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光の奥で覗く影
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眼前で強い光を放つ爆風の中に腕を伸ばし、標的を貫いたハオラン。細目を開けて覗くその先に薄らと映る光景は、ロロネーの身体に自身の腕が貫通しているものだった。
感触はあった。それは間違いない。その腕にも男のものと思われる鮮血が付着しているのが僅かに伺える。腕から伝わるロロネーの身体は、冷たく生命力を感じない。だがそれは当然といえば当然のことだ。
何せこの男は人間であることを辞め、モンスターという存在に成り果てたのだから。それもロロネーの体質や能力から、死霊系のモンスターに見受けられる特徴と一致している。なのでこの男から、体温などというものは感じる筈もないのだ。
これで漸く、この戦いに終止符を打つことができ、濃霧からも解放される。そう思っていた矢先、今までのロロネーから想像もできないほど小さく掠れた声で、ハオランに向けて何か言葉を投げ掛けていた。
「・・・ッだなんて、・・・うな・・・」
「・・・?」
爆風でよく聞こえない中で、何かを口にしているロロネーに耳を傾ける。その様子からもダメージは確実にあることは分かった。無傷であるならば、わざわざこのような演技をする理由もないだろう。だが命乞いをするような、惨めな真似をするとも考えられない。
一体この男がハオランに何を伝えようとしているのか。止めはいつでも刺せる。不安要素を残して終わらせる訳にもいかない。最期くらい聞く時間くらいはあるだろう。ハオランは眉を潜ませ、男にもう一度同じことを言うように促す。
「・・・卑怯だなんて・・・、言うなよ・・・?俺達の世界は・・・そういう世界だ・・・。最後に相手を・・・見下した奴が、勝ちだってよ・・・」
ロロネーが何を言っているのか分からなかった。死際で意識が混濁しているのだろうか。ハオランは男の言葉を真面に捉えようとはしなかった。その直後、ハオランはゆっくりと目を見開き、僅かな間全身の力が抜け、呼吸を止める。
そして自身の身体に何が起きたのかと、首を下に向けて様子を伺うと、そこには鋭い刃を備えた薄い鉄の棒が突き刺さっていた。その光景を捉えると同時に、彼の口からドロッとした赤黒い血液がゆっくりと溢れ出し、顎から喉へと伝っていく。
「ッな・・・何だ、これはッ・・・!?」
「お前の・・・スピードには手を焼かされたぜぇ・・・。だが、一枚上手だったのは俺の方だぁ。もう誰が来ようが関係ねぇ・・・。まずはお前を、いの一番に殺してやるよッ!」
ロロネーの口調は、まるで身体が回復でもして行っているかのように、徐々に流暢になっていく。実際男の様子も、瀕死だった筈がハオランの腕が貫通しているにも関わらず、身体を起き上がらせて見せた。
男の腹部には血が滲んでいる。だが、貫通したように思われたハオランの拳は、致命傷を与える前に霧と変わり、あたかも貫通したかのように演出していたのだ。これはツクヨとの戦いでも見せた、透過出来ない攻撃を擦り抜けたように見せる霧化の能力だった。
では、ハオランの身体に背後から剣を突き立てたのは一体誰なのか。身体を分離させることなく目の前にいるロロネーから、視線を背後へとゆっくり向けるハオラン。そこにはまるで死神が冥府より出迎えに来たかのように、髑髏を携えた死者の亡霊が浮遊していたのだ。
「何故・・・ここに?」
膝から崩れ落ちたハオランの前に、霧の身体とは思えぬ程負傷したロロネーが立ち上がる。身体を貫いた剣に触れようとしているのか、震える手を添えて唖然とするハオラン。形勢が一気に逆転した。
「ハオランッ!!」
遠くでツクヨの叫ぶ声が響いた。それがハオランの耳に届いていたかは定かではないが、ツクヨはある事を彼に伝えようとしていた。しかし、それに気づいた時には既に遅く、また今の彼にはどうすることも出来ないこととなる。
ハオランの後方の上空より、くるくると回転して放られる剣が飛んで来ていた。そのまま彼に突き刺さるのかと思われたが、その剣はもう一体の亡霊がロロネーの為に投げよこしたものだったのだ。
飛来する剣を見事にキャッチすると逆手に持ち替え、ハオランの肩口へと剣を突き刺そうとした。擦れる意識と痛みの中で、ハオランは瞬時に突き立てられた剣身を素手で握り、自分の身体に突き刺さるのを阻止した。
「ぁぁッ・・・あ“あ”あ“あ”あ“ぁぁぁッ!!」
衰弱する彼とは反対に復帰したロロネーの力に抗うことが出来ず、剣先はゆっくりとハオランの鎖骨付近に突き刺さる。もう片方の手も一緒に、素手で剣を握り進行を止めようとする。
「これも俺の能力だ・・・。“数“もまた力の一つだろう!?」
ロロネーは周囲で戦っていた亡霊達を自身の元へ呼び戻し、取り巻きと共にハオランを確実に仕留めようと動いたのだ。その為、シンやチン・シーの周囲にいた亡霊達も姿を消し、例え彼らがハオランに加勢しに来ようと関係ないといった、総力戦へと踏み入った。
しかし、ここで亡霊を集めたロロネーの判断は、実にタイミングがよく優れた決断だった。シンは意識が無く、チン・シーは今やロロネーの敵ではない。ツクヨも重傷を負わされ、チン・シー海賊団の小隊達も戦闘不能にされている。
実質、ハオランに加勢できる程の力を残した者がいない状況にある。それに引き換えロロネーは、重傷を負ったとはいえど立って動けるだけの体力が残っており、男の魔力が尽きぬ限り湧き続ける取り巻きのモンスターがいる。
唯一、ハオラン達にとっての希望は、ロロネーの集めた亡霊がそれ程の数ではないことにある。ハオランの奮闘によって負った負傷や消耗が、ロロネーのあと一歩を踏み留まらせている。
感触はあった。それは間違いない。その腕にも男のものと思われる鮮血が付着しているのが僅かに伺える。腕から伝わるロロネーの身体は、冷たく生命力を感じない。だがそれは当然といえば当然のことだ。
何せこの男は人間であることを辞め、モンスターという存在に成り果てたのだから。それもロロネーの体質や能力から、死霊系のモンスターに見受けられる特徴と一致している。なのでこの男から、体温などというものは感じる筈もないのだ。
これで漸く、この戦いに終止符を打つことができ、濃霧からも解放される。そう思っていた矢先、今までのロロネーから想像もできないほど小さく掠れた声で、ハオランに向けて何か言葉を投げ掛けていた。
「・・・ッだなんて、・・・うな・・・」
「・・・?」
爆風でよく聞こえない中で、何かを口にしているロロネーに耳を傾ける。その様子からもダメージは確実にあることは分かった。無傷であるならば、わざわざこのような演技をする理由もないだろう。だが命乞いをするような、惨めな真似をするとも考えられない。
一体この男がハオランに何を伝えようとしているのか。止めはいつでも刺せる。不安要素を残して終わらせる訳にもいかない。最期くらい聞く時間くらいはあるだろう。ハオランは眉を潜ませ、男にもう一度同じことを言うように促す。
「・・・卑怯だなんて・・・、言うなよ・・・?俺達の世界は・・・そういう世界だ・・・。最後に相手を・・・見下した奴が、勝ちだってよ・・・」
ロロネーが何を言っているのか分からなかった。死際で意識が混濁しているのだろうか。ハオランは男の言葉を真面に捉えようとはしなかった。その直後、ハオランはゆっくりと目を見開き、僅かな間全身の力が抜け、呼吸を止める。
そして自身の身体に何が起きたのかと、首を下に向けて様子を伺うと、そこには鋭い刃を備えた薄い鉄の棒が突き刺さっていた。その光景を捉えると同時に、彼の口からドロッとした赤黒い血液がゆっくりと溢れ出し、顎から喉へと伝っていく。
「ッな・・・何だ、これはッ・・・!?」
「お前の・・・スピードには手を焼かされたぜぇ・・・。だが、一枚上手だったのは俺の方だぁ。もう誰が来ようが関係ねぇ・・・。まずはお前を、いの一番に殺してやるよッ!」
ロロネーの口調は、まるで身体が回復でもして行っているかのように、徐々に流暢になっていく。実際男の様子も、瀕死だった筈がハオランの腕が貫通しているにも関わらず、身体を起き上がらせて見せた。
男の腹部には血が滲んでいる。だが、貫通したように思われたハオランの拳は、致命傷を与える前に霧と変わり、あたかも貫通したかのように演出していたのだ。これはツクヨとの戦いでも見せた、透過出来ない攻撃を擦り抜けたように見せる霧化の能力だった。
では、ハオランの身体に背後から剣を突き立てたのは一体誰なのか。身体を分離させることなく目の前にいるロロネーから、視線を背後へとゆっくり向けるハオラン。そこにはまるで死神が冥府より出迎えに来たかのように、髑髏を携えた死者の亡霊が浮遊していたのだ。
「何故・・・ここに?」
膝から崩れ落ちたハオランの前に、霧の身体とは思えぬ程負傷したロロネーが立ち上がる。身体を貫いた剣に触れようとしているのか、震える手を添えて唖然とするハオラン。形勢が一気に逆転した。
「ハオランッ!!」
遠くでツクヨの叫ぶ声が響いた。それがハオランの耳に届いていたかは定かではないが、ツクヨはある事を彼に伝えようとしていた。しかし、それに気づいた時には既に遅く、また今の彼にはどうすることも出来ないこととなる。
ハオランの後方の上空より、くるくると回転して放られる剣が飛んで来ていた。そのまま彼に突き刺さるのかと思われたが、その剣はもう一体の亡霊がロロネーの為に投げよこしたものだったのだ。
飛来する剣を見事にキャッチすると逆手に持ち替え、ハオランの肩口へと剣を突き刺そうとした。擦れる意識と痛みの中で、ハオランは瞬時に突き立てられた剣身を素手で握り、自分の身体に突き刺さるのを阻止した。
「ぁぁッ・・・あ“あ”あ“あ”あ“ぁぁぁッ!!」
衰弱する彼とは反対に復帰したロロネーの力に抗うことが出来ず、剣先はゆっくりとハオランの鎖骨付近に突き刺さる。もう片方の手も一緒に、素手で剣を握り進行を止めようとする。
「これも俺の能力だ・・・。“数“もまた力の一つだろう!?」
ロロネーは周囲で戦っていた亡霊達を自身の元へ呼び戻し、取り巻きと共にハオランを確実に仕留めようと動いたのだ。その為、シンやチン・シーの周囲にいた亡霊達も姿を消し、例え彼らがハオランに加勢しに来ようと関係ないといった、総力戦へと踏み入った。
しかし、ここで亡霊を集めたロロネーの判断は、実にタイミングがよく優れた決断だった。シンは意識が無く、チン・シーは今やロロネーの敵ではない。ツクヨも重傷を負わされ、チン・シー海賊団の小隊達も戦闘不能にされている。
実質、ハオランに加勢できる程の力を残した者がいない状況にある。それに引き換えロロネーは、重傷を負ったとはいえど立って動けるだけの体力が残っており、男の魔力が尽きぬ限り湧き続ける取り巻きのモンスターがいる。
唯一、ハオラン達にとっての希望は、ロロネーの集めた亡霊がそれ程の数ではないことにある。ハオランの奮闘によって負った負傷や消耗が、ロロネーのあと一歩を踏み留まらせている。
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