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狩人の如き一矢
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二枚の刃は、ロロネーの首元近くで交差し命中することはなかった。しかし、ハオランの振るった刃の剣先から蜃気楼のような空気の歪みが見える。その歪みは刃の形状をしており、カットラスの刀身の短さを補うように、攻撃範囲を延長させていた。
ハオランの攻撃を観察しエンチャントを見抜いていたロロネーは、その風の刃とでもいうような攻撃を身体から首を切り離すことで回避する。渾身の攻撃が避けられ無防備となるハオランは、ロロネーと同様後方へ飛びながら手にした二本の剣を回転させながら投げよこした。
同時にロロネーの前から姿を眩ますハオラン。自身の着地の音を聞き届け、ロロネーは静かになる船内で彼の気配を探す。息を止め、心臓の鼓動が煩く聞こえる程に耳を澄まし、神経を研ぎ澄ます。
一通り周囲の気配を確かめると、ロロネーは歩みを進める。部屋を移動する際に剣を構えながら、一部屋一部屋闇討ちを警戒しながら確認していく。すると、ハオランが逃げていった方の外から物音が聞こえて来る。
いつでも霧化出来るよう準備を整え、急ぎ音の聞こえた方へと向かう。しかし外にハオランはおらず、周囲にも気配はない。それもその筈、ハオランは素早い身のこなしでマストを登っていたのだ。
外に出たロロネーに、獲物を射抜く狩人の矢が放たれる。心臓を掴まれたかのようなプレッシャーを感じ、ロロネーが顔を上げると銃弾のように回転を加えた矢が、幾つも飛んで来る。
素早く船内へ戻るロロネーの身体を弓矢が擦めていく。ハオランの放った矢は、ロロネーの透過能力を受け付けず、その霧の身体を射抜く。辛うじて船内に逃げ込む時に、足に一本の矢を受ける。その矢痕が綺麗に脹脛を貫いていることから、その弓術の威力が窺える。
痛みに耐えながら足を霧化させ、ハオランから受けた矢を床に落とす。霧から元の実体に戻すと傷は跡形もなく消え去っていた。足を動かし、問題なく動くかどうかを確認するロロネー。傷跡は癒えても、その痛みやダメージは身体に蓄積されていく。
床に倒れ込み戦闘の態勢を整えるロロネーの側に、突如天井を貫通して飛んで来た矢が床に突き刺さる。矢に目を取られている隙に、次々に矢が天井を貫き徐々にロロネーのいる位置へと弓矢が近づいて来る。
「何ぃぃッ!?何故俺のいる位置が分かるッ!?」
止むを得ず下半身を霧に変え、船内を蛇のように進み、矢の雨を掻い潜る。すると、ハオランによる風を纏った弓矢の雨が止む。そしてロロネーの進行方向の先に、石柱のように太い光の柱が降り注ぎ、行手を阻む。
急停止し何とか直撃を免れると、ロロネーはその光の柱が開けた穴から外に出て、マストにいるハオランを見上げる。
「いつまでも見下ろしてんじゃねぇぞッ・・・!」
ロロネーは手刀の構えを取ると、身体を半捻りして腕を横に薙ぎ払う。男の腕から白い煙のようなものが刃の衝撃波となり放たれると、ハオランのいるマストの根本付近で水蒸気へと変わる。
何事かと下を見るハオランの目に、恐ろしい光景が広がる。水蒸気へと変わった煙は広範囲に渡り、大きな水蒸気爆発を引き起こしたのだ。マストは折れ、甲板はまるで焼け野原のように吹き飛ばされた。その衝撃で彼らの戦地である船と、その周辺の船が大きく揺らされた。
爆発の瞬間、シンはツクヨを抱え影を通り、下の階層へと下ったがロロネーの爆発により天井が崩壊し、再び外気に触れる結果となった。何とか直撃は免れたが、倒れ行くマストの崩壊の中にハオランの姿を見つける。
「ハオランッ!?・・・大丈夫なんだろうな?チン・シーは何をしている?」
瓦礫と煙舞う下方へ落下するハオラン。韋駄天による風の噴射で方向転換し、煙の中から逃れるとその先にロロネーが待ち受けていた。どうやら煙に乗じ、自身の霧を織り交ぜることでハオランの位置を特定していたようだ。
捕まえようとするロロネーの腕を蹴り、至近距離で弓矢を放つハオラン。落下しながらの攻防で弓矢を撃ち尽くしたハオランは、船に急降下して焼け焦げボロボロとなった甲板に降り立つ。
「もう鬱陶しい武器による攻撃は出来んぞ。こんな瓦礫の山では、まともに使える武器などありはしない。・・・決着をつけようか、ハオラン」
片膝をついた状態から立ち上がり、ゆっくり顔を起こすハオランはロロネーの提案に乗じる。最早互いの体力も限界に近い。ここらで全力の一撃をぶつけ合い、雌雄を決する時だろう。
「貴様の口からそんな言葉が出るとはな・・・。どうせまた良からぬ策でも隠しているんだろう?だが、終わらせるというのには賛成だ」
爆発により整地された船上で、再び互いの出方を伺うように戦闘態勢に入る二人。ただその様子からは、どちらも何かを潜ませているような雰囲気を感じる。そして未だ動きを見せないチン・シーに、一体何があったのか。
ハオランの攻撃を観察しエンチャントを見抜いていたロロネーは、その風の刃とでもいうような攻撃を身体から首を切り離すことで回避する。渾身の攻撃が避けられ無防備となるハオランは、ロロネーと同様後方へ飛びながら手にした二本の剣を回転させながら投げよこした。
同時にロロネーの前から姿を眩ますハオラン。自身の着地の音を聞き届け、ロロネーは静かになる船内で彼の気配を探す。息を止め、心臓の鼓動が煩く聞こえる程に耳を澄まし、神経を研ぎ澄ます。
一通り周囲の気配を確かめると、ロロネーは歩みを進める。部屋を移動する際に剣を構えながら、一部屋一部屋闇討ちを警戒しながら確認していく。すると、ハオランが逃げていった方の外から物音が聞こえて来る。
いつでも霧化出来るよう準備を整え、急ぎ音の聞こえた方へと向かう。しかし外にハオランはおらず、周囲にも気配はない。それもその筈、ハオランは素早い身のこなしでマストを登っていたのだ。
外に出たロロネーに、獲物を射抜く狩人の矢が放たれる。心臓を掴まれたかのようなプレッシャーを感じ、ロロネーが顔を上げると銃弾のように回転を加えた矢が、幾つも飛んで来る。
素早く船内へ戻るロロネーの身体を弓矢が擦めていく。ハオランの放った矢は、ロロネーの透過能力を受け付けず、その霧の身体を射抜く。辛うじて船内に逃げ込む時に、足に一本の矢を受ける。その矢痕が綺麗に脹脛を貫いていることから、その弓術の威力が窺える。
痛みに耐えながら足を霧化させ、ハオランから受けた矢を床に落とす。霧から元の実体に戻すと傷は跡形もなく消え去っていた。足を動かし、問題なく動くかどうかを確認するロロネー。傷跡は癒えても、その痛みやダメージは身体に蓄積されていく。
床に倒れ込み戦闘の態勢を整えるロロネーの側に、突如天井を貫通して飛んで来た矢が床に突き刺さる。矢に目を取られている隙に、次々に矢が天井を貫き徐々にロロネーのいる位置へと弓矢が近づいて来る。
「何ぃぃッ!?何故俺のいる位置が分かるッ!?」
止むを得ず下半身を霧に変え、船内を蛇のように進み、矢の雨を掻い潜る。すると、ハオランによる風を纏った弓矢の雨が止む。そしてロロネーの進行方向の先に、石柱のように太い光の柱が降り注ぎ、行手を阻む。
急停止し何とか直撃を免れると、ロロネーはその光の柱が開けた穴から外に出て、マストにいるハオランを見上げる。
「いつまでも見下ろしてんじゃねぇぞッ・・・!」
ロロネーは手刀の構えを取ると、身体を半捻りして腕を横に薙ぎ払う。男の腕から白い煙のようなものが刃の衝撃波となり放たれると、ハオランのいるマストの根本付近で水蒸気へと変わる。
何事かと下を見るハオランの目に、恐ろしい光景が広がる。水蒸気へと変わった煙は広範囲に渡り、大きな水蒸気爆発を引き起こしたのだ。マストは折れ、甲板はまるで焼け野原のように吹き飛ばされた。その衝撃で彼らの戦地である船と、その周辺の船が大きく揺らされた。
爆発の瞬間、シンはツクヨを抱え影を通り、下の階層へと下ったがロロネーの爆発により天井が崩壊し、再び外気に触れる結果となった。何とか直撃は免れたが、倒れ行くマストの崩壊の中にハオランの姿を見つける。
「ハオランッ!?・・・大丈夫なんだろうな?チン・シーは何をしている?」
瓦礫と煙舞う下方へ落下するハオラン。韋駄天による風の噴射で方向転換し、煙の中から逃れるとその先にロロネーが待ち受けていた。どうやら煙に乗じ、自身の霧を織り交ぜることでハオランの位置を特定していたようだ。
捕まえようとするロロネーの腕を蹴り、至近距離で弓矢を放つハオラン。落下しながらの攻防で弓矢を撃ち尽くしたハオランは、船に急降下して焼け焦げボロボロとなった甲板に降り立つ。
「もう鬱陶しい武器による攻撃は出来んぞ。こんな瓦礫の山では、まともに使える武器などありはしない。・・・決着をつけようか、ハオラン」
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「貴様の口からそんな言葉が出るとはな・・・。どうせまた良からぬ策でも隠しているんだろう?だが、終わらせるというのには賛成だ」
爆発により整地された船上で、再び互いの出方を伺うように戦闘態勢に入る二人。ただその様子からは、どちらも何かを潜ませているような雰囲気を感じる。そして未だ動きを見せないチン・シーに、一体何があったのか。
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