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決戦に向けた戦力増強
しおりを挟む 彼らを乗せた船が濃霧の中を進んでいるのと並行して、ミアの乗るチン・シー海賊団の本隊も、後退の際に逸れた仲間の船を集めながら、ロロネーの本隊を探していた。
こちらはシン達の船とは違い、チン・シー本人の能力によりある程度情報を得て、自軍の場所を探し出せるのだと言う。彼女のリンクの能力は、繋がる回数や相手側の忠誠心によって大まかな居場所を突き止めたり、引き付けることが出来るそうだ。
自軍の部下達を探すのであれば、これ以上条件の揃った相手はいないだろう。水の怪異の少年メデューズと戦っていたシュユーを連れ戻し、船長室へと呼び戻した彼女は、まだ傷の治りきっていない彼に次なる指示を出す。
「シュユーよ、妾は逸れた部隊の捜索をする。準備に入るまでの間に妖術の術式を再稼働させよ。リンクが成ったら暫く戻ることはできん・・・。本隊の指揮や後のことは任せたぞ」
「お任せください」
すると彼女は、船長室にある豪華な椅子の背後、更に奥の部屋へと向かい姿を消した。戦闘時とは違い、また別の準備が必要になるのだろう。それに妖術部隊と言っていたことから、恐らく彼女一人の能力では捜索できる範囲に限界があるに違いない。
確かに使いこなせば強力なスキルだが、そのリスクや手間を考えれば相応のものなのかも知れない。
指示を受けたシュユーは、未だふらつく足に鞭を打ち、彼女の言う妖術の準備へと向かう。船長室にいる精鋭部隊には引き続き主人の警護と見張りを言い渡し、すぐに治療部隊を向わせると伝え、彼らにも万全の準備をさせる。
「私はどうする?アンタらの主人様のおかげで、こっちは大したダメージもない。何か役に立てることがあれば手伝うが・・・?」
船長室でメデューズと戦っていたミアは、チン・シーの策により仕方がなかったとはいえ囮になり、最も近いところまで接近し戦った。だがそれも、チン・シーの能力と策のおかげで無傷でこと無きを得ることが出来た。
精鋭達の負傷に比べれば、体力的には万全の状態といえる。このまま客人として何もせず船に乗せてもらうのも悪いと、ミアは今の総督であるシュユーに、自分に出来ることはないかと指示を仰ぐ。
「すみません、助かります。貴方にはこの船の上層部・・・できればマストに登ってもらい、周囲への警戒と不測の事態には援護をお願いしたい。その銃の腕前が、今の我々には必要なのです」
「わかった、上層部かマストだな?後のことは他の船員に聞く。アンタは仕事に戻ってくれ」
そう言ってその場を立ち去ろうとするミアに、彼は会釈をし治療を受けているフーファン達の元へと急行する。その間にすれ違う者達へ次々に手際良く指示を出していくシュユー。
やはり彼の言うように、シュユーは戦闘よりもサポートや秘書としての仕事の方が向いている。フーファンは然程重大な怪我やダメージを負っておらず、彼女の妖術に匿わられ妖術部隊の方も大事には至っていない様子だった。
そのおかげもあり、チン・シーのリンクを強化する妖術の術式の構築も手早く済んだ。すぐに準備を済ませると、シュユーはチン・シーへ報告を入れに戻る。再び船長室に戻って来た彼は奥の扉をノックし、準備が完了したことを彼女に伝える。
「ご苦労だった、シュユー。これよりリンクによる捜索に入る。操舵室に繋げ、後は妾が直接伝える。・・・では任せたぞ、シュユー」
そこで彼女との会話は途切れたようで、シュユーは船長室に篭り手の空いている者を使い、船に積んである武器や防具を持ってこさせると、戦いに備えエンチャント作業を行い始めた。
大きな海賊船を上へ上へと向かって上がるミアは、一番高いマスト付近までやってくると、側にいた船員に登り方を教えてもらい、ライフルに取り付けられたスコープで周囲の警戒へと入った。
それから船はゆっくりと航路を変えながら、濃霧の中で行き場を見失っている自軍の船と次々に合流していく。
シュユーによる武装の強化と、部隊の合流による人数の増強。着実にロロネーと決戦に向けて、力を取り戻していくチン・シー海賊団。その反対に、ハオランを手に入れたロロネーは、使役していたモンスターであるメデューズとクトゥルプスを失い、よもやこのような事態になっているとは知る由もなかった。
こちらはシン達の船とは違い、チン・シー本人の能力によりある程度情報を得て、自軍の場所を探し出せるのだと言う。彼女のリンクの能力は、繋がる回数や相手側の忠誠心によって大まかな居場所を突き止めたり、引き付けることが出来るそうだ。
自軍の部下達を探すのであれば、これ以上条件の揃った相手はいないだろう。水の怪異の少年メデューズと戦っていたシュユーを連れ戻し、船長室へと呼び戻した彼女は、まだ傷の治りきっていない彼に次なる指示を出す。
「シュユーよ、妾は逸れた部隊の捜索をする。準備に入るまでの間に妖術の術式を再稼働させよ。リンクが成ったら暫く戻ることはできん・・・。本隊の指揮や後のことは任せたぞ」
「お任せください」
すると彼女は、船長室にある豪華な椅子の背後、更に奥の部屋へと向かい姿を消した。戦闘時とは違い、また別の準備が必要になるのだろう。それに妖術部隊と言っていたことから、恐らく彼女一人の能力では捜索できる範囲に限界があるに違いない。
確かに使いこなせば強力なスキルだが、そのリスクや手間を考えれば相応のものなのかも知れない。
指示を受けたシュユーは、未だふらつく足に鞭を打ち、彼女の言う妖術の準備へと向かう。船長室にいる精鋭部隊には引き続き主人の警護と見張りを言い渡し、すぐに治療部隊を向わせると伝え、彼らにも万全の準備をさせる。
「私はどうする?アンタらの主人様のおかげで、こっちは大したダメージもない。何か役に立てることがあれば手伝うが・・・?」
船長室でメデューズと戦っていたミアは、チン・シーの策により仕方がなかったとはいえ囮になり、最も近いところまで接近し戦った。だがそれも、チン・シーの能力と策のおかげで無傷でこと無きを得ることが出来た。
精鋭達の負傷に比べれば、体力的には万全の状態といえる。このまま客人として何もせず船に乗せてもらうのも悪いと、ミアは今の総督であるシュユーに、自分に出来ることはないかと指示を仰ぐ。
「すみません、助かります。貴方にはこの船の上層部・・・できればマストに登ってもらい、周囲への警戒と不測の事態には援護をお願いしたい。その銃の腕前が、今の我々には必要なのです」
「わかった、上層部かマストだな?後のことは他の船員に聞く。アンタは仕事に戻ってくれ」
そう言ってその場を立ち去ろうとするミアに、彼は会釈をし治療を受けているフーファン達の元へと急行する。その間にすれ違う者達へ次々に手際良く指示を出していくシュユー。
やはり彼の言うように、シュユーは戦闘よりもサポートや秘書としての仕事の方が向いている。フーファンは然程重大な怪我やダメージを負っておらず、彼女の妖術に匿わられ妖術部隊の方も大事には至っていない様子だった。
そのおかげもあり、チン・シーのリンクを強化する妖術の術式の構築も手早く済んだ。すぐに準備を済ませると、シュユーはチン・シーへ報告を入れに戻る。再び船長室に戻って来た彼は奥の扉をノックし、準備が完了したことを彼女に伝える。
「ご苦労だった、シュユー。これよりリンクによる捜索に入る。操舵室に繋げ、後は妾が直接伝える。・・・では任せたぞ、シュユー」
そこで彼女との会話は途切れたようで、シュユーは船長室に篭り手の空いている者を使い、船に積んである武器や防具を持ってこさせると、戦いに備えエンチャント作業を行い始めた。
大きな海賊船を上へ上へと向かって上がるミアは、一番高いマスト付近までやってくると、側にいた船員に登り方を教えてもらい、ライフルに取り付けられたスコープで周囲の警戒へと入った。
それから船はゆっくりと航路を変えながら、濃霧の中で行き場を見失っている自軍の船と次々に合流していく。
シュユーによる武装の強化と、部隊の合流による人数の増強。着実にロロネーと決戦に向けて、力を取り戻していくチン・シー海賊団。その反対に、ハオランを手に入れたロロネーは、使役していたモンスターであるメデューズとクトゥルプスを失い、よもやこのような事態になっているとは知る由もなかった。
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