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音の鳴る方へ
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どうやらハオランへ向けた連絡というのが、その濃霧周辺から入ったものだというのが、彼のボードに取り付けられていた機器から知ることが出来た。
「お・・・おい、あの中からなのか?」
「・・・はい」
中がどうなっているのか見えない程濃い霧が立ち込める前方の海上。例えこの中から本当に無線が飛んで来たのだとしても、発信源を見つけることは困難であると素人目にも明らかだ。
するとハオランは、ツバキから貰い受けた自身のボードを手にすると、甲板の方へ向かおうとした。何処へ行くのかとミアが尋ねると、彼は一人で濃霧の中へ向かうと言い出したのだ。
「ここまで連れて来て頂いただけで十分です。お二人を危険な目に合わせてしまっては、シンさんに合わせる顔がありません・・・。ここからは私一人で・・・」
ミアとツクヨを置いて、濃霧の中へ向かおうとするハオランを止めたのはミアだった。彼をこのまま一人で向かわせる訳にはいかない。それではミア達の当初の目的を果たせないからだ。
それにシンは、自分の身が危険に晒されると分かっていながらグレイスの救援へ向かったのだ。自分達だけが安全なところで、事が運んで行くのをただ見ている傍観者であることを彼女は望まないし、もしそうなればきっと後悔する。
「待て。ここまで連れて来させておいて、そりゃぁねぇだろ。アタシらにも協力させてくれ・・・」
送ってくれただけでなく協力までしてくれると言い出した二人に、ハオランは二人の顔を順番に見て強く頷くのを目にすると、深い感謝をした。
とはいえ、無闇に突入するのも危険であるため、ミアが錬金術による風属性の弾丸を使い、やや斜めに濃霧へ入射するよう射撃を試みる。煙や普通の霧程度であるのならそれで十分だと、弾倉に弾を込めて銃口を構えるミア。
「風よ、道を遮る暗雲を打ち払えッ!」
突然詠唱を始めるミアに、ツクヨは内心驚いた。彼女が属性弾を撃つのを見たことのなかったツクヨは、こんな恥ずかしい台詞を言わねばならないのかと思ったが、決してそれを口にすることはなかった。
彼女の銃口から放たれた弾丸は、勢い良く濃霧の中へ入っていくと、進入した際は地味であったものの、暫くして大きな爆発音がすると周囲の霧を回転させる程の風が巻き起こり、濃霧の中に台風の目のような半球状のドームが展開されていた。
「おぉ!霧が晴れている!これで濃霧を削っていけば或いは・・・」
希望に溢れる瞳をするツクヨだったが、風は永続ではなく時間で解除され、再び風によって晴れた場所に霧が吸い込まれるように集まり、再び濃霧の壁を築き上げる。
「な・・・やはりダメか・・・」
「しかしこれで中に入れることは確認出来ました。・・・後は直に入って確かめる他ないでしょう・・・」
ハオランの言葉に息を飲む一行。徐々に近づく霧の中へとその身を投じて行く。一寸先すらどうなっているか分からない中、進行方向を真っ直ぐとり、ゆっくり直進して行く。
波の音すら飲み込む一面湿気を含んだ、白と言うには些か燻んだ世界。すると僅かに聞こえてくる音にミアが気付くと、ツクヨとハオランにも聞こえるか確認を取る。
「・・・何か聞こえないか?」
「機械音・・・でしょうか・・・?無線機のような音がします」
ハオランはその音に気付いたようだが、ツクヨは未だに何処からそんな音がするのかといった顔で周囲を見渡す。彼は聴覚よりも視覚の方が優れているのか、今度はツクヨが何かを見つけ出した。
「小舟が近づいて来る・・・!」
小声で二人にその存在を諭すと、身をかがめいつでも動ける戦闘体勢を取るミアとハオラン。こんな如何にも怪しい濃霧の中で出会す小舟に誰か乗っているかもしれない。
二人はそれが敵であろうと味方であろうと、瞬時に押さえ付けられるよう準備を整える。次第にミアの聞いた音というのが、ツクヨにも分かるくらいハッキリ聞こえるようになる。
単純に音源との距離が縮まったのだ。そしてそれはツクヨの見つけた、徐々に近づきつつある小舟の方から聞こえてくる。
遠目に見た様子では、小舟に何者かが乗っているような気配は感じられない。彼らの乗る船を細かく操縦し、上手いことすれ違うように近づく。漸く小舟に接触すると、ハオランが自分一人で乗り込むとハンドシグナルを出し、ミアに援護を頼む。
ザーッといったチャンネルの合っていないテレビのような音が小舟から聞こえる。ハオランが舟の中を捜索してみると、そこには一つの無線機が床に転がっていた。それを手に取り、彼の持っていた機器で周波数を調べてみると、それはハオランへ無線を飛ばして来た無線機だった。
「これは・・・無線の相手は一体何処に・・・?」
持ち主を失った無線機が発する音が、その不気味さと彼の不安感を煽った。
「お・・・おい、あの中からなのか?」
「・・・はい」
中がどうなっているのか見えない程濃い霧が立ち込める前方の海上。例えこの中から本当に無線が飛んで来たのだとしても、発信源を見つけることは困難であると素人目にも明らかだ。
するとハオランは、ツバキから貰い受けた自身のボードを手にすると、甲板の方へ向かおうとした。何処へ行くのかとミアが尋ねると、彼は一人で濃霧の中へ向かうと言い出したのだ。
「ここまで連れて来て頂いただけで十分です。お二人を危険な目に合わせてしまっては、シンさんに合わせる顔がありません・・・。ここからは私一人で・・・」
ミアとツクヨを置いて、濃霧の中へ向かおうとするハオランを止めたのはミアだった。彼をこのまま一人で向かわせる訳にはいかない。それではミア達の当初の目的を果たせないからだ。
それにシンは、自分の身が危険に晒されると分かっていながらグレイスの救援へ向かったのだ。自分達だけが安全なところで、事が運んで行くのをただ見ている傍観者であることを彼女は望まないし、もしそうなればきっと後悔する。
「待て。ここまで連れて来させておいて、そりゃぁねぇだろ。アタシらにも協力させてくれ・・・」
送ってくれただけでなく協力までしてくれると言い出した二人に、ハオランは二人の顔を順番に見て強く頷くのを目にすると、深い感謝をした。
とはいえ、無闇に突入するのも危険であるため、ミアが錬金術による風属性の弾丸を使い、やや斜めに濃霧へ入射するよう射撃を試みる。煙や普通の霧程度であるのならそれで十分だと、弾倉に弾を込めて銃口を構えるミア。
「風よ、道を遮る暗雲を打ち払えッ!」
突然詠唱を始めるミアに、ツクヨは内心驚いた。彼女が属性弾を撃つのを見たことのなかったツクヨは、こんな恥ずかしい台詞を言わねばならないのかと思ったが、決してそれを口にすることはなかった。
彼女の銃口から放たれた弾丸は、勢い良く濃霧の中へ入っていくと、進入した際は地味であったものの、暫くして大きな爆発音がすると周囲の霧を回転させる程の風が巻き起こり、濃霧の中に台風の目のような半球状のドームが展開されていた。
「おぉ!霧が晴れている!これで濃霧を削っていけば或いは・・・」
希望に溢れる瞳をするツクヨだったが、風は永続ではなく時間で解除され、再び風によって晴れた場所に霧が吸い込まれるように集まり、再び濃霧の壁を築き上げる。
「な・・・やはりダメか・・・」
「しかしこれで中に入れることは確認出来ました。・・・後は直に入って確かめる他ないでしょう・・・」
ハオランの言葉に息を飲む一行。徐々に近づく霧の中へとその身を投じて行く。一寸先すらどうなっているか分からない中、進行方向を真っ直ぐとり、ゆっくり直進して行く。
波の音すら飲み込む一面湿気を含んだ、白と言うには些か燻んだ世界。すると僅かに聞こえてくる音にミアが気付くと、ツクヨとハオランにも聞こえるか確認を取る。
「・・・何か聞こえないか?」
「機械音・・・でしょうか・・・?無線機のような音がします」
ハオランはその音に気付いたようだが、ツクヨは未だに何処からそんな音がするのかといった顔で周囲を見渡す。彼は聴覚よりも視覚の方が優れているのか、今度はツクヨが何かを見つけ出した。
「小舟が近づいて来る・・・!」
小声で二人にその存在を諭すと、身をかがめいつでも動ける戦闘体勢を取るミアとハオラン。こんな如何にも怪しい濃霧の中で出会す小舟に誰か乗っているかもしれない。
二人はそれが敵であろうと味方であろうと、瞬時に押さえ付けられるよう準備を整える。次第にミアの聞いた音というのが、ツクヨにも分かるくらいハッキリ聞こえるようになる。
単純に音源との距離が縮まったのだ。そしてそれはツクヨの見つけた、徐々に近づきつつある小舟の方から聞こえてくる。
遠目に見た様子では、小舟に何者かが乗っているような気配は感じられない。彼らの乗る船を細かく操縦し、上手いことすれ違うように近づく。漸く小舟に接触すると、ハオランが自分一人で乗り込むとハンドシグナルを出し、ミアに援護を頼む。
ザーッといったチャンネルの合っていないテレビのような音が小舟から聞こえる。ハオランが舟の中を捜索してみると、そこには一つの無線機が床に転がっていた。それを手に取り、彼の持っていた機器で周波数を調べてみると、それはハオランへ無線を飛ばして来た無線機だった。
「これは・・・無線の相手は一体何処に・・・?」
持ち主を失った無線機が発する音が、その不気味さと彼の不安感を煽った。
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