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神代 コウ

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招かれざる客

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 彼女の挙げた声に導かれ、船内の持ち場へ戻ろうとしていた船員達が、その言葉の意味について問う。“攻撃は既に始まっている”とは、一体どういう意味なのか。友軍に注意喚起を促すつもりであったが、かえって混乱を招く形になってしまっただろうか。

 「攻撃・・・?既に始まっているとは?一体、アンタには何が見えているんだ?客人」

 「攻撃とは比喩だ、実際に攻撃を受けている訳じゃない。ただ・・・この船が敵の術中にあると見て、先ず間違いないだろう。何処から攻めて来るか分からない。既に中へ入られているかもしれない・・・」

 重い空気が船上を覆い尽くす。互いの顔を見て、それが本物の人間であるか確かめるように表情を確認する船員達。しかし、そんなものなど確かめるまでもなく、彼らは自分自身と同じ表情を向ける味方に、外からの攻撃がどんな形でやって来るのか予想だにしていない様子だった。

 「どんな小さな違和感でも構わない。見つけたら必ず他の者と共有し、二人以上で行動するんだ」

 ミアの言葉に、即席で側にいる者達でチームを結成し、それまで通り各々のやる事や持ち場へと動き出した。ミアとツクヨは客人ということと、ツバキという負傷した仲間を抱えている為、彼の手当てを行ってくれている船員達のチームに合流することになった。

 「ミア・・・、この状況を打開できるのは私達しかいない・・・」

 二人はツバキのいる救護室に戻って来た。そしてそこでダメージを負って動けなくなった者や、瀕死の重傷を負った者達の治療にあたるチームと合流し、何か手伝える訳でもなく大人しくしていた。

 すると、ツクヨがミアに小声で話しかける。現在船は、通信が遮断される前に指示のあった航路を辿り移動を開始。船内や甲板を絶えず複数人のチームが巡回し、ロロネーの差し向ける策に備えていた。それぞれが役割を持ち、その持ち場を離れられない中でツクヨはある提案を持ち出した。

 「彼らは自軍の攻撃によって混乱を招いた。きっと警戒心が強くなっているだろう・・・。それなら客人である私達の方が、動き回れると思わないか?」

 確かに今の現状では、彼らは自軍の者に警戒心を高めていることだろう。それなら客人として招かれたミア達の方が動き易いのは事実。しかし、この異変を収束させない限りは、彼らの船に戻ることも難しくなるかも知れない。

 「しかし一度彼らの船を離れてしまえば、再度乗せてもらえる保証もないんじゃないか?」

 「そこは問題の解決をするか、若しくは・・・シュユーやフーファンの乗っている船を探すしかないかも・・・?」

 どうやらツクヨもそこまでは考えていなかったようで、誤魔化すように苦笑いの表情をして見せた。ミアは大きなため息をついて返すも、実際ツクヨの作戦に乗るしか相手の意表を突くことは出来ない。

 このままでは後手に回ってしまい、ロロネーの掌の上で踊らされるだけだろう。そして二人の強みはそれだけではない。敵にとってミアとツクヨの存在は、招かれざる客。対策など出来るはずも無いというアドバンテージを持っている。

 それをチン・シーが知れば、二人を使いたくなることだろう。ツバキの船に積んであるボードを使えば小回りも効きやすく、何より目立つ。あれだけ特殊な乗り物が走っていれば、どの船に乗っているかも分からぬシュユーやフーファンに、見つけてもらい易くもなるだろう。

 「分かった、アンタの策に乗るよ。でも行くのはアタシ一人だ。いいね?」

 「ごめん・・・ミアに行かせようと思って提案した訳じゃなかったんだ。・・・危険な目に遭うだろう・・・。呉々も無茶はしないでくれ・・・」

 申し訳なさそうに謝るツクヨに、ミアは穏やかな表情で首を横に振る。折角ロロネーの予期せぬ動きを取れる人材を、まとめて動かしてしまうのは勿体無い。どうにかチン・シーとの協力にこぎつけ、援護を得られれば活路も見出せるというものだ。

 話がまとまり、ツクヨはツバキと共にこの船に残り、ミアはチン・シー或いはシュユーやフーファンといった、こちらを知る人物とのパイプを繋ぐ役。そしてこの濃霧で起きている異変の調査、並びに解決へと起き出す。
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