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海賊と巨大蟒蛇
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大海原を威風堂々と進む大船団。それはとても一つの海賊団が織りなすものには見えず、まるで国家の軍隊のように海を覆っていた。エイヴリーの船団が暗雲立ち込める海域へ足を踏み入れる。
雷鳴が鳴り響き、荒立たしい波が彼らを迎える。そしていつもの恒例行事を迎えるような心持ちでいるエイヴリー海賊団の前に、彼らの予想を遥かに上回る大海の主が姿を見せる。
「さぁて・・・、キングのガキが来る前に粗方片付けちまおうか」
エイヴリーの一言でガラッと雰囲気が変わり、戦に赴く姿勢と高鳴る鼓動を声にする船員達。そして戦地の状況を探る偵察隊の船が、荒立たしい波を立てる海中を不気味な程静かに通過する、巨大な何かの影を捉える。
「海中に巨大な敵影を確認!・・・これは・・・蟒蛇か・・・?今回のレイドは大型のモンスターか」
「そいつはありがてぇな。小せぇ奴らの群れだと、始末するのに手間取るからな。的がデカけりゃ、俺達の火力で一気に押し切れるってもんだ」
数も伴っている精鋭揃いのエイヴリー海賊団にとって、複数のレイドモンスターだろうが、単体の大型モンスターだろうがどちらでも良かった。ただ、動き回る手間を考えたら、一体の大型モンスターの方が戦力を集中させやすく、一気にポイントを稼げるおいしい相手になる。
彼らの船の下を巨大な影が通過していく。まるで獲物を品定めするように、攻撃を仕掛けるタイミングを図っているようにも見える。だが、品定めをしているのはエイヴリー達も同じ。
敵に姿を捉え、相手の全体像をある程度予測する。海を泳ぐ巨大な蟒蛇のようなモンスターが、今回のレイドボスであることを把握する。落ち着いた様子で手際よく戦闘の準備を進める。船長の号令一つで直ぐに動き出せるよう、船団の一隻一隻の動きが鮮麗されている。
しかし、敵影を捉えた彼らだったが、未だにそのモンスターの頭部や尻尾の先を目にした者はいなかった。巨体の影から大方の太さは伺えたが、全長が一切見えてこないのだ。
「・・・誰かモンスターの両端を見た奴はいるか?」
「い・・・いや、身体ばかりでまだその顔を拝んじゃいないぜ?」
幾多の戦場を乗り越えてきた彼らでも、想像もつかない程長いと思われる全長に、僅かながら不安を煽られていた。これまでも同じようなタイプのモンスターとは何度も戦ってきた筈。しかし、その目に映した巨影の正体は、それまでの常識を覆すほどのスケールを誇っていた。
「ほぅ・・・コイツはまた・・・。中々骨がありそうな相手だな」
エイヴリーの乗る船でも、幹部達がその巨影を目の当たりにして、かえって冷静になっていた。恐怖心ではない。だが、どのように戦おうかと考えさせられる相手であることに間違いはない。これ程の体格を有するモンスターであれば、生半可な攻撃では傷一つ与えることは出来ないだろう。
それこそ、通常の船に備えられている大砲などでは、その身体に汚れをつけることすら叶わないと、容易に想像できる。下手に手を出して相手を刺激しないよう待機する大船団。しかし、彼らの中に焦りや動揺といったものはなく、ただ絶対的な信頼を置くエイヴリーの号令を待つ様に武装し、静かにその時を待っている。
「これはこれは・・・。旦那ぁ、早速“アレ“の出番になりそうですぜ?」
エイヴリーの側にいた幹部の一人が声を上げる。その人物はグラン・ヴァーグでツバキに荷物を届けさせた際に、ツクヨの前に現れた男で、エイヴリーと共にウィリアムの元へ訪れていた幹部の男、マクシムだった。
そして、マクシムの言葉に重い腰を上げ立ち上がるエイヴリー。大きな手を前方に伸ばし魔力を込めると、彼のその類稀なる才から来る能力が披露される。
「端からそのつもりだ。用意が出来次第、一斉に仕掛けるぞ。いいなぁッ!テメェらッ!」
「おおおぉぉぉッーーー!」
ビリビリと大気を震わせるほどの歓声にも似た声が響き渡ると同時に、彼らの乗る船がまるで特撮の変形ロボットのように組み変わり、通常の大砲の数十倍はあろうかという巨大な砲台が姿を表す。
そしてその変形に呼応するように、周囲の船も次々に変形し、一隻目と同じ巨大な砲台を携えた船へと姿を変えていく。大船団のほとんどの船が変形を終えたところで、エイヴリーの腕から魔力が消える。そして戦いの火蓋を切って落とす、船長命令が発令させる。
「さぁッ!俺達の恐ろしさを、化物風情に見せつけてやれぃッ!!」
彼の号令を合図に、一斉に巨大な砲台から放たれた砲弾は、蟒蛇の影のある海中に着弾すると大きな爆発を起こす。幾つもの水柱を立てながら轟音を鳴り響かせる。砲弾は次々に蟒蛇の影に命中していった。こちらの攻撃に気づいたのか、海の奥深くで地鳴りのような唸り声が聞こえて来る。
それまで海中を静かにゆっくりと移動していた巨影は速度を上げる。幾つかのポイントで確認された蟒蛇の巨影は、宛らベルトコンベアーのようにその体表を高速で流す。すると、ただ身体を動かしたその動きだけで海域全体が、まるで恐怖に身を震わせるかのように不規則な波をあちらこちらで発生させる。
そして、蟒蛇の起こす波にバランスを取られていると突然、海域の一部の海が上へ押し上げられるように盛り上がり始める。火山の噴火を連想とさせる爆発と共に、複数の海賊船が空高く打ち上げられ、周囲に滝のような海水の雨を降らせた。
雷鳴が鳴り響き、荒立たしい波が彼らを迎える。そしていつもの恒例行事を迎えるような心持ちでいるエイヴリー海賊団の前に、彼らの予想を遥かに上回る大海の主が姿を見せる。
「さぁて・・・、キングのガキが来る前に粗方片付けちまおうか」
エイヴリーの一言でガラッと雰囲気が変わり、戦に赴く姿勢と高鳴る鼓動を声にする船員達。そして戦地の状況を探る偵察隊の船が、荒立たしい波を立てる海中を不気味な程静かに通過する、巨大な何かの影を捉える。
「海中に巨大な敵影を確認!・・・これは・・・蟒蛇か・・・?今回のレイドは大型のモンスターか」
「そいつはありがてぇな。小せぇ奴らの群れだと、始末するのに手間取るからな。的がデカけりゃ、俺達の火力で一気に押し切れるってもんだ」
数も伴っている精鋭揃いのエイヴリー海賊団にとって、複数のレイドモンスターだろうが、単体の大型モンスターだろうがどちらでも良かった。ただ、動き回る手間を考えたら、一体の大型モンスターの方が戦力を集中させやすく、一気にポイントを稼げるおいしい相手になる。
彼らの船の下を巨大な影が通過していく。まるで獲物を品定めするように、攻撃を仕掛けるタイミングを図っているようにも見える。だが、品定めをしているのはエイヴリー達も同じ。
敵に姿を捉え、相手の全体像をある程度予測する。海を泳ぐ巨大な蟒蛇のようなモンスターが、今回のレイドボスであることを把握する。落ち着いた様子で手際よく戦闘の準備を進める。船長の号令一つで直ぐに動き出せるよう、船団の一隻一隻の動きが鮮麗されている。
しかし、敵影を捉えた彼らだったが、未だにそのモンスターの頭部や尻尾の先を目にした者はいなかった。巨体の影から大方の太さは伺えたが、全長が一切見えてこないのだ。
「・・・誰かモンスターの両端を見た奴はいるか?」
「い・・・いや、身体ばかりでまだその顔を拝んじゃいないぜ?」
幾多の戦場を乗り越えてきた彼らでも、想像もつかない程長いと思われる全長に、僅かながら不安を煽られていた。これまでも同じようなタイプのモンスターとは何度も戦ってきた筈。しかし、その目に映した巨影の正体は、それまでの常識を覆すほどのスケールを誇っていた。
「ほぅ・・・コイツはまた・・・。中々骨がありそうな相手だな」
エイヴリーの乗る船でも、幹部達がその巨影を目の当たりにして、かえって冷静になっていた。恐怖心ではない。だが、どのように戦おうかと考えさせられる相手であることに間違いはない。これ程の体格を有するモンスターであれば、生半可な攻撃では傷一つ与えることは出来ないだろう。
それこそ、通常の船に備えられている大砲などでは、その身体に汚れをつけることすら叶わないと、容易に想像できる。下手に手を出して相手を刺激しないよう待機する大船団。しかし、彼らの中に焦りや動揺といったものはなく、ただ絶対的な信頼を置くエイヴリーの号令を待つ様に武装し、静かにその時を待っている。
「これはこれは・・・。旦那ぁ、早速“アレ“の出番になりそうですぜ?」
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そして、マクシムの言葉に重い腰を上げ立ち上がるエイヴリー。大きな手を前方に伸ばし魔力を込めると、彼のその類稀なる才から来る能力が披露される。
「端からそのつもりだ。用意が出来次第、一斉に仕掛けるぞ。いいなぁッ!テメェらッ!」
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そしてその変形に呼応するように、周囲の船も次々に変形し、一隻目と同じ巨大な砲台を携えた船へと姿を変えていく。大船団のほとんどの船が変形を終えたところで、エイヴリーの腕から魔力が消える。そして戦いの火蓋を切って落とす、船長命令が発令させる。
「さぁッ!俺達の恐ろしさを、化物風情に見せつけてやれぃッ!!」
彼の号令を合図に、一斉に巨大な砲台から放たれた砲弾は、蟒蛇の影のある海中に着弾すると大きな爆発を起こす。幾つもの水柱を立てながら轟音を鳴り響かせる。砲弾は次々に蟒蛇の影に命中していった。こちらの攻撃に気づいたのか、海の奥深くで地鳴りのような唸り声が聞こえて来る。
それまで海中を静かにゆっくりと移動していた巨影は速度を上げる。幾つかのポイントで確認された蟒蛇の巨影は、宛らベルトコンベアーのようにその体表を高速で流す。すると、ただ身体を動かしたその動きだけで海域全体が、まるで恐怖に身を震わせるかのように不規則な波をあちらこちらで発生させる。
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