521 / 1,646
若き構成員
しおりを挟む
一人薄暗い船室に取り残されるシン。正直なところ、黒コートの男達が甲板に向かわないという保証もない。二人の姿を見れば、キングの一味の者でないことはすぐにバレ、気づかれる事だろう。
そうなれば、いらぬ騒ぎが起こってしまう。慌てて船室から顔を覗かせ、二人の出て行った道を覗き込む。シンが長身の男を見送ってから数秒ほどしか経っていない。
船室の外は長い廊下になっており、左右にはいくつかの部屋がある構造だった。扉を開け閉めする音は、近くでは聞こえていない。大方移動が激しいのは甲板に近い上層階であり、シンのいる階層は僅かに遠のく男達の足音だけが、耳に残っていた。
しかし、シンが廊下を覗き込んだ時には、既に男達の姿はなかった。キングの船の構造は分からないが、階段があるであろう開けたスペースは奥の方に見える。
シン達のいた船室から違う階層に向かおうとすれば、その僅かな数秒の間で階段へ向かうのは不可能だ。それこそ全力で走るなり、駆け抜けるなりしなければ。彼らは気付かれないように脱出したのだろうか。
だが、そんな不安も僅かな間に過ぎない。思い返せば、口の悪い方の男はシンと同じ影のスキルのようなものを扱えるのだ。わざわざ正面や裏口から出ていかなくとも、どこからでも船から離れることは可能なのだ。
一先ずは安心したシン。このままデイヴィスに言われた通り、彼は余計なことはせず、そのままミア達の待つ船へ戻る為、潜入した時と同様、影のスキルで通り道を作ると外に出て、ツバキのボードを取り出し乗り込む。
船の上の方では、依然騒がしく多くのシー・ギャングの船員達が、慌ただしく働いているであろうことが伺える。キングは一体何処にいるのだろうか。デイヴィスは無事、キングを見つけられただろうか。
後ろ髪を引かれる思いを押し殺し、シンはボードのエンジンを入れその場を後にした。
シンと別れた後、デイヴィスはキングのいるであろう甲板を目指していた。上層に上がるに連れ、潜伏の難易度はグンとました。当然ながら外では、リヴァイアサンと小型モンスターの対応に追われている。
如何やらシンやデイヴィス、並びにコートの男達の侵入には気づいていないようだ。一心不乱に戦い、砲台に砲弾を込める様子から、それは伺える。あれだけの戦いがありながら気付かれなかったのは、レイド戦で人員が上層に集中していたことが大きい。
潜伏のスキルが長けているクラスが活きている。彼のクラスでなければとっくに気づかれていてもおかしくない状況にある。少しずつ物陰に隠れながら、着実にキングの元を目指す。
いつ終わるか分からないレイド戦。コートの男による、リヴァイアサンの弱体化が効いているのか、海賊達の作業や意識は戦闘に集中している。もし序盤の時のように、リヴァイアサンへの攻撃が上手くいっていないのなら、別の動きが見られるはずだ。
甲板への道中、船員達の動きは単純化されており、同じような場所を往復することが多い。如何しても排除しなければならない船員を、デイヴィスは殺すことなく静かに気を失わせ、身体を目立たないところへ運んでいく。
その最中、デイヴィスはある事に気がつく。キングのシー・ギャングに属する船員達は、そのほぼ全てが若い年代の者で固められていたのだ。中には年端もいかぬ、海賊になるには若過ぎる者もいた。
「やはり・・・。野郎、人身売買事業に手を染めてるって話は確実だったか・・・」
妹の行方を探る中、何処かへ売り飛ばされたという情報を掴んでいたデイヴィスは、キングを追えば真実に辿り着けると信じていた。恐らく、妹を直接売り飛ばしたのはキングではないかと疑っていたデイヴィスは、この若い船員達で構成された組織を目の当たりにし、より疑いは濃いものとなっていく。
それと同時に、キングへの怒りが増していく。それこそ自我を失ってしまいそうになるほどだ。事前にロバーツと会っていてよかったと、心の底から思う。もし彼と会話をしていなかったら、以前のように自分を見失い、周りの者を巻き込んでしまい兼ねなかった。
今、冷静でいられるのはロバーツやシンプソンら、昔の旧友と行動を共にしていたことが大きい。デイヴィスは勝手ながら、脅されて働かされているであろうその若い船員達を、休ませてやろうという思いで優しく眠らせていき、遂に甲板への道を切り開く。
そうなれば、いらぬ騒ぎが起こってしまう。慌てて船室から顔を覗かせ、二人の出て行った道を覗き込む。シンが長身の男を見送ってから数秒ほどしか経っていない。
船室の外は長い廊下になっており、左右にはいくつかの部屋がある構造だった。扉を開け閉めする音は、近くでは聞こえていない。大方移動が激しいのは甲板に近い上層階であり、シンのいる階層は僅かに遠のく男達の足音だけが、耳に残っていた。
しかし、シンが廊下を覗き込んだ時には、既に男達の姿はなかった。キングの船の構造は分からないが、階段があるであろう開けたスペースは奥の方に見える。
シン達のいた船室から違う階層に向かおうとすれば、その僅かな数秒の間で階段へ向かうのは不可能だ。それこそ全力で走るなり、駆け抜けるなりしなければ。彼らは気付かれないように脱出したのだろうか。
だが、そんな不安も僅かな間に過ぎない。思い返せば、口の悪い方の男はシンと同じ影のスキルのようなものを扱えるのだ。わざわざ正面や裏口から出ていかなくとも、どこからでも船から離れることは可能なのだ。
一先ずは安心したシン。このままデイヴィスに言われた通り、彼は余計なことはせず、そのままミア達の待つ船へ戻る為、潜入した時と同様、影のスキルで通り道を作ると外に出て、ツバキのボードを取り出し乗り込む。
船の上の方では、依然騒がしく多くのシー・ギャングの船員達が、慌ただしく働いているであろうことが伺える。キングは一体何処にいるのだろうか。デイヴィスは無事、キングを見つけられただろうか。
後ろ髪を引かれる思いを押し殺し、シンはボードのエンジンを入れその場を後にした。
シンと別れた後、デイヴィスはキングのいるであろう甲板を目指していた。上層に上がるに連れ、潜伏の難易度はグンとました。当然ながら外では、リヴァイアサンと小型モンスターの対応に追われている。
如何やらシンやデイヴィス、並びにコートの男達の侵入には気づいていないようだ。一心不乱に戦い、砲台に砲弾を込める様子から、それは伺える。あれだけの戦いがありながら気付かれなかったのは、レイド戦で人員が上層に集中していたことが大きい。
潜伏のスキルが長けているクラスが活きている。彼のクラスでなければとっくに気づかれていてもおかしくない状況にある。少しずつ物陰に隠れながら、着実にキングの元を目指す。
いつ終わるか分からないレイド戦。コートの男による、リヴァイアサンの弱体化が効いているのか、海賊達の作業や意識は戦闘に集中している。もし序盤の時のように、リヴァイアサンへの攻撃が上手くいっていないのなら、別の動きが見られるはずだ。
甲板への道中、船員達の動きは単純化されており、同じような場所を往復することが多い。如何しても排除しなければならない船員を、デイヴィスは殺すことなく静かに気を失わせ、身体を目立たないところへ運んでいく。
その最中、デイヴィスはある事に気がつく。キングのシー・ギャングに属する船員達は、そのほぼ全てが若い年代の者で固められていたのだ。中には年端もいかぬ、海賊になるには若過ぎる者もいた。
「やはり・・・。野郎、人身売買事業に手を染めてるって話は確実だったか・・・」
妹の行方を探る中、何処かへ売り飛ばされたという情報を掴んでいたデイヴィスは、キングを追えば真実に辿り着けると信じていた。恐らく、妹を直接売り飛ばしたのはキングではないかと疑っていたデイヴィスは、この若い船員達で構成された組織を目の当たりにし、より疑いは濃いものとなっていく。
それと同時に、キングへの怒りが増していく。それこそ自我を失ってしまいそうになるほどだ。事前にロバーツと会っていてよかったと、心の底から思う。もし彼と会話をしていなかったら、以前のように自分を見失い、周りの者を巻き込んでしまい兼ねなかった。
今、冷静でいられるのはロバーツやシンプソンら、昔の旧友と行動を共にしていたことが大きい。デイヴィスは勝手ながら、脅されて働かされているであろうその若い船員達を、休ませてやろうという思いで優しく眠らせていき、遂に甲板への道を切り開く。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』
ふつうのにーちゃん
ファンタジー
転生者グレイボーンは、前世でシュールな死に方をしてしまったがあまりに神に気に入られ、【重弩使い】のギフトを与えられた。
しかしその神は実のところ、人の運命を弄ぶ邪神だった。
確かに重弩使いとして破格の才能を持って生まれたが、彼は『10cm先までしかまともに見えない』という、台無しのハンデを抱えていた。
それから時が流れ、彼が15歳を迎えると、父が死病を患い、男と蒸発した母が帰ってきた。
異父兄妹のリチェルと共に。
彼はリチェルを嫌うが、結局は母の代わりに面倒を見ることになった。
ところがしばらくしたある日、リチェルが失踪してしまう。
妹に愛情を懐き始めていたグレイボーンは深い衝撃を受けた。
だが皮肉にもその衝撃がきっかけとなり、彼は前世の記憶を取り戻すことになる。
決意したグレイボーンは、父から規格外の重弩《アーバレスト》を受け継いだ。
彼はそれを抱えて、リチェルが入り込んだという魔物の領域に踏み込む。
リチェルを救い、これからは良い兄となるために。
「たぶん人じゃないヨシッッ!!」
当たれば一撃必殺。
ただし、彼の目には、それが魔物か人かはわからない。
勘で必殺の弩を放つ超危険人物にして、空気の読めないシスコン兄の誕生だった。
毎日2~3話投稿。なろうとカクヨムでも公開しています。
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
練習船で異世界に来ちゃったんだが?! ~異世界海洋探訪記~
さみぃぐらぁど
ファンタジー
航海訓練所の練習船「海鵜丸」はハワイへ向けた長期練習航海中、突然嵐に巻き込まれ、落雷を受ける。
衝撃に気を失った主人公たち当直実習生。彼らが目を覚まして目撃したものは、自分たち以外教官も実習生も居ない船、無線も電子海図も繋がらない海、そして大洋を往く見たこともない戦列艦の艦隊だった。
そして実習生たちは、自分たちがどこか地球とは違う星_異世界とでも呼ぶべき空間にやって来たことを悟る。
燃料も食料も補給の目途が立たない異世界。
果たして彼らは、自分たちの力で、船とともに現代日本の海へ帰れるのか⁈
※この作品は「カクヨム」においても投稿しています。https://kakuyomu.jp/works/16818023213965695770
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる