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思わぬ成果
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彼らの希望を乗せ、放たれたレールガン。しかし、その期待を背負うにはあまりに小さくなってしまった雷。無論それは、エイヴリーやアルマンの策の一部に過ぎなかったのだ。
レールガンの一撃を小さくしたのは、砲身の先で群がっていたリーズの眷属である蝙蝠達の仕業だった。彼女のクラスである“タクティシャン“のスキルによるもの。対象を大きくしたり小さくするその能力で、レールガンの雷を小さくしたのだ。
雷は一隻の船の元へ向かって駆け抜ける。それは、狙いの定められていた射線上に居座っていた、エイヴリー海賊団の一隻。その船に乗っていたのは、アルマンの指示により回復班と共に移動していたシャーロットだった。
リヴァイアサンとの戦闘で大分魔力を消費してしまっていた彼女だったが、もう一度大技を放てるくらいに回復していた。甲板に立つシャーロットが、残された魔力を使い、詠唱を唱えていた。
そして、小さくなったレールガンの雷が彼女に近づいていくと、彼女の前に突然、巨大な氷の鏡が現れる。それを目にした者達は、何が起こるのか大方の予想がついた。
アルマンは、レールガンの攻撃をリーズの能力で小さくし、シャーロットの鏡で跳ね返せるぐらいにまで縮小させた。事前に鏡で跳ね返せる威力を聞き出していたアルマンによって、上手い具合に威力を調整した。
跳ね返す先は言うまでもなく、ブレスを放とうと大口を開けるリヴァイアサンの口内。シャーロットの表情からも、十分跳ね返せるだけの自信があるのが窺える。
角度とタイミングは十分。口の内側からレールガンの一撃を浴びれば、流石に大ダメージが狙えるはず。雷はシャーロットが用意した氷の鏡に命中する。ボールが角度のついた床に命中したように、雷は進路を変え、魔力が集うリヴァイアサンの口に向かって跳ね返る。
しかし、当然このままでは威力が足りない。それは誰の目からも明らかだった。そして、その先のことを考えていないアルマンではない。事前にリーズ本人には、リヴァイアサンと付かず離れずの距離を保つように待機させており、レールガンの発射とシャーロットの乗る船の位置から、射線がどこになるのかを把握し、スタンバイをさせていたのだ。
リヴァイアサンの大口に集まる光にも劣るレールガンの雷を、リーズはタクティシャンの能力で元のサイズにまで戻す。しかし、ここである問題が発生した。
レールガンによる一撃は、リヴァイアサンの巨体を貫くほど強力なもの。もしそれに人間が触れてしまえばどうなってしまうのか。それは想像するに容易いものだった。勿論、アルマンやエイヴリーがそれを確認しないはずがない。
だが、リーズもエイヴリー海賊団の幹部で、自身の部隊を持つ身。彼女の部下やエイヴリー海賊団の船員達が、命を賭して戦う姿を見て、自分だけがリスクを負わない選択をするなど、彼女の中ではあり得なかった。
リーズが意地を張っているのは、エイヴリーもアルマンも気づいていた。だが、彼女のその意志を止めるほど無粋ではない。それに、これはあくまで人間であればの話。リーズはヴァンパイア。人外である彼女であれば或いは・・・。
「さて、ここが私の正念場だね・・・。必ずやり遂げてやるよ。例えこの身体が消し飛ぼうがね・・・」
シャーロットの氷の鏡を反射したレールガンの雷が、リーズの元へやってくる。彼女はスキルを使い、その雷の射線上にベールのような薄い膜を展開した。
雷の先がリーズの作り出したベールに触れる。次の瞬間、通り抜けた雷はレールガンから発射された直後の威勢を取り戻した。大きく肥大化した雷は、突風を巻き上げながらリヴァイアサンの口へ向かっていく。
リーズは雷が通過し終わるまで、側を離れることが出来ない。途中でスキルを中断してしまえば、レールガンの一撃を完全に復元することが出来なくなってしまう。それではリヴァイアサンに致命的な一撃を与えられないかも知れない。
戦場に散っていった者達の為にも、それだけはあってはならない。唇を噛み締める彼女の口元から、血の雫が空へと舞い上がっていく。スキルを維持する為に伸ばした腕は、雷の熱に焼かれ青白い炎を上げている。
彼女の意地が勝つか、身体が消滅するのが先か。繋がれた起死回生の一撃をリヴァイアサンに届ける間のせめぎ合い。側から見れば瞬く間の時間であったが、彼女にとっては思いの外長い一瞬だった。
そして、レールガンの雷がリーズのベールを通過し、元の勢いを取り戻した。雷は凄まじい速さでリヴァイアサンの元へ駆け抜ける。
同時に、燃え尽きるように消えたベールと同様に、リーズの身体は雷光に焼かれ、静かに消滅していった。上空に跳ね上がり、発射時の威力に戻ったことを船から確認するアルマンとエイヴリー。その傍らで、小さく燃え尽きる炎を二人も見ていた。
彼女の奮闘の甲斐もあり、雷はリヴァイアサンの大口へ、計画通り吸い込まれるようにして命中する。ブレスの為に溜め込んでいた魔力は、レールガンの一撃により膨張し破裂。
リーズの奮闘は、エイヴリーやアルマンの想像していた以上の成果を生み出した。
レールガンの一撃を小さくしたのは、砲身の先で群がっていたリーズの眷属である蝙蝠達の仕業だった。彼女のクラスである“タクティシャン“のスキルによるもの。対象を大きくしたり小さくするその能力で、レールガンの雷を小さくしたのだ。
雷は一隻の船の元へ向かって駆け抜ける。それは、狙いの定められていた射線上に居座っていた、エイヴリー海賊団の一隻。その船に乗っていたのは、アルマンの指示により回復班と共に移動していたシャーロットだった。
リヴァイアサンとの戦闘で大分魔力を消費してしまっていた彼女だったが、もう一度大技を放てるくらいに回復していた。甲板に立つシャーロットが、残された魔力を使い、詠唱を唱えていた。
そして、小さくなったレールガンの雷が彼女に近づいていくと、彼女の前に突然、巨大な氷の鏡が現れる。それを目にした者達は、何が起こるのか大方の予想がついた。
アルマンは、レールガンの攻撃をリーズの能力で小さくし、シャーロットの鏡で跳ね返せるぐらいにまで縮小させた。事前に鏡で跳ね返せる威力を聞き出していたアルマンによって、上手い具合に威力を調整した。
跳ね返す先は言うまでもなく、ブレスを放とうと大口を開けるリヴァイアサンの口内。シャーロットの表情からも、十分跳ね返せるだけの自信があるのが窺える。
角度とタイミングは十分。口の内側からレールガンの一撃を浴びれば、流石に大ダメージが狙えるはず。雷はシャーロットが用意した氷の鏡に命中する。ボールが角度のついた床に命中したように、雷は進路を変え、魔力が集うリヴァイアサンの口に向かって跳ね返る。
しかし、当然このままでは威力が足りない。それは誰の目からも明らかだった。そして、その先のことを考えていないアルマンではない。事前にリーズ本人には、リヴァイアサンと付かず離れずの距離を保つように待機させており、レールガンの発射とシャーロットの乗る船の位置から、射線がどこになるのかを把握し、スタンバイをさせていたのだ。
リヴァイアサンの大口に集まる光にも劣るレールガンの雷を、リーズはタクティシャンの能力で元のサイズにまで戻す。しかし、ここである問題が発生した。
レールガンによる一撃は、リヴァイアサンの巨体を貫くほど強力なもの。もしそれに人間が触れてしまえばどうなってしまうのか。それは想像するに容易いものだった。勿論、アルマンやエイヴリーがそれを確認しないはずがない。
だが、リーズもエイヴリー海賊団の幹部で、自身の部隊を持つ身。彼女の部下やエイヴリー海賊団の船員達が、命を賭して戦う姿を見て、自分だけがリスクを負わない選択をするなど、彼女の中ではあり得なかった。
リーズが意地を張っているのは、エイヴリーもアルマンも気づいていた。だが、彼女のその意志を止めるほど無粋ではない。それに、これはあくまで人間であればの話。リーズはヴァンパイア。人外である彼女であれば或いは・・・。
「さて、ここが私の正念場だね・・・。必ずやり遂げてやるよ。例えこの身体が消し飛ぼうがね・・・」
シャーロットの氷の鏡を反射したレールガンの雷が、リーズの元へやってくる。彼女はスキルを使い、その雷の射線上にベールのような薄い膜を展開した。
雷の先がリーズの作り出したベールに触れる。次の瞬間、通り抜けた雷はレールガンから発射された直後の威勢を取り戻した。大きく肥大化した雷は、突風を巻き上げながらリヴァイアサンの口へ向かっていく。
リーズは雷が通過し終わるまで、側を離れることが出来ない。途中でスキルを中断してしまえば、レールガンの一撃を完全に復元することが出来なくなってしまう。それではリヴァイアサンに致命的な一撃を与えられないかも知れない。
戦場に散っていった者達の為にも、それだけはあってはならない。唇を噛み締める彼女の口元から、血の雫が空へと舞い上がっていく。スキルを維持する為に伸ばした腕は、雷の熱に焼かれ青白い炎を上げている。
彼女の意地が勝つか、身体が消滅するのが先か。繋がれた起死回生の一撃をリヴァイアサンに届ける間のせめぎ合い。側から見れば瞬く間の時間であったが、彼女にとっては思いの外長い一瞬だった。
そして、レールガンの雷がリーズのベールを通過し、元の勢いを取り戻した。雷は凄まじい速さでリヴァイアサンの元へ駆け抜ける。
同時に、燃え尽きるように消えたベールと同様に、リーズの身体は雷光に焼かれ、静かに消滅していった。上空に跳ね上がり、発射時の威力に戻ったことを船から確認するアルマンとエイヴリー。その傍らで、小さく燃え尽きる炎を二人も見ていた。
彼女の奮闘の甲斐もあり、雷はリヴァイアサンの大口へ、計画通り吸い込まれるようにして命中する。ブレスの為に溜め込んでいた魔力は、レールガンの一撃により膨張し破裂。
リーズの奮闘は、エイヴリーやアルマンの想像していた以上の成果を生み出した。
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