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希望の合流と絶望の救出
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ロバーツが船の後方へ走り、船員から双眼鏡を受け取ると、近づいて来るという連合軍を確かめる。彼の想像した通り、そこには見覚えのある海賊旗の数々と、アシュトン海賊団のものである、珍しい潜水艇が確認出来た。
「あれは・・・シンプソンの海賊旗だ。それにアシュトンの潜水艇も来ている。デイヴィスを待つ為に別れたアイツらが、今ここに来ているということは、どこかにデイヴィスがいる筈だ・・・!」
待ち望んでいた親友と友軍の到着に、ロバーツは口角を上げて少しだけ明るい表情を見せた。連合軍との合流まで、現在の位置で船を待機させる。迎えに行ってもよかったが、蟒蛇による海流の変化の中を進むのは骨が折れる。
ならばここで到着を待ち、その間海上の蟒蛇がおかしな動きをしないように見張り、攻撃を仕掛け続けることで少しでも体力を削っておきたい。それにデイヴィスが到着したところで、まずはこのレイドモンスターをある程度弱らせなければ、計画の実行どころではない。
そもそも、この巨大な蟒蛇にダメージは入っているのだろうか。ハオランやキング、エイヴリー達による身体の切断や溶解による風穴など、通常では再生出来ないような攻撃を与えたものの、その身体は時間を置かずして再生し、今まで通り何も変わらずそこに存在し続けている。
「我々はここでデイヴィス達の到着を待つ!手の空いている者はウォルターを手伝え!少しでも多くの砲弾を、あの怪物に浴びせてやれッ!」
船長の号令に、更に勢いを増し弾薬や物資を運ぶ船員達。デイヴィスを乗せたシン達の一行も、荒れ狂う海流を見事に超えていく。シンプソンら海賊には、この程度の海流など幾度となく超えてきた経験があった。
だが、船の操縦を教えてもらったばかりの素人であるツクヨに、これほど複雑な海流を渡っていくことなど不可能だった。海にも詳しく、船にも詳しいウィリアム・ダンピアの弟子である少年を連れていなければ。
時折ツバキに操縦桿を握らせることもあったが、その殆どを彼からの指示を受けていただけで見事にこなしてしまうツクヨ。それこそこのまま、船の操縦士にでもクラスチェンジしてしまいそうな程の上達ぶりだった。
「凄い砲撃だな。到底あの数の船団では撃てそうもない量の砲撃じゃないか?あれはロバーツとやらのスキルか能力なのか?」
「いや・・・アイツにこんなスキルや能力はなかった筈だが・・・。暫く会わん内にクラスチェンジでもしたのか・・・。或いは新たな仲間の能力だろう」
ロバーツの船から放たれる砲撃の数と、周囲に轟く爆撃音の数々がやけに多いことに気がつくミア。それを聞いて、デイヴィスもその奇妙な光景に疑問を抱く。しかし決してマイナス的な意味での疑問ではない。
手数が多くなり、海賊団全体としての火力が上がったのなら、計画実行後の包囲殲滅もスムーズに進むというものだ。
だが、デイヴィスはそのスキルか能力なのか分からない光景に、見覚えがあった。元デイヴィス海賊団の一員で、恐らく今は誰かの海賊団に入っているであろう男の技に、よく似ていると感じていた。
彼はハッキリと思い出すことはなかったが、その人物こそアンスティスの腹心であり、デイヴィスを待つ中で逸れてしまった、ウォルター・ケネディその人だった。
「待たせた。伝えてきたぞ、デイヴィス。何か変わったことは無いか?」
「あぁ、問題ない。強いていうならばロバーツの船に心強い奴が乗っているってことか・・・」
そう言って進行方向のその奥へ視線を戻すデイヴィス。どういうことかとシンが彼の視線を追うと、そこでは砲撃による煙と爆撃音に包まれる船団があった。シンがデイヴィスの言伝を無線で伝え、甲板に戻るまでの間に話していた事を簡潔に話す二人。
状況を把握したシンだったが、WoFのプレイヤーである彼らであっても、ウォルターの特異な能力については知らなかった。それだけ彼のレヴェリーボマーのクラスが珍しいというのもあったが、それ以上にAIによる技術力の進化が、この世界に影響を与えている証拠だろう。
彼らの船がロバーツの船団へ向かう中、上空では蟒蛇に食われた仲間を救出すべく、残された竜騎士隊とドラゴン、そしてヘラルトと彼の描いたペガサスが、船を離れ雲海に覗かせる巨体のところにまでやって来ていた。
「レールガンの次の攻撃地点はここだ!船長達なら必ずやってくれる・・・。後は俺ら次第だ!隊長や仲間達を絶対に救出するぞ!」
エイヴリーの励ましのおかげで、彼らの士気はこれまで以上に昂っている。それこそ、命を犠牲にしても託された思いを必ず遂げるのだと言わんばかりに。
「ヘラルト・・・。すまないな、お前まで巻き込んでしまって・・・」
「いえ、僕は自らの意思でここにいます。ロイクさん達を助けたいのは勿論ですが、それ以上に僕も皆さんの役に立ちたかったんです!僕では力不足かもしれませんが、足手まといになるつもりはありません!」
少年は気がついていた。残された彼らは、生きながらえたことに意味を見出すため、その命の炎を燃やし尽くさんとしていることを。自身に出来ることを果たし、可能な限り彼らを生かして返そうと決意する。
するとその時、彼らの前に聳え立つ巨大な蟒蛇の身体が内部から光だし、体表を盛り上げ、今にも爆発を引き起こさんとしていた。
「あれは・・・シンプソンの海賊旗だ。それにアシュトンの潜水艇も来ている。デイヴィスを待つ為に別れたアイツらが、今ここに来ているということは、どこかにデイヴィスがいる筈だ・・・!」
待ち望んでいた親友と友軍の到着に、ロバーツは口角を上げて少しだけ明るい表情を見せた。連合軍との合流まで、現在の位置で船を待機させる。迎えに行ってもよかったが、蟒蛇による海流の変化の中を進むのは骨が折れる。
ならばここで到着を待ち、その間海上の蟒蛇がおかしな動きをしないように見張り、攻撃を仕掛け続けることで少しでも体力を削っておきたい。それにデイヴィスが到着したところで、まずはこのレイドモンスターをある程度弱らせなければ、計画の実行どころではない。
そもそも、この巨大な蟒蛇にダメージは入っているのだろうか。ハオランやキング、エイヴリー達による身体の切断や溶解による風穴など、通常では再生出来ないような攻撃を与えたものの、その身体は時間を置かずして再生し、今まで通り何も変わらずそこに存在し続けている。
「我々はここでデイヴィス達の到着を待つ!手の空いている者はウォルターを手伝え!少しでも多くの砲弾を、あの怪物に浴びせてやれッ!」
船長の号令に、更に勢いを増し弾薬や物資を運ぶ船員達。デイヴィスを乗せたシン達の一行も、荒れ狂う海流を見事に超えていく。シンプソンら海賊には、この程度の海流など幾度となく超えてきた経験があった。
だが、船の操縦を教えてもらったばかりの素人であるツクヨに、これほど複雑な海流を渡っていくことなど不可能だった。海にも詳しく、船にも詳しいウィリアム・ダンピアの弟子である少年を連れていなければ。
時折ツバキに操縦桿を握らせることもあったが、その殆どを彼からの指示を受けていただけで見事にこなしてしまうツクヨ。それこそこのまま、船の操縦士にでもクラスチェンジしてしまいそうな程の上達ぶりだった。
「凄い砲撃だな。到底あの数の船団では撃てそうもない量の砲撃じゃないか?あれはロバーツとやらのスキルか能力なのか?」
「いや・・・アイツにこんなスキルや能力はなかった筈だが・・・。暫く会わん内にクラスチェンジでもしたのか・・・。或いは新たな仲間の能力だろう」
ロバーツの船から放たれる砲撃の数と、周囲に轟く爆撃音の数々がやけに多いことに気がつくミア。それを聞いて、デイヴィスもその奇妙な光景に疑問を抱く。しかし決してマイナス的な意味での疑問ではない。
手数が多くなり、海賊団全体としての火力が上がったのなら、計画実行後の包囲殲滅もスムーズに進むというものだ。
だが、デイヴィスはそのスキルか能力なのか分からない光景に、見覚えがあった。元デイヴィス海賊団の一員で、恐らく今は誰かの海賊団に入っているであろう男の技に、よく似ていると感じていた。
彼はハッキリと思い出すことはなかったが、その人物こそアンスティスの腹心であり、デイヴィスを待つ中で逸れてしまった、ウォルター・ケネディその人だった。
「待たせた。伝えてきたぞ、デイヴィス。何か変わったことは無いか?」
「あぁ、問題ない。強いていうならばロバーツの船に心強い奴が乗っているってことか・・・」
そう言って進行方向のその奥へ視線を戻すデイヴィス。どういうことかとシンが彼の視線を追うと、そこでは砲撃による煙と爆撃音に包まれる船団があった。シンがデイヴィスの言伝を無線で伝え、甲板に戻るまでの間に話していた事を簡潔に話す二人。
状況を把握したシンだったが、WoFのプレイヤーである彼らであっても、ウォルターの特異な能力については知らなかった。それだけ彼のレヴェリーボマーのクラスが珍しいというのもあったが、それ以上にAIによる技術力の進化が、この世界に影響を与えている証拠だろう。
彼らの船がロバーツの船団へ向かう中、上空では蟒蛇に食われた仲間を救出すべく、残された竜騎士隊とドラゴン、そしてヘラルトと彼の描いたペガサスが、船を離れ雲海に覗かせる巨体のところにまでやって来ていた。
「レールガンの次の攻撃地点はここだ!船長達なら必ずやってくれる・・・。後は俺ら次第だ!隊長や仲間達を絶対に救出するぞ!」
エイヴリーの励ましのおかげで、彼らの士気はこれまで以上に昂っている。それこそ、命を犠牲にしても託された思いを必ず遂げるのだと言わんばかりに。
「ヘラルト・・・。すまないな、お前まで巻き込んでしまって・・・」
「いえ、僕は自らの意思でここにいます。ロイクさん達を助けたいのは勿論ですが、それ以上に僕も皆さんの役に立ちたかったんです!僕では力不足かもしれませんが、足手まといになるつもりはありません!」
少年は気がついていた。残された彼らは、生きながらえたことに意味を見出すため、その命の炎を燃やし尽くさんとしていることを。自身に出来ることを果たし、可能な限り彼らを生かして返そうと決意する。
するとその時、彼らの前に聳え立つ巨大な蟒蛇の身体が内部から光だし、体表を盛り上げ、今にも爆発を引き起こさんとしていた。
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