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加勢の裏の思惑
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エイヴリーの乗る船体と、側に着水した船を数隻巻き込み、クラフトの能力で一つの船へと組み替えられて行く。それまでの船とは比べ物にならないほどの高さと長さへと変えられて行く。
その姿はまるで、国が保有する戦艦に匹敵するほどのものとなり、みるみるそのシルエットが組み上げられていく中で、一際目を引く物がある。それは甲板に建造される、二本の巨大なレールだった。
船の大半を占めるその巨大な砲身と、その周りに建造される砲台が蟒蛇の頭部に狙いを定め、射出の時を待っていた。しかし、船のクラフトはまだ完了していない。巨大な兵器を扱うには、その射出の反動に耐えられるだけの設備が必要だ。武器は完成しても、それを扱う身体がまだ出来ていない。
「大型建造には時間がかかる・・・。俺達で奴の気を引く・・・すぐに出撃の準備をしろ!」
真っ先に動き出したのは、召喚士と竜騎士のダブルクラスであるロイクだった。すぐ様戦闘に向かえる船員を掻き集め、次々に小型のドラゴンを召喚し空へと飛び立って行く。
「船長ッ!俺達が時間を稼ぎます!」
「ロイクッ・・・!あぁ、待ってろ。すぐに完成させてやるからよぉッ・・・!」
空母から飛び立つ戦闘機のように羽ばたいて行く竜騎士隊。船員達を送り出し、ロイクも建造中の船から上空へと飛び上がり、未だ反対側を向き、海賊達の猛攻を受けている蟒蛇へと迫る。
だが、ロイクは一つ蟒蛇の動きで妙に感じる部分があった。これだけ大掛かりに移動をやってのけたエイヴリー海賊団。彼らが滑空している内に、戦場では様々な動きがあったが、何故ここまで順調に事が運んだのか。蟒蛇は何故、無防備に上空を飛ぶ彼らを見過ごしたのか。
否、あれ程追い討ちを仕掛けるようなモンスターが、横を通り抜けて行くエイヴリー海賊団を放置する筈がない。彼らの移動が成ったのは、一重に蟒蛇の相手を務めていた海賊達のおかげと言えるだろう。
しかし、ヴェインもシャーロットも、何もエイヴリー達を助けようとして戦っていた訳ではない。意図せずそのような結果となっただけで、協力しようと言う意思はない。
一人、最前線で蟒蛇の攻撃を凌ぎ切るシャーロット。初段の攻撃が見事に決まってから、幾度となく攻撃を仕掛け攻勢に出るも攻めきれずにいた。それと言うのも、蟒蛇との距離が近づくほど、蟒蛇の攻撃頻度と精度が徐々に増し出したのだ。
蟒蛇の吐き出すブレスを避け、海面に直撃したことで発生する水飛沫を凍らせていき、氷の壁を作ってはそれを目隠しに移動しながら、海水と彼女の周囲の温度差により生じる水蒸気が急激に冷やされ、気嵐が起こっている。
蟒蛇が攻撃すればするほど、海面に障害物が増え蒸気は増し、シャーロットの姿を見えなくしていく。しかし相手は、視覚による認識だけでシャーロットを捉えているわけではなかった。
気嵐に隠れ姿の見えなくなった彼女を、蟒蛇は魔力を追って居場所を特定し、動きを予測してブレスを放ってきたのだ。凍った水飛沫の障害物から飛び出すシャーロット。蟒蛇のいる方向から強い光が、彼女の視界に差し込む。
気づいた時には、既に避け切れる状況にはなかった。目の前に迫る命の危機に、彼女は目を見開き瞳孔が開く。最期の悪あがきに、蟒蛇の放ったブレスそのものを凍らせようと試みるところで、シャーロットを狙った蟒蛇のブレスは、上空からやって来た何かによって爆発する。
「ッ・・・!?」
爆発した衝撃で吹き飛ばされるシャーロット。しかし、彼女が海面に近づくと氷の足場が生まれ、海に落とされるという事態からは逃れられていた。体勢を立て直し、爆発の起きた方を見る。煙が立ち込め何も見えなかったが、上空の視界の端で動く物がある。
シャーロットがその何かに視線を送ると、上空にいたのはドラゴンに乗るロイクの竜騎士隊だった。エイヴリーのクラフトが完了するまでの間、蟒蛇の注意を逸らすためにやって来た彼らは、一人蟒蛇の猛攻を凌ぐシャーロット目にし、急遽加勢に入ったのだ。
「アンタが一人で戦っていてくれたのか、シャーロット・デ・ベリー」
「お前はエイヴリーのところの・・・。ふん、最大勢力を誇るエイヴリー海賊団が聞いて呆れる!この程度の魔物に恐れを成し、怖気付いているのかと思ったぞ」
「それだけ憎まれ口が叩ければ大丈夫そうだな。俺達が魔物の攻撃を抑える。アンタは攻撃を頼むッ!」
ロイクの竜騎士隊は、ドラゴンのブレスや槍の投擲により蟒蛇の注意を逸らす。その隙にシャーロットが荒波を越え、蟒蛇に向かって距離を詰める。彼女にとって、防御のことを考えず攻勢に出られるのは願ってもない事だった。
レイド戦では、モンスターにダメージを与えることでポイントが加算されていく。つまり、いくら防御に徹したところで、何の足しにもならないのだ。だが、ロイク達にとってそれは一時的なものに過ぎない。
エイヴリーのクラフトが完了すれば、ヴェインやシャーロットが与えたダメージなど比にならない攻撃が可能となる。ここでの遅れなど、エイヴリー海賊団にとって巻き返せぬものではないのだから。
その姿はまるで、国が保有する戦艦に匹敵するほどのものとなり、みるみるそのシルエットが組み上げられていく中で、一際目を引く物がある。それは甲板に建造される、二本の巨大なレールだった。
船の大半を占めるその巨大な砲身と、その周りに建造される砲台が蟒蛇の頭部に狙いを定め、射出の時を待っていた。しかし、船のクラフトはまだ完了していない。巨大な兵器を扱うには、その射出の反動に耐えられるだけの設備が必要だ。武器は完成しても、それを扱う身体がまだ出来ていない。
「大型建造には時間がかかる・・・。俺達で奴の気を引く・・・すぐに出撃の準備をしろ!」
真っ先に動き出したのは、召喚士と竜騎士のダブルクラスであるロイクだった。すぐ様戦闘に向かえる船員を掻き集め、次々に小型のドラゴンを召喚し空へと飛び立って行く。
「船長ッ!俺達が時間を稼ぎます!」
「ロイクッ・・・!あぁ、待ってろ。すぐに完成させてやるからよぉッ・・・!」
空母から飛び立つ戦闘機のように羽ばたいて行く竜騎士隊。船員達を送り出し、ロイクも建造中の船から上空へと飛び上がり、未だ反対側を向き、海賊達の猛攻を受けている蟒蛇へと迫る。
だが、ロイクは一つ蟒蛇の動きで妙に感じる部分があった。これだけ大掛かりに移動をやってのけたエイヴリー海賊団。彼らが滑空している内に、戦場では様々な動きがあったが、何故ここまで順調に事が運んだのか。蟒蛇は何故、無防備に上空を飛ぶ彼らを見過ごしたのか。
否、あれ程追い討ちを仕掛けるようなモンスターが、横を通り抜けて行くエイヴリー海賊団を放置する筈がない。彼らの移動が成ったのは、一重に蟒蛇の相手を務めていた海賊達のおかげと言えるだろう。
しかし、ヴェインもシャーロットも、何もエイヴリー達を助けようとして戦っていた訳ではない。意図せずそのような結果となっただけで、協力しようと言う意思はない。
一人、最前線で蟒蛇の攻撃を凌ぎ切るシャーロット。初段の攻撃が見事に決まってから、幾度となく攻撃を仕掛け攻勢に出るも攻めきれずにいた。それと言うのも、蟒蛇との距離が近づくほど、蟒蛇の攻撃頻度と精度が徐々に増し出したのだ。
蟒蛇の吐き出すブレスを避け、海面に直撃したことで発生する水飛沫を凍らせていき、氷の壁を作ってはそれを目隠しに移動しながら、海水と彼女の周囲の温度差により生じる水蒸気が急激に冷やされ、気嵐が起こっている。
蟒蛇が攻撃すればするほど、海面に障害物が増え蒸気は増し、シャーロットの姿を見えなくしていく。しかし相手は、視覚による認識だけでシャーロットを捉えているわけではなかった。
気嵐に隠れ姿の見えなくなった彼女を、蟒蛇は魔力を追って居場所を特定し、動きを予測してブレスを放ってきたのだ。凍った水飛沫の障害物から飛び出すシャーロット。蟒蛇のいる方向から強い光が、彼女の視界に差し込む。
気づいた時には、既に避け切れる状況にはなかった。目の前に迫る命の危機に、彼女は目を見開き瞳孔が開く。最期の悪あがきに、蟒蛇の放ったブレスそのものを凍らせようと試みるところで、シャーロットを狙った蟒蛇のブレスは、上空からやって来た何かによって爆発する。
「ッ・・・!?」
爆発した衝撃で吹き飛ばされるシャーロット。しかし、彼女が海面に近づくと氷の足場が生まれ、海に落とされるという事態からは逃れられていた。体勢を立て直し、爆発の起きた方を見る。煙が立ち込め何も見えなかったが、上空の視界の端で動く物がある。
シャーロットがその何かに視線を送ると、上空にいたのはドラゴンに乗るロイクの竜騎士隊だった。エイヴリーのクラフトが完了するまでの間、蟒蛇の注意を逸らすためにやって来た彼らは、一人蟒蛇の猛攻を凌ぐシャーロット目にし、急遽加勢に入ったのだ。
「アンタが一人で戦っていてくれたのか、シャーロット・デ・ベリー」
「お前はエイヴリーのところの・・・。ふん、最大勢力を誇るエイヴリー海賊団が聞いて呆れる!この程度の魔物に恐れを成し、怖気付いているのかと思ったぞ」
「それだけ憎まれ口が叩ければ大丈夫そうだな。俺達が魔物の攻撃を抑える。アンタは攻撃を頼むッ!」
ロイクの竜騎士隊は、ドラゴンのブレスや槍の投擲により蟒蛇の注意を逸らす。その隙にシャーロットが荒波を越え、蟒蛇に向かって距離を詰める。彼女にとって、防御のことを考えず攻勢に出られるのは願ってもない事だった。
レイド戦では、モンスターにダメージを与えることでポイントが加算されていく。つまり、いくら防御に徹したところで、何の足しにもならないのだ。だが、ロイク達にとってそれは一時的なものに過ぎない。
エイヴリーのクラフトが完了すれば、ヴェインやシャーロットが与えたダメージなど比にならない攻撃が可能となる。ここでの遅れなど、エイヴリー海賊団にとって巻き返せぬものではないのだから。
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