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神代 コウ

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合流する戦友

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 彼らを乗せた船は順調に進み、次なる島へと向かう。デイヴィスによれば、先に行っているという仲間達が途中の島で使えそうな物を集め待機しているのだという。その目印として、空っぽになった宝箱の側に彼らの使っている武器と、目印となる物が置いてあるのだという。

 デイヴィスと出会った島を出て、最初に辿り着いた島に到着するシン達の船。一行は残されているであろう目印を知るデイヴィスと、共に潜入をこなすシンが島に降り立ち、他の面々は船で待機することになった。

 ここまで来ると、殆どの島は既に荒らされた後なのだと、レースの経験者であるデイヴィスと何度も話を聞いていたツバキは言う。故に島で別の海賊と財宝を争って奪い合うということは起こらないらしい。

 それこそロッシュやロロネーのように、レースの中で別の目的を果たそうとする者や、後続の海賊を狙おうとする輩くらいなものだ。残りは大船団を引き連れる優勝候補者達の部下や傘下の海賊が散らばり、各所の島で財宝やアイテムを集め、レイド戦に合流するのが常套手段なのだという。

 浜に降り、島の中へと歩みを進めるシンとデイヴィス。暫くすると、こんな孤島に誰が住んでいたのかというような、手作りの廃屋が見えてきた。待っているのはキング暗殺計画の協力者である、デイヴィスの仲間であるのだが、一応警戒は怠らないよう気配を殺し、目印を探す二人。

 虱潰しに財宝が隠してありそうなところを探していくと、何者かの気配を二人は察知する。アサシンと忍者は、敵の気配をある程度探すことの出来る索敵スキルも有している。加えて、先に敵を見つけ自分達は相手の索敵にかからぬよう身を隠す術も持ち合わせている、潜入や隠密に適したスペシャリストといえる。

 息を殺し、互いに目で合図をし合い物陰に隠れる二人。すると、廃屋の高い位置から一人下の階層へと静かに降りて来た。物音を立てないようにゆっくりと歩くその人物は、身を低くし床に手を触れると、振動や床の様子を伺い何者かが廃屋を訪れたことを発見する。

 その人物がそれを仲間に知らせようとしたところで、シンとデイヴィスは息を合わせ、その人物を音も立てず他の者に悟られることもなく取り押さえる。デイヴィスは素早く足音を消すスキルを使うとその人物の背後に駆け寄り、腕を回して首を締め上げる。と、同時にシンはその人物の足元の影を使い、どこに通じるか分からぬ影の穴を床に開ける。

 その人物は宛ら落とし穴に落ちたかのように落下し、デイヴィスの腕によって首吊り状態へとなる。シン達はその人物を直ぐに殺すことなく、影の穴が縮小し身体のところでピッタリと止まる。すると、まるで地面に埋められたように胸のところまで床に飲み込まれ、その人物は締め上げられる。

 首に巻かれた腕を必死に叩くとの人物は、降参を認めるハンドサインをする。その僅かな音を聞きつけたのか、上の方から別の者の声が聞こえて来た。

 「よせッ!敵じゃない!」

 そういうと、声を掛けた者とその周辺にいた数人が武器を捨て両手を上げ始めた。互いに目を合わせるシンとデイヴィスは、拘束していた者を手放し、シンのスキルでそのまま床に埋めた状態で解放すると、その者の首に短剣を当て人質にする。

 「何者だ?」

 「待ってくれ。今、船長を呼ぶ」

 「駄目だ。信用できない以上、仲間を呼ばせる訳にはいかない」

 今にも人質を殺しそうな二人の様子に、緊迫する謎の者達。そこへ新たな気配が数人近づいてくると、シンは周囲の薄暗さを活かし影のスキル“繋影“を使い、その場にいる全員を影で縛り上げ人質にする。

 協力関係になったとはいえ、シンの便利なスキルに思わず目を奪われ感嘆する。そしてデイヴィスも負けじと、忍者のスキルを駆使して周囲の者達にある細工を施す。それは目を凝らさなければ決して見つける事が出来ない程の細い線を、シンが縛り上げた者達に風遁の力を使い気づかれないように結びつけると、それら髪の毛程もない線の束を持ちながら火遁の印を結ぶ。

 シンを含め、デイヴィス以外の者には彼が突然忍術の構えを取り出したようにしか見えていない。そこへ姿を現したのは、囚われた彼らとは違う凝った装いをしたリーダーらしき人物とその取り巻きだった。

 「おい、俺だ。“シンプソン“だよ。この顔を忘れたのか?デイヴィス」

 やれやれといった様子で歩み寄るシンプソンと名乗る人物は、両手を広げデイヴィスへ仲間の解放を訴えかける。そしてその顔を見た彼の表情から、警戒した様子が一気に消え、安堵の溜め息を漏らした。

 「何だ、お前だったのか・・・。約束の目印が無かったもんでな、すまない」

 デイヴィスは直ぐに印を解き、線を引き抜くとシンに彼らは敵じゃないと言い、拘束を解いてやってほしいと合図する。

 どうやら彼がデイヴィスの言っていた協力者の一人である海賊、シンプソンらしい。彼らを縛り上げていた影は、直ぐにその者らの影へと戻り、何事もなかったかのように物音ひとつ立てず、彼らを解放した。

 床に倒れる者や、咳き込む彼らの様子で解放されたことを悟ると、デイヴィスは伝えていた手筈と違うことについて、シンプソンに尋ねた。

 「お前達の目印があれば、こちらも手を出すことはなかったんだ。何か問題でも起きたのか?」

 「大きな問題って訳じゃぁねぇんだ。ただ・・・」

 彼の質問に、困った様子を伺わせるシンプソン。彼らが言うには、デイヴィスに言われた通りこの島へ先回りした彼らは、訪れる別の海賊を追い払いながらデイヴィスの到着を待っていたらしい。

 だが、その中で数人の船員が忽然と姿を消したのだと言う。被害自体は大きなものではない。二人程度の船員が、誰にも気づかれることなく急にいなくなったのだそうだ。

 「アンタが見れば直ぐに分かる様、昔のアンタの海賊旗を約束どおり要所要所に置いておいたんだ。だが消えた奴らと一緒に、いくつかの海賊機も無くなってたんだ。後からやって来たフィリップスの奴らに聞いても、島の近くで妙な船は見かけてねぇらしいんだ・・・」

 「フィリップス達はその後何処へ?」

 「先の島へ向かったよ。だがアシュトンやアンスティスの奴らも既に先に向かっている。今頃もっと奥の方か、レイド戦の辺りにまで向かってる頃じゃねぇか?」

 話を聞く限り、確かに甚大な被害というわけではない。だが裏切りや、逃げ出したという線も考えづらい様だ。そもそも逃げるならレースの前に姿を眩ます筈。それにシンプソンの海賊団は、内部抗争が起きる様な雰囲気のある海賊団でもないのだと、船員達は語る。故に妙な動きがあれば直ぐに船団中に伝わるのだとか。

 「外部の者による仕業じゃぁねぇのか?」

 「誰も妙なものや、異変は感じなかったっていうんだぜ?そんなことあるか?」

 シンプソンは、シンやデイヴィスが捕らえた部下達の様に、決して単独での行動はさせていなかったそうだ。必ず五人以上の小隊で周囲の警戒に当たらせていた。それは、互いの不審な動きを仲間内で監視させる意味を込めた、裏切りや勝手なことをしない様抑制させるものでもあった。

 しかし、姿を消したのはたったの二人。誰も争った様な声や物音を聞いていない上に、何処にも襲われた様な形跡すら見当たらない。そもそも襲われたのであれば、何かしらの音や気配くらいするものだろう。

 その調査に当たろうとしたところで、シン達が島を訪れタイミング悪くかち合ってしまったのだ。暫く他の海賊船の往来もなかった為、シン達の船の接近に気がつかなかったようだ。

 「確かに妙なことだが、計画を実行する時が来た。捜索は後に出来んか?」

 「少数の船員と一隻の船を置いていく。なぁに、計画に支障はねぇさ」

 レイド戦が行われる戦地へ赴く意向で決定したシンプソンに、デイヴィスは共にいるシンのことと、その仲間達との経緯を説明し、改めて計画を実行する戦友として自らの名を名乗り、固い握手を交わすシンとシンプソン。
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