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空飛ぶ海賊船
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少年がスケッチブックから数枚の紙を引き千切る。そして一枚の紙に鳥の絵を描くと、彼の描いたペガサスのように動き出し、今度は紙から浮き出て本物の生き物として現れる。
ヘラルトはその鳥に、引き千切ったスケッチブックのページを咥えさせると、エイヴリーの船団一隻ずつに持って行かせた。次々に紙を千切り、鳥を描いては外へ飛ばして行くのをひたすらに繰り返す。
大波がやって来るまで時間はない。一分一秒でも惜しい中、彼の手は徐々に要領を掴み始め、みるみる内に彼のスケッチブックのページは、エイヴリーの船団へ配られて行く。
「ヘラルト、これは君の持つそのノートでなければならないのか?」
「はい。このスケッチブックには、僕の魔力が込められているんです。それに他にも特別な素材を使っているので、代用が効かないんですよ・・・。すみません、もう少しだけ時間を頂きます!波の方は大丈夫でしょうか?」
アルマンは船内の窓から外の様子を伺う。蟒蛇の起こした大波は、その姿をより大きくし船員達の不安を煽った。波があとどれくらいで船に到達してしまうのかを導き出し、少年へ伝える。
手の動きが加速したところを見ると、今のままではギリギリと言ったところなのだろうか。返事をする間も無く素早い手付きで、まるで流れ作業をこなす様に着々と少年の描いた鳥は空を飛び回る。
漸くヘラルトの準備が整うと、いつでもいけるといった表情でエイヴリーを見上げる。少年のその眼差しを見て、船を飛ばす準備が整ったであろうことを悟ったエイヴリーは、無線を使い各船へ衝撃に備えるよう、振り落とされないように注意を呼びかける。
そしてエイヴリーのクラフトの準備も整う。大波はすぐ側まで迫っていた。どんな勢いで上昇するかも分からないまま、作戦を決行するエイヴリー海賊団。
「やれッ!ヘラルトぉッ!!」
「了解ですッ!皆さん、振り落とされぬよう気を付けてくださーいッ!!」
少年は大きなスケッチブックから作戦に必要な最後の一ページを千切ると、床に押し付けるように叩きつけ、筆で絵を描き始めた。真っ白なキャンパスに描かれるのは、彼の生み出した空想上の生物、ペガサスにも生えていたような美しく純白で、船よりも大きな翼だった。
左右対照的に描かれたその絵が完成すると、ヘラルトは呪文のようなものを詠唱し始めながら、両手を紙に押しつけ目を閉じる。すると、紙に描かれていた翼は光へと変わり、紙の中から姿を消してしまった。
折角描いた絵が全て綺麗さっぱり消え去ると、筆を入れる前のまっさらな紙へと戻ってしまう。だが、それだけですぐに効果が現れないことに、疑問を浮かべ息を飲み周囲を見渡す船員達。
大波の迫る音が、外から彼らを焦らせるように轟音を響かせながらやって来る。船の外では依然、ヴェインのメルディアと蟒蛇が激しい衝突をし合い、荒々しい波を海域全体に起こしている。キングの船団は、各々の能力を駆使して必死に船のバランスを保ち、攻勢に出るチャンスを伺っている。
「飛び上がりますッ!口を閉じてないと舌を噛みますよ!?」
騒がしくなる船内を一喝するように、ヘラルトの声が響く。そしてその直後、大きな揺れと共に身体にかかる重力が何倍にもなったかのように重くなり、床に押し付けられるように膝が折れて行くエイヴリー海賊団。
窓の外に見える景色は、まるで急降下して行くかのように下へと流れて行く。そこへ、大きな白い翼が羽ばたいている様子が映り込む。翼が船体に近づくと、まるで夜になったかのように暗くなり、またすぐに明るくなるとそこは大波よりも高い位置から海を見下ろす景色へ変わっていた。
「飛んだ・・・。船が飛んでるッ!」
「翼だッ!船の側面から翼が生えてるぞ!」
船から翼が生え、空を飛ぶなどまるでお伽話のような光景だったが、それもヘラルトの言っていた通り長くは続かない。彼の描いたその翼は、空を自由に飛び回るだけの力を有していなかった。ただ、蟒蛇の起こした大波を越えるだけで精一杯。
エイヴリー海賊団の船団が、翼を生やし一斉に上空へと飛び上がる光景は圧巻だった。だがその翼は、ヘラルトが船内で描いた翼と同様、徐々に光に変わり消えて行く。
「船長ッ!僕に出来るのはここまでです!後はお任せします!」
「いい働きだったぜぇ、ヘラルト。お前にも褒美をだせねぇとなぁ。・・・だが否は、お前が繋いだこのバトンを前に進めねぇとなぁッ!!行くぜッ!野郎共ぉぉぉッ!」
「ぅおおおぉぉぉぉぉーーーッ!!」
男達の湧き上がる歓声の中、エイヴリーが翼の消えた船をクラフトする。船体にあるマストが形を変え、まるでハングライダーの翼のように変形し、徐々に滑空しながら船を前へと進めた。
鳥の群れのように空を飛ぶ、無数の海賊船。大波を乗り越え、巨大蟒蛇と魚人の横を抜けていく。海上にいるキング達がその姿を視界に捉える。波に争い、迫る巨大な大波を迎え撃つ準備をしながら。
ヘラルトはその鳥に、引き千切ったスケッチブックのページを咥えさせると、エイヴリーの船団一隻ずつに持って行かせた。次々に紙を千切り、鳥を描いては外へ飛ばして行くのをひたすらに繰り返す。
大波がやって来るまで時間はない。一分一秒でも惜しい中、彼の手は徐々に要領を掴み始め、みるみる内に彼のスケッチブックのページは、エイヴリーの船団へ配られて行く。
「ヘラルト、これは君の持つそのノートでなければならないのか?」
「はい。このスケッチブックには、僕の魔力が込められているんです。それに他にも特別な素材を使っているので、代用が効かないんですよ・・・。すみません、もう少しだけ時間を頂きます!波の方は大丈夫でしょうか?」
アルマンは船内の窓から外の様子を伺う。蟒蛇の起こした大波は、その姿をより大きくし船員達の不安を煽った。波があとどれくらいで船に到達してしまうのかを導き出し、少年へ伝える。
手の動きが加速したところを見ると、今のままではギリギリと言ったところなのだろうか。返事をする間も無く素早い手付きで、まるで流れ作業をこなす様に着々と少年の描いた鳥は空を飛び回る。
漸くヘラルトの準備が整うと、いつでもいけるといった表情でエイヴリーを見上げる。少年のその眼差しを見て、船を飛ばす準備が整ったであろうことを悟ったエイヴリーは、無線を使い各船へ衝撃に備えるよう、振り落とされないように注意を呼びかける。
そしてエイヴリーのクラフトの準備も整う。大波はすぐ側まで迫っていた。どんな勢いで上昇するかも分からないまま、作戦を決行するエイヴリー海賊団。
「やれッ!ヘラルトぉッ!!」
「了解ですッ!皆さん、振り落とされぬよう気を付けてくださーいッ!!」
少年は大きなスケッチブックから作戦に必要な最後の一ページを千切ると、床に押し付けるように叩きつけ、筆で絵を描き始めた。真っ白なキャンパスに描かれるのは、彼の生み出した空想上の生物、ペガサスにも生えていたような美しく純白で、船よりも大きな翼だった。
左右対照的に描かれたその絵が完成すると、ヘラルトは呪文のようなものを詠唱し始めながら、両手を紙に押しつけ目を閉じる。すると、紙に描かれていた翼は光へと変わり、紙の中から姿を消してしまった。
折角描いた絵が全て綺麗さっぱり消え去ると、筆を入れる前のまっさらな紙へと戻ってしまう。だが、それだけですぐに効果が現れないことに、疑問を浮かべ息を飲み周囲を見渡す船員達。
大波の迫る音が、外から彼らを焦らせるように轟音を響かせながらやって来る。船の外では依然、ヴェインのメルディアと蟒蛇が激しい衝突をし合い、荒々しい波を海域全体に起こしている。キングの船団は、各々の能力を駆使して必死に船のバランスを保ち、攻勢に出るチャンスを伺っている。
「飛び上がりますッ!口を閉じてないと舌を噛みますよ!?」
騒がしくなる船内を一喝するように、ヘラルトの声が響く。そしてその直後、大きな揺れと共に身体にかかる重力が何倍にもなったかのように重くなり、床に押し付けられるように膝が折れて行くエイヴリー海賊団。
窓の外に見える景色は、まるで急降下して行くかのように下へと流れて行く。そこへ、大きな白い翼が羽ばたいている様子が映り込む。翼が船体に近づくと、まるで夜になったかのように暗くなり、またすぐに明るくなるとそこは大波よりも高い位置から海を見下ろす景色へ変わっていた。
「飛んだ・・・。船が飛んでるッ!」
「翼だッ!船の側面から翼が生えてるぞ!」
船から翼が生え、空を飛ぶなどまるでお伽話のような光景だったが、それもヘラルトの言っていた通り長くは続かない。彼の描いたその翼は、空を自由に飛び回るだけの力を有していなかった。ただ、蟒蛇の起こした大波を越えるだけで精一杯。
エイヴリー海賊団の船団が、翼を生やし一斉に上空へと飛び上がる光景は圧巻だった。だがその翼は、ヘラルトが船内で描いた翼と同様、徐々に光に変わり消えて行く。
「船長ッ!僕に出来るのはここまでです!後はお任せします!」
「いい働きだったぜぇ、ヘラルト。お前にも褒美をだせねぇとなぁ。・・・だが否は、お前が繋いだこのバトンを前に進めねぇとなぁッ!!行くぜッ!野郎共ぉぉぉッ!」
「ぅおおおぉぉぉぉぉーーーッ!!」
男達の湧き上がる歓声の中、エイヴリーが翼の消えた船をクラフトする。船体にあるマストが形を変え、まるでハングライダーの翼のように変形し、徐々に滑空しながら船を前へと進めた。
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