575 / 1,646
未知の装置
しおりを挟む
助けると言いつつも、銃口を向けるミアの行動に不安になるシンとツクヨ。突拍子もない行動に唖然としている二人にミアは、ボサッとしてないで手を貸せと指示を出す。
すぐに船内へ戻り、ツバキのボードを二人分甲板へ持って来るように指示を出すと、彼女はライフル銃に魔力を込め始める。それは、ロロネーとの戦いで見せたミアの新たな力。
錬金術を使った、四大元素の精霊の力を銃弾に込める魔弾。しかし、前回見せた時はハンドガンだった。ライフル銃での実戦は初めてで、上手くいくかは一か八かだった。
だが、ミアには成功する自信があった。幸か不幸か、一番初めに彼女に力を貸したのは、戦場と相性のいいウンディーネだったからだ。温厚なウンディーネとミアの仲は良好。必要とあらば必ず力を貸してくれると信じていたのだ。
「さぁ、もう一度見せてくれ。アンタの力をッ・・・!」
銃口に青いオーラと共に水飛沫が集約し始める。そして魔力が充填され切ると、ミアのライフル銃が青白く発光し出した。ウンディーネの魔力を確かに感じたミアは、彼女の力添えに僅かに笑みを浮かべる。
そして獲物を捕捉する鷹のように鋭い目つきに変わると、息を止めて狙いを定める。そっと引き金にかけられた指を、全霊を込めて一気に引く。射撃の反動を身体に受け、放たれた魔弾はレーザービームのように落下する影へと飛んでいった。
ウンディーネの魔力が込められた銃弾は、マクシムに近づくに連れ、その形を変えていく。水を纏いながら回転する銃弾は、原型を留めないほど水と同化し、水の光線となってうねりながら軌道を変える。
突然射線を変えた魔弾は、まるで生き物のように海へと飛び込み、その姿を消してしまう。だが、魔弾は間も無くして海水から飛び出すと、一本の大きな水の柱と、それに追従する複数本の水の触手を纏い、マクシムの元へと辿り着く。
彼の落下予測地点を見定めると、円を描くように太い水の柱が囲む。そして複数の水の触手は、マクシムをキャッチする網のように織り込まれていく。
同時に、ボードを持った二人がミアの元へ帰ってくると、そこには魔弾の軌道を辿るように、船から伸びる水の道が出来上がっていたのだ。
「道は作った!後は奴を回収するだけだ、急げ!」
シンとツクヨは、状況を目の当たりにして直ぐにミアの伝えたいであろう事を理解した。何も言わず二人は強く頷き、水の道にボードごと飛び乗ると、一気に駆け抜けていった。
ボードの推進力だけでなく、水の道には進行方向へ二人を運ぶ強い流れが出来ていた。二つの勢いが重なり、マクシムが落下するよりも早いスピードで落下地点へと運ばれていくシン達。
肝心のマクシムは、海面に近づいたところでウンディーネによる水の網にキャッチされ、落下の速度をゆっくりと落としていった。彼は身体は鋼糸を伸ばすことをやめ、落下に身を任せるように力が抜けていた。
急降下する落下の中で、彼の意識は飛んでしまっていた。このままだったら確実に彼の身体は悲惨な最期を迎えていたことだろう。ミアの咄嗟の判断は正しかった。
シン達は流れに沿うように、マクシムの周りをぐるりと一周し水の網に優しく包まれた彼を救出した。
「彼は・・・マクシムさんッ!?」
「何だ、知り合いだったのか?」
ツクヨはレース会場で彼を見かける前に、既に面識があった。それはツバキと共に、ウィリアム宛の荷物を運んでいる途中だった。見知らぬ者達に絡まれた際に、マクシムがその場を収めてくれたのだ。
その時彼は、ツバキ達が運ぶ荷物を心配していた。今にして思えば、それがエイヴリーの海賊船を強化する素材であり、ツバキのボードが操縦者の魔力を反映する特殊な機能を備えたのも、その素材のおかげだった。
あの場で荷物に何かあったいたら、シン達は今こんなところにいなかっただろう。グレイスやチン・シー、それにハオランやキング達。彼らと関係を築くことなく、黒いコートの男達と接触する機会すらなかっただろう。
マクシムを回収し、船に戻ろうとしていたシンとツクヨ。だが、上空で大きな爆発を引き起こしていたリヴァイアサンの頭部で、ある動きがあった。
爆発で巻き上がる煙の中、そのすぐ麓にいたシンは、ふと上を見上げリヴァイアサンがどうなったのかを確認する。すると、レールガンの一撃を受け、口から後頭部へかけて大きな風穴が開いており、自身のブレスで溜めた魔力の爆発で、下顎が根こそぎ吹き飛んでいたのだ。
勝負は決したかのように思えたが、シンは煙の奥の惨状の中で、それを見逃さなかった。風穴の空いたリヴァイアサンの後頭部より更にしたの辺りに、破損した身体の部位を再生する能力を抑制しようとする、何かの装置のようなものが見えた。
それは、リヴァイアサンの脅威の再生能力に悪戦苦闘する海賊達の裏で、背の高い黒コートの男が仕掛けた呪術だった。その装置はリヴァイアサンの本来持つ力を封じ、神獣としての能力を奪うもの。
本来あるべき場所に帰すと男は言っていたが、それがどこなのか今のシンには到底わかる筈もなかった。しかし、それが何らかの効果をもたらしていることは、シンにも理解できた。
これを利用できれば、再生自体を抑止できるのではないかと考えた。
すぐに船内へ戻り、ツバキのボードを二人分甲板へ持って来るように指示を出すと、彼女はライフル銃に魔力を込め始める。それは、ロロネーとの戦いで見せたミアの新たな力。
錬金術を使った、四大元素の精霊の力を銃弾に込める魔弾。しかし、前回見せた時はハンドガンだった。ライフル銃での実戦は初めてで、上手くいくかは一か八かだった。
だが、ミアには成功する自信があった。幸か不幸か、一番初めに彼女に力を貸したのは、戦場と相性のいいウンディーネだったからだ。温厚なウンディーネとミアの仲は良好。必要とあらば必ず力を貸してくれると信じていたのだ。
「さぁ、もう一度見せてくれ。アンタの力をッ・・・!」
銃口に青いオーラと共に水飛沫が集約し始める。そして魔力が充填され切ると、ミアのライフル銃が青白く発光し出した。ウンディーネの魔力を確かに感じたミアは、彼女の力添えに僅かに笑みを浮かべる。
そして獲物を捕捉する鷹のように鋭い目つきに変わると、息を止めて狙いを定める。そっと引き金にかけられた指を、全霊を込めて一気に引く。射撃の反動を身体に受け、放たれた魔弾はレーザービームのように落下する影へと飛んでいった。
ウンディーネの魔力が込められた銃弾は、マクシムに近づくに連れ、その形を変えていく。水を纏いながら回転する銃弾は、原型を留めないほど水と同化し、水の光線となってうねりながら軌道を変える。
突然射線を変えた魔弾は、まるで生き物のように海へと飛び込み、その姿を消してしまう。だが、魔弾は間も無くして海水から飛び出すと、一本の大きな水の柱と、それに追従する複数本の水の触手を纏い、マクシムの元へと辿り着く。
彼の落下予測地点を見定めると、円を描くように太い水の柱が囲む。そして複数の水の触手は、マクシムをキャッチする網のように織り込まれていく。
同時に、ボードを持った二人がミアの元へ帰ってくると、そこには魔弾の軌道を辿るように、船から伸びる水の道が出来上がっていたのだ。
「道は作った!後は奴を回収するだけだ、急げ!」
シンとツクヨは、状況を目の当たりにして直ぐにミアの伝えたいであろう事を理解した。何も言わず二人は強く頷き、水の道にボードごと飛び乗ると、一気に駆け抜けていった。
ボードの推進力だけでなく、水の道には進行方向へ二人を運ぶ強い流れが出来ていた。二つの勢いが重なり、マクシムが落下するよりも早いスピードで落下地点へと運ばれていくシン達。
肝心のマクシムは、海面に近づいたところでウンディーネによる水の網にキャッチされ、落下の速度をゆっくりと落としていった。彼は身体は鋼糸を伸ばすことをやめ、落下に身を任せるように力が抜けていた。
急降下する落下の中で、彼の意識は飛んでしまっていた。このままだったら確実に彼の身体は悲惨な最期を迎えていたことだろう。ミアの咄嗟の判断は正しかった。
シン達は流れに沿うように、マクシムの周りをぐるりと一周し水の網に優しく包まれた彼を救出した。
「彼は・・・マクシムさんッ!?」
「何だ、知り合いだったのか?」
ツクヨはレース会場で彼を見かける前に、既に面識があった。それはツバキと共に、ウィリアム宛の荷物を運んでいる途中だった。見知らぬ者達に絡まれた際に、マクシムがその場を収めてくれたのだ。
その時彼は、ツバキ達が運ぶ荷物を心配していた。今にして思えば、それがエイヴリーの海賊船を強化する素材であり、ツバキのボードが操縦者の魔力を反映する特殊な機能を備えたのも、その素材のおかげだった。
あの場で荷物に何かあったいたら、シン達は今こんなところにいなかっただろう。グレイスやチン・シー、それにハオランやキング達。彼らと関係を築くことなく、黒いコートの男達と接触する機会すらなかっただろう。
マクシムを回収し、船に戻ろうとしていたシンとツクヨ。だが、上空で大きな爆発を引き起こしていたリヴァイアサンの頭部で、ある動きがあった。
爆発で巻き上がる煙の中、そのすぐ麓にいたシンは、ふと上を見上げリヴァイアサンがどうなったのかを確認する。すると、レールガンの一撃を受け、口から後頭部へかけて大きな風穴が開いており、自身のブレスで溜めた魔力の爆発で、下顎が根こそぎ吹き飛んでいたのだ。
勝負は決したかのように思えたが、シンは煙の奥の惨状の中で、それを見逃さなかった。風穴の空いたリヴァイアサンの後頭部より更にしたの辺りに、破損した身体の部位を再生する能力を抑制しようとする、何かの装置のようなものが見えた。
それは、リヴァイアサンの脅威の再生能力に悪戦苦闘する海賊達の裏で、背の高い黒コートの男が仕掛けた呪術だった。その装置はリヴァイアサンの本来持つ力を封じ、神獣としての能力を奪うもの。
本来あるべき場所に帰すと男は言っていたが、それがどこなのか今のシンには到底わかる筈もなかった。しかし、それが何らかの効果をもたらしていることは、シンにも理解できた。
これを利用できれば、再生自体を抑止できるのではないかと考えた。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる