474 / 1,646
加勢の裏の思惑
しおりを挟む
エイヴリーの乗る船体と、側に着水した船を数隻巻き込み、クラフトの能力で一つの船へと組み替えられて行く。それまでの船とは比べ物にならないほどの高さと長さへと変えられて行く。
その姿はまるで、国が保有する戦艦に匹敵するほどのものとなり、みるみるそのシルエットが組み上げられていく中で、一際目を引く物がある。それは甲板に建造される、二本の巨大なレールだった。
船の大半を占めるその巨大な砲身と、その周りに建造される砲台が蟒蛇の頭部に狙いを定め、射出の時を待っていた。しかし、船のクラフトはまだ完了していない。巨大な兵器を扱うには、その射出の反動に耐えられるだけの設備が必要だ。武器は完成しても、それを扱う身体がまだ出来ていない。
「大型建造には時間がかかる・・・。俺達で奴の気を引く・・・すぐに出撃の準備をしろ!」
真っ先に動き出したのは、召喚士と竜騎士のダブルクラスであるロイクだった。すぐ様戦闘に向かえる船員を掻き集め、次々に小型のドラゴンを召喚し空へと飛び立って行く。
「船長ッ!俺達が時間を稼ぎます!」
「ロイクッ・・・!あぁ、待ってろ。すぐに完成させてやるからよぉッ・・・!」
空母から飛び立つ戦闘機のように羽ばたいて行く竜騎士隊。船員達を送り出し、ロイクも建造中の船から上空へと飛び上がり、未だ反対側を向き、海賊達の猛攻を受けている蟒蛇へと迫る。
だが、ロイクは一つ蟒蛇の動きで妙に感じる部分があった。これだけ大掛かりに移動をやってのけたエイヴリー海賊団。彼らが滑空している内に、戦場では様々な動きがあったが、何故ここまで順調に事が運んだのか。蟒蛇は何故、無防備に上空を飛ぶ彼らを見過ごしたのか。
否、あれ程追い討ちを仕掛けるようなモンスターが、横を通り抜けて行くエイヴリー海賊団を放置する筈がない。彼らの移動が成ったのは、一重に蟒蛇の相手を務めていた海賊達のおかげと言えるだろう。
しかし、ヴェインもシャーロットも、何もエイヴリー達を助けようとして戦っていた訳ではない。意図せずそのような結果となっただけで、協力しようと言う意思はない。
一人、最前線で蟒蛇の攻撃を凌ぎ切るシャーロット。初段の攻撃が見事に決まってから、幾度となく攻撃を仕掛け攻勢に出るも攻めきれずにいた。それと言うのも、蟒蛇との距離が近づくほど、蟒蛇の攻撃頻度と精度が徐々に増し出したのだ。
蟒蛇の吐き出すブレスを避け、海面に直撃したことで発生する水飛沫を凍らせていき、氷の壁を作ってはそれを目隠しに移動しながら、海水と彼女の周囲の温度差により生じる水蒸気が急激に冷やされ、気嵐が起こっている。
蟒蛇が攻撃すればするほど、海面に障害物が増え蒸気は増し、シャーロットの姿を見えなくしていく。しかし相手は、視覚による認識だけでシャーロットを捉えているわけではなかった。
気嵐に隠れ姿の見えなくなった彼女を、蟒蛇は魔力を追って居場所を特定し、動きを予測してブレスを放ってきたのだ。凍った水飛沫の障害物から飛び出すシャーロット。蟒蛇のいる方向から強い光が、彼女の視界に差し込む。
気づいた時には、既に避け切れる状況にはなかった。目の前に迫る命の危機に、彼女は目を見開き瞳孔が開く。最期の悪あがきに、蟒蛇の放ったブレスそのものを凍らせようと試みるところで、シャーロットを狙った蟒蛇のブレスは、上空からやって来た何かによって爆発する。
「ッ・・・!?」
爆発した衝撃で吹き飛ばされるシャーロット。しかし、彼女が海面に近づくと氷の足場が生まれ、海に落とされるという事態からは逃れられていた。体勢を立て直し、爆発の起きた方を見る。煙が立ち込め何も見えなかったが、上空の視界の端で動く物がある。
シャーロットがその何かに視線を送ると、上空にいたのはドラゴンに乗るロイクの竜騎士隊だった。エイヴリーのクラフトが完了するまでの間、蟒蛇の注意を逸らすためにやって来た彼らは、一人蟒蛇の猛攻を凌ぐシャーロット目にし、急遽加勢に入ったのだ。
「アンタが一人で戦っていてくれたのか、シャーロット・デ・ベリー」
「お前はエイヴリーのところの・・・。ふん、最大勢力を誇るエイヴリー海賊団が聞いて呆れる!この程度の魔物に恐れを成し、怖気付いているのかと思ったぞ」
「それだけ憎まれ口が叩ければ大丈夫そうだな。俺達が魔物の攻撃を抑える。アンタは攻撃を頼むッ!」
ロイクの竜騎士隊は、ドラゴンのブレスや槍の投擲により蟒蛇の注意を逸らす。その隙にシャーロットが荒波を越え、蟒蛇に向かって距離を詰める。彼女にとって、防御のことを考えず攻勢に出られるのは願ってもない事だった。
レイド戦では、モンスターにダメージを与えることでポイントが加算されていく。つまり、いくら防御に徹したところで、何の足しにもならないのだ。だが、ロイク達にとってそれは一時的なものに過ぎない。
エイヴリーのクラフトが完了すれば、ヴェインやシャーロットが与えたダメージなど比にならない攻撃が可能となる。ここでの遅れなど、エイヴリー海賊団にとって巻き返せぬものではないのだから。
その姿はまるで、国が保有する戦艦に匹敵するほどのものとなり、みるみるそのシルエットが組み上げられていく中で、一際目を引く物がある。それは甲板に建造される、二本の巨大なレールだった。
船の大半を占めるその巨大な砲身と、その周りに建造される砲台が蟒蛇の頭部に狙いを定め、射出の時を待っていた。しかし、船のクラフトはまだ完了していない。巨大な兵器を扱うには、その射出の反動に耐えられるだけの設備が必要だ。武器は完成しても、それを扱う身体がまだ出来ていない。
「大型建造には時間がかかる・・・。俺達で奴の気を引く・・・すぐに出撃の準備をしろ!」
真っ先に動き出したのは、召喚士と竜騎士のダブルクラスであるロイクだった。すぐ様戦闘に向かえる船員を掻き集め、次々に小型のドラゴンを召喚し空へと飛び立って行く。
「船長ッ!俺達が時間を稼ぎます!」
「ロイクッ・・・!あぁ、待ってろ。すぐに完成させてやるからよぉッ・・・!」
空母から飛び立つ戦闘機のように羽ばたいて行く竜騎士隊。船員達を送り出し、ロイクも建造中の船から上空へと飛び上がり、未だ反対側を向き、海賊達の猛攻を受けている蟒蛇へと迫る。
だが、ロイクは一つ蟒蛇の動きで妙に感じる部分があった。これだけ大掛かりに移動をやってのけたエイヴリー海賊団。彼らが滑空している内に、戦場では様々な動きがあったが、何故ここまで順調に事が運んだのか。蟒蛇は何故、無防備に上空を飛ぶ彼らを見過ごしたのか。
否、あれ程追い討ちを仕掛けるようなモンスターが、横を通り抜けて行くエイヴリー海賊団を放置する筈がない。彼らの移動が成ったのは、一重に蟒蛇の相手を務めていた海賊達のおかげと言えるだろう。
しかし、ヴェインもシャーロットも、何もエイヴリー達を助けようとして戦っていた訳ではない。意図せずそのような結果となっただけで、協力しようと言う意思はない。
一人、最前線で蟒蛇の攻撃を凌ぎ切るシャーロット。初段の攻撃が見事に決まってから、幾度となく攻撃を仕掛け攻勢に出るも攻めきれずにいた。それと言うのも、蟒蛇との距離が近づくほど、蟒蛇の攻撃頻度と精度が徐々に増し出したのだ。
蟒蛇の吐き出すブレスを避け、海面に直撃したことで発生する水飛沫を凍らせていき、氷の壁を作ってはそれを目隠しに移動しながら、海水と彼女の周囲の温度差により生じる水蒸気が急激に冷やされ、気嵐が起こっている。
蟒蛇が攻撃すればするほど、海面に障害物が増え蒸気は増し、シャーロットの姿を見えなくしていく。しかし相手は、視覚による認識だけでシャーロットを捉えているわけではなかった。
気嵐に隠れ姿の見えなくなった彼女を、蟒蛇は魔力を追って居場所を特定し、動きを予測してブレスを放ってきたのだ。凍った水飛沫の障害物から飛び出すシャーロット。蟒蛇のいる方向から強い光が、彼女の視界に差し込む。
気づいた時には、既に避け切れる状況にはなかった。目の前に迫る命の危機に、彼女は目を見開き瞳孔が開く。最期の悪あがきに、蟒蛇の放ったブレスそのものを凍らせようと試みるところで、シャーロットを狙った蟒蛇のブレスは、上空からやって来た何かによって爆発する。
「ッ・・・!?」
爆発した衝撃で吹き飛ばされるシャーロット。しかし、彼女が海面に近づくと氷の足場が生まれ、海に落とされるという事態からは逃れられていた。体勢を立て直し、爆発の起きた方を見る。煙が立ち込め何も見えなかったが、上空の視界の端で動く物がある。
シャーロットがその何かに視線を送ると、上空にいたのはドラゴンに乗るロイクの竜騎士隊だった。エイヴリーのクラフトが完了するまでの間、蟒蛇の注意を逸らすためにやって来た彼らは、一人蟒蛇の猛攻を凌ぐシャーロット目にし、急遽加勢に入ったのだ。
「アンタが一人で戦っていてくれたのか、シャーロット・デ・ベリー」
「お前はエイヴリーのところの・・・。ふん、最大勢力を誇るエイヴリー海賊団が聞いて呆れる!この程度の魔物に恐れを成し、怖気付いているのかと思ったぞ」
「それだけ憎まれ口が叩ければ大丈夫そうだな。俺達が魔物の攻撃を抑える。アンタは攻撃を頼むッ!」
ロイクの竜騎士隊は、ドラゴンのブレスや槍の投擲により蟒蛇の注意を逸らす。その隙にシャーロットが荒波を越え、蟒蛇に向かって距離を詰める。彼女にとって、防御のことを考えず攻勢に出られるのは願ってもない事だった。
レイド戦では、モンスターにダメージを与えることでポイントが加算されていく。つまり、いくら防御に徹したところで、何の足しにもならないのだ。だが、ロイク達にとってそれは一時的なものに過ぎない。
エイヴリーのクラフトが完了すれば、ヴェインやシャーロットが与えたダメージなど比にならない攻撃が可能となる。ここでの遅れなど、エイヴリー海賊団にとって巻き返せぬものではないのだから。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる