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神代 コウ

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海賊の王者との接触

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 リヴァイアサンの攻撃は、まるで最後の力を振り絞るように激化していた。だがそれでも、エイヴリーやキング達が初めに戦っていた時ほどの脅威ではない。

 自我を失くし、溢れんばかりの魔力をただただ放出させるだけの、力任せの攻撃ばかりになっている。上空でシン達を狙っていた程の精密な攻撃は見る影もなく、暴れ回るような動きに変わった。

 それにより海は大きく荒れた。海賊達に求められたのは、この荒波の中で船を沈没させない技術力。しかし、ここまで生き残った海賊達であれば、越えられない壁ではない。

 各所で暴れ回るリヴァイアサンの胴体と、その取り巻きのモンスター。大型船は波に足を取られ、バランスを取るので精一杯になり、移動が出来ない。それぞれの場所で近場を移動する胴体と戦いながら、小型モンスターを処理していく。

 それはキングやエイヴリー、チン・シーの海賊船も例外ではなく、シン達が乗り込んだ頭部に近づくことが出来ない。

 エイヴリーはレールガンの取り付けられた戦艦を離れ、それぞれの海賊船に渡り、砲台を強化・増設していく。足を奪われた今、主な攻撃手段が砲撃や銃撃などの遠距離攻撃が中心となる。いち早くそれを察したエイヴリーは、ロイクの竜に乗り、クラフトの能力を絞り出すように振る舞った。

 遅れて頭部の方へとやって来たキングは、途中で大半の船団を残し、道中もリヴァイアサンの波によってダラーヒムとキング、それぞれの一隻ずつの船のみになってしまった。

 しかし、それと引き換えに彼は、シンの乗っていたツバキのボードを手に入れ、この荒波の中でも自由に動き回れる手段を手に入れた。自身の能力を反映するボードが気に入ったのか、彼は自身の船に戻る前にリヴァイアサンの周りで乗り回しながら、小型モンスターとリヴァイアサンの攻撃を見事に避けていた。

 ただ遊んでいるようにも見えたが、彼のその動きが小型モンスターやリヴァイアサンの注意を引き、撹乱する役割を果たしてくれていた。そのおかげでシン達の船は、妨害を然程受けることなく、エイヴリー海賊団の元へと向かえていた。

 そしてキングと同じく、戦場に遅れて到着したチン・シー海賊団は、彼ら優勝候補の海賊団の中でも、最もリヴァイアサンの頭部と遠い位置におり、荒波による足止めの被害を大きく受けていた。

 一糸乱れぬ連携が特徴であり、最大の武器であった彼女らは、波に陣形を乱され、遠距離からの大技による狙撃を妨害されていた。その上、リヴァイアサンに近づいたことでより一層小型モンスターの標的にされ、船員達をそれらに割かなければならなくなっていた。

 ロロネーとの戦闘で受けた遅れを取り戻すため、それでも少しでもダメージを稼ごうと、少数精鋭による連携で頭部への攻撃を絶えず放っていた。

 頭部を燃やしていた、水にも負けぬほどの火の鳥とまではいかないものの、数人ずつによる連携弓技で放つ火矢は、蛇のように宙をうねりながらリヴァイアサンの後頭部で燃える炎を絶えさぬよう、火を焚べ続けた。

 口に大穴が空いていることで、封じられている攻撃もある筈だ。リヴァイアサンの再生を許すわけにはいかない。レールガンの一撃から繋がれたバトンを止めぬため、チン・シー海賊団は決死の攻防を見せる。

 ヘラルトの残した言葉を叶える為、シン達はマクシムをエイヴリーのところへ連れて行く。シンにとっては漸く訪れたひと時の安息。今だけは彼自身に何かできることもなく、ツバキの操縦に身を任せしかない。

 だが、どんな荒波が訪れようと彼らの心は、どこか安心しきっている。船を操縦しているのは誰よりも歳の若い少年なのだが、熟練の操縦士が運転する船のような安心感がある。

 船内の窓から外の様子を伺うと、周りには多くの小型モンスターが見える。ツバキの操縦はそれらを相手にすることなく、スムーズに先へ進み、モンスター達の意思も、周りで起こる戦闘の匂いを嗅ぎつけ、徐々に彼らの元から離れていた。

 「見えてきたぞ!エイヴリーんとこの船団だ!」

 操縦桿を握るツバキの声で、一同が進行方向へ視線を送る。そこには、遠くで見ていた時よりも大きく力強い、物々しいレールガンの姿と戦艦が近づいていた。

 そしてその周りには、普通の海賊船ではありえない程の砲台や、近代兵器のようなものが設置され、けたたましい戦火を散らしていた。

 「船長!何者かの船がこちらに向かってきます!」

 忙しなくクラフト能力を振るうエイヴリーに、船員の一人が近づいて来るシン達の船を見つけ、報告をする。エイヴリーは振り返らず、手を止めることなく船員の報告を受けるが、それほど警戒している様子もなかった。

 「何ぃ・・・?これだけ武装して戦う俺達へ向かって来るんだ。何も襲撃に来たってわけじゃぁなさそうだな・・・。命知らずにしても程がある。近くに来たら引き留め、要件を聞け!それまで手を出すなよ」

 小型モンスターを狙う砲撃の中を掻い潜り、シン達がエイヴリー海賊団の船に接触する。最低限の警戒の為か、銃口をこちらに向けながら要件を聞いてくるエイヴリー海賊団に対し、シン達は彼らの幹部であるマクシムの名を出し、身柄を預かっていることを告げる。
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