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キングの一撃
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溢れ落ちる蟒蛇の血の勢いが弱まり、赤黒い色に染まった海水の水飛沫と落下する音の感覚が徐々に広がっていく。
「どうやら再生を上回るのは相当難しそうだ・・・」
「か・・・風穴を開けるのでは無駄だということか?」
スユーフの疑問に、周囲を見渡し他の蟒蛇の身体の部位を見渡すハオラン。しかし、彼等の健闘が他の戦場で活きているとは感じられない。変化のない蟒蛇の様子に、果たしてダメージすら与えられているのか不安になるくらいだった。
二人が蟒蛇の再生能力の高さに唖然としている内に、蟒蛇の身体を持ち上げていたキングの船がすぐ下にまでやって来ており、珍しく彼自身がその手に武器を持っていた。
それを目撃したスユーフが、ハオランにボードを走らせるよう伝える。キングはその華奢な身体からは想像も出来ない程の力を振るう。それは彼の能力に関係しているものだが、彼が武器を握る時、周囲の者達にも緊張が走る。そのあまりの能力に巻き込まれかねないからだ。
「す・・・すぐにここから離れた方がいい」
「・・・?どういうことだ、キングの奴が何かするつもりなのか?」
スユーフは言葉で言うよりも先に身体が動いていた。彼自身も、自身の身の安全の為、一刻も早くこの場を離れたがっているが、二人が乗って来たボードはハオランにしか動かせない。詳しいことは道すがら話すと語り、ハオランに操縦を催促する
説明を聞かぬまま、何処まで退けばいいかも分からぬまま、ハオランはボードにエンジンをかけ、その場を離れていく。
キングが直々に武器を持って戦闘を行うこと自体が珍しく、レースで何度も競り合った事のあるハオランですら、彼の能力を漠然としか理解していなかった。スユーフも、自らのボスの能力をわざわざ解説することもしなかったが、道中で話すと約束した手前、これからキングが何をしようとしているのか語る。
これまでの戦闘の中で、時折見せていたキングの能力。それは相手を引き寄せたり、自身や対象を軽くし、通常ではあり得ない跳躍や今のように蟒蛇の巨体を持ち上げるなど、常人ではなし得ない芸当を披露してみせた。
その他にも、蟒蛇の頭部をその細腕で殴り飛ばし、力の一部を付与しマクシムに一度だけ常軌を逸した力を与えた。これからキングがやろうとしているのは、後者によく似た能力。
彼はその手にした湾曲する剣、カットラスを使い蟒蛇に重い一撃を入れようと言うのだ。だがその力の余波で、周囲にも危険が及ぶ可能性があるから、スユーフはこの場を離れたがっていたのだ。
「しかし、あんな物で何ができる?斬撃や打撃、衝撃波や爆発なら我々で既に試した。その結果があれだぞ?今更、剣一本手にしたところで・・・」
「ボ・・・ボスの力は我々の力を凌駕する。同じものとは思わない方がいい」
ハオランやスユーフの打撃や斬撃は、既に達人の域にまで達している。WoFの世界でいうところの“マスタークラス“に匹敵する能力や技術を有している。否、既に彼等はマスタークラスなのだろう。攻撃の規模が常人のそれを超えている。
彼がキングのことについて述べている間に、向こうでは動きがあった。キングは船から宙に浮く蟒蛇の巨体の上へと飛び移ったのだ。文字や言葉にすれば何の変哲もないことだが、海上から蟒蛇の身体の上までは、とても“飛び移る“などと言う表現では到達出来ない程の距離が空いている。
それこそハオランのエンチャント装備、韋駄天のような空中を飛び回れるような特殊な能力でもない限り、飛び移るなど出来るものではない。キングは以前にも見せた跳躍力で船から飛び立つと、何とひとっ飛びで蟒蛇の身体の上まで乗ってみせた。これは自身の身体を軽くし、甲板を蹴る力を強くしたことにより実現させた力。
あたかも身体能力の向上スキルを使ったかのような強化だが、キングのそれはバフのようなモノとは少し違っていた。
操縦に集中していたハオランは、キングがいつの間にか蟒蛇の上にいることに気づき動揺する。どうやって登ったのか考察に意識を向けるよりも先に、スユーフによってハンドルを固定される。
「は・・・早く!ボスはいつも周りを巻き込む・・・!」
キングは戦闘に集中すると、自らの力を惜しげもなく使う。よって、周りの者達はいつも巻き込まれる羽目になるが、それによって死人がでたことはない。無意識に制御しているのもあるのだろうが、他の船員や幹部達が彼の雰囲気を悟ることに慣れ、避難に徹するようになったことが大きな要因だろう。
蟒蛇の身体の上に乗ったキングは、それまで巨体を持ち上げていた力を解除していた。宙に上がった蟒蛇の身体はゆっくり降下しているように見える。だが実際はその質量の多さから、下に落ちる勢いもそれ相応のものになっているはず。
スユーフが危惧しているのは、その巨体が海面に落ちて来た時の衝撃で、巨大な水飛沫と波を引き起こすであろうことだ。いくら大波を弾き飛ばす力がある二人とはいえ、足場の覚束ないところや、不意の出来事に見舞われていては実力を発揮出来ない。
ある程度、余裕のある距離まで逃げられれば、巻き込まれる事ない。状況を把握したハオランは、韋駄天に込められた魔力をツバキが開発した、操縦士の能力を反映させる装置に送り込み、エンジンにブーストを掛けて一気に走り抜ける。
落ちゆく蟒蛇の身体から僅かに飛び上がるキング。巨体の落下速度により、キングとの距離はみるみる離れていく。そして目を閉じて集中していたキングは、瞳孔が開くほど目を見開き笑う。
身体を回転させ遠心力を得ると、その勢いを乗せたまま一気に剣を振り下ろす。当然、既に剣が届くような距離ではなくなっている。スユーフの斬撃やハオランの打撃のように衝撃波を生み出し、飛ばそうと言うのだろう。
しかし、彼の放った斬撃は妙に静かで肉眼で確認出来るほどハッキリした者ではなかった。その瞬間、キングが振るった剣の先で、僅かに空間が裂かれるような目の錯覚にも似た光景が確認される。
同時に、蟒蛇の身体に一本の境目の線が入ると、左右でズレが生じ落下の速度を変えるのと一緒に、そこから凄まじい血飛沫を噴き上げた。蟒蛇の巨大な身体は、キングの振るった一閃により見事なまでに両断された。
「どうやら再生を上回るのは相当難しそうだ・・・」
「か・・・風穴を開けるのでは無駄だということか?」
スユーフの疑問に、周囲を見渡し他の蟒蛇の身体の部位を見渡すハオラン。しかし、彼等の健闘が他の戦場で活きているとは感じられない。変化のない蟒蛇の様子に、果たしてダメージすら与えられているのか不安になるくらいだった。
二人が蟒蛇の再生能力の高さに唖然としている内に、蟒蛇の身体を持ち上げていたキングの船がすぐ下にまでやって来ており、珍しく彼自身がその手に武器を持っていた。
それを目撃したスユーフが、ハオランにボードを走らせるよう伝える。キングはその華奢な身体からは想像も出来ない程の力を振るう。それは彼の能力に関係しているものだが、彼が武器を握る時、周囲の者達にも緊張が走る。そのあまりの能力に巻き込まれかねないからだ。
「す・・・すぐにここから離れた方がいい」
「・・・?どういうことだ、キングの奴が何かするつもりなのか?」
スユーフは言葉で言うよりも先に身体が動いていた。彼自身も、自身の身の安全の為、一刻も早くこの場を離れたがっているが、二人が乗って来たボードはハオランにしか動かせない。詳しいことは道すがら話すと語り、ハオランに操縦を催促する
説明を聞かぬまま、何処まで退けばいいかも分からぬまま、ハオランはボードにエンジンをかけ、その場を離れていく。
キングが直々に武器を持って戦闘を行うこと自体が珍しく、レースで何度も競り合った事のあるハオランですら、彼の能力を漠然としか理解していなかった。スユーフも、自らのボスの能力をわざわざ解説することもしなかったが、道中で話すと約束した手前、これからキングが何をしようとしているのか語る。
これまでの戦闘の中で、時折見せていたキングの能力。それは相手を引き寄せたり、自身や対象を軽くし、通常ではあり得ない跳躍や今のように蟒蛇の巨体を持ち上げるなど、常人ではなし得ない芸当を披露してみせた。
その他にも、蟒蛇の頭部をその細腕で殴り飛ばし、力の一部を付与しマクシムに一度だけ常軌を逸した力を与えた。これからキングがやろうとしているのは、後者によく似た能力。
彼はその手にした湾曲する剣、カットラスを使い蟒蛇に重い一撃を入れようと言うのだ。だがその力の余波で、周囲にも危険が及ぶ可能性があるから、スユーフはこの場を離れたがっていたのだ。
「しかし、あんな物で何ができる?斬撃や打撃、衝撃波や爆発なら我々で既に試した。その結果があれだぞ?今更、剣一本手にしたところで・・・」
「ボ・・・ボスの力は我々の力を凌駕する。同じものとは思わない方がいい」
ハオランやスユーフの打撃や斬撃は、既に達人の域にまで達している。WoFの世界でいうところの“マスタークラス“に匹敵する能力や技術を有している。否、既に彼等はマスタークラスなのだろう。攻撃の規模が常人のそれを超えている。
彼がキングのことについて述べている間に、向こうでは動きがあった。キングは船から宙に浮く蟒蛇の巨体の上へと飛び移ったのだ。文字や言葉にすれば何の変哲もないことだが、海上から蟒蛇の身体の上までは、とても“飛び移る“などと言う表現では到達出来ない程の距離が空いている。
それこそハオランのエンチャント装備、韋駄天のような空中を飛び回れるような特殊な能力でもない限り、飛び移るなど出来るものではない。キングは以前にも見せた跳躍力で船から飛び立つと、何とひとっ飛びで蟒蛇の身体の上まで乗ってみせた。これは自身の身体を軽くし、甲板を蹴る力を強くしたことにより実現させた力。
あたかも身体能力の向上スキルを使ったかのような強化だが、キングのそれはバフのようなモノとは少し違っていた。
操縦に集中していたハオランは、キングがいつの間にか蟒蛇の上にいることに気づき動揺する。どうやって登ったのか考察に意識を向けるよりも先に、スユーフによってハンドルを固定される。
「は・・・早く!ボスはいつも周りを巻き込む・・・!」
キングは戦闘に集中すると、自らの力を惜しげもなく使う。よって、周りの者達はいつも巻き込まれる羽目になるが、それによって死人がでたことはない。無意識に制御しているのもあるのだろうが、他の船員や幹部達が彼の雰囲気を悟ることに慣れ、避難に徹するようになったことが大きな要因だろう。
蟒蛇の身体の上に乗ったキングは、それまで巨体を持ち上げていた力を解除していた。宙に上がった蟒蛇の身体はゆっくり降下しているように見える。だが実際はその質量の多さから、下に落ちる勢いもそれ相応のものになっているはず。
スユーフが危惧しているのは、その巨体が海面に落ちて来た時の衝撃で、巨大な水飛沫と波を引き起こすであろうことだ。いくら大波を弾き飛ばす力がある二人とはいえ、足場の覚束ないところや、不意の出来事に見舞われていては実力を発揮出来ない。
ある程度、余裕のある距離まで逃げられれば、巻き込まれる事ない。状況を把握したハオランは、韋駄天に込められた魔力をツバキが開発した、操縦士の能力を反映させる装置に送り込み、エンジンにブーストを掛けて一気に走り抜ける。
落ちゆく蟒蛇の身体から僅かに飛び上がるキング。巨体の落下速度により、キングとの距離はみるみる離れていく。そして目を閉じて集中していたキングは、瞳孔が開くほど目を見開き笑う。
身体を回転させ遠心力を得ると、その勢いを乗せたまま一気に剣を振り下ろす。当然、既に剣が届くような距離ではなくなっている。スユーフの斬撃やハオランの打撃のように衝撃波を生み出し、飛ばそうと言うのだろう。
しかし、彼の放った斬撃は妙に静かで肉眼で確認出来るほどハッキリした者ではなかった。その瞬間、キングが振るった剣の先で、僅かに空間が裂かれるような目の錯覚にも似た光景が確認される。
同時に、蟒蛇の身体に一本の境目の線が入ると、左右でズレが生じ落下の速度を変えるのと一緒に、そこから凄まじい血飛沫を噴き上げた。蟒蛇の巨大な身体は、キングの振るった一閃により見事なまでに両断された。
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