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絶望の壁と光明
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ペガサスの身体が白く光、大きく広げた羽を前方へ向け、風を起こすように羽ばたかせる。すると、ペガサスの前方にホワイトホールのような光り輝く渦が生み出される。
方向を変え、進路を変えるペガサス。別の場所に向かっては同じことを繰り返し、エイヴリー海賊団の迎撃部隊の前方に、一つまた一つと渦が現れる。
渦は氷塊を飲み込み、何処へ通じているのか分からない空間へと飛ばし、光弾が近付くと中からそれ程大きくないビームを放ち、渦の中へと光弾を誘導したのだ。エイヴリーの乗る船からは、続々と複製されたペガサスが現れ、それぞれ迎撃を行う部隊の元へ赴き、その窮地を救った。
これにより、エイヴリー海賊団も難なく第二波を乗り切ることが出来た。リーズは負傷してしまったが、時間さえあればその傷は自身の能力で修復が可能だ。実質的な被害を出すことなく、蟒蛇の攻撃を凌ぎ切る両海賊団。
第二波の攻撃により、多くの氷塊を失った蟒蛇の周りには、第三波となり得るだけの氷塊は残されていない。海賊達を一掃することは出来なかったものの、彼らの体力と魔力を消費させると言う意味では、なかなかの戦果を上げた。
主戦力であるキングやエイヴリーの能力は強力故、一度で消費する魔力量も多くなる。ましてや仲間の船を守りながら戦ったエイヴリーにとっては、とても効率的な攻撃だったのかもしれない。
それだけ巨大なモンスターというものは、大群に対し広範囲で強力な攻撃を繰り出すことが出来る。蟒蛇は、第二波を撃ち尽くす前に次なる攻撃の準備に入る。大きく敵意を向けるように、海賊達の船へ向けて大口を開き、再び大気を震わせる程の大咆哮をあげる。
余りにも大きなその咆哮に、視界が歪み怯まされていると、蟒蛇の後方から何かがやって来るのが見え始める。それは見渡す限りの大海原が押し寄せて来るような、全てを飲み込まんとする巨大な大波だった。
キングが蟒蛇を海に叩きつけた時の波とは、比べ物にならない規模の大波。一部こそ凍らせることが出来たとしても、その全てを阻止することは出来ない。未だ第二波に手を焼いていた海賊達の元へ、轟くような低い波の音と、壁のように迫る大波の光景が飛び込む。
「おいおいおいッ・・・。何て規模の波だ・・・」
「あんなものッ・・・俺達だけじゃどうにもならないッ!」
キングとエイヴリー、両方の船で船員達の表情が青ざめていく。その規模は、例えキングの船団とエイヴリーの船団が手を結び、迎え撃ったところでそれでも手数が足りない程のものだった。
「だぁ~からデカブツっつぅーのは嫌いなんよぉッ!・・・エイヴリーのおっさんと協力するしか、他に道はない。向こうもそう思ってるはずだから、すぐにコンタクトを・・・」
キングがエイヴリーに協力要請を送ろうとしている中、エイヴリーの方でも同じようなことを考えていた。
「船を前進させながら氷塊の群れを突き抜けるぞッ!キングんとこの奴らに手を貸してやれ!合流し、共にこの窮地を乗り越えるッ!」
言葉を交わすまでもなく、両軍の船は共に合流しようと近づいて行く。だが、大波がやって来るまでに合流出来るかは、かなり際どいところだ。命運をかけた両軍の合流と、それごと飲み込もうとする蟒蛇の大波。
例え合流できたところで、全員が無傷で終わることはないだろう。被害は必ず出て来る。それでもバラバラに動くよりは遥かにマシだ。一箇所に集まり、大波を少しでも遮ることが出来れば、弾かれた波による他の船への被害も少なくすることが出来るのだ。
と、その時。
大波の前に突如、巨大な水飛沫が上がる。まるで、大きな隕石でも着水したとでも言わんばかりの轟音と共に現れたのは、巨大な魚人のような姿をした魔物だった。ゆっくりと頭が海面から現れ、徐々に上半身と両腕が海の中から這い出て来る。
そして、海坊主のように巨大な魚人の頭部に、一人の人影が見えた。最前線で見ていたキングは、その巨大なモンスターとその人影を知っていた。だが、その人物はエイヴリー海賊団の者でも、ましてキングの仲間でもない。
彼はその姿を見た時、漸く来たかと胸を撫で下ろした。キングとエイヴリーが蟒蛇と攻防を繰り広げている間に、彼らも気づかぬくらいの時間が経過していた。足止めを食らっている間に、彼らにも引けを取らない有力な海賊達が続々と、レイド戦が繰り広げられているこの海域へ、帆を進めていたのだった。
方向を変え、進路を変えるペガサス。別の場所に向かっては同じことを繰り返し、エイヴリー海賊団の迎撃部隊の前方に、一つまた一つと渦が現れる。
渦は氷塊を飲み込み、何処へ通じているのか分からない空間へと飛ばし、光弾が近付くと中からそれ程大きくないビームを放ち、渦の中へと光弾を誘導したのだ。エイヴリーの乗る船からは、続々と複製されたペガサスが現れ、それぞれ迎撃を行う部隊の元へ赴き、その窮地を救った。
これにより、エイヴリー海賊団も難なく第二波を乗り切ることが出来た。リーズは負傷してしまったが、時間さえあればその傷は自身の能力で修復が可能だ。実質的な被害を出すことなく、蟒蛇の攻撃を凌ぎ切る両海賊団。
第二波の攻撃により、多くの氷塊を失った蟒蛇の周りには、第三波となり得るだけの氷塊は残されていない。海賊達を一掃することは出来なかったものの、彼らの体力と魔力を消費させると言う意味では、なかなかの戦果を上げた。
主戦力であるキングやエイヴリーの能力は強力故、一度で消費する魔力量も多くなる。ましてや仲間の船を守りながら戦ったエイヴリーにとっては、とても効率的な攻撃だったのかもしれない。
それだけ巨大なモンスターというものは、大群に対し広範囲で強力な攻撃を繰り出すことが出来る。蟒蛇は、第二波を撃ち尽くす前に次なる攻撃の準備に入る。大きく敵意を向けるように、海賊達の船へ向けて大口を開き、再び大気を震わせる程の大咆哮をあげる。
余りにも大きなその咆哮に、視界が歪み怯まされていると、蟒蛇の後方から何かがやって来るのが見え始める。それは見渡す限りの大海原が押し寄せて来るような、全てを飲み込まんとする巨大な大波だった。
キングが蟒蛇を海に叩きつけた時の波とは、比べ物にならない規模の大波。一部こそ凍らせることが出来たとしても、その全てを阻止することは出来ない。未だ第二波に手を焼いていた海賊達の元へ、轟くような低い波の音と、壁のように迫る大波の光景が飛び込む。
「おいおいおいッ・・・。何て規模の波だ・・・」
「あんなものッ・・・俺達だけじゃどうにもならないッ!」
キングとエイヴリー、両方の船で船員達の表情が青ざめていく。その規模は、例えキングの船団とエイヴリーの船団が手を結び、迎え撃ったところでそれでも手数が足りない程のものだった。
「だぁ~からデカブツっつぅーのは嫌いなんよぉッ!・・・エイヴリーのおっさんと協力するしか、他に道はない。向こうもそう思ってるはずだから、すぐにコンタクトを・・・」
キングがエイヴリーに協力要請を送ろうとしている中、エイヴリーの方でも同じようなことを考えていた。
「船を前進させながら氷塊の群れを突き抜けるぞッ!キングんとこの奴らに手を貸してやれ!合流し、共にこの窮地を乗り越えるッ!」
言葉を交わすまでもなく、両軍の船は共に合流しようと近づいて行く。だが、大波がやって来るまでに合流出来るかは、かなり際どいところだ。命運をかけた両軍の合流と、それごと飲み込もうとする蟒蛇の大波。
例え合流できたところで、全員が無傷で終わることはないだろう。被害は必ず出て来る。それでもバラバラに動くよりは遥かにマシだ。一箇所に集まり、大波を少しでも遮ることが出来れば、弾かれた波による他の船への被害も少なくすることが出来るのだ。
と、その時。
大波の前に突如、巨大な水飛沫が上がる。まるで、大きな隕石でも着水したとでも言わんばかりの轟音と共に現れたのは、巨大な魚人のような姿をした魔物だった。ゆっくりと頭が海面から現れ、徐々に上半身と両腕が海の中から這い出て来る。
そして、海坊主のように巨大な魚人の頭部に、一人の人影が見えた。最前線で見ていたキングは、その巨大なモンスターとその人影を知っていた。だが、その人物はエイヴリー海賊団の者でも、ましてキングの仲間でもない。
彼はその姿を見た時、漸く来たかと胸を撫で下ろした。キングとエイヴリーが蟒蛇と攻防を繰り広げている間に、彼らも気づかぬくらいの時間が経過していた。足止めを食らっている間に、彼らにも引けを取らない有力な海賊達が続々と、レイド戦が繰り広げられているこの海域へ、帆を進めていたのだった。
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