491 / 1,646
雷雲に巣食う蛇
しおりを挟む固定されていた大波を徐々に解除していき、緩やかに周囲への被害を抑え何事も無かったかのようにやる過ごしていくトゥーマーン。その間、キングは蟒蛇の身体の変化を観察していた。
これまで超回復を見せてきた蟒蛇の身体が、切断によってどのような変化を見せるのか。キングの能力を解除されたその巨体がゆっくりと海の底へと沈んでいく。次第に肉眼では確認できないほど、深い水深にまで辿り着こうとしていた。
これでは蟒蛇の身体を切断したことが果たして効果的であったのか、その確認が取れなくなってしまうと眉を潜ませるキング。だが、彼のそんな心配をよそに、蟒蛇の身体は見たことのあるような変化を見せる。
蟒蛇の身体が水面から姿を確認出来なくなってしまいそうになったところで、切断された断面付近に淡い光が集まり出す。これはスユーフとハオランが、蟒蛇の身体に風穴を開けた時の再生能力の現象に酷似している。
「・・・これはこれは・・・。切り落としても短くなる訳じゃぁないのね・・・。つくづく呆れた再生能力だことで」
キングは苦笑いをしながらも、額には一粒の汗を垂らしていた。全身全霊を込める程の攻撃ではなかったが、最大級に重たい一撃をお見舞いした筈のキングだったが、その一撃を持ってしてもこの蟒蛇の再生能力を凌駕することは出来なかった。
レイド戦攻略の目標である、巨大蟒蛇の討伐に暗い影を落とす。キングクラスの実力者であっても、その再生能力の前に手も足も出ないのでは、果たして蟒蛇の体力を削り切るまでにどれだけの時間と労力が必要になるのか、分かったものではない。
時を同じくして、エイヴリー海賊団もまた海と空に這いずり回る蟒蛇の姿に面食らい、手をこまねいていた。船長であるエイヴリーを乗せた、複数の海賊船をクラフトして組み合わせた戦艦では、レールガンの次弾装填の準備が行われていた。
「急ぎレールガンの準備を完了させろ!雲に隠れてやがる魔物は、俺達で仕留める。海上のは他の奴らに任せときゃぁいい」
レールガンの一撃により、最初に姿を現していた蟒蛇は倒せたように思われたが、深海にその姿を消した後に、今度は海だけでなく雲の中にも現れた蟒蛇。空と海に挟まれより一層の悍ましさを増していく戦場。
海上はともかく、雲の上ともなると攻撃の手段が限られてしまう。通常の海賊船であれば砲撃が行えるが、角度をつけるのが難しく船の位置どりが重要となる。そして何より、何の能力もスキルも乗っていない砲撃では、蟒蛇に有効なダメージを与えることが難しいのがネックとなる。
シャーロットの氷の能力や、フィリップスの磁力操作のような能力では、遠く離れた雲の上の蟒蛇を攻撃することは出来ない為、海賊団同士の連携だけでなく分担も重要になってしまった。
エイヴリーの指示を待たずして、レールガンの準備を整えていた船員達。その甲斐あり、装填までに然程手間取らずに準備を完了することが出来た。すぐに砲身を上に向け、雲の上の蟒蛇に狙いを定める。近場の部位ではなく、砲身の上昇に伴い最も角度が合わせやすい部位を狙う。
そして再び、強い光を集めエネルギーを蓄積するレール。狙いを定め後は船長の合図を待つだけとなり、船員の一人が彼に声をかけると、エイヴリーが威勢の良い号令で発射の合図を出す。
最大戦力の攻撃が上空に巣食う蟒蛇の身体に向けて放たれる。雷光のように一瞬の輝きが一つの線のように景色に差し込む。すると突然、雲の中より雷鳴が走り、蟒蛇に向けて放たれた攻撃に向けて至る所から雷が集まると、レールガンの攻撃と衝突する。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる