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海底に潜む監視者
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素早く投擲武器を取り出し、人形へと二本の短剣を放るシン。回転を加えて投げられた短剣は、宛ら円盤のように飛んで行き、人形の足を切りつける。バランスを崩した人形が床に倒れると、シンはトドメを刺すのではなく、一先ず表にいるデイヴィスの元へと向かう。
「敵襲だッ!やはり何者かが潜んでいたんだ!」
「どんな奴だ!?」
船内から走って向かってくるシンが、声を荒立てながら外へと飛び出してくる。そして突然腕を掴まれたことや、ぎこちない動きで歩く顔のない人形などの特徴を伝えると、デイヴィスの眉がピクリと動く。
そしてシンが出て来た船内の方から、彼の言う人形のものと思われる足音が聞こえてくる。海水に浸された、砂浜と古い木材の上をヒタヒタとゆっくり、人の歩幅と同じくらいの感覚で歩いて来る。
得体の知れない刺客に、大粒の汗を垂らし息を殺して見守るシンとデイヴィス。すると二人の見つめる船内から、迫り来る足音とは別の音が次々に聞こえ始めたのだ。思わず目を見開き、互いに目を合わせるシンとデイヴィス。
武器を構え、いつでも攻撃を仕掛けられる態勢を取り、音の発生源が姿を現すのを待つ。足音は次第に大きく騒がしくなり、船内の薄暗さから外の陽の光の元へとやって来た。
正面からやって来たのは、デイヴィスにも話したシンを襲った人形。しかしその人形が引き連れて来たのは、様々な動物を模った不気味な人形の数々だった。明らかに人型よりも動きの早そうな四足型の動物に、翼を持った飛行タイプの人形。そのどれもに顔が無く、ただそこにあるのは、パックリと空いた裂けた人の口のようなものだけだった。
武器を握る手に力が入る。初手で飛行タイプの人形を撃ち落とすべきか、シンは頭の中で取るべき行動の優先順位を決めていると、突然デイヴィスが集中している彼に落ち着いた声で話しかける。
「待て!シン・・・」
「どうした?何か良い迎撃の方法でも思いついたのか?」
ちらりと横目でデイヴィスの方を確認すると、彼はシンの身体の前に手を出し静止させようとしていた。どういうつもりかと彼の方へ顔を向けると、首を横に振り手を出すなといった様子を見せたのだ。
「どういうつもりだ・・・?」
「いいからッ・・・。このまま待ってろ・・・」
何がしたいのか理解出来ぬまま、シンはデイヴィスの言うとおり、その場を動かずじっと待った。すると、四足の動物がシン達の元へ駆け寄って来ると、元となった生き物の習性を真似ているのだろうか、執拗に匂いを確認し始めた。
シンを確認し終え、デイヴィスの方へやって来ると、明らかにシンの時よりも確認が早く終わる。まるで久々に再会を果たした飼い主とペットのように、デイヴィスの周りでクルクルと回る四足の人形。
そして、その様子を伺うようにして上空を飛び回っていた飛行タイプの人形が、甲高い鳥の鳴き声のようなものを鳴らす。周囲に鳴り響くその鳴き声は、非常に目立った。近くに何かが居れば、恐らくその者達にも彼らの存在が知れ渡ってしまったことだろう。
大きな音を出させてしまったことで、島に潜んでいると思われる敵に警戒するシン。それに引き換え、デイヴィスは落ち着いた様子で周囲を見渡す。
すると、海の方から地鳴りのような大きな音が聞こえて来る。島の周囲から鳴り響くその地鳴りと共に、海のあちこちで大きな波を発生させる震源地のようなものが、いくつも見える。
何かが海の底から現れる。そんな予感を感じさせるその振動は、徐々に影を濃くしていき、そして爆発でもしたかのようにその姿を現した。大きく上空へと巻き上げられた水飛沫の中から現れたのは、恐らく潜水艇と思われるような見た目をしていた。
それがシン達の上陸した島の周囲を、取り囲むように何隻も現れたのだ。島の周辺に敵船の影は確認出来なかった。それもその筈、その者達は海上ではなく、海の中に潜んでいたのだから。
してやられたと、シンは慌ててミア達に危険を知らせる為、合図を送ろうとした。と、その時側にいたデイヴィスが彼の隣でそっと何かを呟いた。何を言っているのか確認しようとデイヴィスの方へ向くと、彼の表情は明るく嬉しそうだった。
「ったく・・・アイツも変わらねぇな。その用心深さは健在って訳か。いや、寧ろもっと酷くなったのかも知れねぇが・・・」
「何だ?この海から現れたのは敵か?それともアンタの知り合いなのか?」
「安心しな。こいつらは敵じゃねぇさ。シンプソンと同じく、嘗ての俺の仲間さ。この人形も奴のスキルに違いない。当時よりもバリエーションが増えたようだがな・・・」
島の周辺に現れた潜水艇に、攻撃を仕掛ける訳でもなかったシンプソン一行の船団。どうやら彼らは、その正体を知っていたということなのだろう。ミア達にはどうやって知らせたのか分からないが、銃のスコープで警戒に当たっていたミアが狙撃しなくて良かったと、シンは心が落ち着いてからそんな事を頭の片隅で考えていた。
そしてシンとデイヴィスに最も近い潜水艇の甲板が開き、一人の男が姿を現す。素肌を覆い隠すように、全身を覆った水中での行動に適したスーツを身に纏い、幾つもの黒いワイヤーのようなものが、何かに繋がっている訳でもなくその者の身体に巻き付いていた。
表情の見えないマスクの向こう側から、籠った声で彼らに話しかける声が聞こえる。デイヴィスの言う通り、どうやらその人物は彼の事を知っていたようで、危うく襲いかけた事を謝罪した。
「久しぶりだな、デイヴィス。急に襲って悪かったな。俺達も少し前に島へ着いたばかりだったんだ・・・」
「前にも増して用心深くなったようだな。それがお前の新しい仲間か?“アシュトン“」
マスクに覆われたその様子からは、表情が伺えず不気味な印象を受ける嘗てのデイヴィス海賊団が一人、“アシュトン“と呼ばれる男。その能力は、様々な生き物を模した人形を操る“傀儡師“のクラスによく似ていた。
「敵襲だッ!やはり何者かが潜んでいたんだ!」
「どんな奴だ!?」
船内から走って向かってくるシンが、声を荒立てながら外へと飛び出してくる。そして突然腕を掴まれたことや、ぎこちない動きで歩く顔のない人形などの特徴を伝えると、デイヴィスの眉がピクリと動く。
そしてシンが出て来た船内の方から、彼の言う人形のものと思われる足音が聞こえてくる。海水に浸された、砂浜と古い木材の上をヒタヒタとゆっくり、人の歩幅と同じくらいの感覚で歩いて来る。
得体の知れない刺客に、大粒の汗を垂らし息を殺して見守るシンとデイヴィス。すると二人の見つめる船内から、迫り来る足音とは別の音が次々に聞こえ始めたのだ。思わず目を見開き、互いに目を合わせるシンとデイヴィス。
武器を構え、いつでも攻撃を仕掛けられる態勢を取り、音の発生源が姿を現すのを待つ。足音は次第に大きく騒がしくなり、船内の薄暗さから外の陽の光の元へとやって来た。
正面からやって来たのは、デイヴィスにも話したシンを襲った人形。しかしその人形が引き連れて来たのは、様々な動物を模った不気味な人形の数々だった。明らかに人型よりも動きの早そうな四足型の動物に、翼を持った飛行タイプの人形。そのどれもに顔が無く、ただそこにあるのは、パックリと空いた裂けた人の口のようなものだけだった。
武器を握る手に力が入る。初手で飛行タイプの人形を撃ち落とすべきか、シンは頭の中で取るべき行動の優先順位を決めていると、突然デイヴィスが集中している彼に落ち着いた声で話しかける。
「待て!シン・・・」
「どうした?何か良い迎撃の方法でも思いついたのか?」
ちらりと横目でデイヴィスの方を確認すると、彼はシンの身体の前に手を出し静止させようとしていた。どういうつもりかと彼の方へ顔を向けると、首を横に振り手を出すなといった様子を見せたのだ。
「どういうつもりだ・・・?」
「いいからッ・・・。このまま待ってろ・・・」
何がしたいのか理解出来ぬまま、シンはデイヴィスの言うとおり、その場を動かずじっと待った。すると、四足の動物がシン達の元へ駆け寄って来ると、元となった生き物の習性を真似ているのだろうか、執拗に匂いを確認し始めた。
シンを確認し終え、デイヴィスの方へやって来ると、明らかにシンの時よりも確認が早く終わる。まるで久々に再会を果たした飼い主とペットのように、デイヴィスの周りでクルクルと回る四足の人形。
そして、その様子を伺うようにして上空を飛び回っていた飛行タイプの人形が、甲高い鳥の鳴き声のようなものを鳴らす。周囲に鳴り響くその鳴き声は、非常に目立った。近くに何かが居れば、恐らくその者達にも彼らの存在が知れ渡ってしまったことだろう。
大きな音を出させてしまったことで、島に潜んでいると思われる敵に警戒するシン。それに引き換え、デイヴィスは落ち着いた様子で周囲を見渡す。
すると、海の方から地鳴りのような大きな音が聞こえて来る。島の周囲から鳴り響くその地鳴りと共に、海のあちこちで大きな波を発生させる震源地のようなものが、いくつも見える。
何かが海の底から現れる。そんな予感を感じさせるその振動は、徐々に影を濃くしていき、そして爆発でもしたかのようにその姿を現した。大きく上空へと巻き上げられた水飛沫の中から現れたのは、恐らく潜水艇と思われるような見た目をしていた。
それがシン達の上陸した島の周囲を、取り囲むように何隻も現れたのだ。島の周辺に敵船の影は確認出来なかった。それもその筈、その者達は海上ではなく、海の中に潜んでいたのだから。
してやられたと、シンは慌ててミア達に危険を知らせる為、合図を送ろうとした。と、その時側にいたデイヴィスが彼の隣でそっと何かを呟いた。何を言っているのか確認しようとデイヴィスの方へ向くと、彼の表情は明るく嬉しそうだった。
「ったく・・・アイツも変わらねぇな。その用心深さは健在って訳か。いや、寧ろもっと酷くなったのかも知れねぇが・・・」
「何だ?この海から現れたのは敵か?それともアンタの知り合いなのか?」
「安心しな。こいつらは敵じゃねぇさ。シンプソンと同じく、嘗ての俺の仲間さ。この人形も奴のスキルに違いない。当時よりもバリエーションが増えたようだがな・・・」
島の周辺に現れた潜水艇に、攻撃を仕掛ける訳でもなかったシンプソン一行の船団。どうやら彼らは、その正体を知っていたということなのだろう。ミア達にはどうやって知らせたのか分からないが、銃のスコープで警戒に当たっていたミアが狙撃しなくて良かったと、シンは心が落ち着いてからそんな事を頭の片隅で考えていた。
そしてシンとデイヴィスに最も近い潜水艇の甲板が開き、一人の男が姿を現す。素肌を覆い隠すように、全身を覆った水中での行動に適したスーツを身に纏い、幾つもの黒いワイヤーのようなものが、何かに繋がっている訳でもなくその者の身体に巻き付いていた。
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「久しぶりだな、デイヴィス。急に襲って悪かったな。俺達も少し前に島へ着いたばかりだったんだ・・・」
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