567 / 1,646
すり抜ける悪鬼
しおりを挟む
デイヴィスを無事に送り届けて暫く。シンはミア達の待つツバキの船へと戻る。そこで、キングの船で出会した彼らの目的の一つでもある、黒いコートに身を包んだ男達のことを話した。
男達は別々にやって来て、一人目の男は明らかにシンに狙いを定め待ち伏せしていた様子だった。シンとデイヴィスは協力し、その男と対峙したが、まるで子供をあやすかの様に弄ばれた。
男は未知の能力で二人を翻弄したが、シンにはそれが何処か、自分のスキルにも似ているように感じた。だが、シンの機転により一矢報いることに成功した二人は、キングの船へやって来た目的を果たすため動き出す。デイヴィスはキングの元へ、そしてシンは男の足止めを目論む。
そこへ訪れたのが、もう一人の黒コートの男。彼は最初にシン達を襲った男とは別行動をしており、違う目的を果たした後だったらしい。明らかにシン達の境遇について何か知っている様子だった二人だったが、シンに何も語ることなく何処かへと去っていってしまった。
結局のところ、彼らがこの世界に転移出来る様になってしまった原因は分からなかったが、漠然としていた目標が一つハッキリとした。やはり黒いコートの者達は、この世界とシン達の現実世界に起きている事態の一端を担っている可能性が高まった。
「何も知らん奴らが、私ら以上に私らのことを知っているというのは、何とも気持ち悪いものだな・・・。奴らが私らの命を好き勝手に出来るのかは知らねぇが、殺しにこないところを見るに、何か目的がある様だな・・・」
「目的・・・?だが、何も聞かれなければ、何もされてもいないんだが・・・」
シンの言う通り、黒いコートの男達は試すようなことをしても、決してシンを殺しにくるようなことはなかった。それどころか、もう一人の遅れて来た男に至っては、エイヴリーやキングですら苦戦していたリヴァイアサンの弱体化を図るなど、シン達には知っても理解し得ないことまでしていた。
「だが、野放しには出来ない。次は見つけ次第、殺すくらいの気持ちで相手しないと、いつこの生活が終わるか分からんぞ?」
「殺す・・・?奴らを?想像できないな・・・。でも、今あるものを失いたくない」
「それにこっちは、死体であっても何らかの情報を手に入れられるかもしれないしな。君の言う、現実世界にいるという白獅って奴とその仲間にな・・・」
彼らは何も、彼らだけで戦っている訳ではない。現実の世界には、ミアの言う通り白獅と名乗る者と、同じような仲間を集めたアサシンギルドがある。WoFの世界とは違って、彼は近代的なテクノロジーを使って、シン達をサポートしてくれようとしている。
二人はこの世界の住人であるツバキに話を聞かれないようにしていた。すると、シンがボードに乗って来た方向の上空に、煙を上げながら飛んでいく信号弾が打ち上げられた。
「何だ!?」
「デイヴィスだと思う・・・。計画実行の合図なんじゃないか?」
信号弾が上空まで上がり切り強い光を放つと、周囲でリヴァイアサンの身体に砲弾や魔法を当てていた船達が、一斉に向きを変えて、信号弾の放たれたデイヴィスのいる、キングの船団へ向かい始めた。
移動し始めた船の群れを避けながら、シン達を乗せた船はリヴァイアサンの身体へと近づいていく。少しでもダメージを稼ぎ、あわよくばポイントによる順位の向上を狙う。
戦闘方法は、それまで戦っていた海賊達が教えてくれた。付かず離れずの距離を保ち、遠距離攻撃で一方的にダメージを稼ぐことができる。果たしてそれがリヴァイアサンに効いているのかは分からないが・・・。
船を一定の場所に留めながら、砲台を設置していない船の甲板でシン達が遠距離攻撃を行い、舵はツバキが担当することになった。波を起こすばかりで、これといって脅威となる攻撃のなくなったリヴァイアサン。
暫くの間、効いているかも分からない攻撃を繰り返していると、キングの船団の周りに群がっていた海域から、数隻の船が逃げるように出てくると、そのままリヴァイアサンのいる方角とは真逆の方へと向かっていく、怪しい船を見つける。
「アイツら・・・何処へ行くんだ?」
「ん?さぁな。戦闘を続行することができなくなって、退避してるんじゃないか?」
数隻の船は、シン達の船の邪魔しない航路で進んでいく。すれ違い様にシンが先頭を進む船に視線を送ると、甲板に立っていた一人の男と目が合う。シンはその男を何処かで見たような気がした。だが、何処で見たのかは思い出せない。
相手の男もシンを知らなかったのか、すぐに視線を前に向け、まるで相手にしていない様子だった。シンもそれ以上、その男と船を気にかけることはなかったが、その人物こそデイヴィスを殺し、アンスティスをも殺した裏切り者、ウォルターだった。
船内からツバキの小言が聞こえてくる。先程の複数の船が近くを通ったおかげで、船が波に揺られ留めておくのが難しくなったからだ。文句を垂れる声を聞いて、ツバキの体調も大分良くなったのかと、一安心するシン。
それから間も無くして、再び船の群れの中から抜け出してくる船団があった。
男達は別々にやって来て、一人目の男は明らかにシンに狙いを定め待ち伏せしていた様子だった。シンとデイヴィスは協力し、その男と対峙したが、まるで子供をあやすかの様に弄ばれた。
男は未知の能力で二人を翻弄したが、シンにはそれが何処か、自分のスキルにも似ているように感じた。だが、シンの機転により一矢報いることに成功した二人は、キングの船へやって来た目的を果たすため動き出す。デイヴィスはキングの元へ、そしてシンは男の足止めを目論む。
そこへ訪れたのが、もう一人の黒コートの男。彼は最初にシン達を襲った男とは別行動をしており、違う目的を果たした後だったらしい。明らかにシン達の境遇について何か知っている様子だった二人だったが、シンに何も語ることなく何処かへと去っていってしまった。
結局のところ、彼らがこの世界に転移出来る様になってしまった原因は分からなかったが、漠然としていた目標が一つハッキリとした。やはり黒いコートの者達は、この世界とシン達の現実世界に起きている事態の一端を担っている可能性が高まった。
「何も知らん奴らが、私ら以上に私らのことを知っているというのは、何とも気持ち悪いものだな・・・。奴らが私らの命を好き勝手に出来るのかは知らねぇが、殺しにこないところを見るに、何か目的がある様だな・・・」
「目的・・・?だが、何も聞かれなければ、何もされてもいないんだが・・・」
シンの言う通り、黒いコートの男達は試すようなことをしても、決してシンを殺しにくるようなことはなかった。それどころか、もう一人の遅れて来た男に至っては、エイヴリーやキングですら苦戦していたリヴァイアサンの弱体化を図るなど、シン達には知っても理解し得ないことまでしていた。
「だが、野放しには出来ない。次は見つけ次第、殺すくらいの気持ちで相手しないと、いつこの生活が終わるか分からんぞ?」
「殺す・・・?奴らを?想像できないな・・・。でも、今あるものを失いたくない」
「それにこっちは、死体であっても何らかの情報を手に入れられるかもしれないしな。君の言う、現実世界にいるという白獅って奴とその仲間にな・・・」
彼らは何も、彼らだけで戦っている訳ではない。現実の世界には、ミアの言う通り白獅と名乗る者と、同じような仲間を集めたアサシンギルドがある。WoFの世界とは違って、彼は近代的なテクノロジーを使って、シン達をサポートしてくれようとしている。
二人はこの世界の住人であるツバキに話を聞かれないようにしていた。すると、シンがボードに乗って来た方向の上空に、煙を上げながら飛んでいく信号弾が打ち上げられた。
「何だ!?」
「デイヴィスだと思う・・・。計画実行の合図なんじゃないか?」
信号弾が上空まで上がり切り強い光を放つと、周囲でリヴァイアサンの身体に砲弾や魔法を当てていた船達が、一斉に向きを変えて、信号弾の放たれたデイヴィスのいる、キングの船団へ向かい始めた。
移動し始めた船の群れを避けながら、シン達を乗せた船はリヴァイアサンの身体へと近づいていく。少しでもダメージを稼ぎ、あわよくばポイントによる順位の向上を狙う。
戦闘方法は、それまで戦っていた海賊達が教えてくれた。付かず離れずの距離を保ち、遠距離攻撃で一方的にダメージを稼ぐことができる。果たしてそれがリヴァイアサンに効いているのかは分からないが・・・。
船を一定の場所に留めながら、砲台を設置していない船の甲板でシン達が遠距離攻撃を行い、舵はツバキが担当することになった。波を起こすばかりで、これといって脅威となる攻撃のなくなったリヴァイアサン。
暫くの間、効いているかも分からない攻撃を繰り返していると、キングの船団の周りに群がっていた海域から、数隻の船が逃げるように出てくると、そのままリヴァイアサンのいる方角とは真逆の方へと向かっていく、怪しい船を見つける。
「アイツら・・・何処へ行くんだ?」
「ん?さぁな。戦闘を続行することができなくなって、退避してるんじゃないか?」
数隻の船は、シン達の船の邪魔しない航路で進んでいく。すれ違い様にシンが先頭を進む船に視線を送ると、甲板に立っていた一人の男と目が合う。シンはその男を何処かで見たような気がした。だが、何処で見たのかは思い出せない。
相手の男もシンを知らなかったのか、すぐに視線を前に向け、まるで相手にしていない様子だった。シンもそれ以上、その男と船を気にかけることはなかったが、その人物こそデイヴィスを殺し、アンスティスをも殺した裏切り者、ウォルターだった。
船内からツバキの小言が聞こえてくる。先程の複数の船が近くを通ったおかげで、船が波に揺られ留めておくのが難しくなったからだ。文句を垂れる声を聞いて、ツバキの体調も大分良くなったのかと、一安心するシン。
それから間も無くして、再び船の群れの中から抜け出してくる船団があった。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる