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神代 コウ

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あらぬ疑い

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 レールガンから放たれた一撃は、ブレスを溜めるリヴァイアサンの大口に命中し、上空に大きな爆発を巻き起こす。その様子は、まだ戦闘の会場に到着していなかったキングの船からもハッキリと確認でき、余波が彼らの船団を大きく揺らす。

 「何つぅ衝撃波起こしてんのよ、おっさん!船は無事かぃ?どこも壊れてなぁ~い!?」

 「だッ大丈夫です!ただ・・・今の衝撃で生じた波と突風が強く・・・船が押し戻されてますッ!」

 激しい高波を次々に受け、キングの船団は大きく揺らされた。波を乗り越える際、船はその高低差で僅かに浮かぶ。そこへ爆風がやって来ては船を波と共に押し流していた。

 すると、彼らと共に帆を進めていたダラーヒムの船がキングの乗る船へ近づいて来る。何故彼の船だけ、波や突風に流されず移動できているのか。それは、ダラーヒムの錬金術によって改造された船体のおかげだった。

 空気抵抗を受け流すように船首を尖らせ、マストを変形させ船尾の方へ付けると、突風を利用し後方へ噴き出す装置を作り出し、推進力を得ていた。

 異様な形をしたダラーヒムの船がキングの元へやってくると、土色の光と雷を放ち、キングの船を同じように変形させた。

 「ボスッ!これで爆風の中を進めるはずだ!」

 「相変わらずセンスに欠けるぜぇ、お前の造形はよぉ」

 「機能重視なんだ、しばらくの間我慢してくれやぁ」

 「パーティ会場に着く前に、ドレスアップしてくれよぉ~?」

 船と呼ぶには些か奇妙な形に変わった二隻の船は、爆風の中をゆっくり前進していく。他の仲間達へは、後でついて来られる時について来いと指示を出し、キングとダラーヒムの船団は、そのまま徐々に後方へと押し流されていった。

 戦況を伺うように各海賊達の攻勢の手が止まる。そして彼らは、煙の中から姿を現したリヴァイアサンに、再び気を引き締め、次なる一手を模索する。

 これまで見たことがない程の損壊。だが、僅かではあるが徐々にその血肉を再生させ、元の姿へと戻ろうとしている。回復が遅い分、このまま畳み掛ければ、或いは仕留められるかもしれない。

 しかし、期待のレールガンは再装填の準備で暫くは使い物にならない。威力は大きく落ちるが、それでも火力として今期待できるのは、チン・シー海賊団の連繋弓技による炎の鳥しかない。

 当人達もそれをよく理解しているようで、既に次の火矢がリヴァイアサンの傷口を広げんと、飛び立っていた。甲高い鳴き声を上げながらリヴァイアサンの頭部に空いた風穴に命中すると、炎はモリモリと積み上げられていく肉の壁を燃やし尽くすように引火し、首の周りを炎で包んだ。

 「おいおい・・・これじゃぁあの呪術の装置に近づけないんじゃッ・・・」

 「大丈夫よ。貴方一人分くらいなら、炎の熱から身を守れる。それに安心して?登るルートは何もあの大きな身体だけじゃないんだから・・・!」

 焼ける肉体に、声にならないうめき声をあげるリヴァイアサン。首を大きく揺らしながら、引火した炎を消そうとしている。チン・シー海賊団が放った炎の鳥は、リヴァイアサンの再生を妨げる役目を見事に果たしている。

 今の内にと、ウンディーネは両手をガッチリと握る。すると、その小さな身体が青白く光を放ち、周囲の海水を持ち上げ、リヴァイアサンの後頭部辺りへ通じる水の道を作り上げた。

 その身体からは想像もできない所業に、驚きのあまり言葉を失うシン。そして、リヴァイアサンの首元で起きるその現象は、他の前線にいる者達の目にも映っていた。

 「何だ・・・あれは・・・?キングんところの部下の仕業か?」

 「どうだろう・・・。キングの姿も見えないのに、部下だけを送り込むだろうか・・・」

 エイヴリー達は、キング海賊団の内、よく活躍を聞く四人の幹部達については知っていた。だが、アルマンの言う通り、わざわざ危険なリヴァイアサンの首元に部下だけを送り込むだろうか。

 「何だありゃぁ!?」

 「あれは確か、俺の酒場で騒ぎを起こしてた・・・。アイツらも参加してやがったのか。いいねぇ~、なかなか根性あるじゃぁないのぉ~!」

 キングは、その海面から伸びる水の道よりも、リヴァイアサンの首元にいる人影に注視していた。そこには、港町グラン・ヴァーグに着いたばかりの、キングの島である酒場で騒ぎを起こしていた二人組の内の一人がいた。

 彼はシンとミアのことを覚えていた。キングが彼らを忘れるはずがない。キングは聖都ユスティーチでの事件に、シン達が関わっているのではないかと疑っていた。

 裏の仕事をする上で、物流の盛んだったユスティーチ。正義を振りかざすシュトラールが統治していては、思い通りにいかないことも多く、キングの悩みの種の一つだった。

 それを排除してくれた者に素直に感謝したと共に、あのシュトラールを倒した人物ということで警戒していたのだ。新たに自身の障壁になるやもしれぬ者達に。
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