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無償の忠誠心
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荒れる海面を巧みな舵捌きで乗り越え、蟒蛇の身体の周囲一帯を激しい爆発が取り囲む。爆煙は嵐の風に運ばれ、止まることなく流れゆく。そして再び、見えない何かが、蟒蛇の身体へ向けて放られると、時間差で幾つもの爆発が起こり、絶え間なく蟒蛇の鱗を吹き飛ばし、消炎の焼けた跡が牛歩のようにその巨体を蝕んでいった。
しかし、彼等の奮闘虚しく、その焼け焦げた跡は時が戻ったかのように再生し、鱗は早送りされたコマのようにみるみる生えてきては、大きく育っていく。それは彼等の攻撃では止めることが出来ない。
だが、それしか方法がなかったのだ。背を向けて逃げることもできない。海流は蟒蛇の支配下にあり、一定の距離以上に離れようとすると、船の性能だけではとても抜けることが出来ない程、強い流れを生み出している。
「いやぁ・・・、参ったねこれは・・・。生きて帰れるかすら怪しくなってきてやがる。キングやエイヴリーの力を持ってしても、潰せない相手って一体何者なんだ?このモンスターは・・・」
「さぁな。だが、レース主催者側と繋がりがある政府が、この事態を知らないはずがない・・・。もしかすると、奴らの企みなのかもしれない。利用していた奴ら諸共、厄介な海賊達を一掃しちまおうっていうな・・・」
レイド戦の戦地である海域の一帯で、キングの船団から離れた位置で別の蟒蛇の身体を狙う海賊がいた。彼等はレイドモンスターの討伐の他に、もう一つの目標を掲げ、その相手と近ず離れずの距離を保ち、様子を伺っていた。
「主催者側と政府が共同し、あのモンスターを用意したとでも言うのか?ここらを縄張りとする海賊もいるんだ。そいつらが知らない筈はない。そしてそいつらが知っていれば、俺達やキング、エイヴリーが情報を入手していないなんてあり得ないだろ?」
「だが、こんなモンスターがずっとこのエリアの深海で息を潜め、成長していたって言うのもおかしな話だろ。誰も一度も目撃したことがないなんてあり得るか?それこそあり得ないだろ?」
移動するだけで海の流れが変わってしまう程大きな蟒蛇。それが人目に触れず生きながらえるなど、不可能に近い。しかし、彼等の言う通り誰かが今回のレースの為に用意するには余りにも大きく、それも人目に付かずなど出来るはずがないのだ。
ならばこの蟒蛇はどこからやってきたのか。誰がこの事態を招いたのか。はたまたモンスター自身の意思で暴れているのか。謎の声を聞き取ることの出来なかった彼等には、それを確かめる術はない。
「ロバーツ、もしかしてアンタには心当たりがあるのか?」
「確証はない。だが可能性で言えば一番あり得るだろう。異世界への移動ポータルなどと、ガキでも信じなさそうな代物をレースに持ち込んだ、あの男・・・。レース開始直前で飛び入りの参加。そして予定を無視した勝手な行動を奴らは容認し、その者のやりたいようにやらせていたあの様子・・・。もっと疑うべきだったか・・・」
情報通のロバーツやデイヴィス、そして凡ゆる方面に顔の利くキングですら、その男の存在を知らなかった。だがあの男は、主催者側や政府に干渉されることなく、突然のサプライズを敢行。誰も不思議に思わず、止めにも入らなかったと言うことは、それを承知の上だったのか、或いは洗脳されていたのか。
「あんな話を信じるのか?それこそ正気じゃないぜ。とりあえず今はフィリップスんところと合流して、協力するべきだと俺は思うね。各々で出来ることは限られている。個々の力でキングやエイヴリーに敵わねぇ俺達は、俺達にできることをやるしかねぇ・・・。元同じ船に乗っていた仲だ、連携なら俺達だって引けを取らない筈だしな」
ロバーツに、共に計画の実行目指すフィリップス海賊団との合流を提案するウォルター。彼の爆発能力を駆使すれば、船を吹き飛ばし海流を抜けることも不可能ではない。だが、あまり乱用はできない。船自体への負担が大きく、壊れてしまうからだ。
「あぁ、ウォルター。お前の意見に賛成だよ。それにこの難局を乗り越えるには、お前の力も必要だしな。頼りにしてるぜ」
二人の話はまとまり、一先ず計画を進める意味でも、同じ協力者であるフィリップスと合流し、今の蟒蛇による難局を乗り越えてから先のことを考えることになった。
ウォルターを救助してからというものの、彼には助けられてばかりだった。その行動力や作戦は、デイヴィス海賊団がまだあった頃から、目を見張るものがあった。
デイヴィス海賊団が解体され、それぞれの道を歩んでいこうという時にも、ロバーツは彼の才能を見出し、自分の船へスカウトしていたが、彼は信頼を寄せていたアンスティスと共に海賊をしていくことを決意する。
そして彼は、アンスティスの腹心となるまでに上り詰め、その実力を確かなものとしていった。だが一つ疑問なのは、それだけの能力や才能を持ちながら、何故ウォルターは誰かの元で止まっていたのかということだ。
ウォルター自身にも叶えたい夢や、野心はあるはず。ロバーツはフィリップスのように、いつか独立するものだと思っていたが、彼はそのままアンスティスと共に海賊を継続し、自身の欲をあまり表には出さなかった。ロバーツは彼のそんなところが気がかりで、アンスティス海賊団の様子を人傳に探りを入れていた。
しかし、彼等の奮闘虚しく、その焼け焦げた跡は時が戻ったかのように再生し、鱗は早送りされたコマのようにみるみる生えてきては、大きく育っていく。それは彼等の攻撃では止めることが出来ない。
だが、それしか方法がなかったのだ。背を向けて逃げることもできない。海流は蟒蛇の支配下にあり、一定の距離以上に離れようとすると、船の性能だけではとても抜けることが出来ない程、強い流れを生み出している。
「いやぁ・・・、参ったねこれは・・・。生きて帰れるかすら怪しくなってきてやがる。キングやエイヴリーの力を持ってしても、潰せない相手って一体何者なんだ?このモンスターは・・・」
「さぁな。だが、レース主催者側と繋がりがある政府が、この事態を知らないはずがない・・・。もしかすると、奴らの企みなのかもしれない。利用していた奴ら諸共、厄介な海賊達を一掃しちまおうっていうな・・・」
レイド戦の戦地である海域の一帯で、キングの船団から離れた位置で別の蟒蛇の身体を狙う海賊がいた。彼等はレイドモンスターの討伐の他に、もう一つの目標を掲げ、その相手と近ず離れずの距離を保ち、様子を伺っていた。
「主催者側と政府が共同し、あのモンスターを用意したとでも言うのか?ここらを縄張りとする海賊もいるんだ。そいつらが知らない筈はない。そしてそいつらが知っていれば、俺達やキング、エイヴリーが情報を入手していないなんてあり得ないだろ?」
「だが、こんなモンスターがずっとこのエリアの深海で息を潜め、成長していたって言うのもおかしな話だろ。誰も一度も目撃したことがないなんてあり得るか?それこそあり得ないだろ?」
移動するだけで海の流れが変わってしまう程大きな蟒蛇。それが人目に触れず生きながらえるなど、不可能に近い。しかし、彼等の言う通り誰かが今回のレースの為に用意するには余りにも大きく、それも人目に付かずなど出来るはずがないのだ。
ならばこの蟒蛇はどこからやってきたのか。誰がこの事態を招いたのか。はたまたモンスター自身の意思で暴れているのか。謎の声を聞き取ることの出来なかった彼等には、それを確かめる術はない。
「ロバーツ、もしかしてアンタには心当たりがあるのか?」
「確証はない。だが可能性で言えば一番あり得るだろう。異世界への移動ポータルなどと、ガキでも信じなさそうな代物をレースに持ち込んだ、あの男・・・。レース開始直前で飛び入りの参加。そして予定を無視した勝手な行動を奴らは容認し、その者のやりたいようにやらせていたあの様子・・・。もっと疑うべきだったか・・・」
情報通のロバーツやデイヴィス、そして凡ゆる方面に顔の利くキングですら、その男の存在を知らなかった。だがあの男は、主催者側や政府に干渉されることなく、突然のサプライズを敢行。誰も不思議に思わず、止めにも入らなかったと言うことは、それを承知の上だったのか、或いは洗脳されていたのか。
「あんな話を信じるのか?それこそ正気じゃないぜ。とりあえず今はフィリップスんところと合流して、協力するべきだと俺は思うね。各々で出来ることは限られている。個々の力でキングやエイヴリーに敵わねぇ俺達は、俺達にできることをやるしかねぇ・・・。元同じ船に乗っていた仲だ、連携なら俺達だって引けを取らない筈だしな」
ロバーツに、共に計画の実行目指すフィリップス海賊団との合流を提案するウォルター。彼の爆発能力を駆使すれば、船を吹き飛ばし海流を抜けることも不可能ではない。だが、あまり乱用はできない。船自体への負担が大きく、壊れてしまうからだ。
「あぁ、ウォルター。お前の意見に賛成だよ。それにこの難局を乗り越えるには、お前の力も必要だしな。頼りにしてるぜ」
二人の話はまとまり、一先ず計画を進める意味でも、同じ協力者であるフィリップスと合流し、今の蟒蛇による難局を乗り越えてから先のことを考えることになった。
ウォルターを救助してからというものの、彼には助けられてばかりだった。その行動力や作戦は、デイヴィス海賊団がまだあった頃から、目を見張るものがあった。
デイヴィス海賊団が解体され、それぞれの道を歩んでいこうという時にも、ロバーツは彼の才能を見出し、自分の船へスカウトしていたが、彼は信頼を寄せていたアンスティスと共に海賊をしていくことを決意する。
そして彼は、アンスティスの腹心となるまでに上り詰め、その実力を確かなものとしていった。だが一つ疑問なのは、それだけの能力や才能を持ちながら、何故ウォルターは誰かの元で止まっていたのかということだ。
ウォルター自身にも叶えたい夢や、野心はあるはず。ロバーツはフィリップスのように、いつか独立するものだと思っていたが、彼はそのままアンスティスと共に海賊を継続し、自身の欲をあまり表には出さなかった。ロバーツは彼のそんなところが気がかりで、アンスティス海賊団の様子を人傳に探りを入れていた。
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