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待望の戦線復帰
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ツクヨの冷静な返しに、熱弁に気持ちが良くなっていたロロネーも、少しだけ頭に登っていた血が引いていったのか、落ち着きを取り戻す。
「簡単な話さ。人間の有する魔力量と、モンスター供の有する魔力量の違いと同じだ。種族間だってそうだろう?人間とオーガ種では根本的に力の差や上限値が違う。俺ぁ人間という器を捨てて、別の存在としての上限値に昇格した」
ロロネーは、この世界のことをよく知らないツクヨにも分かりやすいような例えで説明した。自身の生物としての進化とも言える変化が、如何に崇高なことかを彼に理解させたかったのだろう。
ゲームを遊ぶ上で、こんな事を思ったことはないだろうか。同じプレイアブルキャラクターなのに、一度敵側に回ると体力はおろかステータス自体が、自分が仲間として使っていた時とはまるで別人のように強化されていたという経験を。
仲間として加入した時は、操作キャラクター達の規格に合わせたステータスを与えられ、イベントや戦闘で特別な役割を与えられると、ボス戦用の規格のステータスに変わる。
つまり、以前のロロネーは人間としてのステータスをしており、その当時は当然ながら霧を発生させるような能力は持ち合わせておらず、グレイスやチン・シーなどと同じように人間の海賊達と海を航海していた。
そして、今のロロネーはイベント戦やボスといった役割に該当する特別な規格のステータスを保有するようになったのだ。故にクラスに縛られないスキルや能力、フィールドに影響を及ぼす特殊効果やモンスターを生み出す能力まで身につけている。
「なるほど・・・。要するにアンタは、他を圧倒する能力と力で人を超える存在になった・・・と・・・?」
「そうだ。今や俺はチン・シーだけじゃなく、あのエイヴリーやキングにも引けを取らない力を得た。誰も俺を超えることなんざ、出来ねぇよ。人である限りはな・・・」
ロロネーはツクヨの肩に突き刺していた剣を引き抜き、その剣先に付着した血液を振るい飛ばし、床に膝をつくツクヨにトドメを刺すための構えをとる。先程までの興奮が嘘のように静かになったロロネー。自身の力と能力を存分に振るうことのできる戦闘に満足し、その演劇に幕を下ろす。
「個の力に取り憑かれ人間を捨てたアンタに、“人“の強さは永久に理解出来ないだろうな・・・」
小さく呟いたツクヨの言葉に、ロロネーはその手を止める。死に損ないの最期の足掻きとしか思わなかったが、それはロロネーの癇に僅かに触るものだった。恐怖や絶望の色を見せないツクヨの表情に、苛立ちの感情を覚えた。
「・・・何ぃ・・・?もう一度言ってみろ、死に損ないッ・・・!」
負傷した肩を押さえるツクヨを足蹴にし、後方に倒れさせる。痛みにもがくツクヨを見下し、今度は足に剣を突き立てる。悲痛な叫びと共に悶絶するツクヨに、彼の口から出た“人の強さ“というものが何なのか。
人間の弱さに嫌気が差したロロネーは、ツクヨの語るそれに僅かながらの興味があった。無論、そんなものを受け入れるつもりも、聞き入れるつもりもなかったが。
「・・・人とは、個々で真価を発揮する生き物ではないッ・・・ってことさ。アンタはその力を捨てた・・・。その身ではもう理解することは・・・ないだろう・・・」
「あぁ、そんなつもりは端からねぇな・・・。信じる心や手を取り合うなんて、吐き気がする綺麗事でも並べるつもりかぁ?ハッ!下らねぇッ!結局は力こそが全てなんだよ。つまらねぇことに時間を割いた。じゃぁな、人間。妄想に憧れを抱きながら死ね・・・」
ツクヨの足に刺していた剣を引き抜き、倒れる彼の喉元を引き裂こうとした時、何処からか光弾のような衝撃波が放たれロロネーを襲う。冷静になったロロネーは、自身に向けて放たれた衝撃波に気づき、ツクヨを狙っていた剣を衝撃波へ振るい打ち消した。
そして、突如として男に向け放たれた衝撃波の先へ視線を向ける。そこには甲板に横たわるシンと、それを介抱するように寄り添うチン・シーの姿がロロネーの目に映る。ハオランと接触する為に近づいていった二人の消耗した姿。だがそこに、肝心のハオランの姿が見当たらない。
ロロネーが異変に気付いた時には、その視界は急速に横へとスライドした。腹部へ走る衝撃と共に、男の身体は船内へ続く壁の方へと吹き飛んでいき、船を破壊しながらその勢いを緩めた。
突然の出来事に身体を霧に変えることが出来ず、何故かその攻撃はロロネーの身体を透過することもなかった。大きく吐血するロロネーは、ぐらぐらする意識の中で自身が飛ばされて来た軌道上を確認する。
するとそこには倒れるツクヨの側に立つ、ロロネーが最も警戒していた人物の姿があった。魂の呪縛から解き放たれたハオランの動きを押さえつけるものがなくなり、シンやチン・シーによる無傷の救出のおかげで、全快の状態で戦線復帰を果たす。
「簡単な話さ。人間の有する魔力量と、モンスター供の有する魔力量の違いと同じだ。種族間だってそうだろう?人間とオーガ種では根本的に力の差や上限値が違う。俺ぁ人間という器を捨てて、別の存在としての上限値に昇格した」
ロロネーは、この世界のことをよく知らないツクヨにも分かりやすいような例えで説明した。自身の生物としての進化とも言える変化が、如何に崇高なことかを彼に理解させたかったのだろう。
ゲームを遊ぶ上で、こんな事を思ったことはないだろうか。同じプレイアブルキャラクターなのに、一度敵側に回ると体力はおろかステータス自体が、自分が仲間として使っていた時とはまるで別人のように強化されていたという経験を。
仲間として加入した時は、操作キャラクター達の規格に合わせたステータスを与えられ、イベントや戦闘で特別な役割を与えられると、ボス戦用の規格のステータスに変わる。
つまり、以前のロロネーは人間としてのステータスをしており、その当時は当然ながら霧を発生させるような能力は持ち合わせておらず、グレイスやチン・シーなどと同じように人間の海賊達と海を航海していた。
そして、今のロロネーはイベント戦やボスといった役割に該当する特別な規格のステータスを保有するようになったのだ。故にクラスに縛られないスキルや能力、フィールドに影響を及ぼす特殊効果やモンスターを生み出す能力まで身につけている。
「なるほど・・・。要するにアンタは、他を圧倒する能力と力で人を超える存在になった・・・と・・・?」
「そうだ。今や俺はチン・シーだけじゃなく、あのエイヴリーやキングにも引けを取らない力を得た。誰も俺を超えることなんざ、出来ねぇよ。人である限りはな・・・」
ロロネーはツクヨの肩に突き刺していた剣を引き抜き、その剣先に付着した血液を振るい飛ばし、床に膝をつくツクヨにトドメを刺すための構えをとる。先程までの興奮が嘘のように静かになったロロネー。自身の力と能力を存分に振るうことのできる戦闘に満足し、その演劇に幕を下ろす。
「個の力に取り憑かれ人間を捨てたアンタに、“人“の強さは永久に理解出来ないだろうな・・・」
小さく呟いたツクヨの言葉に、ロロネーはその手を止める。死に損ないの最期の足掻きとしか思わなかったが、それはロロネーの癇に僅かに触るものだった。恐怖や絶望の色を見せないツクヨの表情に、苛立ちの感情を覚えた。
「・・・何ぃ・・・?もう一度言ってみろ、死に損ないッ・・・!」
負傷した肩を押さえるツクヨを足蹴にし、後方に倒れさせる。痛みにもがくツクヨを見下し、今度は足に剣を突き立てる。悲痛な叫びと共に悶絶するツクヨに、彼の口から出た“人の強さ“というものが何なのか。
人間の弱さに嫌気が差したロロネーは、ツクヨの語るそれに僅かながらの興味があった。無論、そんなものを受け入れるつもりも、聞き入れるつもりもなかったが。
「・・・人とは、個々で真価を発揮する生き物ではないッ・・・ってことさ。アンタはその力を捨てた・・・。その身ではもう理解することは・・・ないだろう・・・」
「あぁ、そんなつもりは端からねぇな・・・。信じる心や手を取り合うなんて、吐き気がする綺麗事でも並べるつもりかぁ?ハッ!下らねぇッ!結局は力こそが全てなんだよ。つまらねぇことに時間を割いた。じゃぁな、人間。妄想に憧れを抱きながら死ね・・・」
ツクヨの足に刺していた剣を引き抜き、倒れる彼の喉元を引き裂こうとした時、何処からか光弾のような衝撃波が放たれロロネーを襲う。冷静になったロロネーは、自身に向けて放たれた衝撃波に気づき、ツクヨを狙っていた剣を衝撃波へ振るい打ち消した。
そして、突如として男に向け放たれた衝撃波の先へ視線を向ける。そこには甲板に横たわるシンと、それを介抱するように寄り添うチン・シーの姿がロロネーの目に映る。ハオランと接触する為に近づいていった二人の消耗した姿。だがそこに、肝心のハオランの姿が見当たらない。
ロロネーが異変に気付いた時には、その視界は急速に横へとスライドした。腹部へ走る衝撃と共に、男の身体は船内へ続く壁の方へと吹き飛んでいき、船を破壊しながらその勢いを緩めた。
突然の出来事に身体を霧に変えることが出来ず、何故かその攻撃はロロネーの身体を透過することもなかった。大きく吐血するロロネーは、ぐらぐらする意識の中で自身が飛ばされて来た軌道上を確認する。
するとそこには倒れるツクヨの側に立つ、ロロネーが最も警戒していた人物の姿があった。魂の呪縛から解き放たれたハオランの動きを押さえつけるものがなくなり、シンやチン・シーによる無傷の救出のおかげで、全快の状態で戦線復帰を果たす。
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