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神代 コウ

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撃ち放たれた雷光

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 徐々に役者が揃いつつあるレイドの戦地。様々な思惑を秘め、各々は巨大蟒蛇へと立ち向かう。エイヴリーのクラフトによって、彼等の船数隻を使って作り出した戦艦には、二本の巨大なレールが設置され、十分なエネルギーを蓄える。

 煌々と光り輝いていた砲身はゆっくりと収束していき、一時的に集めたエネルギーをそのレールに纏わせ蓄積させる。発射の準備が整ったのか、エイヴリー海賊団の船は、その兵器が積まれた戦艦から離れるように移動を開始。

 直接蟒蛇の頭部と戦っていたロイクの竜騎士隊に撤退の指示を出す。その際に、共に力を貸してくれていたシャーロットへも避難するように声を掛けるロイク。

 意外なことに彼女はロイクの忠告を素直に聞き入れ、その場に蟒蛇の動きを遮る壮大な氷像の景色を作り上げると、凍った海面をアイススケートのように可憐な動きで離れていく。

 蟒蛇はシャーロットの作り上げた、動きを遮る氷像を大口から放たれるブレスで破壊している。前線で戦っていた竜騎士隊やシャーロットの撤退を目にし、遠距離から援護射撃を行っていたロバーツの船団もまた、念の為エイヴリーの兵器の射線から離れるように旋回し、距離を取る。

 キングの船団は、相変わらず先程までロバーツ海賊団退いた場所からそう遠くない位置で、鎮座しエイヴリーの兵器を特等席で見物するかのように動かない。

 そして、キングが蟒蛇を叩き伏せた際に拾ったという“拾いもの“を乗せた船は、舵の壊れた無人船のように、荒れ狂う波に身を任せるように漂いながら、彼等とは逆に蟒蛇との距離を詰めていった。

 周囲の者達にはそれが何かも分からず、果たして気づいているのかさえ怪しい。それどころではない事もあるが、蟒蛇との戦闘で、既に何隻もの海賊船が破壊され、海流に流され無人となった難破船がそこらに漂っている。

 一隻の小船が蟒蛇の元へ流れ着こうと、別段不自然な光景ではなかったのだ。直接蟒蛇と戦っていたロイクの龍騎士隊も、その流れゆく小船を視界には入れていたが、人の姿は見えず破損箇所もいくつか見受けられる為、誰も怪しんでいなかった。

 キング暗殺計画の実行に肯定的だったフィリップス海賊団は、前方で慌ただしく動き出す彼等の動きを見て、その動きに誘われるように、蟒蛇の後方に見えるエイヴリー海賊団の兵器の射線上から遠のいて行く。

 それまで蟒蛇の周りに見えていた、群がるドラゴン達が一斉に離れていく光景が印象的だった。まるで悪い予感を感じ取り、直ぐに住処を移動する動物達のように散開していくのを見て、いよいよ射撃が行われるのだろうという予感が、船員達の間にも広がる。

 ウォルターは船を全速力で飛ばし、ロバーツの海賊船を目指す。そして彼に説得されたアーチャーやモーティマーは、フィリップス海賊団の後を追い、付かず離れずの距離を保っていた。

 あれだけ仲違いをして離脱していった手前、今更共に戦おうなどという図々しい事も出来ない。もしやり直す気があるのなら、それは戦果で証明しなければならない。彼等にとってのケジメとは、そういったものだ。

 遅れてやって来た政府の海賊達は、各々自身の目的と欲に忠実にキングの首を狙う為、いい場所を他の誰よりも先に取ろうと舵を切る。彼等にとって一攫千金のチャンスでもあるこの申し出は、その後の人生を大きく変える事もできる可能性を秘めている。

 政府との繋がりを断ち、何処かの街で平和にその後の人生を過ごすことも、恨みを持った海賊を探し出す為、情報を集めたり誰かを雇ったりなど、目的達成の手段にも大いに役立つ事だろう。

 中にはキングの船団と同様に、エイヴリーの兵器の射線上から離れる事もなく、最短距離を攻める者もいる。あれだけ目立つ発射準備をしているのだ、何かとてつもない攻撃が放たれるのは、火を見るよりも明らかだろう。

 その中で射線上から出ないということは、何か脱出できる手段があるのか、或いはそれをもろともしない秘策があるのか。後方の海賊達は思い思いに船を走らせ散開していく。

 兵器の発射準備が整い、前線へ送り込んでいたロイクと彼の竜騎士隊に撤退の指示を出すエイヴリー。流石はドラゴンといったところだろうか、指示から撤退までの動きが、船の比ではない程に速やかに行われる。

 彼等の撤退と、彼等に協力してくれたシャーロットの撤退を確認したエイヴリーは、遂に戦艦に設置された巨大兵器を使用する。

 「全てのエネルギーをこの一撃に注ぎ込めッ!後のことは考えるな!全力を持って奴を討ち滅ぼす・・・。ッ撃てぇーーー!!」

 バチバチと稲光を見せていた二本の砲身に、再び光が集まりエネルギーを可視化させる程の力を蓄積させる。そして、激しい光と共に閃光のような一瞬で巨大な雷撃が、蟒蛇の頭部目がけて放たれた。
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