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童と女王
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シュユーがメデューズと対峙している頃、船内のあちらこちらで騒ぎが起こっていた。そしてそれは、ミアやチン・シーのいる船長室にも訪れようとしていた。
「船内の各所にて敵襲を確認!船底の倉庫、食堂、動力室、甲板にて敵対勢力による攻撃を受けています!」
フーファンや術者達の結界が破られ、メデューズの分身体による外部からの襲撃が開始されていた。ロロネーの差し向けて来た海賊の亡霊同様、物理的な攻撃に耐性があり、こちらの攻撃手段は限られてしまう。
以前のようにチン・シーのリンクを使った、シュユーの属性攻撃を船員達に共有させる戦法は使えない。そもそも術者達による妖術の範囲拡大が発動出来ない事に加え、シュユーはフーファンのいる部屋向かってしまい、リンクさせることが出来ないのが要因である。
シュユーがチン・シーの元を離れることで、攻守共に戦力を削がれてしまっていたのだ。そうまでして、シュユーの願いを聞き入れたチン・シー。ミアは彼女に、思いやりのある良き主人といった印象を受けたが、同時にこの戦況をどう切り抜けるのか気になっていた。
船長室への襲撃に備え、ミアから聞いたメデューズ攻略の為の準備を船員達にさせたものの、この作戦だけでは奴を倒すには至らないのではないか。確かにこれだけの数がいればダメージは稼げるが、やはり決定打に欠ける。
人の多さがそのまま心に安心感を与えるが、余裕が生まれるほどの余地はない。気持ちは落ち着いているのだが、ポッカリと心に穴が空いているような、未知のスペースがある。
優勝候補と謳われる海賊団の実力を侮っている訳ではないが、メデューズの実力も実際に戦ったミアが一番よく知っている。今度はあの時のように逃げ腰の戦いではない、攻めの姿勢を持とうと、銃のメンテナンスが必要以上に多くなる。
「そうか・・・。我らが要を早々に落とし、攻めの勢いを炎のように全体へ広げたか。して、各部隊の戦況はどうなっている?」
チン・シーの問いに、報告を持ってきた船員は続けて襲撃を受けている箇所で戦う者達の戦況を報告する。戦闘は何処も均衡しているようで、シュユーの作ったエンチャント武器による功績が非常に大きいらしい。
属性の効果が乗せられたエンチャント武器であれば、物理攻撃の通らぬ相手であろうと、属性値分のダメージは与えられる。水の身体をしたメデューズであれば、恐らく氷や雷の属性を使っているに違いない。
だが心配なのは、海賊の亡霊と戦う際にも、氷属性のエンチャント武器を用いていたということだ。彼らの船にどれだけのエンチャント武器が貯蔵されているのかは分からないが、前もって準備でもしていない限り、氷や雷属性ばかりエンチャントして保管する偏ったことなど普通しないだろう。
海賊の亡霊に雷属性はあまり有効でなかった為、雷属性のストックはあるだろうが、氷属性はすぐに底をつくに違いない。なんなら、とうの昔に尽きているかもしれない。つまり長く持ち堪えることは不可能。早急に本体を見つけ出し、始末しなければこの船は壊滅することになる。
部下達が何とか持ち堪えていることを知ると、チン・シーは彼らの奮闘を称えた後に、船長室から一番近い場所で襲撃を受けているのは何処かと尋ねる。報告をしに来た者が、船の船内マップを広げようとしたその時、船長室の扉を吹き飛ばされ水飛沫が飛び散る。
「わざわざご足労いただかなくても結構ですよ。直にこの船は沈みます。その前に船長の顔でも伺っておこうと、この通り馳せ参じました」
扉の無くなった通路から姿を現したのは、他でもない襲撃の主犯であるメデューズ本人だった。液体の特性を活かした不意打ちもせず、堂々と正面から殴り込んで来たということは、それだけ勝利への自信があることの表れだろう。
「ふん、童の姿をして可愛げのない奴よ・・・。だが、出向く手間が省けたわ。皆の者ッ!手筈通りに歓迎してやれ。それと、ミアとやら・・・貴殿にも手を貸して貰いたいのだが・・・?」
メデューズの襲撃を、全く動じることなく迎え撃ち、指示されていた通りの号令を部下に下したチン・シーが、対峙した経験を持つミアに協力を仰ぐ。迎撃の準備の中には、ミアの為のアイテムや道具もあり、無償で分けてもらった恩がある彼女は、その分の働きはキッチリこなすと言い、前へと出る。
「無論、受けた恩は武功でお返ししますよ・・・。それに、コイツには借りがある。それもしっかり返したいと思ってたところなんでね・・・」
銃のトリガー部分に指をかけ、器用にくるくると回すと、銃口をメデューズに向け戦闘態勢に入る。対して、メデューズの周囲には絶えず湧き水のように水が湧き出ていて、触手のような柱を数本立てている。
「船内の各所にて敵襲を確認!船底の倉庫、食堂、動力室、甲板にて敵対勢力による攻撃を受けています!」
フーファンや術者達の結界が破られ、メデューズの分身体による外部からの襲撃が開始されていた。ロロネーの差し向けて来た海賊の亡霊同様、物理的な攻撃に耐性があり、こちらの攻撃手段は限られてしまう。
以前のようにチン・シーのリンクを使った、シュユーの属性攻撃を船員達に共有させる戦法は使えない。そもそも術者達による妖術の範囲拡大が発動出来ない事に加え、シュユーはフーファンのいる部屋向かってしまい、リンクさせることが出来ないのが要因である。
シュユーがチン・シーの元を離れることで、攻守共に戦力を削がれてしまっていたのだ。そうまでして、シュユーの願いを聞き入れたチン・シー。ミアは彼女に、思いやりのある良き主人といった印象を受けたが、同時にこの戦況をどう切り抜けるのか気になっていた。
船長室への襲撃に備え、ミアから聞いたメデューズ攻略の為の準備を船員達にさせたものの、この作戦だけでは奴を倒すには至らないのではないか。確かにこれだけの数がいればダメージは稼げるが、やはり決定打に欠ける。
人の多さがそのまま心に安心感を与えるが、余裕が生まれるほどの余地はない。気持ちは落ち着いているのだが、ポッカリと心に穴が空いているような、未知のスペースがある。
優勝候補と謳われる海賊団の実力を侮っている訳ではないが、メデューズの実力も実際に戦ったミアが一番よく知っている。今度はあの時のように逃げ腰の戦いではない、攻めの姿勢を持とうと、銃のメンテナンスが必要以上に多くなる。
「そうか・・・。我らが要を早々に落とし、攻めの勢いを炎のように全体へ広げたか。して、各部隊の戦況はどうなっている?」
チン・シーの問いに、報告を持ってきた船員は続けて襲撃を受けている箇所で戦う者達の戦況を報告する。戦闘は何処も均衡しているようで、シュユーの作ったエンチャント武器による功績が非常に大きいらしい。
属性の効果が乗せられたエンチャント武器であれば、物理攻撃の通らぬ相手であろうと、属性値分のダメージは与えられる。水の身体をしたメデューズであれば、恐らく氷や雷の属性を使っているに違いない。
だが心配なのは、海賊の亡霊と戦う際にも、氷属性のエンチャント武器を用いていたということだ。彼らの船にどれだけのエンチャント武器が貯蔵されているのかは分からないが、前もって準備でもしていない限り、氷や雷属性ばかりエンチャントして保管する偏ったことなど普通しないだろう。
海賊の亡霊に雷属性はあまり有効でなかった為、雷属性のストックはあるだろうが、氷属性はすぐに底をつくに違いない。なんなら、とうの昔に尽きているかもしれない。つまり長く持ち堪えることは不可能。早急に本体を見つけ出し、始末しなければこの船は壊滅することになる。
部下達が何とか持ち堪えていることを知ると、チン・シーは彼らの奮闘を称えた後に、船長室から一番近い場所で襲撃を受けているのは何処かと尋ねる。報告をしに来た者が、船の船内マップを広げようとしたその時、船長室の扉を吹き飛ばされ水飛沫が飛び散る。
「わざわざご足労いただかなくても結構ですよ。直にこの船は沈みます。その前に船長の顔でも伺っておこうと、この通り馳せ参じました」
扉の無くなった通路から姿を現したのは、他でもない襲撃の主犯であるメデューズ本人だった。液体の特性を活かした不意打ちもせず、堂々と正面から殴り込んで来たということは、それだけ勝利への自信があることの表れだろう。
「ふん、童の姿をして可愛げのない奴よ・・・。だが、出向く手間が省けたわ。皆の者ッ!手筈通りに歓迎してやれ。それと、ミアとやら・・・貴殿にも手を貸して貰いたいのだが・・・?」
メデューズの襲撃を、全く動じることなく迎え撃ち、指示されていた通りの号令を部下に下したチン・シーが、対峙した経験を持つミアに協力を仰ぐ。迎撃の準備の中には、ミアの為のアイテムや道具もあり、無償で分けてもらった恩がある彼女は、その分の働きはキッチリこなすと言い、前へと出る。
「無論、受けた恩は武功でお返ししますよ・・・。それに、コイツには借りがある。それもしっかり返したいと思ってたところなんでね・・・」
銃のトリガー部分に指をかけ、器用にくるくると回すと、銃口をメデューズに向け戦闘態勢に入る。対して、メデューズの周囲には絶えず湧き水のように水が湧き出ていて、触手のような柱を数本立てている。
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