574 / 1,646
決死の勇姿
しおりを挟む
リヴァイアサンの口の中で大きな爆発が起きる少し前。鋼糸で巨体にしがみ付いていたマクシムは、この予期せぬ相乗効果を生み出す為に動いていた。頭部の方を目指しよじ登っていた彼は、その大口に集まる光と魔力に気づく。
アルマンがリヴァイアサンの口を狙い、レールガンで撃ち抜く策を思いついていたように、マクシムもまた、守りの硬い頭部を撃ち抜くには、口の中を狙うしかないと考えていた。
ただ、それだけでは本体と同様、風穴が開くだけでまた再生されてしまうだけかもしれない。そこで更に一手、マクシムが思い付いたのが、リヴァイアサン自身の魔力を利用しようというものだった。
ゆっくりと開き始める大口。そして徐々に光が集い始め、正気を乱すほどの魔力が漂い始める。タイムリミットまで、そう長くはない。
このままよじ登っていては、到底リヴァイアサンの口にまでは到達できない。そこで彼は、一か八か大口が開ききり、下顎が近づいて来るのを待った。
それまでマクシムは、下準備に自身の鋼糸をくくりつけたアンカーをリヴァイアサンの首元に、何本か突き刺していた。アンカーとは反対側の鋼糸を、ある程度余分に伸ばして切断すると、今度はそちら側にも別のアンカーを取り付ける。
全ての下準備が整うと、最後に自身の命綱ように同じ仕組みのものを作ると、今度は鋼糸の短いものを自身の身体に括り付け、両手を使えるようにし、大口が開き切るのを待った。
目論見を決行する時は、それ程経たずして訪れた。リヴァイアサンの大きな口が開ききり、中からは強い光と魔力が漏れ出していた。
大きく深呼吸をし、身体を慣らすように軽く飛び跳ねるマクシム。そして意を決した彼は、素早い動きで次々にアンカーをリヴァイアサンの下顎に向けて投げ放っていく。
アンカーはリヴァイアサンの下顎を通り過ぎた辺りで鋼糸をピンと張り、重力から解き放たれたように上空へ跳ね上がる。すると、アンカーはリヴァイアサンの下唇に突き刺ささった。
次々に喉と下唇を鋼糸で繋げていくマクシム。これで準備は整った。役目を終えたマクシムは、エイヴリー達の乗る船を確認する。すると向こう側も準備が整ったようで、レールガンの砲身に強い稲光が駆け巡りだすと、間を置かずして発射される。
急ぎリヴァイアサンの喉元から退避しなければ、このままマクシムもレールガンの衝撃に巻き込まれ、消し飛ばされてしまう。だが、海へ飛び降りようとするも、そこはあまりに高く、着水の衝撃で身体は弾け飛んでしまうことだろう。
消し飛ぶか、一か八か飛び降りるか。答えは既に決まっていた。可能性があるとすれば、飛び降りる選択肢しかない。役割を果たしても、決して命を諦めるような真似はしない。
エイヴリーやロイク達は、きっと彼の帰還を信じている。その期待を裏切らない為にも、足がすくむ様な高さと、死が大口を開けて待っているかの如き海へと身を投げた。
雷鳴の轟音を轟かせ、レールガンから雷が放たれる。そしてリーズとシャーロットの連携を経て、リヴァイアサンの口に雷がやって来るのに、数秒の時間も要らなかった。
咄嗟に口を閉じようとするリヴァイアサンだったが、マクシムの仕掛けのせいで閉じることが出来ない。レールガンから放たれた一撃は、リヴァイアサンの口で溜められた魔力の塊を貫き、巨大な爆発を引き起こした。
上空での爆風に、マクシムの身体は海へ向けて激しく押し出される。必死に鋼糸をリヴァイアサンの身体へ伸ばそうとするも、爆風で届かない。どこか糸を繋げられる場所を探さなければ、マクシムの身体は海に叩きつけられ、潰れたトマトの様に粉々になってしまう。
「クソッ!クソッ・・・!!望みはねぇのかよッ・・・!?」
無駄と分かっていながらも、何度も何度も鋼糸を伸ばしてチャレンジするマクシム。まるで、銃弾の入っていない銃の引き金を何度も繰り返し引くように空虚なものだった。
同刻、リヴァイアサンに近づいていたシン達もまた、エイヴリーの戦艦に取り付けられたレールガンによる一撃を見送り、突如消えたと思ったところで上空へ跳ね上がり、再び姿を現した雷に驚いていた。
しかし、彼らのリアクションを待つことなく上空のリヴァイアサンの頭部で、巨大な爆発が起こる。何が起こったのか分からぬまま、彼らは甲板にしがみ付きながら、爆発の起こる上空を見上げる。
「なッ・・・何だコレッ!?」
「絶対に手を離すなよッ!?落ちたらモンスターの餌だ!」
爆風に耐えながら、彼らの視線に映ったのは、リヴァイアサンの頭部から何かが落ちてくる光景だった。目を凝らさなければ見失ってしまいそうなほど小さなその影を、不思議と目で追ってしまっていた。
「何か見えないか・・・?あのでかいモンスターの下の辺り・・・」
シンの声に、ミアが替えのスコープを取り出して覗く。落下していた黒い影は、一人の人間だった。それが、港町グラン・ヴァーグのレース会場で見かけた、エイヴリー海賊団の幹部の一人であることに気づく。
「あれって・・・。エイヴリー海賊団のところにいた・・・」
ミアは手持ちのスコープをシンとツクヨに投げると、自身はライフルに取り付けられたスコープで除き、その影に銃口を向ける。
「何をッ!?エイヴリーまで敵に回す気かッ!?」
「逆だよ。アイツを助けて、奴らに恩を着せるッ!」
アルマンがリヴァイアサンの口を狙い、レールガンで撃ち抜く策を思いついていたように、マクシムもまた、守りの硬い頭部を撃ち抜くには、口の中を狙うしかないと考えていた。
ただ、それだけでは本体と同様、風穴が開くだけでまた再生されてしまうだけかもしれない。そこで更に一手、マクシムが思い付いたのが、リヴァイアサン自身の魔力を利用しようというものだった。
ゆっくりと開き始める大口。そして徐々に光が集い始め、正気を乱すほどの魔力が漂い始める。タイムリミットまで、そう長くはない。
このままよじ登っていては、到底リヴァイアサンの口にまでは到達できない。そこで彼は、一か八か大口が開ききり、下顎が近づいて来るのを待った。
それまでマクシムは、下準備に自身の鋼糸をくくりつけたアンカーをリヴァイアサンの首元に、何本か突き刺していた。アンカーとは反対側の鋼糸を、ある程度余分に伸ばして切断すると、今度はそちら側にも別のアンカーを取り付ける。
全ての下準備が整うと、最後に自身の命綱ように同じ仕組みのものを作ると、今度は鋼糸の短いものを自身の身体に括り付け、両手を使えるようにし、大口が開き切るのを待った。
目論見を決行する時は、それ程経たずして訪れた。リヴァイアサンの大きな口が開ききり、中からは強い光と魔力が漏れ出していた。
大きく深呼吸をし、身体を慣らすように軽く飛び跳ねるマクシム。そして意を決した彼は、素早い動きで次々にアンカーをリヴァイアサンの下顎に向けて投げ放っていく。
アンカーはリヴァイアサンの下顎を通り過ぎた辺りで鋼糸をピンと張り、重力から解き放たれたように上空へ跳ね上がる。すると、アンカーはリヴァイアサンの下唇に突き刺ささった。
次々に喉と下唇を鋼糸で繋げていくマクシム。これで準備は整った。役目を終えたマクシムは、エイヴリー達の乗る船を確認する。すると向こう側も準備が整ったようで、レールガンの砲身に強い稲光が駆け巡りだすと、間を置かずして発射される。
急ぎリヴァイアサンの喉元から退避しなければ、このままマクシムもレールガンの衝撃に巻き込まれ、消し飛ばされてしまう。だが、海へ飛び降りようとするも、そこはあまりに高く、着水の衝撃で身体は弾け飛んでしまうことだろう。
消し飛ぶか、一か八か飛び降りるか。答えは既に決まっていた。可能性があるとすれば、飛び降りる選択肢しかない。役割を果たしても、決して命を諦めるような真似はしない。
エイヴリーやロイク達は、きっと彼の帰還を信じている。その期待を裏切らない為にも、足がすくむ様な高さと、死が大口を開けて待っているかの如き海へと身を投げた。
雷鳴の轟音を轟かせ、レールガンから雷が放たれる。そしてリーズとシャーロットの連携を経て、リヴァイアサンの口に雷がやって来るのに、数秒の時間も要らなかった。
咄嗟に口を閉じようとするリヴァイアサンだったが、マクシムの仕掛けのせいで閉じることが出来ない。レールガンから放たれた一撃は、リヴァイアサンの口で溜められた魔力の塊を貫き、巨大な爆発を引き起こした。
上空での爆風に、マクシムの身体は海へ向けて激しく押し出される。必死に鋼糸をリヴァイアサンの身体へ伸ばそうとするも、爆風で届かない。どこか糸を繋げられる場所を探さなければ、マクシムの身体は海に叩きつけられ、潰れたトマトの様に粉々になってしまう。
「クソッ!クソッ・・・!!望みはねぇのかよッ・・・!?」
無駄と分かっていながらも、何度も何度も鋼糸を伸ばしてチャレンジするマクシム。まるで、銃弾の入っていない銃の引き金を何度も繰り返し引くように空虚なものだった。
同刻、リヴァイアサンに近づいていたシン達もまた、エイヴリーの戦艦に取り付けられたレールガンによる一撃を見送り、突如消えたと思ったところで上空へ跳ね上がり、再び姿を現した雷に驚いていた。
しかし、彼らのリアクションを待つことなく上空のリヴァイアサンの頭部で、巨大な爆発が起こる。何が起こったのか分からぬまま、彼らは甲板にしがみ付きながら、爆発の起こる上空を見上げる。
「なッ・・・何だコレッ!?」
「絶対に手を離すなよッ!?落ちたらモンスターの餌だ!」
爆風に耐えながら、彼らの視線に映ったのは、リヴァイアサンの頭部から何かが落ちてくる光景だった。目を凝らさなければ見失ってしまいそうなほど小さなその影を、不思議と目で追ってしまっていた。
「何か見えないか・・・?あのでかいモンスターの下の辺り・・・」
シンの声に、ミアが替えのスコープを取り出して覗く。落下していた黒い影は、一人の人間だった。それが、港町グラン・ヴァーグのレース会場で見かけた、エイヴリー海賊団の幹部の一人であることに気づく。
「あれって・・・。エイヴリー海賊団のところにいた・・・」
ミアは手持ちのスコープをシンとツクヨに投げると、自身はライフルに取り付けられたスコープで除き、その影に銃口を向ける。
「何をッ!?エイヴリーまで敵に回す気かッ!?」
「逆だよ。アイツを助けて、奴らに恩を着せるッ!」
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる