584 / 1,646
海賊の王者との接触
しおりを挟む
リヴァイアサンの攻撃は、まるで最後の力を振り絞るように激化していた。だがそれでも、エイヴリーやキング達が初めに戦っていた時ほどの脅威ではない。
自我を失くし、溢れんばかりの魔力をただただ放出させるだけの、力任せの攻撃ばかりになっている。上空でシン達を狙っていた程の精密な攻撃は見る影もなく、暴れ回るような動きに変わった。
それにより海は大きく荒れた。海賊達に求められたのは、この荒波の中で船を沈没させない技術力。しかし、ここまで生き残った海賊達であれば、越えられない壁ではない。
各所で暴れ回るリヴァイアサンの胴体と、その取り巻きのモンスター。大型船は波に足を取られ、バランスを取るので精一杯になり、移動が出来ない。それぞれの場所で近場を移動する胴体と戦いながら、小型モンスターを処理していく。
それはキングやエイヴリー、チン・シーの海賊船も例外ではなく、シン達が乗り込んだ頭部に近づくことが出来ない。
エイヴリーはレールガンの取り付けられた戦艦を離れ、それぞれの海賊船に渡り、砲台を強化・増設していく。足を奪われた今、主な攻撃手段が砲撃や銃撃などの遠距離攻撃が中心となる。いち早くそれを察したエイヴリーは、ロイクの竜に乗り、クラフトの能力を絞り出すように振る舞った。
遅れて頭部の方へとやって来たキングは、途中で大半の船団を残し、道中もリヴァイアサンの波によってダラーヒムとキング、それぞれの一隻ずつの船のみになってしまった。
しかし、それと引き換えに彼は、シンの乗っていたツバキのボードを手に入れ、この荒波の中でも自由に動き回れる手段を手に入れた。自身の能力を反映するボードが気に入ったのか、彼は自身の船に戻る前にリヴァイアサンの周りで乗り回しながら、小型モンスターとリヴァイアサンの攻撃を見事に避けていた。
ただ遊んでいるようにも見えたが、彼のその動きが小型モンスターやリヴァイアサンの注意を引き、撹乱する役割を果たしてくれていた。そのおかげでシン達の船は、妨害を然程受けることなく、エイヴリー海賊団の元へと向かえていた。
そしてキングと同じく、戦場に遅れて到着したチン・シー海賊団は、彼ら優勝候補の海賊団の中でも、最もリヴァイアサンの頭部と遠い位置におり、荒波による足止めの被害を大きく受けていた。
一糸乱れぬ連携が特徴であり、最大の武器であった彼女らは、波に陣形を乱され、遠距離からの大技による狙撃を妨害されていた。その上、リヴァイアサンに近づいたことでより一層小型モンスターの標的にされ、船員達をそれらに割かなければならなくなっていた。
ロロネーとの戦闘で受けた遅れを取り戻すため、それでも少しでもダメージを稼ごうと、少数精鋭による連携で頭部への攻撃を絶えず放っていた。
頭部を燃やしていた、水にも負けぬほどの火の鳥とまではいかないものの、数人ずつによる連携弓技で放つ火矢は、蛇のように宙をうねりながらリヴァイアサンの後頭部で燃える炎を絶えさぬよう、火を焚べ続けた。
口に大穴が空いていることで、封じられている攻撃もある筈だ。リヴァイアサンの再生を許すわけにはいかない。レールガンの一撃から繋がれたバトンを止めぬため、チン・シー海賊団は決死の攻防を見せる。
ヘラルトの残した言葉を叶える為、シン達はマクシムをエイヴリーのところへ連れて行く。シンにとっては漸く訪れたひと時の安息。今だけは彼自身に何かできることもなく、ツバキの操縦に身を任せしかない。
だが、どんな荒波が訪れようと彼らの心は、どこか安心しきっている。船を操縦しているのは誰よりも歳の若い少年なのだが、熟練の操縦士が運転する船のような安心感がある。
船内の窓から外の様子を伺うと、周りには多くの小型モンスターが見える。ツバキの操縦はそれらを相手にすることなく、スムーズに先へ進み、モンスター達の意思も、周りで起こる戦闘の匂いを嗅ぎつけ、徐々に彼らの元から離れていた。
「見えてきたぞ!エイヴリーんとこの船団だ!」
操縦桿を握るツバキの声で、一同が進行方向へ視線を送る。そこには、遠くで見ていた時よりも大きく力強い、物々しいレールガンの姿と戦艦が近づいていた。
そしてその周りには、普通の海賊船ではありえない程の砲台や、近代兵器のようなものが設置され、けたたましい戦火を散らしていた。
「船長!何者かの船がこちらに向かってきます!」
忙しなくクラフト能力を振るうエイヴリーに、船員の一人が近づいて来るシン達の船を見つけ、報告をする。エイヴリーは振り返らず、手を止めることなく船員の報告を受けるが、それほど警戒している様子もなかった。
「何ぃ・・・?これだけ武装して戦う俺達へ向かって来るんだ。何も襲撃に来たってわけじゃぁなさそうだな・・・。命知らずにしても程がある。近くに来たら引き留め、要件を聞け!それまで手を出すなよ」
小型モンスターを狙う砲撃の中を掻い潜り、シン達がエイヴリー海賊団の船に接触する。最低限の警戒の為か、銃口をこちらに向けながら要件を聞いてくるエイヴリー海賊団に対し、シン達は彼らの幹部であるマクシムの名を出し、身柄を預かっていることを告げる。
自我を失くし、溢れんばかりの魔力をただただ放出させるだけの、力任せの攻撃ばかりになっている。上空でシン達を狙っていた程の精密な攻撃は見る影もなく、暴れ回るような動きに変わった。
それにより海は大きく荒れた。海賊達に求められたのは、この荒波の中で船を沈没させない技術力。しかし、ここまで生き残った海賊達であれば、越えられない壁ではない。
各所で暴れ回るリヴァイアサンの胴体と、その取り巻きのモンスター。大型船は波に足を取られ、バランスを取るので精一杯になり、移動が出来ない。それぞれの場所で近場を移動する胴体と戦いながら、小型モンスターを処理していく。
それはキングやエイヴリー、チン・シーの海賊船も例外ではなく、シン達が乗り込んだ頭部に近づくことが出来ない。
エイヴリーはレールガンの取り付けられた戦艦を離れ、それぞれの海賊船に渡り、砲台を強化・増設していく。足を奪われた今、主な攻撃手段が砲撃や銃撃などの遠距離攻撃が中心となる。いち早くそれを察したエイヴリーは、ロイクの竜に乗り、クラフトの能力を絞り出すように振る舞った。
遅れて頭部の方へとやって来たキングは、途中で大半の船団を残し、道中もリヴァイアサンの波によってダラーヒムとキング、それぞれの一隻ずつの船のみになってしまった。
しかし、それと引き換えに彼は、シンの乗っていたツバキのボードを手に入れ、この荒波の中でも自由に動き回れる手段を手に入れた。自身の能力を反映するボードが気に入ったのか、彼は自身の船に戻る前にリヴァイアサンの周りで乗り回しながら、小型モンスターとリヴァイアサンの攻撃を見事に避けていた。
ただ遊んでいるようにも見えたが、彼のその動きが小型モンスターやリヴァイアサンの注意を引き、撹乱する役割を果たしてくれていた。そのおかげでシン達の船は、妨害を然程受けることなく、エイヴリー海賊団の元へと向かえていた。
そしてキングと同じく、戦場に遅れて到着したチン・シー海賊団は、彼ら優勝候補の海賊団の中でも、最もリヴァイアサンの頭部と遠い位置におり、荒波による足止めの被害を大きく受けていた。
一糸乱れぬ連携が特徴であり、最大の武器であった彼女らは、波に陣形を乱され、遠距離からの大技による狙撃を妨害されていた。その上、リヴァイアサンに近づいたことでより一層小型モンスターの標的にされ、船員達をそれらに割かなければならなくなっていた。
ロロネーとの戦闘で受けた遅れを取り戻すため、それでも少しでもダメージを稼ごうと、少数精鋭による連携で頭部への攻撃を絶えず放っていた。
頭部を燃やしていた、水にも負けぬほどの火の鳥とまではいかないものの、数人ずつによる連携弓技で放つ火矢は、蛇のように宙をうねりながらリヴァイアサンの後頭部で燃える炎を絶えさぬよう、火を焚べ続けた。
口に大穴が空いていることで、封じられている攻撃もある筈だ。リヴァイアサンの再生を許すわけにはいかない。レールガンの一撃から繋がれたバトンを止めぬため、チン・シー海賊団は決死の攻防を見せる。
ヘラルトの残した言葉を叶える為、シン達はマクシムをエイヴリーのところへ連れて行く。シンにとっては漸く訪れたひと時の安息。今だけは彼自身に何かできることもなく、ツバキの操縦に身を任せしかない。
だが、どんな荒波が訪れようと彼らの心は、どこか安心しきっている。船を操縦しているのは誰よりも歳の若い少年なのだが、熟練の操縦士が運転する船のような安心感がある。
船内の窓から外の様子を伺うと、周りには多くの小型モンスターが見える。ツバキの操縦はそれらを相手にすることなく、スムーズに先へ進み、モンスター達の意思も、周りで起こる戦闘の匂いを嗅ぎつけ、徐々に彼らの元から離れていた。
「見えてきたぞ!エイヴリーんとこの船団だ!」
操縦桿を握るツバキの声で、一同が進行方向へ視線を送る。そこには、遠くで見ていた時よりも大きく力強い、物々しいレールガンの姿と戦艦が近づいていた。
そしてその周りには、普通の海賊船ではありえない程の砲台や、近代兵器のようなものが設置され、けたたましい戦火を散らしていた。
「船長!何者かの船がこちらに向かってきます!」
忙しなくクラフト能力を振るうエイヴリーに、船員の一人が近づいて来るシン達の船を見つけ、報告をする。エイヴリーは振り返らず、手を止めることなく船員の報告を受けるが、それほど警戒している様子もなかった。
「何ぃ・・・?これだけ武装して戦う俺達へ向かって来るんだ。何も襲撃に来たってわけじゃぁなさそうだな・・・。命知らずにしても程がある。近くに来たら引き留め、要件を聞け!それまで手を出すなよ」
小型モンスターを狙う砲撃の中を掻い潜り、シン達がエイヴリー海賊団の船に接触する。最低限の警戒の為か、銃口をこちらに向けながら要件を聞いてくるエイヴリー海賊団に対し、シン達は彼らの幹部であるマクシムの名を出し、身柄を預かっていることを告げる。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる