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目覚めの裏の一幕
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開戦を告げた二つの大海賊による戦禍も終盤へと差し掛かる。濃霧立ち込める海上では、未だ戦いの雄叫びと鉄の弾ける音、大砲の轟音や船と共に息絶えた者達を蒼天へ送る業火の香りが、戦場を覆い尽くす。
戦いの勝敗を期する戦場では、二つの勢力による一人の男の目覚めが成される中、一方で亡者の軍勢を率いる首領と男達の戦いに決着の時が迫っていた。
戦友をこの絶望的な状況から一転させる起死回生の作戦へと送り出し、邪魔が入らぬよう人ならざる者達を食い止めていたツクヨと二人の船員。ロロネーの不意打ちを食い、暫く気を失っていた船員達は意識を取り戻し目を開けて驚いた。
それまで苦戦を強いられていたツクヨが、あのロロネーと互角に渡り合っていたのだ。そして何よりも彼のその異様な戦闘方法に、目を奪われた。一撃一撃が重く鋭い攻撃の応酬の最中、彼は何と二つの瞼を閉じて戦っていたのだ。
武術や剣術問わず、戦術の中には相手の気を読み次の行動や攻撃を予測するといったものがある。だがツクヨのそれは、まるで瞼の向こう側で別の景色でも見ているかのような動きだった。
それだけではない。彼そのものの戦い方も十分に気を引いたが、それ以上にロロネーの予測できない霧化の動きに、ツクヨは肉眼では確認出来ない何かを足場にし、器用に宙で体勢を変えながら戦っていた。
ある時は、隙を突いて来たロロネーの攻撃を避けるために見えない足場を利用して身を翻し、またある時は力の入らぬ姿勢で攻撃に転じようとする時に、見えない何かに体重を乗せ一気に蹴り上げて攻勢に転ずる。
通常の相手であれば、彼の奇妙な動きに翻弄され痛手を負っていてもおかしくない。だが相手はあのロロネー。海賊の亡霊達と同じように、自在に足を霧に変え宙を飛び回り、ツクヨの読めぬ動きに対応している。
人ばかり相手にして来たのでは、到底なし得ない動きの応酬。ツクヨは布都御魂剣が見せる別の景色の中で、ロロネーの身体に起きる僅かな気配の変化を見逃すことなく捉え、攻撃を事前に避けることで、攻防の読み合いにおける後手に回るデメリットを克服していた。
一方のロロネーは、始めこそ物理的攻撃を通さぬ筈の身体に、何故か透過の効かないツクヨの斬撃に驚かせれ苦戦するも、命中する寸前に霧化し透過しているように偽造して見せた。
本人達にしか分からぬ高度な攻防と、神経を研ぎ澄ませるような繊細なスキル技術だったが、二人の間には根本的に大きな差がある。
それは、能力や技術に関係なく単純に本人達のステータス。所謂身体能力の差だった。身のこなしやスピードに大きな差はないが、戦っている内に徐々に浮き彫りとなって来たのが、力の差だ。
簡潔に分かりやすく言えば攻撃力だ。ツクヨの攻撃がスピードであるならば、ロロネーの攻撃は一撃の重たい鉄槌のような攻撃。ロロネーはツクヨの攻撃を避けることも受けることも出来るが、ツクヨはそうではない。
受け流すといった防御は一切取ることは出来ず、全ての攻撃を避けなければならない。そんな彼をサポートするように、船員の二人が剣術による攻撃でロロネーの霧化を誘い、攻撃の手数を減らしていた。
だがそれも長くは続かず、船員の二人はロロネーによって地に伏せられ、ツクヨも窮地へと追い詰められる。土壇場で彼は、この世界でやらねばならない目的と、死ねない理由を胸に、自身の中に眠る悍しい力の一部を引き出すことに成功する。
ツクヨがロロネーと互角に戦えていたのは、彼のもう一つのクラス。普段は使うことも確認することも出来ないイレギュラーな力。デストロイヤーの攻撃力の一部を得て、ロロネーの重い攻撃を受けきることが可能となった。
船員の二人による手数を失ったが、代わりにツクヨはスピードとパワーの両立を果たし、一人で亡者の王を相手にできる力を得た。突然のツクヨのパワーアップに驚きと苦戦を強いられるロロネー。
それまでの彼とは違い、全ての神経を回避に集中させていた筈の攻撃が、守りだけでなく攻めへの意識に変わり、それまでロロネーのして来た霧化では回避が間に合わなくなり始める。
ツクヨの攻撃は何故かロロネーの身体を擦り抜けない。当たれば確実にこの男を斬りつける。急に命の重みを実感する、緊張感のある戦いへと変貌し、透過や霧化に身を任せた無茶苦茶な攻撃が、相手の動きも見る慎重な戦闘スタイルへと移行させる。
しかし、目の前の相手の奮戦に反撃を受けるロロネーは、焦りや苦悶の表情から自然と口角を上げた不気味な笑みを浮かべる。この男にとっては何年かぶり。血肉沸き、心躍る命の取り合いにロロネーは興じていたのだ。
必死に一撃一撃を振るうツクヨと、緊張感を楽しむロロネーによる二人の心の差が、奇しくも二人の勝負の行く末を加速させ、終幕へと導く。
通常の状態では扱う事も出来ないデストロイヤーの力は、ツクヨに圧倒的な攻撃力を与えたが、何分始めてのことでその力を自在に操ることが出来ず、彼の体力と魔力を大幅に蝕む諸刃の剣になっていたのだ。
戦いの勝敗を期する戦場では、二つの勢力による一人の男の目覚めが成される中、一方で亡者の軍勢を率いる首領と男達の戦いに決着の時が迫っていた。
戦友をこの絶望的な状況から一転させる起死回生の作戦へと送り出し、邪魔が入らぬよう人ならざる者達を食い止めていたツクヨと二人の船員。ロロネーの不意打ちを食い、暫く気を失っていた船員達は意識を取り戻し目を開けて驚いた。
それまで苦戦を強いられていたツクヨが、あのロロネーと互角に渡り合っていたのだ。そして何よりも彼のその異様な戦闘方法に、目を奪われた。一撃一撃が重く鋭い攻撃の応酬の最中、彼は何と二つの瞼を閉じて戦っていたのだ。
武術や剣術問わず、戦術の中には相手の気を読み次の行動や攻撃を予測するといったものがある。だがツクヨのそれは、まるで瞼の向こう側で別の景色でも見ているかのような動きだった。
それだけではない。彼そのものの戦い方も十分に気を引いたが、それ以上にロロネーの予測できない霧化の動きに、ツクヨは肉眼では確認出来ない何かを足場にし、器用に宙で体勢を変えながら戦っていた。
ある時は、隙を突いて来たロロネーの攻撃を避けるために見えない足場を利用して身を翻し、またある時は力の入らぬ姿勢で攻撃に転じようとする時に、見えない何かに体重を乗せ一気に蹴り上げて攻勢に転ずる。
通常の相手であれば、彼の奇妙な動きに翻弄され痛手を負っていてもおかしくない。だが相手はあのロロネー。海賊の亡霊達と同じように、自在に足を霧に変え宙を飛び回り、ツクヨの読めぬ動きに対応している。
人ばかり相手にして来たのでは、到底なし得ない動きの応酬。ツクヨは布都御魂剣が見せる別の景色の中で、ロロネーの身体に起きる僅かな気配の変化を見逃すことなく捉え、攻撃を事前に避けることで、攻防の読み合いにおける後手に回るデメリットを克服していた。
一方のロロネーは、始めこそ物理的攻撃を通さぬ筈の身体に、何故か透過の効かないツクヨの斬撃に驚かせれ苦戦するも、命中する寸前に霧化し透過しているように偽造して見せた。
本人達にしか分からぬ高度な攻防と、神経を研ぎ澄ませるような繊細なスキル技術だったが、二人の間には根本的に大きな差がある。
それは、能力や技術に関係なく単純に本人達のステータス。所謂身体能力の差だった。身のこなしやスピードに大きな差はないが、戦っている内に徐々に浮き彫りとなって来たのが、力の差だ。
簡潔に分かりやすく言えば攻撃力だ。ツクヨの攻撃がスピードであるならば、ロロネーの攻撃は一撃の重たい鉄槌のような攻撃。ロロネーはツクヨの攻撃を避けることも受けることも出来るが、ツクヨはそうではない。
受け流すといった防御は一切取ることは出来ず、全ての攻撃を避けなければならない。そんな彼をサポートするように、船員の二人が剣術による攻撃でロロネーの霧化を誘い、攻撃の手数を減らしていた。
だがそれも長くは続かず、船員の二人はロロネーによって地に伏せられ、ツクヨも窮地へと追い詰められる。土壇場で彼は、この世界でやらねばならない目的と、死ねない理由を胸に、自身の中に眠る悍しい力の一部を引き出すことに成功する。
ツクヨがロロネーと互角に戦えていたのは、彼のもう一つのクラス。普段は使うことも確認することも出来ないイレギュラーな力。デストロイヤーの攻撃力の一部を得て、ロロネーの重い攻撃を受けきることが可能となった。
船員の二人による手数を失ったが、代わりにツクヨはスピードとパワーの両立を果たし、一人で亡者の王を相手にできる力を得た。突然のツクヨのパワーアップに驚きと苦戦を強いられるロロネー。
それまでの彼とは違い、全ての神経を回避に集中させていた筈の攻撃が、守りだけでなく攻めへの意識に変わり、それまでロロネーのして来た霧化では回避が間に合わなくなり始める。
ツクヨの攻撃は何故かロロネーの身体を擦り抜けない。当たれば確実にこの男を斬りつける。急に命の重みを実感する、緊張感のある戦いへと変貌し、透過や霧化に身を任せた無茶苦茶な攻撃が、相手の動きも見る慎重な戦闘スタイルへと移行させる。
しかし、目の前の相手の奮戦に反撃を受けるロロネーは、焦りや苦悶の表情から自然と口角を上げた不気味な笑みを浮かべる。この男にとっては何年かぶり。血肉沸き、心躍る命の取り合いにロロネーは興じていたのだ。
必死に一撃一撃を振るうツクヨと、緊張感を楽しむロロネーによる二人の心の差が、奇しくも二人の勝負の行く末を加速させ、終幕へと導く。
通常の状態では扱う事も出来ないデストロイヤーの力は、ツクヨに圧倒的な攻撃力を与えたが、何分始めてのことでその力を自在に操ることが出来ず、彼の体力と魔力を大幅に蝕む諸刃の剣になっていたのだ。
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