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仲間割れ
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海面へ浮上した潜水艦から船へ乗り込む、各海賊団の船長達。彼らもまた、そこに居合わせたキングの船の船員を見て驚いた。
「おいおい・・・。ガキばかりじゃねぇか!どうなってやがる!?」
「分からねぇ・・・。だが向かってくるならやるしかねぇ」
キングの船員達は武器を取り、勇敢にも乗り込んでくる海賊達へ向けて戦いを挑んでいく。だが、ろくに本物の戦場を経験したことのない者達では、到底太刀打ちできる相手ではなかった。
その細腕で振われる獲物を軽々と弾き飛ばし、海賊達は彼らに刃を向ける。しかし、そうはさせまいとキングが素早い動きで走り出し、振り下ろされる剣を拾い上げた武器で受け止め、弾き飛ばす。
蹴りで海賊を突き飛ばすと、別のところで船員を襲っている海賊の元へ、手にした武器を投げる。空を裂くように回転しながら飛んでいった剣は、海賊の手にしている武器へ見事に命中。寸前のところで若き船員を救ってみせた。
「よせ!お前達じゃ敵わない!こいつらは俺が相手すっから、こっちへ来いッ!」
次の海賊の元へ向かいながら武器を拾い、次々にそれを投げて海賊の魔の手から船員を守るキング。
「ロバーツ・・・!彼らを・・・止めてくれッ!」
罪もない者達の悲鳴を聞き、まるで妹が襲われているかのように攻撃をやめさせるよう、ロバーツへ必死に頼むデイヴィス。血相を変えて訴える友の声を無碍にするロバーツではない。
元はと言えば彼が集めた海賊達。司令塔でもあるロバーツが海賊達を静止させる為に、声を荒立てる。そしてデイヴィスの言葉を代弁すると共に、彼の意図を汲み取ったロバーツが計画の変更と、新たな指示を出す。
「待て!やめろ、お前達!計画は中止だ!キングとその船員達への攻撃を直ちに止めるんだ!」
「何ぃ・・・?どういう事だ、ロバーツ」
「キングは敵じゃぁなかった。奴は奴隷達を匿ってやがった。デイヴィスの妹を売り飛ばすどころか、教養を与え守っていたんだ。そいつらも同じだ!絶対に殺すんじゃぁねぇぞ!」
暗殺計画の中止と、真相を聞かされた海賊達の反応は二つに分かれた。素直に聞きいり攻撃を中断する者達と、それでも攻撃を止める事なく襲いかかる者達。その理由ははっきりしていた。
「そうか・・・。まぁ、それで組織に狙われずに済むならホッとするぜ」
手を止めたのは、かつてデイヴィスに恩を受けた元同胞達だ。元々デイヴィスへの義理を果たしに集まった彼らは、そのデイヴィスの意向で戦わなくいいとなれば、わざわざ事を大きくするつもりもない。
だが、ロバーツの話を聞いた上で、それでもキングの船を荒らし、船員を襲うのを止めない連中がいた。
それは政府に飼われている海賊達だった。彼らの目的はあくまでキングの首であり、それと引き換えに得られる巨万の富なのだから。元々の目的が違う彼らが止まる筈がない。そしてウォルターが起こした騒ぎは、彼らにとっても好都合。
シー・ギャングの幹部達である、トゥーマーンの船団の機能停止。そして爆炎を巻き上げるのは、ダラーヒムの船団。恐らくキングの元から逃げ去ったウォルターを捕らえる為、彼らは交戦中なのだろう。
そしてジャウカーンやスユーフは、リヴァイアサンへの攻撃で手が離せないときている。キングを狙い討つには絶好のチャンスなのだ。
「キングと交渉する余地があるッ!これ以上攻撃をやめないと言うのなら、お前達の安全は保障できないぞ!」
「何を馬鹿な事を言ってやがる!?手を組もうと話を持ちかけてきたのはお前らだろうが!勝手な振る舞いは許されない!俺達を裏切ると言うことは、政府を敵に回すと言うことだぞ?さぁ武器を取れッ!キングの首を取れば、お前達の裏切りは黙っておいてやるッ・・・!」
「馬鹿野郎が・・・。政府の奴らが約束を守る訳がねぇだろう・・・!」
キング暗殺計画で集まった海賊達は、その戦場で二分した。船員を守りながら戦うキングだったが、船長クラスの者達を何の能力も使わずに相手するのは骨が折れる。流石のキングでも、全ての船員を無傷で守り切るのには、限界が見え始めていた。
だが、仲違いしキングへの攻撃を中止したロバーツら元デイヴィス海賊団の同胞達の手によって、その窮地を救われることとなる。
「あぁ?何、俺の首を取りに来たんじゃねぇ~の?」
「ふん。事情が変わったんだよ・・・。アンタこそ、何故スキルを使わなねぇんだ?使うまでもねぇってか?」
「使えりゃぁ相手じゃねぇんだけどねぇ~・・・。アンタらんとこのデイヴィスちゃん、本気で俺を殺ろうとしてたんだろうねぇ。命懸けで俺ちゃんのスキルを封印しちゃって。彼が死なないと解けないんだわなぁ~・・・」
デイヴィスはそのままキングに挑んでも勝てないことは分かっていた。彼はこの時の為に、ある奥の手を準備していたのだ。それはキングの強力な能力を自分の能力と共に封印し、使えなくさせるものだった。
一種の呪いとも言えるスキルで、相手の力を封じると共に相応のデメリットを術者に与える。死神に捧げる供物が大きければ大きいほど、その効果を強くする。デイヴィスはキングの能力を封じる為に、自らの今まで習得してきた能力とスキルを捧げていたのだ。
デイヴィスは、妹のレイチェルを助ける、或いは復讐を果たせさえすれば、その後にどうなろうと構わない覚悟でいた。
「おいおい・・・。ガキばかりじゃねぇか!どうなってやがる!?」
「分からねぇ・・・。だが向かってくるならやるしかねぇ」
キングの船員達は武器を取り、勇敢にも乗り込んでくる海賊達へ向けて戦いを挑んでいく。だが、ろくに本物の戦場を経験したことのない者達では、到底太刀打ちできる相手ではなかった。
その細腕で振われる獲物を軽々と弾き飛ばし、海賊達は彼らに刃を向ける。しかし、そうはさせまいとキングが素早い動きで走り出し、振り下ろされる剣を拾い上げた武器で受け止め、弾き飛ばす。
蹴りで海賊を突き飛ばすと、別のところで船員を襲っている海賊の元へ、手にした武器を投げる。空を裂くように回転しながら飛んでいった剣は、海賊の手にしている武器へ見事に命中。寸前のところで若き船員を救ってみせた。
「よせ!お前達じゃ敵わない!こいつらは俺が相手すっから、こっちへ来いッ!」
次の海賊の元へ向かいながら武器を拾い、次々にそれを投げて海賊の魔の手から船員を守るキング。
「ロバーツ・・・!彼らを・・・止めてくれッ!」
罪もない者達の悲鳴を聞き、まるで妹が襲われているかのように攻撃をやめさせるよう、ロバーツへ必死に頼むデイヴィス。血相を変えて訴える友の声を無碍にするロバーツではない。
元はと言えば彼が集めた海賊達。司令塔でもあるロバーツが海賊達を静止させる為に、声を荒立てる。そしてデイヴィスの言葉を代弁すると共に、彼の意図を汲み取ったロバーツが計画の変更と、新たな指示を出す。
「待て!やめろ、お前達!計画は中止だ!キングとその船員達への攻撃を直ちに止めるんだ!」
「何ぃ・・・?どういう事だ、ロバーツ」
「キングは敵じゃぁなかった。奴は奴隷達を匿ってやがった。デイヴィスの妹を売り飛ばすどころか、教養を与え守っていたんだ。そいつらも同じだ!絶対に殺すんじゃぁねぇぞ!」
暗殺計画の中止と、真相を聞かされた海賊達の反応は二つに分かれた。素直に聞きいり攻撃を中断する者達と、それでも攻撃を止める事なく襲いかかる者達。その理由ははっきりしていた。
「そうか・・・。まぁ、それで組織に狙われずに済むならホッとするぜ」
手を止めたのは、かつてデイヴィスに恩を受けた元同胞達だ。元々デイヴィスへの義理を果たしに集まった彼らは、そのデイヴィスの意向で戦わなくいいとなれば、わざわざ事を大きくするつもりもない。
だが、ロバーツの話を聞いた上で、それでもキングの船を荒らし、船員を襲うのを止めない連中がいた。
それは政府に飼われている海賊達だった。彼らの目的はあくまでキングの首であり、それと引き換えに得られる巨万の富なのだから。元々の目的が違う彼らが止まる筈がない。そしてウォルターが起こした騒ぎは、彼らにとっても好都合。
シー・ギャングの幹部達である、トゥーマーンの船団の機能停止。そして爆炎を巻き上げるのは、ダラーヒムの船団。恐らくキングの元から逃げ去ったウォルターを捕らえる為、彼らは交戦中なのだろう。
そしてジャウカーンやスユーフは、リヴァイアサンへの攻撃で手が離せないときている。キングを狙い討つには絶好のチャンスなのだ。
「キングと交渉する余地があるッ!これ以上攻撃をやめないと言うのなら、お前達の安全は保障できないぞ!」
「何を馬鹿な事を言ってやがる!?手を組もうと話を持ちかけてきたのはお前らだろうが!勝手な振る舞いは許されない!俺達を裏切ると言うことは、政府を敵に回すと言うことだぞ?さぁ武器を取れッ!キングの首を取れば、お前達の裏切りは黙っておいてやるッ・・・!」
「馬鹿野郎が・・・。政府の奴らが約束を守る訳がねぇだろう・・・!」
キング暗殺計画で集まった海賊達は、その戦場で二分した。船員を守りながら戦うキングだったが、船長クラスの者達を何の能力も使わずに相手するのは骨が折れる。流石のキングでも、全ての船員を無傷で守り切るのには、限界が見え始めていた。
だが、仲違いしキングへの攻撃を中止したロバーツら元デイヴィス海賊団の同胞達の手によって、その窮地を救われることとなる。
「あぁ?何、俺の首を取りに来たんじゃねぇ~の?」
「ふん。事情が変わったんだよ・・・。アンタこそ、何故スキルを使わなねぇんだ?使うまでもねぇってか?」
「使えりゃぁ相手じゃねぇんだけどねぇ~・・・。アンタらんとこのデイヴィスちゃん、本気で俺を殺ろうとしてたんだろうねぇ。命懸けで俺ちゃんのスキルを封印しちゃって。彼が死なないと解けないんだわなぁ~・・・」
デイヴィスはそのままキングに挑んでも勝てないことは分かっていた。彼はこの時の為に、ある奥の手を準備していたのだ。それはキングの強力な能力を自分の能力と共に封印し、使えなくさせるものだった。
一種の呪いとも言えるスキルで、相手の力を封じると共に相応のデメリットを術者に与える。死神に捧げる供物が大きければ大きいほど、その効果を強くする。デイヴィスはキングの能力を封じる為に、自らの今まで習得してきた能力とスキルを捧げていたのだ。
デイヴィスは、妹のレイチェルを助ける、或いは復讐を果たせさえすれば、その後にどうなろうと構わない覚悟でいた。
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