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絵画の生き物
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少年の逞しい眼差しに、エイヴリーはその手腕を見せてもらおうと嗾ける。ヘラルトは嬉しそうに口角を上げる。そして手にしていた大きなスケッチブックを開き床に立てる。
目を閉じ、その身体よりも大きな筆を振るい、持ち主の想像した色が次から次へと湧き出ては変わる。色鮮やかな彩色で奏でられる絵画は、彼の独創的な感性で描かれる生き物を映し出す。
ヘラルトの描いた生き物は、エイヴリーを含めその場にいた者達を唸らせる。絵の上手さもさることながら、その生物はよく目にするものでありながらも、普段の形状とは異なる姿をしていたのだ。
少年の筆が止まり絵が完成すると、スケッチブックに描かれたその生き物は動き出し紙の中で暴れ出すと、くり抜かれたかのように生き物の部分だけがその場に残り、余白の紙が床に落ちる。
「絵が・・・まるで生き物のように動き出している・・・」
「だがこの生き物は一体何だ・・・?馬か?鳥か?」
「これは“ペガサス“という空想の生き物です。僕の持って来た書物の中に現れる幻の生き物で、空を駆ける馬なんです!大鷲のような大きな羽を背中から生やし、その蹄は星々を渡ると言われています」
平面ではあるが、少年の言うペガサスはその大きな翼羽ばたかせる。そしてそのまま船内を駆け出すと、閉まる扉の隙間から外へと飛び出して行った。まるで夢でも見ているかのように、目の前で起きた出来事に唖然とする船員達。
その中で一人動じずにいたエイヴリーが、ペガサスは何処へ向かい、何をしようと言うのか、ヘラルトの真意を尋ねる。一体彼は、どのようにしてこの戦況を打開しようと言うのか。
「アレで何をする気だ?」
「氷塊に混じり飛んで来る光の弾が魔力に反応すると言うのなら、魔力を生み出し誘導するのです。標的を別に逸らしてしまえば、今まで通りの迎撃手段で大丈夫ですから・・・」
ヘラルトの言う通り、別の魔力源があれば光弾はそちらに向かいレーザーとなって飛んでいく。その反応を利用し、光弾による攻撃を無効化させることでやり過ごそうと言うのだ。
これは、キングの幹部の一人であるトゥーマーンがやって見せた方法に似ている。そもそも魔力を別のところへ向かって放ち、海水を使って氷塊と光弾を防いでいた彼女の部隊は、蟒蛇のトラップをもろともしていなかった。
しかし、問題はトゥーマーンのように無数の魔力源を持たぬと言う点だ。ヘラルトの描いたペガサスは一頭だけ。これでは、例えそのペガサスが囮になろうと、光弾を引き受け続けるのは不可能だ。
「光弾は次から次へとやって来ている・・・。たった一頭の馬畜生では、時間稼ぎも出来んぞ?」
「そう・・・時間です。僕の描く絵は複製することが可能なんです。つまり、先ほど出て行ったペガサスを何頭も生み出すことが出来るんですよ。このスケッチブックにページが残っているだけ・・・」
そう言った彼のスケッチブックを見てみると、確かに枚数はあるが他に空想上の生物を生み出せるスケッチブックなどあるのだろうか。シン達と出会った時のように大きな荷物は持っていないが、アルマンの研究室に戻れば在庫でもあるのだろうか。
「召喚のスキルとは違い、自分の魔力を消費せず、代わりにページ数を消費して頭数を増やすことが出来ると言うわけか。・・・だが、それは有限なのだろう?」
「構いません。故郷に戻ることが出来れば、またスケッチブックは作れます・・・。今は皆さんを優先しましょう。命は消費するものではありません」
自身の大切な物を使ってまで、仲間達を救おうとする少年の姿に、エイヴリーは漸く心を開き、本当の意味でエイヴリー海賊団の一員として迎え入れた。
「ならば見せてもらおう。お前の知恵と能力で、外の連中を救って見せろ。必要な物があれば何でも俺に言え。知っている範囲であれば何でも作ってやる」
ヘラルトは嬉しそうに、勢いよく頭を一度だけ下げるとスケッチブックを閉じて床に寝かせると、目を閉じ何やら詠唱のようなものを唱え始める。すると、スケッチブックの隙間から複数の紙が飛び出してくる。
その紙には、先程彼の描いたペガサスが描かれており、一枚目のオリジナル同様大きな翼を絵の中で羽ばたかせ、船内を駆け巡る。馬のような鳴き声と蹄の音。そして紙の擦れる音を鳴らし、扉の隙間へと向かい外へと飛び出していく。
船の外では、ロイクの竜騎士隊やリーズの部隊、そしてまだ目立った活躍を見せぬ部隊の者達が依然、氷塊の流星群を迎撃している。そこへ、少年の描いたペガサスの絵が現れ、戦場を駆け巡る。突然現れた生き物に驚き、攻撃を仕掛けようとする者もいたが、その前にエイヴリーによる無線が入り、これがヘラルトのスキルであることと、これまでと同様に氷塊を迎え撃つようにと言う指示が出される。
中には当然、魔力を使った攻撃で氷塊を打ち砕いたり、軌道を逸らす者達もいる。そこへも遂に、蟒蛇の発する光弾が氷塊に紛れやって来る。だが、彼らの射程圏内に入る前に、ヘラルトの描いたペガサスがやって来ると光弾へ向けて攻撃を仕掛けた。
目を閉じ、その身体よりも大きな筆を振るい、持ち主の想像した色が次から次へと湧き出ては変わる。色鮮やかな彩色で奏でられる絵画は、彼の独創的な感性で描かれる生き物を映し出す。
ヘラルトの描いた生き物は、エイヴリーを含めその場にいた者達を唸らせる。絵の上手さもさることながら、その生物はよく目にするものでありながらも、普段の形状とは異なる姿をしていたのだ。
少年の筆が止まり絵が完成すると、スケッチブックに描かれたその生き物は動き出し紙の中で暴れ出すと、くり抜かれたかのように生き物の部分だけがその場に残り、余白の紙が床に落ちる。
「絵が・・・まるで生き物のように動き出している・・・」
「だがこの生き物は一体何だ・・・?馬か?鳥か?」
「これは“ペガサス“という空想の生き物です。僕の持って来た書物の中に現れる幻の生き物で、空を駆ける馬なんです!大鷲のような大きな羽を背中から生やし、その蹄は星々を渡ると言われています」
平面ではあるが、少年の言うペガサスはその大きな翼羽ばたかせる。そしてそのまま船内を駆け出すと、閉まる扉の隙間から外へと飛び出して行った。まるで夢でも見ているかのように、目の前で起きた出来事に唖然とする船員達。
その中で一人動じずにいたエイヴリーが、ペガサスは何処へ向かい、何をしようと言うのか、ヘラルトの真意を尋ねる。一体彼は、どのようにしてこの戦況を打開しようと言うのか。
「アレで何をする気だ?」
「氷塊に混じり飛んで来る光の弾が魔力に反応すると言うのなら、魔力を生み出し誘導するのです。標的を別に逸らしてしまえば、今まで通りの迎撃手段で大丈夫ですから・・・」
ヘラルトの言う通り、別の魔力源があれば光弾はそちらに向かいレーザーとなって飛んでいく。その反応を利用し、光弾による攻撃を無効化させることでやり過ごそうと言うのだ。
これは、キングの幹部の一人であるトゥーマーンがやって見せた方法に似ている。そもそも魔力を別のところへ向かって放ち、海水を使って氷塊と光弾を防いでいた彼女の部隊は、蟒蛇のトラップをもろともしていなかった。
しかし、問題はトゥーマーンのように無数の魔力源を持たぬと言う点だ。ヘラルトの描いたペガサスは一頭だけ。これでは、例えそのペガサスが囮になろうと、光弾を引き受け続けるのは不可能だ。
「光弾は次から次へとやって来ている・・・。たった一頭の馬畜生では、時間稼ぎも出来んぞ?」
「そう・・・時間です。僕の描く絵は複製することが可能なんです。つまり、先ほど出て行ったペガサスを何頭も生み出すことが出来るんですよ。このスケッチブックにページが残っているだけ・・・」
そう言った彼のスケッチブックを見てみると、確かに枚数はあるが他に空想上の生物を生み出せるスケッチブックなどあるのだろうか。シン達と出会った時のように大きな荷物は持っていないが、アルマンの研究室に戻れば在庫でもあるのだろうか。
「召喚のスキルとは違い、自分の魔力を消費せず、代わりにページ数を消費して頭数を増やすことが出来ると言うわけか。・・・だが、それは有限なのだろう?」
「構いません。故郷に戻ることが出来れば、またスケッチブックは作れます・・・。今は皆さんを優先しましょう。命は消費するものではありません」
自身の大切な物を使ってまで、仲間達を救おうとする少年の姿に、エイヴリーは漸く心を開き、本当の意味でエイヴリー海賊団の一員として迎え入れた。
「ならば見せてもらおう。お前の知恵と能力で、外の連中を救って見せろ。必要な物があれば何でも俺に言え。知っている範囲であれば何でも作ってやる」
ヘラルトは嬉しそうに、勢いよく頭を一度だけ下げるとスケッチブックを閉じて床に寝かせると、目を閉じ何やら詠唱のようなものを唱え始める。すると、スケッチブックの隙間から複数の紙が飛び出してくる。
その紙には、先程彼の描いたペガサスが描かれており、一枚目のオリジナル同様大きな翼を絵の中で羽ばたかせ、船内を駆け巡る。馬のような鳴き声と蹄の音。そして紙の擦れる音を鳴らし、扉の隙間へと向かい外へと飛び出していく。
船の外では、ロイクの竜騎士隊やリーズの部隊、そしてまだ目立った活躍を見せぬ部隊の者達が依然、氷塊の流星群を迎撃している。そこへ、少年の描いたペガサスの絵が現れ、戦場を駆け巡る。突然現れた生き物に驚き、攻撃を仕掛けようとする者もいたが、その前にエイヴリーによる無線が入り、これがヘラルトのスキルであることと、これまでと同様に氷塊を迎え撃つようにと言う指示が出される。
中には当然、魔力を使った攻撃で氷塊を打ち砕いたり、軌道を逸らす者達もいる。そこへも遂に、蟒蛇の発する光弾が氷塊に紛れやって来る。だが、彼らの射程圏内に入る前に、ヘラルトの描いたペガサスがやって来ると光弾へ向けて攻撃を仕掛けた。
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