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想定外の展開
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ロバーツ等、キング暗殺を目論む海賊達を主軸に後続組も、その殆どが大波を越えるという結果になった。一線を無事に乗り越えることが出来た彼等は、最前線で戦闘中の先頭グループへ合流しようと動き出す。
だが、彼等の目に一番に飛び込んできたのは、その巨大な身体を這いずらせ、もう一体の大きな魔物と戦う蟒蛇の姿だった。海に立ち蟒蛇に縛り上げられている魔物の方には人が乗っている。
その様子から魔物の方は、その人物の召喚獣か飼い慣らしたモンスターであることが窺える。つまり、今回のレイド戦のボスモンスターは、この海域のあちらこちらに荒波を起こしている蟒蛇の方だということが見て取れる。
「なッ・・・!何だ!?あの化け物は・・・」
「こんなものと戦えっていうのか・・・!?」
後続組の海賊達は、その姿に思わず後退りする。例年通りのレイド戦であれば、こんなにも巨大な相手はいなかった。これでは最早、有志を集い各国が協力して討伐するレベルのモンスターだ。
とてもではないが、こんなものを相手にしながらキングの戦力を削ぐなど出来るのだろうか。寧ろこれでは、キングの力が頼りになってしまう戦闘になるだろう。
本来であればキングの船団に近づき、共にレイドボスを攻撃する中で、頃合いを見て一斉にキングを襲い、デイヴィスの同胞達がそれに加勢する流れを予定していたが、政府に飼われている海賊達の船は、巨大蟒蛇の姿に思わず進行を止めてしまう。
「ロバーツ!予定変更だ!あんな化け物、俺達だけでどうにか出来るもんじゃねぇぞ!」
「確かにこれは妙だな・・・。こんなに大型のレイドモンスターなど見たことがないし、過去の記録にもなかったぞ・・・?誰にもその姿を目撃されず、この海域に住みついていたとでも言うのか?」
一方のロバーツやフィリップス海賊団も、目の前の光景に作戦よりも自分達の命を優先するべきだと、船員達の間で騒ぎになっていた。それもその筈。
キングを殺害したところで彼等にとってのメリットは少ない。それならば逆にキングと協力し、レイドモンスターを討伐する傍ら、政府に遣わされた海賊共を返り討ちして仕舞えば、キング側に借りも作れる。
「やはり奴らには関わらない方がいい。考え直せ、ロバーツ」
「安心しろ。俺達が手を出すのは政府の犬共が乱闘を起こした後だ。状況を見て判断するさ・・・」
ウォルターは予定とは大きく異なる展開に、作戦の決行には反対の意向を示した。いくら親友の望みとはいえ、自身の身までも危険に晒すことなど出来ない。キング暗殺を成し遂げたところで、手に入るのは彼等の財宝や珍しいアイテムなどだろう。
各方面に顔の効くキングであれば、世界中を旅しても巡り合えないような未知の宝に出会えるかもしれない。それは海賊としてロマンのある話だが、それを狙っているのは政府の者達も同じ。
何をしでかすか分からない賊に、危険な物を渡すわけにはいかないからだ。
彼等、後続組が悩んでいる間に、前線ではある動きが起きた。蟒蛇と戦闘を繰り広げていたヴェインのメルディアが、蟒蛇によるブレスをくらい後方へと倒されたのだ。ゆっくりと巨大な波を立てながら、仰向けに倒れていく巨大な魚人。
「チッ・・・!キングやエイヴリーの奴らは何をしてやがる!?・・・一旦、態勢を整えるか・・・?」
ヴェインはメルディアに掴まり、戦線離脱の準備を始める。だがその時、メルディアの立てる大きな波と水飛沫が一瞬にして氷漬けになり、倒れそうになるその身体を支えた。何事かと後方を確認するヴェイン。その海面には、大波を氷の景色へと変えたシャーロットが、馬車の中から睨みを利かせていた。
「ッ・・・!?」
「アンタが勝手に始めた戦いなんだから、今更後に引かないでくれるかしら?」
「シャーロット・・・!?テメェ・・・こんなところで止められたらッ・・・!」
倒れそうになったところを、無理やり倒れないように固定されるメルディア。こんな状態で蟒蛇の前に立たされれば、ただの的にしかならない。ヴェインが危惧するよりも先に、彼の視界に強烈な光が差し込む。
既に追い討ちをかけんと、蟒蛇はその大きな口を広げ、再びブレスを放っていた。エイヴリー海賊団の幹部、マクシムやロイクが防いだブレスに比べれば大したことはないが、こんなものを何度もくらえば召喚獣が消滅してしまうのも時間の問題だ。
「ったく!人を囮に使う気かよ、あの女ッ・・・!」
ヴェインは素早く掌をメルディアに当て、詠唱を唱えずしてその手から光を放つ。すると、メルディアの巨大な身体が一瞬にして光の粒子へと変わり、姿を消したのだ。
召喚士としての実力が高いと、魔物を呼び出す際や元に戻す際のモーションを短くすることが出来る。しかし、召喚した魔物の大きさや強力さにより、短縮出来る時間は制限される。それを一瞬にして戻せると言うことは、ヴェインが如何に召喚士としてのレベルや熟練度が高いのかが想像出来る。
メルディアを消したことにより、宙に放り出されるヴェイン。そして彼は、シャーロットが作り出したメルディアの身体に沿った氷の彫刻の上に落下していく。その中でヴェインは再び召喚の詠唱を唱える。手を押し付ける場所がない中で彼は、反対の掌と拍手するように打ち付け、新たな入り口をその掌の上に開通させると、頭上に大きく魔法陣を展開させる。
そこから姿を現したのは、巨大な鳥の足のようなものだった。
だが、彼等の目に一番に飛び込んできたのは、その巨大な身体を這いずらせ、もう一体の大きな魔物と戦う蟒蛇の姿だった。海に立ち蟒蛇に縛り上げられている魔物の方には人が乗っている。
その様子から魔物の方は、その人物の召喚獣か飼い慣らしたモンスターであることが窺える。つまり、今回のレイド戦のボスモンスターは、この海域のあちらこちらに荒波を起こしている蟒蛇の方だということが見て取れる。
「なッ・・・!何だ!?あの化け物は・・・」
「こんなものと戦えっていうのか・・・!?」
後続組の海賊達は、その姿に思わず後退りする。例年通りのレイド戦であれば、こんなにも巨大な相手はいなかった。これでは最早、有志を集い各国が協力して討伐するレベルのモンスターだ。
とてもではないが、こんなものを相手にしながらキングの戦力を削ぐなど出来るのだろうか。寧ろこれでは、キングの力が頼りになってしまう戦闘になるだろう。
本来であればキングの船団に近づき、共にレイドボスを攻撃する中で、頃合いを見て一斉にキングを襲い、デイヴィスの同胞達がそれに加勢する流れを予定していたが、政府に飼われている海賊達の船は、巨大蟒蛇の姿に思わず進行を止めてしまう。
「ロバーツ!予定変更だ!あんな化け物、俺達だけでどうにか出来るもんじゃねぇぞ!」
「確かにこれは妙だな・・・。こんなに大型のレイドモンスターなど見たことがないし、過去の記録にもなかったぞ・・・?誰にもその姿を目撃されず、この海域に住みついていたとでも言うのか?」
一方のロバーツやフィリップス海賊団も、目の前の光景に作戦よりも自分達の命を優先するべきだと、船員達の間で騒ぎになっていた。それもその筈。
キングを殺害したところで彼等にとってのメリットは少ない。それならば逆にキングと協力し、レイドモンスターを討伐する傍ら、政府に遣わされた海賊共を返り討ちして仕舞えば、キング側に借りも作れる。
「やはり奴らには関わらない方がいい。考え直せ、ロバーツ」
「安心しろ。俺達が手を出すのは政府の犬共が乱闘を起こした後だ。状況を見て判断するさ・・・」
ウォルターは予定とは大きく異なる展開に、作戦の決行には反対の意向を示した。いくら親友の望みとはいえ、自身の身までも危険に晒すことなど出来ない。キング暗殺を成し遂げたところで、手に入るのは彼等の財宝や珍しいアイテムなどだろう。
各方面に顔の効くキングであれば、世界中を旅しても巡り合えないような未知の宝に出会えるかもしれない。それは海賊としてロマンのある話だが、それを狙っているのは政府の者達も同じ。
何をしでかすか分からない賊に、危険な物を渡すわけにはいかないからだ。
彼等、後続組が悩んでいる間に、前線ではある動きが起きた。蟒蛇と戦闘を繰り広げていたヴェインのメルディアが、蟒蛇によるブレスをくらい後方へと倒されたのだ。ゆっくりと巨大な波を立てながら、仰向けに倒れていく巨大な魚人。
「チッ・・・!キングやエイヴリーの奴らは何をしてやがる!?・・・一旦、態勢を整えるか・・・?」
ヴェインはメルディアに掴まり、戦線離脱の準備を始める。だがその時、メルディアの立てる大きな波と水飛沫が一瞬にして氷漬けになり、倒れそうになるその身体を支えた。何事かと後方を確認するヴェイン。その海面には、大波を氷の景色へと変えたシャーロットが、馬車の中から睨みを利かせていた。
「ッ・・・!?」
「アンタが勝手に始めた戦いなんだから、今更後に引かないでくれるかしら?」
「シャーロット・・・!?テメェ・・・こんなところで止められたらッ・・・!」
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既に追い討ちをかけんと、蟒蛇はその大きな口を広げ、再びブレスを放っていた。エイヴリー海賊団の幹部、マクシムやロイクが防いだブレスに比べれば大したことはないが、こんなものを何度もくらえば召喚獣が消滅してしまうのも時間の問題だ。
「ったく!人を囮に使う気かよ、あの女ッ・・・!」
ヴェインは素早く掌をメルディアに当て、詠唱を唱えずしてその手から光を放つ。すると、メルディアの巨大な身体が一瞬にして光の粒子へと変わり、姿を消したのだ。
召喚士としての実力が高いと、魔物を呼び出す際や元に戻す際のモーションを短くすることが出来る。しかし、召喚した魔物の大きさや強力さにより、短縮出来る時間は制限される。それを一瞬にして戻せると言うことは、ヴェインが如何に召喚士としてのレベルや熟練度が高いのかが想像出来る。
メルディアを消したことにより、宙に放り出されるヴェイン。そして彼は、シャーロットが作り出したメルディアの身体に沿った氷の彫刻の上に落下していく。その中でヴェインは再び召喚の詠唱を唱える。手を押し付ける場所がない中で彼は、反対の掌と拍手するように打ち付け、新たな入り口をその掌の上に開通させると、頭上に大きく魔法陣を展開させる。
そこから姿を現したのは、巨大な鳥の足のようなものだった。
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