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ゴーストシップ攻略
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海賊の亡霊同様、物理的な攻撃が通用しない海賊船に苦戦を強いられる前線の部隊。ミアの属性弾も、亡霊のようなサイズの相手なら効果的だったが、船ほどの大きさともなるとまるでダメージが入らない。
「チッ・・・!銃弾じゃぁ歯が立たない・・・」
小さな銃弾では、属性の効果が多少反映される程度の微々たる変化しかない。それでも全く効果が得られない訳ではなかった。何か別の手段、広範囲に渡る属性魔法でもあれば或いは手の打ちようもあるかもしれない。
「ッ!?そうだよッ、こいつらがいるじゃないか!」
ミアは、自身が身を預けている海賊団のことを思い出し、下にいる船員に声をかける。チン・シーやシュユー達のような主戦力となる者がいなくとも、彼らの船には多種多様な術を得意とするスペシャリスト達が乗り合わせている筈。
「おいッ!この船の妖術師達は何処で何をしている?」
「妖術部隊なら今、術の祭壇のある部屋で各船に群がる亡霊共を弱らせる結界を張っている」
船員が口にしたのは、ミアにとって予想外のものだった。皆が戦っている中で、流石に何もしていない訳はないと思っていたが、まさか群がる亡霊達を弱体化させていたなどとは、思いもしなかった。
妖術師達の術による効果で、今亡霊と互角以上の戦いが出来ている状態なのだと分った。そんなこと、チン・シーの本船に乗っていた時には微塵も思っていなかった。
この状況で弱体化の術を解いて、果たして持ち堪えることが可能なのか。ミアは彼に頼もうとしていたことを伝えるべきか、言葉が喉から出るのを躊躇ってしまう。
だが、このままでは無数のように迫る不滅の海賊船に飲み込まれるのも時間の問題。後続の本船が到着するまでの間、亡霊だけでなくこの海賊船も止めなくてはならない。
その為にも現状を打開する行動が重要になるだろう。前線で戦う全ての船でなくていい。せめてミア自身の乗るこの船で、思惑が通用するかどうか試すしかない。
「妖術による攻撃か、敵船の航路を変えるような術はないか?このまま凌いでいても拉致があかない!」
「し・・・しかしッ!今術を解いてしまったら・・・」
彼の言うことも最もだ。もしかしたらこのまま凌いでいれば、本船が合流し反撃が出来るかもしれない。だがそれはあまりにも切迫した状況になるのは目に見えている。そんな状態の前線に合流したところで、果たしてロロネー海賊団を退けることは出来るのだろうか。
「他の船に援護を頼むんだ!亡霊はアタシが何とかする!」
「・・・亡霊に幻術は厳しいかもしれん。そもそも奴らは生き物ではない。別の方法で魔法を使える者がいる。その者の魔法の範囲を広げる事なら・・・。そうか!亡霊達が凍ったのなら或いは・・・」
もしもあの海賊船が、亡霊と同じ性質の物であるならば同じ手段が通用する筈。そしてそれは、ミアの属性弾が証明している。彼女の凍結弾は確かに、僅かではあるが船を凍らせていた。
それが広範囲で放てたのなら、船を破壊することも出来るかもしれない。ミアは彼に直ぐに準備に取り掛かってもらうよう伝える。狙撃の必要がなくなったミアはマストから降り、甲板で亡霊を迎え撃つ準備を始める。
ライフルをしまい、属性弾用の銃と通常の銃を用意すると、既に群がっている亡霊を次々に倒していく。ミアが甲板の亡霊を粗方始末した頃、妖術師達による弱体化の術が解けたのか、それまで簡単に倒せていた亡霊達の体力が上がり、属性弾を節約しながらの戦い方では処理しきれなくなる。
頭部を凍結弾で撃ち抜き、実弾で破壊しようとしても一撃では消えることがなくなった。それによりペース配分やパターン化された亡霊の倒し方が狂わされ、対処に手間取るようになってしまった。
他の船員達も、亡霊の近接攻撃が以前よりも上がり各所で被害が出始めている。近くの船による援護は、まだ時間が掛かるようだ。ここが正念場だろう。援護も弱体化の術もないこの場を、何とか凌ぎ切ることが出来れば戦況も少しは変わる。
しかし、ここで新たな問題が発生してしまう。ミアの通信機に、先程の船員から通信が入る。彼によると、魔法を当てるにはこの船を敵船に近づける必要があるのだと言う。
だがそれなら問題はないだろう。何せ相手は、海賊船を壊すことに何の躊躇いもない。今も尚群がる亡霊のように、あの海賊船も無数に作り出せるのだから。敵は向こうから突っ込んで来るから待っていればいい。通信機で船員にそう伝えると、再び彼女を困惑させる回答が返ってくる。
「それが・・・。敵船は一定の距離を保ったまま、こっちへ亡霊を送り込んで来るばかりで近づいて来ないんだ・・・。俺達が向こうに近づくのはリスクが高い。・・・やはりこちらから攻めるのは、得策じゃぁないぞ!」
「どういうことだ・・・?攻めて来ない・・・だと!?」
亡霊を退け海賊船に目をやるミア。するとそこには、船員の言っていた通り一定の距離で旋回し、距離を保ちながら遠距離による攻撃を仕掛けてくるという、中央の時とは違った行動を見せていた。
「何故攻めて来ない!?無尽蔵に作り出せるんじゃないのか・・・?」
ミアの予想は外れた。言われてみれば確かに、無限に海賊船を作り出せるのなら前線だけを攻めるのではなく、再び取り囲んでしまえばそれで済むことだ。なのにそれをしない。否、出来ない理由がロロネーにはあるのだった。
「チッ・・・!銃弾じゃぁ歯が立たない・・・」
小さな銃弾では、属性の効果が多少反映される程度の微々たる変化しかない。それでも全く効果が得られない訳ではなかった。何か別の手段、広範囲に渡る属性魔法でもあれば或いは手の打ちようもあるかもしれない。
「ッ!?そうだよッ、こいつらがいるじゃないか!」
ミアは、自身が身を預けている海賊団のことを思い出し、下にいる船員に声をかける。チン・シーやシュユー達のような主戦力となる者がいなくとも、彼らの船には多種多様な術を得意とするスペシャリスト達が乗り合わせている筈。
「おいッ!この船の妖術師達は何処で何をしている?」
「妖術部隊なら今、術の祭壇のある部屋で各船に群がる亡霊共を弱らせる結界を張っている」
船員が口にしたのは、ミアにとって予想外のものだった。皆が戦っている中で、流石に何もしていない訳はないと思っていたが、まさか群がる亡霊達を弱体化させていたなどとは、思いもしなかった。
妖術師達の術による効果で、今亡霊と互角以上の戦いが出来ている状態なのだと分った。そんなこと、チン・シーの本船に乗っていた時には微塵も思っていなかった。
この状況で弱体化の術を解いて、果たして持ち堪えることが可能なのか。ミアは彼に頼もうとしていたことを伝えるべきか、言葉が喉から出るのを躊躇ってしまう。
だが、このままでは無数のように迫る不滅の海賊船に飲み込まれるのも時間の問題。後続の本船が到着するまでの間、亡霊だけでなくこの海賊船も止めなくてはならない。
その為にも現状を打開する行動が重要になるだろう。前線で戦う全ての船でなくていい。せめてミア自身の乗るこの船で、思惑が通用するかどうか試すしかない。
「妖術による攻撃か、敵船の航路を変えるような術はないか?このまま凌いでいても拉致があかない!」
「し・・・しかしッ!今術を解いてしまったら・・・」
彼の言うことも最もだ。もしかしたらこのまま凌いでいれば、本船が合流し反撃が出来るかもしれない。だがそれはあまりにも切迫した状況になるのは目に見えている。そんな状態の前線に合流したところで、果たしてロロネー海賊団を退けることは出来るのだろうか。
「他の船に援護を頼むんだ!亡霊はアタシが何とかする!」
「・・・亡霊に幻術は厳しいかもしれん。そもそも奴らは生き物ではない。別の方法で魔法を使える者がいる。その者の魔法の範囲を広げる事なら・・・。そうか!亡霊達が凍ったのなら或いは・・・」
もしもあの海賊船が、亡霊と同じ性質の物であるならば同じ手段が通用する筈。そしてそれは、ミアの属性弾が証明している。彼女の凍結弾は確かに、僅かではあるが船を凍らせていた。
それが広範囲で放てたのなら、船を破壊することも出来るかもしれない。ミアは彼に直ぐに準備に取り掛かってもらうよう伝える。狙撃の必要がなくなったミアはマストから降り、甲板で亡霊を迎え撃つ準備を始める。
ライフルをしまい、属性弾用の銃と通常の銃を用意すると、既に群がっている亡霊を次々に倒していく。ミアが甲板の亡霊を粗方始末した頃、妖術師達による弱体化の術が解けたのか、それまで簡単に倒せていた亡霊達の体力が上がり、属性弾を節約しながらの戦い方では処理しきれなくなる。
頭部を凍結弾で撃ち抜き、実弾で破壊しようとしても一撃では消えることがなくなった。それによりペース配分やパターン化された亡霊の倒し方が狂わされ、対処に手間取るようになってしまった。
他の船員達も、亡霊の近接攻撃が以前よりも上がり各所で被害が出始めている。近くの船による援護は、まだ時間が掛かるようだ。ここが正念場だろう。援護も弱体化の術もないこの場を、何とか凌ぎ切ることが出来れば戦況も少しは変わる。
しかし、ここで新たな問題が発生してしまう。ミアの通信機に、先程の船員から通信が入る。彼によると、魔法を当てるにはこの船を敵船に近づける必要があるのだと言う。
だがそれなら問題はないだろう。何せ相手は、海賊船を壊すことに何の躊躇いもない。今も尚群がる亡霊のように、あの海賊船も無数に作り出せるのだから。敵は向こうから突っ込んで来るから待っていればいい。通信機で船員にそう伝えると、再び彼女を困惑させる回答が返ってくる。
「それが・・・。敵船は一定の距離を保ったまま、こっちへ亡霊を送り込んで来るばかりで近づいて来ないんだ・・・。俺達が向こうに近づくのはリスクが高い。・・・やはりこちらから攻めるのは、得策じゃぁないぞ!」
「どういうことだ・・・?攻めて来ない・・・だと!?」
亡霊を退け海賊船に目をやるミア。するとそこには、船員の言っていた通り一定の距離で旋回し、距離を保ちながら遠距離による攻撃を仕掛けてくるという、中央の時とは違った行動を見せていた。
「何故攻めて来ない!?無尽蔵に作り出せるんじゃないのか・・・?」
ミアの予想は外れた。言われてみれば確かに、無限に海賊船を作り出せるのなら前線だけを攻めるのではなく、再び取り囲んでしまえばそれで済むことだ。なのにそれをしない。否、出来ない理由がロロネーにはあるのだった。
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