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戦術教授
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弾倉に自身の錬金術で作った属性弾を込める。既に彼らの戦いから物理攻撃が通用しないことは確認済みだった為、敵にこちらの存在を気取られる前に先手を撃てる状況にあるミア。
「もう少し・・・もう少しだけ持ち堪えてくれッ・・・』
海上の限られた足場の中で、戦闘中に弾薬を生成することは難しい。その為、その身を晒す前に出来るだけ準備を整えておきたい。せめて自身の乗る船のクリアリングが完了出来る弾数を確保しておきたいところ。
チン・シー海賊団の船員達が時間を稼ぐ中、船内にある物資を使い、次々に弾を精製していく。シュユーのエンチャントは火属性のものが殆どで、剣で亡霊を斬りつければ擦り抜けた箇所が発火し、ダメージを与えるといった効果が見て取れた。
他にも魔法を使えるクラスの船員達による属性攻撃の結果、雷属性と水属性は亡霊に対しあまり有効的でないことが分かった。確かにダメージ自体は与えられるものの、雷属性は暫くの間亡霊の裂傷箇所に帯電してしまい、連携を繋げ辛くなってしまい、水属性は他の属性よりもややダメージ量が少ないのと共に、亡霊の動きを鈍くする程度に止まった。
その中でミアが目をつけたのが、氷属性の魔法だ。亡霊への直接的なダメージこそ、水属性と変わらないものの、命中箇所を僅かな間凍結させることが可能。そして他属性よりも彼女の目を引いたのが、凍結している間であれば物理的な攻撃で損傷を負わせることが出来るというところだった。
つまり、氷属性を当てればエンチャント切れを起こした者達であっても、戦う手段を得られるということだ。ただ、凍結している時間というのが、肉体を持つ生命体への凍結と違い、極端に短いのが欠点だった。
それこそ、息の合った連携を行えなければ、凍結した部位へ丁度攻撃を当てるのは難しいだろう。しかし、ミアに彼らと即興で連携を組めるほどの信頼関係や技術はないため、彼女の意思を彼らに伝えるのは困難だろう。
それでもミアは、錬金術の四元素の水と風を上手く使い、亡霊を凍結させる氷属性の弾を中心に精製し、甲板と同じ階層まで上がると、船内から船員達と交戦中の亡霊を狙う。
「意図が伝わればそれでいい・・・。アタシよりも彼らの方が連携は取り易いだろう。ただ攻略法を見せられれば、それだけで・・・」
ミアは、片手に属性弾を撃ち出す為のリボルバーを、もう片方の手には単純な弾の威力を増強したマグナム弾を込めた銃をそれぞれ持ち、外で戦っている亡霊の隙を窺う。
エンチャントの切れた船員が距離を取るのを見ると、空かさずミアは氷属性の弾を撃ち込んだ。弾は船員へ追い討ちを掛けようとした亡霊の肩に命中し、その部位周辺を凍結させた。
着弾を確認するよりも前に、亡霊の動きを先読みして撃っていたマグナム弾が、彼女の狙い通り凍結した肩目掛けて飛んで行く。回転しながら飛んで行くマグナム弾が氷に命中すると、その衝撃で凍った部位を派手に粉砕させる。
すると亡霊の腕は肩から吹き飛び、霧状の煙となって消えていった。大きな奇声を上げる亡霊からは、その威力とダメージが伺える。
「属性弾ッ・・・!?」
「シュユー殿が連れていた客人の方だ。確かガンスリンガーだと聞いている」
「凍った箇所に銃弾がめいちゅうしたぞ・・・。なるほど、そういう事か・・・」
ミアの意図が船員達に伝わったようで、その一部始終を目撃していた一部隊は、魔法職のクラスの者が氷属性の攻撃に絞り、近接組が凍結した部位を目掛けて攻撃するようになった。
初めこそうまくいかなかったものの、徐々に息の合った連携を織り成し、見事海賊姿の亡霊を討ち倒してみせた。彼らは他の部隊へ援軍に向かうのと同時に、ミアのやって見せた攻撃を広める為、各々散らばっていった。
「よしッ・・・!この調子で、先ずはこの船に乗り込んだ奴らを一掃するぞッ」
場所を変えたミアは、再び船内の窓から先ほどと同じ手段で亡霊を撃ち抜き、有効な戦法を彼らの内へ広めていった。瞬く間にミアの乗っている船のクリアリングが完了し、彼女は船員の者にチン・シーへこの戦果を報告するよう伝える。
「・・・なるほど、よい戦果だ。他の者達へも伝えよう。シュユー、お前の連れて来た客人は良い働きをしてくれたようだぞ」
「どうやらそのようで。如何か彼らに手厚い慈悲を・・・」
シュユーはミア達の連れて来た怪我人のことを思い出し、彼を治療する許可を得ようと試みてくれた。すると彼女は口角を上げながら鼻で笑うと、チン・シー海賊団というもののあり方を、改めて彼に述べる。
「我々は、やられた事は徹底的にやり返し、受けた恩には必ず報いる。・・・かの者は我々に戦術を教授した。相応の恩義にて応えるのが、妾のやり方ぞ」
彼女の言葉に、ホッとした安堵の表情と、期待通りの返答をしてくれた主人への感謝に、緩む顔を伏せるように深々と頭を下げるシュユー。ミアの知らないところで、既にツバキの治療は約束されるものとなっていたのだった。
だがそれも、この戦闘を無事に乗り越え、チン・シー海賊団を勝利に導けばの話。未だ戦場に姿を見せていないロロネーが、そう簡単にやられるものとは到底思えない。
「もう少し・・・もう少しだけ持ち堪えてくれッ・・・』
海上の限られた足場の中で、戦闘中に弾薬を生成することは難しい。その為、その身を晒す前に出来るだけ準備を整えておきたい。せめて自身の乗る船のクリアリングが完了出来る弾数を確保しておきたいところ。
チン・シー海賊団の船員達が時間を稼ぐ中、船内にある物資を使い、次々に弾を精製していく。シュユーのエンチャントは火属性のものが殆どで、剣で亡霊を斬りつければ擦り抜けた箇所が発火し、ダメージを与えるといった効果が見て取れた。
他にも魔法を使えるクラスの船員達による属性攻撃の結果、雷属性と水属性は亡霊に対しあまり有効的でないことが分かった。確かにダメージ自体は与えられるものの、雷属性は暫くの間亡霊の裂傷箇所に帯電してしまい、連携を繋げ辛くなってしまい、水属性は他の属性よりもややダメージ量が少ないのと共に、亡霊の動きを鈍くする程度に止まった。
その中でミアが目をつけたのが、氷属性の魔法だ。亡霊への直接的なダメージこそ、水属性と変わらないものの、命中箇所を僅かな間凍結させることが可能。そして他属性よりも彼女の目を引いたのが、凍結している間であれば物理的な攻撃で損傷を負わせることが出来るというところだった。
つまり、氷属性を当てればエンチャント切れを起こした者達であっても、戦う手段を得られるということだ。ただ、凍結している時間というのが、肉体を持つ生命体への凍結と違い、極端に短いのが欠点だった。
それこそ、息の合った連携を行えなければ、凍結した部位へ丁度攻撃を当てるのは難しいだろう。しかし、ミアに彼らと即興で連携を組めるほどの信頼関係や技術はないため、彼女の意思を彼らに伝えるのは困難だろう。
それでもミアは、錬金術の四元素の水と風を上手く使い、亡霊を凍結させる氷属性の弾を中心に精製し、甲板と同じ階層まで上がると、船内から船員達と交戦中の亡霊を狙う。
「意図が伝わればそれでいい・・・。アタシよりも彼らの方が連携は取り易いだろう。ただ攻略法を見せられれば、それだけで・・・」
ミアは、片手に属性弾を撃ち出す為のリボルバーを、もう片方の手には単純な弾の威力を増強したマグナム弾を込めた銃をそれぞれ持ち、外で戦っている亡霊の隙を窺う。
エンチャントの切れた船員が距離を取るのを見ると、空かさずミアは氷属性の弾を撃ち込んだ。弾は船員へ追い討ちを掛けようとした亡霊の肩に命中し、その部位周辺を凍結させた。
着弾を確認するよりも前に、亡霊の動きを先読みして撃っていたマグナム弾が、彼女の狙い通り凍結した肩目掛けて飛んで行く。回転しながら飛んで行くマグナム弾が氷に命中すると、その衝撃で凍った部位を派手に粉砕させる。
すると亡霊の腕は肩から吹き飛び、霧状の煙となって消えていった。大きな奇声を上げる亡霊からは、その威力とダメージが伺える。
「属性弾ッ・・・!?」
「シュユー殿が連れていた客人の方だ。確かガンスリンガーだと聞いている」
「凍った箇所に銃弾がめいちゅうしたぞ・・・。なるほど、そういう事か・・・」
ミアの意図が船員達に伝わったようで、その一部始終を目撃していた一部隊は、魔法職のクラスの者が氷属性の攻撃に絞り、近接組が凍結した部位を目掛けて攻撃するようになった。
初めこそうまくいかなかったものの、徐々に息の合った連携を織り成し、見事海賊姿の亡霊を討ち倒してみせた。彼らは他の部隊へ援軍に向かうのと同時に、ミアのやって見せた攻撃を広める為、各々散らばっていった。
「よしッ・・・!この調子で、先ずはこの船に乗り込んだ奴らを一掃するぞッ」
場所を変えたミアは、再び船内の窓から先ほどと同じ手段で亡霊を撃ち抜き、有効な戦法を彼らの内へ広めていった。瞬く間にミアの乗っている船のクリアリングが完了し、彼女は船員の者にチン・シーへこの戦果を報告するよう伝える。
「・・・なるほど、よい戦果だ。他の者達へも伝えよう。シュユー、お前の連れて来た客人は良い働きをしてくれたようだぞ」
「どうやらそのようで。如何か彼らに手厚い慈悲を・・・」
シュユーはミア達の連れて来た怪我人のことを思い出し、彼を治療する許可を得ようと試みてくれた。すると彼女は口角を上げながら鼻で笑うと、チン・シー海賊団というもののあり方を、改めて彼に述べる。
「我々は、やられた事は徹底的にやり返し、受けた恩には必ず報いる。・・・かの者は我々に戦術を教授した。相応の恩義にて応えるのが、妾のやり方ぞ」
彼女の言葉に、ホッとした安堵の表情と、期待通りの返答をしてくれた主人への感謝に、緩む顔を伏せるように深々と頭を下げるシュユー。ミアの知らないところで、既にツバキの治療は約束されるものとなっていたのだった。
だがそれも、この戦闘を無事に乗り越え、チン・シー海賊団を勝利に導けばの話。未だ戦場に姿を見せていないロロネーが、そう簡単にやられるものとは到底思えない。
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