆気に取られたような表情でエイヴリーを見つめる。彼は知っていたのだ。リヴァイアサンの元で戦うシンを助けたいと飛び出し、そしてこの場にそのシンと共に姿を現さなかったことから、ヘラルトに身に何かがあった事を。
「アイツは恩人であるアンタの力になりたいと、ここを飛び出していった。それはアイツの意志であり、俺らもアイツが海賊に入りたいと言ってきた時から、身の安全は保証しねぇと言ってきた・・・」
エイヴリー海賊団は、自由な思想を掲げており、船員達も掟や決まり事に縛られる事なく自由奔放に海賊をしている。だがそれは、自由である代償に自分の運命は自分で決めるという意味も含まれていた。
当然、仲間を見殺しにするようなことはないが、自ら望んで敵地に赴く者や、私怨で戦おうとする者を止めることはない。それはその者が、自ら望み自ら決めた道であり、他人が口出すようなことではないという考え方をしている。
ヘラルトは、自らの意志でシンの力になりたいと飛び出して行き、そこで命を絶やしたのなら、それが彼の運命だったのだろう。誰もそれを邪魔することは出来ないし、そこで起きたことは全て自己責任なのだ。
「だからアンタの気にする事じゃねぇさ」
「・・・アンタ達は、強いんだな。そして厳しい・・・。俺はそんなに割り切れない・・・」
「自然も同じだ。俺達ぁいろんな事を自然の中で学び、そして自然は俺達の命を最も容易く奪っていく。それこそ何事もなかったかのようにな。いちいち感傷に浸るのすら面倒にならぁ・・・」
彼らはそれだけ多くの“死“を目の当たりにして来たのだろう。それはシン達の世界では滅多に訪れるものではない。だが決して遠いものでもない。誰もが一度は考えるものであり、いずれ向き合わなければならないもの。
そのタイミングは人によって違い、数もまちまちである。それがこの世界では日常茶飯事に遭遇するものなのだろう。
「だが、その感傷に浸れるだけの気持ちがあるのなら、それ以上汚さねぇことだ。お前ら、海賊じゃぁねぇんだろ?」
「ッ・・・」
エイヴリーには全て見透かされているようだった。歴戦の者達であれば、すぐに素人だと分かるのだろう。それは海を旅する海賊としても、まだ多くの穢れや悲しみを知らない、人生の素人であることも。
突然上の者の名を出され、身柄を預かっている言われれば気も動転するというもの。だが、それもすぐに終わりを告げる。彼らが対峙している場に、大海賊エイヴリーがクラフトで補強するついでに訪れたのだ。
「マクシム・・・。そうか、無事だったか」
「あ・・・アンタは、エイヴリー・・・?」
シン達が彼と対面したのは、これで二度目。グラン・ヴァーグのレース会場で、ヘラルトがエイヴリー海賊団に加入したことを知った場に彼も居合わせていた。大柄の大男で、如何にも威厳のありそうな人物。
その見た目に似合わず、巨大な物から精密な物まで作り出せる器用さを持つ人物。彼の建造や増設のおかげで、命を救われた者達多い。故に彼らのエイヴリーに対する忠誠心は厚い。
チン・シーやキングとは違った組織の形を作り上げていたエイヴリー海賊団の船長エイヴリーは、マクシムの命を救ったシン達を船へと案内する。そして船を寄せて船内からツクヨがマクシムを抱えて、彼らの船に連れ込む。
現状がこんな状況であるが故、ゆっくり話をしている暇などなく、船内に入ることなくマクシムの身柄を受け渡すと、事の経緯を説明する。その中でシンは、エイヴリーにも例の文字のことを話した。
彼も多くの大海原を渡り、世界を旅する者。その旅の途中で何かしら関係のあるものを知っていても非市議ではない。寧ろ、レールガンなどという近代兵器を作り出せる彼であれば、他の誰よりも有益な情報を持っていそうなものだろう。
シンはミアに頼み、もう一度ウンディーネを呼び出してもらうと、リヴァイアサンの背中で見た謎の文字を、水を使って作り出した。だが、それを見るエイヴリーの表情からは、シン達の期待するような答えは返って来そうになかった。
「悪りぃが、見たこともねぇ文字だ。だが、ヘラルトの奴が持ち込んだ書物になら、何か関係するものがあるかも知れねぇな・・・」
エイヴリーの口からでたその名を聞き、シンはもう一つ彼に伝えなければならないことがある事を思い出す。そのヘラルトは、シンを漆黒の穴から逃すために飲み込まれてしまった。
自らの好奇心のせいで犠牲にしてしまった命に、口が言葉を発することを拒む。しかし、真実を伝えることが残された者の役目。それに、彼が死んだとは限らない。穴に飲み込まれただけで、何処かへ転移した可能性だってゼロではないのだから。
「エイヴリー・・・。もう一つ、話しておかなければならない事があるんだ・・・」
「・・・ヘラルトの事か?」
シンは驚きのあまり、言葉を詰まらせ呆気に取られたような表情でエイヴリーを見つめる。彼は知っていたのだ。リヴァイアサンの元で戦うシンを助けたいと飛び出し、そしてこの場にそのシンと共に姿を現さなかったことから、ヘラルトに身に何かがあった事を。
「アイツは恩人であるアンタの力になりたいと、ここを飛び出していった。それはアイツの意志であり、俺らもアイツが海賊に入りたいと言ってきた時から、身の安全は保証しねぇと言ってきた・・・」
エイヴリー海賊団は、自由な思想を掲げており、船員達も掟や決まり事に縛られる事なく自由奔放に海賊をしている。だがそれは、自由である代償に自分の運命は自分で決めるという意味も含まれていた。
当然、仲間を見殺しにするようなことはないが、自ら望んで敵地に赴く者や、私怨で戦おうとする者を止めることはない。それはその者が、自ら望み自ら決めた道であり、他人が口出すようなことではないという考え方をしている。
ヘラルトは、自らの意志でシンの力になりたいと飛び出して行き、そこで命を絶やしたのなら、それが彼の運命だったのだろう。誰もそれを邪魔することは出来ないし、そこで起きたことは全て自己責任なのだ。
「だからアンタの気にする事じゃねぇさ」
「・・・アンタ達は、強いんだな。そして厳しい・・・。俺はそんなに割り切れない・・・」
「自然も同じだ。俺達ぁいろんな事を自然の中で学び、そして自然は俺達の命を最も容易く奪っていく。それこそ何事もなかったかのようにな。いちいち感傷に浸るのすら面倒にならぁ・・・」
彼らはそれだけ多くの“死“を目の当たりにして来たのだろう。それはシン達の世界では滅多に訪れるものではない。だが決して遠いものでもない。誰もが一度は考えるものであり、いずれ向き合わなければならないもの。
そのタイミングは人によって違い、数もまちまちである。それがこの世界では日常茶飯事に遭遇するものなのだろう。
「だが、その感傷に浸れるだけの気持ちがあるのなら、それ以上汚さねぇことだ。お前ら、海賊じゃぁねぇんだろ?」
「ッ・・・」
エイヴリーには全て見透かされているようだった。歴戦の者達であれば、すぐに素人だと分かるのだろう。それは海を旅する海賊としても、まだ多くの穢れや悲しみを知らない、人生の素人であることも。
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