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神代 コウ

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決死の勇姿

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 リヴァイアサンの口の中で大きな爆発が起きる少し前。鋼糸で巨体にしがみ付いていたマクシムは、この予期せぬ相乗効果を生み出す為に動いていた。頭部の方を目指しよじ登っていた彼は、その大口に集まる光と魔力に気づく。

 アルマンがリヴァイアサンの口を狙い、レールガンで撃ち抜く策を思いついていたように、マクシムもまた、守りの硬い頭部を撃ち抜くには、口の中を狙うしかないと考えていた。

 ただ、それだけでは本体と同様、風穴が開くだけでまた再生されてしまうだけかもしれない。そこで更に一手、マクシムが思い付いたのが、リヴァイアサン自身の魔力を利用しようというものだった。

 ゆっくりと開き始める大口。そして徐々に光が集い始め、正気を乱すほどの魔力が漂い始める。タイムリミットまで、そう長くはない。

 このままよじ登っていては、到底リヴァイアサンの口にまでは到達できない。そこで彼は、一か八か大口が開ききり、下顎が近づいて来るのを待った。

 それまでマクシムは、下準備に自身の鋼糸をくくりつけたアンカーをリヴァイアサンの首元に、何本か突き刺していた。アンカーとは反対側の鋼糸を、ある程度余分に伸ばして切断すると、今度はそちら側にも別のアンカーを取り付ける。

 全ての下準備が整うと、最後に自身の命綱ように同じ仕組みのものを作ると、今度は鋼糸の短いものを自身の身体に括り付け、両手を使えるようにし、大口が開き切るのを待った。

 目論見を決行する時は、それ程経たずして訪れた。リヴァイアサンの大きな口が開ききり、中からは強い光と魔力が漏れ出していた。

 大きく深呼吸をし、身体を慣らすように軽く飛び跳ねるマクシム。そして意を決した彼は、素早い動きで次々にアンカーをリヴァイアサンの下顎に向けて投げ放っていく。

 アンカーはリヴァイアサンの下顎を通り過ぎた辺りで鋼糸をピンと張り、重力から解き放たれたように上空へ跳ね上がる。すると、アンカーはリヴァイアサンの下唇に突き刺ささった。

 次々に喉と下唇を鋼糸で繋げていくマクシム。これで準備は整った。役目を終えたマクシムは、エイヴリー達の乗る船を確認する。すると向こう側も準備が整ったようで、レールガンの砲身に強い稲光が駆け巡りだすと、間を置かずして発射される。

 急ぎリヴァイアサンの喉元から退避しなければ、このままマクシムもレールガンの衝撃に巻き込まれ、消し飛ばされてしまう。だが、海へ飛び降りようとするも、そこはあまりに高く、着水の衝撃で身体は弾け飛んでしまうことだろう。

 消し飛ぶか、一か八か飛び降りるか。答えは既に決まっていた。可能性があるとすれば、飛び降りる選択肢しかない。役割を果たしても、決して命を諦めるような真似はしない。

 エイヴリーやロイク達は、きっと彼の帰還を信じている。その期待を裏切らない為にも、足がすくむ様な高さと、死が大口を開けて待っているかの如き海へと身を投げた。

 雷鳴の轟音を轟かせ、レールガンから雷が放たれる。そしてリーズとシャーロットの連携を経て、リヴァイアサンの口に雷がやって来るのに、数秒の時間も要らなかった。

 咄嗟に口を閉じようとするリヴァイアサンだったが、マクシムの仕掛けのせいで閉じることが出来ない。レールガンから放たれた一撃は、リヴァイアサンの口で溜められた魔力の塊を貫き、巨大な爆発を引き起こした。

 上空での爆風に、マクシムの身体は海へ向けて激しく押し出される。必死に鋼糸をリヴァイアサンの身体へ伸ばそうとするも、爆風で届かない。どこか糸を繋げられる場所を探さなければ、マクシムの身体は海に叩きつけられ、潰れたトマトの様に粉々になってしまう。

 「クソッ!クソッ・・・!!望みはねぇのかよッ・・・!?」

 無駄と分かっていながらも、何度も何度も鋼糸を伸ばしてチャレンジするマクシム。まるで、銃弾の入っていない銃の引き金を何度も繰り返し引くように空虚なものだった。

 同刻、リヴァイアサンに近づいていたシン達もまた、エイヴリーの戦艦に取り付けられたレールガンによる一撃を見送り、突如消えたと思ったところで上空へ跳ね上がり、再び姿を現した雷に驚いていた。

 しかし、彼らのリアクションを待つことなく上空のリヴァイアサンの頭部で、巨大な爆発が起こる。何が起こったのか分からぬまま、彼らは甲板にしがみ付きながら、爆発の起こる上空を見上げる。

 「なッ・・・何だコレッ!?」

 「絶対に手を離すなよッ!?落ちたらモンスターの餌だ!」

 爆風に耐えながら、彼らの視線に映ったのは、リヴァイアサンの頭部から何かが落ちてくる光景だった。目を凝らさなければ見失ってしまいそうなほど小さなその影を、不思議と目で追ってしまっていた。

 「何か見えないか・・・?あのでかいモンスターの下の辺り・・・」

 シンの声に、ミアが替えのスコープを取り出して覗く。落下していた黒い影は、一人の人間だった。それが、港町グラン・ヴァーグのレース会場で見かけた、エイヴリー海賊団の幹部の一人であることに気づく。

 「あれって・・・。エイヴリー海賊団のところにいた・・・」

 ミアは手持ちのスコープをシンとツクヨに投げると、自身はライフルに取り付けられたスコープで除き、その影に銃口を向ける。

 「何をッ!?エイヴリーまで敵に回す気かッ!?」

 「逆だよ。アイツを助けて、奴らに恩を着せるッ!」
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