World of Fantasia

神代 コウ

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協力する海賊達

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 キングの船団に接近したロバーツの船団は、怪しまれぬようその横を通り抜け、蟒蛇の前方でエイヴリーの射線に入らないような立ち位置を確保する為、舵を切る。

 ロバーツを乗せた船がキングの船の横を通り過ぎて行く時、二人の男の視線が交わる。互いの思惑を秘めた目は双方に、蟒蛇によるものではない波乱の予感を与えた。

 「何だぁ?喧嘩売ってんのかアイツ等!?わざわざ俺達の近くを通り過ぎて行きやがってッ・・・!」

 「好きにさせときゃいいの。今はエイヴリーのおっさんの攻撃に集中してちょうだいな?その為にお前を残したんだからねぇ、ダラーヒム君?」

 まるで、全ての事柄が順調に運んでいるかの様に、キングの表情は自信と余裕で満ち溢れていた。ダラーヒムはまだ、彼のその胸の内を知らされることなく、彼に言われるがまま自分の役割を果たす。

 キングの船団よりも前線に出たロバーツ海賊団は、蟒蛇側面に回り込む様にして進み船を止める。依然、シャーロットとロイクの竜騎士隊による攻撃で、頭部の周りは硝煙と海面から立ち登る水蒸気で視界が悪く、海も荒れていた。

 白い煙の向こうに、巨大な龍のような形をしたシルエットが浮かぶ。その周りを飛び回り火球を放つドラゴンの群れ。そして、海面から生える巨大なシルエットの根元で、キラキラと美しい輝きの中を縦横無尽に駆け回る、長い髪を振り乱す人の姿が薄っすらと確認できる。

 「誰かが抑えていてくれたのか・・・。だがアレは一体誰だ?霧が濃くてよく見えんな・・・」

 「下で戦っている女なら知っている。氷の魔法を扱い、たった一人でレースに挑む孤高の海賊。そして海を歩くなんて真似が出来るのは、“アイスベリー“の異名で知られるシャーロットしかいない」

 「“アイスベリー“・・・?」

 ロバーツと話す、デイヴィス海賊団時代からの同胞が、蟒蛇と戦う女海賊のことについて尋ねる。アイスベリーという異名は、彼女の能力をそのまま表現した氷のアイスと、その名前にある“シャーロット・デ・ベリー“のベリーから来ている。

 しかし、それだけでは異名とまでにはならないだろう。彼女が人々に恐れられる理由の一つ。それは、彼女は自身の能力で氷漬けにした人間や魔物を、砕いたり削ったりしてデザートとして食していたことから付いた名前だった。

 人も魔物も、自分以外に全く興味を示さない彼女は、空腹となれば何でも食してしまう異常性を持った偏食家。冷徹で変化のない表情で、美味いのか不味いのかも読み取れないまま、氷で作ったグラスに入る人だったモノを食す姿は、サイコパス以外の何ものでもない。

 敵に回すと別の意味で恐ろしいそんな彼女だが、どちらかと言うと協力関係にある今のその後ろ姿は何とも頼もしく思える。実際、体格差で圧倒的不利な状況の中で、シャーロットやロイクの竜騎士隊はよく持ち堪えている。

 彼等の姿を見て、ロバーツの船団もすぐに加勢に入る。船に積んだありったけの大砲を蟒蛇に撃ち込んでいく。ダメージとしては微々たるものかもしれないが、蟒蛇の気を逸らすにはこれだけでも十分効果的だった。

 しかし、そんな中でも魔力を使った攻撃を仕掛けないロバーツとその船員達。蟒蛇への攻撃はあくまでカモフラージュ。本来の目的である計画実行に備え、対人戦の余力は残しておきたい。

 故にレイド戦で使うのであれば、物理的な攻撃手段に絞られる。何ならここで全てを撃ち尽くしてしまっても構わない。そもそも彼はレースの順位には拘っていなかった。最悪の場合、リタイアしてしまって離脱できれば問題ない。

 ロバーツ海賊団の船員達による、砲撃手クラスのスキルで強化された砲撃は、通常のものとはスピードもパワーも別物。海賊船同士の戦いにおいても、砲撃手の数と強化された砲撃の弾幕で、ある程度の勝率を上げることが出来る。

 そしてそれは、大型モンスターとの戦闘でも有力。ロバーツはそれを見込んで、船員の殆どを砲撃手のクラスで固め、圧倒的な弾幕で敵の頭数を減らす戦いを得意としていた。

 通常の砲撃では、蟒蛇の鱗を剥がすのに数発必要だが、彼等の強化された砲撃であれば一発の砲撃で数枚の鱗を剥がすことが可能。これにより、シャーロットが鱗を剥がす手間が省け、彼女が直接ダメージを与えていくことに集中できるようになった。

 「・・・よい働きだぞ、雑兵供。私を活かすことが、現状を乗り切る唯一の方法だ!ハハハハハッ!」

 身体の動きに更に磨きのかかるシャーロット。彼女言う通り、今はシャーロットにダメージを稼がせてでも協力し、エイヴリーの兵器が射撃準備を完了するまでの時間を稼ぐ必要がある。

 そして彼等が蟒蛇の相手をしている間に、エネルギーを集めていたエイヴリーの戦艦に取り付けられた兵器の準備が完了したようで、光が徐々に砲身に収束していった。
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