504 / 1,646
希望の合流と絶望の救出
しおりを挟む
ロバーツが船の後方へ走り、船員から双眼鏡を受け取ると、近づいて来るという連合軍を確かめる。彼の想像した通り、そこには見覚えのある海賊旗の数々と、アシュトン海賊団のものである、珍しい潜水艇が確認出来た。
「あれは・・・シンプソンの海賊旗だ。それにアシュトンの潜水艇も来ている。デイヴィスを待つ為に別れたアイツらが、今ここに来ているということは、どこかにデイヴィスがいる筈だ・・・!」
待ち望んでいた親友と友軍の到着に、ロバーツは口角を上げて少しだけ明るい表情を見せた。連合軍との合流まで、現在の位置で船を待機させる。迎えに行ってもよかったが、蟒蛇による海流の変化の中を進むのは骨が折れる。
ならばここで到着を待ち、その間海上の蟒蛇がおかしな動きをしないように見張り、攻撃を仕掛け続けることで少しでも体力を削っておきたい。それにデイヴィスが到着したところで、まずはこのレイドモンスターをある程度弱らせなければ、計画の実行どころではない。
そもそも、この巨大な蟒蛇にダメージは入っているのだろうか。ハオランやキング、エイヴリー達による身体の切断や溶解による風穴など、通常では再生出来ないような攻撃を与えたものの、その身体は時間を置かずして再生し、今まで通り何も変わらずそこに存在し続けている。
「我々はここでデイヴィス達の到着を待つ!手の空いている者はウォルターを手伝え!少しでも多くの砲弾を、あの怪物に浴びせてやれッ!」
船長の号令に、更に勢いを増し弾薬や物資を運ぶ船員達。デイヴィスを乗せたシン達の一行も、荒れ狂う海流を見事に超えていく。シンプソンら海賊には、この程度の海流など幾度となく超えてきた経験があった。
だが、船の操縦を教えてもらったばかりの素人であるツクヨに、これほど複雑な海流を渡っていくことなど不可能だった。海にも詳しく、船にも詳しいウィリアム・ダンピアの弟子である少年を連れていなければ。
時折ツバキに操縦桿を握らせることもあったが、その殆どを彼からの指示を受けていただけで見事にこなしてしまうツクヨ。それこそこのまま、船の操縦士にでもクラスチェンジしてしまいそうな程の上達ぶりだった。
「凄い砲撃だな。到底あの数の船団では撃てそうもない量の砲撃じゃないか?あれはロバーツとやらのスキルか能力なのか?」
「いや・・・アイツにこんなスキルや能力はなかった筈だが・・・。暫く会わん内にクラスチェンジでもしたのか・・・。或いは新たな仲間の能力だろう」
ロバーツの船から放たれる砲撃の数と、周囲に轟く爆撃音の数々がやけに多いことに気がつくミア。それを聞いて、デイヴィスもその奇妙な光景に疑問を抱く。しかし決してマイナス的な意味での疑問ではない。
手数が多くなり、海賊団全体としての火力が上がったのなら、計画実行後の包囲殲滅もスムーズに進むというものだ。
だが、デイヴィスはそのスキルか能力なのか分からない光景に、見覚えがあった。元デイヴィス海賊団の一員で、恐らく今は誰かの海賊団に入っているであろう男の技に、よく似ていると感じていた。
彼はハッキリと思い出すことはなかったが、その人物こそアンスティスの腹心であり、デイヴィスを待つ中で逸れてしまった、ウォルター・ケネディその人だった。
「待たせた。伝えてきたぞ、デイヴィス。何か変わったことは無いか?」
「あぁ、問題ない。強いていうならばロバーツの船に心強い奴が乗っているってことか・・・」
そう言って進行方向のその奥へ視線を戻すデイヴィス。どういうことかとシンが彼の視線を追うと、そこでは砲撃による煙と爆撃音に包まれる船団があった。シンがデイヴィスの言伝を無線で伝え、甲板に戻るまでの間に話していた事を簡潔に話す二人。
状況を把握したシンだったが、WoFのプレイヤーである彼らであっても、ウォルターの特異な能力については知らなかった。それだけ彼のレヴェリーボマーのクラスが珍しいというのもあったが、それ以上にAIによる技術力の進化が、この世界に影響を与えている証拠だろう。
彼らの船がロバーツの船団へ向かう中、上空では蟒蛇に食われた仲間を救出すべく、残された竜騎士隊とドラゴン、そしてヘラルトと彼の描いたペガサスが、船を離れ雲海に覗かせる巨体のところにまでやって来ていた。
「レールガンの次の攻撃地点はここだ!船長達なら必ずやってくれる・・・。後は俺ら次第だ!隊長や仲間達を絶対に救出するぞ!」
エイヴリーの励ましのおかげで、彼らの士気はこれまで以上に昂っている。それこそ、命を犠牲にしても託された思いを必ず遂げるのだと言わんばかりに。
「ヘラルト・・・。すまないな、お前まで巻き込んでしまって・・・」
「いえ、僕は自らの意思でここにいます。ロイクさん達を助けたいのは勿論ですが、それ以上に僕も皆さんの役に立ちたかったんです!僕では力不足かもしれませんが、足手まといになるつもりはありません!」
少年は気がついていた。残された彼らは、生きながらえたことに意味を見出すため、その命の炎を燃やし尽くさんとしていることを。自身に出来ることを果たし、可能な限り彼らを生かして返そうと決意する。
するとその時、彼らの前に聳え立つ巨大な蟒蛇の身体が内部から光だし、体表を盛り上げ、今にも爆発を引き起こさんとしていた。
「あれは・・・シンプソンの海賊旗だ。それにアシュトンの潜水艇も来ている。デイヴィスを待つ為に別れたアイツらが、今ここに来ているということは、どこかにデイヴィスがいる筈だ・・・!」
待ち望んでいた親友と友軍の到着に、ロバーツは口角を上げて少しだけ明るい表情を見せた。連合軍との合流まで、現在の位置で船を待機させる。迎えに行ってもよかったが、蟒蛇による海流の変化の中を進むのは骨が折れる。
ならばここで到着を待ち、その間海上の蟒蛇がおかしな動きをしないように見張り、攻撃を仕掛け続けることで少しでも体力を削っておきたい。それにデイヴィスが到着したところで、まずはこのレイドモンスターをある程度弱らせなければ、計画の実行どころではない。
そもそも、この巨大な蟒蛇にダメージは入っているのだろうか。ハオランやキング、エイヴリー達による身体の切断や溶解による風穴など、通常では再生出来ないような攻撃を与えたものの、その身体は時間を置かずして再生し、今まで通り何も変わらずそこに存在し続けている。
「我々はここでデイヴィス達の到着を待つ!手の空いている者はウォルターを手伝え!少しでも多くの砲弾を、あの怪物に浴びせてやれッ!」
船長の号令に、更に勢いを増し弾薬や物資を運ぶ船員達。デイヴィスを乗せたシン達の一行も、荒れ狂う海流を見事に超えていく。シンプソンら海賊には、この程度の海流など幾度となく超えてきた経験があった。
だが、船の操縦を教えてもらったばかりの素人であるツクヨに、これほど複雑な海流を渡っていくことなど不可能だった。海にも詳しく、船にも詳しいウィリアム・ダンピアの弟子である少年を連れていなければ。
時折ツバキに操縦桿を握らせることもあったが、その殆どを彼からの指示を受けていただけで見事にこなしてしまうツクヨ。それこそこのまま、船の操縦士にでもクラスチェンジしてしまいそうな程の上達ぶりだった。
「凄い砲撃だな。到底あの数の船団では撃てそうもない量の砲撃じゃないか?あれはロバーツとやらのスキルか能力なのか?」
「いや・・・アイツにこんなスキルや能力はなかった筈だが・・・。暫く会わん内にクラスチェンジでもしたのか・・・。或いは新たな仲間の能力だろう」
ロバーツの船から放たれる砲撃の数と、周囲に轟く爆撃音の数々がやけに多いことに気がつくミア。それを聞いて、デイヴィスもその奇妙な光景に疑問を抱く。しかし決してマイナス的な意味での疑問ではない。
手数が多くなり、海賊団全体としての火力が上がったのなら、計画実行後の包囲殲滅もスムーズに進むというものだ。
だが、デイヴィスはそのスキルか能力なのか分からない光景に、見覚えがあった。元デイヴィス海賊団の一員で、恐らく今は誰かの海賊団に入っているであろう男の技に、よく似ていると感じていた。
彼はハッキリと思い出すことはなかったが、その人物こそアンスティスの腹心であり、デイヴィスを待つ中で逸れてしまった、ウォルター・ケネディその人だった。
「待たせた。伝えてきたぞ、デイヴィス。何か変わったことは無いか?」
「あぁ、問題ない。強いていうならばロバーツの船に心強い奴が乗っているってことか・・・」
そう言って進行方向のその奥へ視線を戻すデイヴィス。どういうことかとシンが彼の視線を追うと、そこでは砲撃による煙と爆撃音に包まれる船団があった。シンがデイヴィスの言伝を無線で伝え、甲板に戻るまでの間に話していた事を簡潔に話す二人。
状況を把握したシンだったが、WoFのプレイヤーである彼らであっても、ウォルターの特異な能力については知らなかった。それだけ彼のレヴェリーボマーのクラスが珍しいというのもあったが、それ以上にAIによる技術力の進化が、この世界に影響を与えている証拠だろう。
彼らの船がロバーツの船団へ向かう中、上空では蟒蛇に食われた仲間を救出すべく、残された竜騎士隊とドラゴン、そしてヘラルトと彼の描いたペガサスが、船を離れ雲海に覗かせる巨体のところにまでやって来ていた。
「レールガンの次の攻撃地点はここだ!船長達なら必ずやってくれる・・・。後は俺ら次第だ!隊長や仲間達を絶対に救出するぞ!」
エイヴリーの励ましのおかげで、彼らの士気はこれまで以上に昂っている。それこそ、命を犠牲にしても託された思いを必ず遂げるのだと言わんばかりに。
「ヘラルト・・・。すまないな、お前まで巻き込んでしまって・・・」
「いえ、僕は自らの意思でここにいます。ロイクさん達を助けたいのは勿論ですが、それ以上に僕も皆さんの役に立ちたかったんです!僕では力不足かもしれませんが、足手まといになるつもりはありません!」
少年は気がついていた。残された彼らは、生きながらえたことに意味を見出すため、その命の炎を燃やし尽くさんとしていることを。自身に出来ることを果たし、可能な限り彼らを生かして返そうと決意する。
するとその時、彼らの前に聳え立つ巨大な蟒蛇の身体が内部から光だし、体表を盛り上げ、今にも爆発を引き起こさんとしていた。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる