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陰る勝機の光
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その腕の持ち主の身体が、徐々に立ち込める霧が集まり形成されていく。男は彼の攻撃を受け深傷を負っている。それは外傷と言うよりも、内部で細胞を損傷したかのような傷だった。見た目には派手な傷はないが、その表情からは血の気が引いており、吐血でもしたのだろう。口の周りに血を吐いた痕跡が見られる。
全身の姿を現さず、男は上半身だけで床に這いつくばっている。掴まれた手を振り解こうとするも、重傷のように思える男の腕は重く力が入っており動かない。
「・・・逃がさねぇよ・・・!」
ハオランが見下ろした視線の先に、顔を上げ彼を睨むロロネーの姿があった。二人の視線が合い、ハオランがロロネーの身体の方へと視線を移した時、そこに無い男の下半身が彼に迫っており、デストロイヤー の力を引き出したツクヨを上回る蹴りで、お返しと言わんばかりにハオランヘ凄まじい蹴りを入れる。
無くなっているロロネーの下半身の行方を想像するよりも先に、男の蹴りを貰ってしまうハオラン。不意の一撃を受け、今度は彼が船内の壁を突き破り、外へと吹き飛ばされる。
優勢かと思われていたハオランが、船内に入っていくのを見ていたツクヨ。それが一変して大きな音と共に飛び出して来たのが、トドメを刺しに入ったハオランであったことに、驚きと不安が煽られる。
ロロネーと対峙していたツクヨだからこそ分かる。ハオランの細身で、果たしてロロネーの攻撃を受け切ることなど出来るのだろうか。無論、武術の心得がある彼ならば受け身や攻撃に対する様々な防御法なども、あるのかもしれない。
だがもし、その防御法を上回る強烈な一撃を受けたのなら。今まさに目の前で起きた、全身を激しく打ちつける程の衝撃を緩和することなど出来るのか。
ロロネーの一撃を喰らった衝撃と、船に打ち付けられた衝撃で脳を激しく揺らされる。意識は保っているが、脳からの信号が身体に送られるまでに、僅かながらのラグが生じてしまっているのか、信号の伝達が遅れる足に代わり、手をつき腕を使って身体を起き上がらせようとするハオラン。
フラつく彼の元に、船内から水蒸気を引き連れ飛んで来るロロネーが、追い討ちをかけようと身体を回転させた勢いの乗る回し蹴りを、彼に向けて打ち放つ。咄嗟に横へ転がり回避するハオラン。
ロロネーの蹴りは、船の淵を薙ぎ払って破壊し、残骸を海へと降らせた。今度は胴体に下半身が付いている状態で現れたロロネー。ハオランに命中することがなかった足を甲板につけて、飛んで来た勢いを殺すためしっかりと床を踏み締める。
漸く足に信号が伝わるようになったハオランが立ち上がろうとすると、床から腕が飛び出し彼の首を掴み上げると、宙へ持ち上げる。力強い握力で握り締められる指を解こうと、両手でその腕を掴むハオランだが、その拘束は簡単には解けない。
そうしている間に、別の腕が宙に浮かぶハオランの身体目掛けて、水蒸気を纏って飛んで行くのを、一部始終を見ていたツクヨが気づき、迫る危機を彼に知らせる。
「ハオランッ!別の腕が来るッ!!」
苦しさに細めていた目を見開き、ツクヨの声にあった別の腕の存在を認識すると、膝を上げ腕の軌道上に足を持って来て防御の姿勢をとる。やって来た腕は、その防御などお構いなしに突っ込んで来ると、ハオランの膝へと命中する。
強い衝撃はあったが、足で受け止められたことによりダメージは和らいだ。だが、その腕の恐ろしい攻撃はこれからだったのだ。彼の足に命中し、胴体への攻撃を妨げられた腕は、水蒸気を纏い高熱の煙へと変わり、その姿を消した。
蒸気の熱で足を焼かれ、思わず声を上げるハオラン。すると彼の首を掴んでいた腕がその指を離し、彼を床へと落とす。着地と同時にむせ返りながら転げるハオランを、ツクヨの方へ向かって蹴り飛ばすロロネー。
ここまで弱る彼を初めてみる。魂に身体を乗っ取られていたとはいえ、彼の強さを知っていたツクヨは、事態の重さを肌身に感じていた。
ハオランが魂の群れから解放されれば、戦況が覆り戦闘は収束へと向かうものだと思っていた。だが、誰も想像していなかったロロネー自身の戦闘力に、まさかこれ程苦戦を強いられるとは予想外の展開だった。
このまま彼に頼り切っていていいのだろうか。しかしツクヨの身体も最早限界に近い。それでもロロネーの意識がハオランに向いている今なら、僅かな隙を作るくらいなら出来るかもしれない。
その為には彼との連携が必要不可欠。チャンスは今ではない。ここはハオランの力を信じ、耐えてもらうしかない。ツクヨがまだ戦闘に参加出来ると知られれば、その芽を先に潰しに来るとも限らない。
「さぁ立て。まだ寝るには早いだろ」
倒れるハオランに歩み寄りながら、口の中に残る血を唾のように吐き出し拭う。ロロネーがハオランの元に辿り着く。すると息を吹き返したように、床で回転しロロネーに蹴りを放つハオラン。
ロロネーはハオランの足が命中する部位を水蒸気に変えて回避する。そして起き上がったハオランが、腕で口を拭い呼吸を整える。男の身体を擦り抜けたハオランの足は、それまでと同様炎の中を通したように熱を帯びていた。
全身の姿を現さず、男は上半身だけで床に這いつくばっている。掴まれた手を振り解こうとするも、重傷のように思える男の腕は重く力が入っており動かない。
「・・・逃がさねぇよ・・・!」
ハオランが見下ろした視線の先に、顔を上げ彼を睨むロロネーの姿があった。二人の視線が合い、ハオランがロロネーの身体の方へと視線を移した時、そこに無い男の下半身が彼に迫っており、デストロイヤー の力を引き出したツクヨを上回る蹴りで、お返しと言わんばかりにハオランヘ凄まじい蹴りを入れる。
無くなっているロロネーの下半身の行方を想像するよりも先に、男の蹴りを貰ってしまうハオラン。不意の一撃を受け、今度は彼が船内の壁を突き破り、外へと吹き飛ばされる。
優勢かと思われていたハオランが、船内に入っていくのを見ていたツクヨ。それが一変して大きな音と共に飛び出して来たのが、トドメを刺しに入ったハオランであったことに、驚きと不安が煽られる。
ロロネーと対峙していたツクヨだからこそ分かる。ハオランの細身で、果たしてロロネーの攻撃を受け切ることなど出来るのだろうか。無論、武術の心得がある彼ならば受け身や攻撃に対する様々な防御法なども、あるのかもしれない。
だがもし、その防御法を上回る強烈な一撃を受けたのなら。今まさに目の前で起きた、全身を激しく打ちつける程の衝撃を緩和することなど出来るのか。
ロロネーの一撃を喰らった衝撃と、船に打ち付けられた衝撃で脳を激しく揺らされる。意識は保っているが、脳からの信号が身体に送られるまでに、僅かながらのラグが生じてしまっているのか、信号の伝達が遅れる足に代わり、手をつき腕を使って身体を起き上がらせようとするハオラン。
フラつく彼の元に、船内から水蒸気を引き連れ飛んで来るロロネーが、追い討ちをかけようと身体を回転させた勢いの乗る回し蹴りを、彼に向けて打ち放つ。咄嗟に横へ転がり回避するハオラン。
ロロネーの蹴りは、船の淵を薙ぎ払って破壊し、残骸を海へと降らせた。今度は胴体に下半身が付いている状態で現れたロロネー。ハオランに命中することがなかった足を甲板につけて、飛んで来た勢いを殺すためしっかりと床を踏み締める。
漸く足に信号が伝わるようになったハオランが立ち上がろうとすると、床から腕が飛び出し彼の首を掴み上げると、宙へ持ち上げる。力強い握力で握り締められる指を解こうと、両手でその腕を掴むハオランだが、その拘束は簡単には解けない。
そうしている間に、別の腕が宙に浮かぶハオランの身体目掛けて、水蒸気を纏って飛んで行くのを、一部始終を見ていたツクヨが気づき、迫る危機を彼に知らせる。
「ハオランッ!別の腕が来るッ!!」
苦しさに細めていた目を見開き、ツクヨの声にあった別の腕の存在を認識すると、膝を上げ腕の軌道上に足を持って来て防御の姿勢をとる。やって来た腕は、その防御などお構いなしに突っ込んで来ると、ハオランの膝へと命中する。
強い衝撃はあったが、足で受け止められたことによりダメージは和らいだ。だが、その腕の恐ろしい攻撃はこれからだったのだ。彼の足に命中し、胴体への攻撃を妨げられた腕は、水蒸気を纏い高熱の煙へと変わり、その姿を消した。
蒸気の熱で足を焼かれ、思わず声を上げるハオラン。すると彼の首を掴んでいた腕がその指を離し、彼を床へと落とす。着地と同時にむせ返りながら転げるハオランを、ツクヨの方へ向かって蹴り飛ばすロロネー。
ここまで弱る彼を初めてみる。魂に身体を乗っ取られていたとはいえ、彼の強さを知っていたツクヨは、事態の重さを肌身に感じていた。
ハオランが魂の群れから解放されれば、戦況が覆り戦闘は収束へと向かうものだと思っていた。だが、誰も想像していなかったロロネー自身の戦闘力に、まさかこれ程苦戦を強いられるとは予想外の展開だった。
このまま彼に頼り切っていていいのだろうか。しかしツクヨの身体も最早限界に近い。それでもロロネーの意識がハオランに向いている今なら、僅かな隙を作るくらいなら出来るかもしれない。
その為には彼との連携が必要不可欠。チャンスは今ではない。ここはハオランの力を信じ、耐えてもらうしかない。ツクヨがまだ戦闘に参加出来ると知られれば、その芽を先に潰しに来るとも限らない。
「さぁ立て。まだ寝るには早いだろ」
倒れるハオランに歩み寄りながら、口の中に残る血を唾のように吐き出し拭う。ロロネーがハオランの元に辿り着く。すると息を吹き返したように、床で回転しロロネーに蹴りを放つハオラン。
ロロネーはハオランの足が命中する部位を水蒸気に変えて回避する。そして起き上がったハオランが、腕で口を拭い呼吸を整える。男の身体を擦り抜けたハオランの足は、それまでと同様炎の中を通したように熱を帯びていた。
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