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シー・ギャングの四柱
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炎の壁を抜けた氷塊が小さくなって海賊達の船へと降り注ぐ。しかし、既に小さくなった氷塊に脅威はない。そして警戒すべき光弾は、炎の壁に触れると同時に、海面に向かって落ちて行く。
窮地を乗り切ったジャウカーンの船団はホッと胸を撫で下ろすと、油断することなく慎重に氷塊を処理して行く。その中で、この異変と光弾の性質について突破策を導き出したジャウカーンは、自分と同じ称号を与えられた他の部隊にもこの事を伝えようと、無線を飛ばす。
「おい、他の連中にも伝えてやれ!氷塊の中に別のモンが混じってるってよ。それに魔法は“直接“当てるなってな」
ジャウカーンの忠告は直ぐにキング海賊団の間に広まって行った。海水を操り水の柱で氷塊を迎撃していた、ジャウカーンと同じくキングに認められ特別な称号を与えられていた部隊のリーダー、“トゥーマーン“という女性。
水属性に特化した精霊術師で、煌びやかな青を基調としたドレスを身にまとい、自身の能力で作った物だろうか。まるで素材の感触が一切邪魔をしないウォーターベッドのように、気持ちの良さそうな水で出来た椅子に腰掛けている。
青い長髪を後ろで束ね、氷の結晶をモチーフにした髪飾りで留めている。色白の美しい肌は宛ら雪のように柔らかで、その性格はジャウカーンやキングとは正反対で落ち着いており、死を恐れていないかのように何事にも動じない。
「トゥーマーン様、ジャウカーン様の部隊より伝言が入っております」
「あの男から受ける指図など受けるつもりはありません。・・・ですが、用件だけは伺っておきましょう。キング様からの命かも知れませんし」
彼女と同じく、落ち着いた様子でトゥーマーンの前に膝を着く船員は、ジャウカーンが身を持って発見した氷塊に隠れる光弾の件を、部隊長である彼女に伝える。未知なる攻撃に戦力を削がれぬようにという、彼なりの気遣いのようだったがトゥーマーンはその報告を受け、情けないと鼻で笑い飛ばした。
「キング様より授かった名を持つ者として恥ずかしくはないのでしょうか・・・?そのようなことで大事な部下を失うとは・・・。やはり私には不要な忠告でしたね」
彼女の部隊の迎撃方法は、初めから海水を使った間接的な魔法によるものだった為、元より光弾の性質を受けはしなかった。ただ、見ている光景に若干の変化がある程度。飛んで来る氷塊は水柱に弾かれ、彼女の船団を避けるように通過して行く。
その中で、水柱に当たった光弾が海中目掛けて突き抜けて行くという変化だけがあった。迎撃方針を一切変えぬまま、トゥーマーンの部隊もキングの船団と同じく、無傷で蟒蛇による第二波を乗り切っていた。
ジャウカーンの無線は、更に後方に位置していた部隊の耳にも入る。キングの居る本隊から離れた位置で、前衛部隊のサポート及び、周辺警戒を行っている部隊の長“スユーフ“。
その手に携えた刀で、目にも留まらぬ剣技を放ち、氷塊を一瞬にして雪のように変えてしまう程の技量の持ち主。ジャウカーンやトゥーマーンのように魔力に頼らず、己の技のみで蟒蛇の攻撃を迎撃するスユーフ。
無造作に生やした黒髪に、和服を連想させる袴を着こなし、数メートルはあろうかという長い漆黒のマフラーを首に巻いている。何でも、彼の大事な物らしく季節や昼夜問わず、寝る時でさえ常に身につけているのだとか。
そしてスユーフのそのマフラーは、不思議なことにどんなに風があろうとなかろうと、決して地面につくことはなく、常に靡いている。
口数が少なく、相手の気持ちや意思を深読みし、やり過ぎてしまうことも少なくない。スユーフの部隊は彼と同じく、魔法ではなく武術に秀でた者が殆どで、蟒蛇の第一波も全て物理的な攻撃やスキルだけで迎撃していた。
「氷塊に別の物・・・。魔法に注意されたし・・・。俺達には無縁だな・・・」
「スユーフ殿、いかがいたしましょう?」
「・・・何も変わらん・・・。己の技量でこのまま押し切るぞ・・・」
スユーフの部隊も、蟒蛇の仕掛けた光弾の影響を受けない迎撃方法をとっていた為、被害は全くと言っていいほど出ていなかった。彼らの振るう剣が光弾に触れると、その鋭い剣捌きで光弾は切り刻まれ、変形することなく細切れになり後方へと飛び去って行った。
無論、物理的な攻撃を仕掛けている彼らが、氷塊と光弾の違いに気付かぬ筈もなく、氷塊を切り刻む時とは違い、気を使って対処するようにしていた。それは、後方への被害が出ないよう、敢えて小さ過ぎないように斬りつけたり、微塵も残さぬよう切り刻んだりと、各々の技量によって迎撃の仕方は違っていた。
そして、キングに与えられた称号を持つ最後の部隊。レース中では最後尾で殿を務め、後顧の憂いを根絶やしにする豪傑“ダラーヒム“の名を持つ船団が、蟒蛇の第二波を迎え撃とうとしていた。
氷塊の形そのものを別の性質や形状に変化させて迎撃していた錬金術師の大男。錬金術という繊細な技とは打って変わり、力強い拳で氷塊を打ち砕く器用さを併せ持つ。
オーガ種にも引けを取らない体格で、筋肉質の身体は拳を振るう際や攻撃を受け止める際に、部分的に黒金のように黒々と変色していた。幾重にも束ねた金色のドレッドヘアーを後ろへ流し、動物や魔物の素材で作られた民族衣装のようなものを見に纏う。
豪快な口ぶりで、身を挺して仲間を守るなど、見た目からは想像もつかない優しさを持つ、多くの船員を導くリーダー気質のある大男。蟒蛇による氷塊の第一波は、その錬金術を用いたスキルと攻撃で迎え撃っていた。
「リーダーッ!ジャウカーン様の部隊より伝言が来てます!」
「おうおう!ひよっこが俺様に何だって言うんだぁ?」
ジャウカーンからの忠告は、ダラーヒムの部隊にとって貴重な情報となった。それと言うのも、他の部隊とは違い、直接魔力を駆使した攻撃を行っていたダラーヒムの部隊にとって、蟒蛇の光弾は極めて危険なものだったからだ。
「なるほどぉ?魔力に反応する光弾が混じってるのか・・・。そいつぁ厄介だな・・・」
「間も無く、その第二波ってやつがやって来ますぜ!どうするんですかぃ?リーダー!」
するとダラーヒムは、迷うことなく自身の籠手を錬金術で変形させ、大きな盾を作り出して見せた。丸い円形の盾で、物が当たると受け流せるように弧を描いている。
「当然ッ!真っ向から受け止めてやるぜぇッ!おらぁ!オメェらも準備しやがれぇッ!!」
ダラーヒムの部隊も、やはり彼と同じく錬金術を使える部下達が大半を占めており、甲板で氷塊を迎え撃っていた者達は、ダラーヒムの作り出した盾と同じような物を次々に作り出し、蟒蛇の第二波を迎えた。
窮地を乗り切ったジャウカーンの船団はホッと胸を撫で下ろすと、油断することなく慎重に氷塊を処理して行く。その中で、この異変と光弾の性質について突破策を導き出したジャウカーンは、自分と同じ称号を与えられた他の部隊にもこの事を伝えようと、無線を飛ばす。
「おい、他の連中にも伝えてやれ!氷塊の中に別のモンが混じってるってよ。それに魔法は“直接“当てるなってな」
ジャウカーンの忠告は直ぐにキング海賊団の間に広まって行った。海水を操り水の柱で氷塊を迎撃していた、ジャウカーンと同じくキングに認められ特別な称号を与えられていた部隊のリーダー、“トゥーマーン“という女性。
水属性に特化した精霊術師で、煌びやかな青を基調としたドレスを身にまとい、自身の能力で作った物だろうか。まるで素材の感触が一切邪魔をしないウォーターベッドのように、気持ちの良さそうな水で出来た椅子に腰掛けている。
青い長髪を後ろで束ね、氷の結晶をモチーフにした髪飾りで留めている。色白の美しい肌は宛ら雪のように柔らかで、その性格はジャウカーンやキングとは正反対で落ち着いており、死を恐れていないかのように何事にも動じない。
「トゥーマーン様、ジャウカーン様の部隊より伝言が入っております」
「あの男から受ける指図など受けるつもりはありません。・・・ですが、用件だけは伺っておきましょう。キング様からの命かも知れませんし」
彼女と同じく、落ち着いた様子でトゥーマーンの前に膝を着く船員は、ジャウカーンが身を持って発見した氷塊に隠れる光弾の件を、部隊長である彼女に伝える。未知なる攻撃に戦力を削がれぬようにという、彼なりの気遣いのようだったがトゥーマーンはその報告を受け、情けないと鼻で笑い飛ばした。
「キング様より授かった名を持つ者として恥ずかしくはないのでしょうか・・・?そのようなことで大事な部下を失うとは・・・。やはり私には不要な忠告でしたね」
彼女の部隊の迎撃方法は、初めから海水を使った間接的な魔法によるものだった為、元より光弾の性質を受けはしなかった。ただ、見ている光景に若干の変化がある程度。飛んで来る氷塊は水柱に弾かれ、彼女の船団を避けるように通過して行く。
その中で、水柱に当たった光弾が海中目掛けて突き抜けて行くという変化だけがあった。迎撃方針を一切変えぬまま、トゥーマーンの部隊もキングの船団と同じく、無傷で蟒蛇による第二波を乗り切っていた。
ジャウカーンの無線は、更に後方に位置していた部隊の耳にも入る。キングの居る本隊から離れた位置で、前衛部隊のサポート及び、周辺警戒を行っている部隊の長“スユーフ“。
その手に携えた刀で、目にも留まらぬ剣技を放ち、氷塊を一瞬にして雪のように変えてしまう程の技量の持ち主。ジャウカーンやトゥーマーンのように魔力に頼らず、己の技のみで蟒蛇の攻撃を迎撃するスユーフ。
無造作に生やした黒髪に、和服を連想させる袴を着こなし、数メートルはあろうかという長い漆黒のマフラーを首に巻いている。何でも、彼の大事な物らしく季節や昼夜問わず、寝る時でさえ常に身につけているのだとか。
そしてスユーフのそのマフラーは、不思議なことにどんなに風があろうとなかろうと、決して地面につくことはなく、常に靡いている。
口数が少なく、相手の気持ちや意思を深読みし、やり過ぎてしまうことも少なくない。スユーフの部隊は彼と同じく、魔法ではなく武術に秀でた者が殆どで、蟒蛇の第一波も全て物理的な攻撃やスキルだけで迎撃していた。
「氷塊に別の物・・・。魔法に注意されたし・・・。俺達には無縁だな・・・」
「スユーフ殿、いかがいたしましょう?」
「・・・何も変わらん・・・。己の技量でこのまま押し切るぞ・・・」
スユーフの部隊も、蟒蛇の仕掛けた光弾の影響を受けない迎撃方法をとっていた為、被害は全くと言っていいほど出ていなかった。彼らの振るう剣が光弾に触れると、その鋭い剣捌きで光弾は切り刻まれ、変形することなく細切れになり後方へと飛び去って行った。
無論、物理的な攻撃を仕掛けている彼らが、氷塊と光弾の違いに気付かぬ筈もなく、氷塊を切り刻む時とは違い、気を使って対処するようにしていた。それは、後方への被害が出ないよう、敢えて小さ過ぎないように斬りつけたり、微塵も残さぬよう切り刻んだりと、各々の技量によって迎撃の仕方は違っていた。
そして、キングに与えられた称号を持つ最後の部隊。レース中では最後尾で殿を務め、後顧の憂いを根絶やしにする豪傑“ダラーヒム“の名を持つ船団が、蟒蛇の第二波を迎え撃とうとしていた。
氷塊の形そのものを別の性質や形状に変化させて迎撃していた錬金術師の大男。錬金術という繊細な技とは打って変わり、力強い拳で氷塊を打ち砕く器用さを併せ持つ。
オーガ種にも引けを取らない体格で、筋肉質の身体は拳を振るう際や攻撃を受け止める際に、部分的に黒金のように黒々と変色していた。幾重にも束ねた金色のドレッドヘアーを後ろへ流し、動物や魔物の素材で作られた民族衣装のようなものを見に纏う。
豪快な口ぶりで、身を挺して仲間を守るなど、見た目からは想像もつかない優しさを持つ、多くの船員を導くリーダー気質のある大男。蟒蛇による氷塊の第一波は、その錬金術を用いたスキルと攻撃で迎え撃っていた。
「リーダーッ!ジャウカーン様の部隊より伝言が来てます!」
「おうおう!ひよっこが俺様に何だって言うんだぁ?」
ジャウカーンからの忠告は、ダラーヒムの部隊にとって貴重な情報となった。それと言うのも、他の部隊とは違い、直接魔力を駆使した攻撃を行っていたダラーヒムの部隊にとって、蟒蛇の光弾は極めて危険なものだったからだ。
「なるほどぉ?魔力に反応する光弾が混じってるのか・・・。そいつぁ厄介だな・・・」
「間も無く、その第二波ってやつがやって来ますぜ!どうするんですかぃ?リーダー!」
するとダラーヒムは、迷うことなく自身の籠手を錬金術で変形させ、大きな盾を作り出して見せた。丸い円形の盾で、物が当たると受け流せるように弧を描いている。
「当然ッ!真っ向から受け止めてやるぜぇッ!おらぁ!オメェらも準備しやがれぇッ!!」
ダラーヒムの部隊も、やはり彼と同じく錬金術を使える部下達が大半を占めており、甲板で氷塊を迎え撃っていた者達は、ダラーヒムの作り出した盾と同じような物を次々に作り出し、蟒蛇の第二波を迎えた。
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